契約直前の相談は、選択肢が無い

住宅購入、ローン契約の直前での相談は十分な検討の時間が持てず「買う」か「買わない」かの2択になってしまいがち住宅購入、ローン契約の直前での相談は十分な検討の時間が持てず「買う」か「買わない」かの2択になってしまいがち

住宅購入相談は、「できる限り早期に」と常々アナウンスしている。だが、意に反して契約直前のファイナンシャル・プランナーへの相談が増加しているのだ。住宅購入の契約には手付金の支払を伴うことがほとんどだが、契約後に自己都合でキャンセルすると、支払済みの手付金を放棄しなければならないため、契約前の最終確認は賢明だと言える。もし契約をキャンセルするとしても傷口を最小限に抑えることができるのだ。

だが、契約直前のタイミングでは、対応策の選択肢が無い。多くの場合は、「買う」か「買わない」かとなる。時間に余裕があれば、住戸や面積、オプションを変更したり、住宅ローンを最適化したり、親などからの資金援助を仰ぐ方法などを検討し、不安を解消する戦略を一緒に立てることができる。だが、契約直前では、すべての条件がガチガチに固まってしまっている。しかも、売主への返答期限が目前に迫っていて、心の余裕もない。冷静な判断ができる状況ではないのである。

契約直前に不安が最大化する

なぜ、契約直前になってファイナンシャル・プランナーへの相談を希望するのだろうか。相談者に訊くと「何となく気になっていたが、やっぱり不安だと確信した。確信すると不安が募り、このままでは契約できないと思った」というケースが多い。忙しかったり、面倒だったり、何とかなるさと楽観的だったり。無意識のうちに不安に蓋をしているような場合もあり、心理状態は複雑だ。また、夫婦の一方だけが購入に不安を持っている場合も、相談時期が遅れがちとなる。「妻の不安が解消されないので相談に来た」という夫のコメントをよく聞く。子育て中の妻は日々子どもの顔を見ながら、「新居は楽しみだけれど、教育費と住宅ローンを両立できるのかしら」と不安に駆られているケースも多い。十分なケアが大切だ。

契約直前のファイナンシャル・プランナーへの相談の最大目的は、不安の解消である。不安の内容は「買えるかどうか」に集約される。そしてそれは多くの場合、「返せるかどうか」ということになる。「専門家の話を聞いて不安を解消し、安心して契約したい」という意図だ。そういった場合、ファイナンシャル・プランナーへの相談は有効である。なぜならば、不安が解消するからだ。現在と将来の家計において、住宅ローンの返済が持続可能かどうかは、試算すれば明確になり、不安は解消し、不足額は解決すべき課題となる。不安が膨張し、思考が硬直するのは、「何となく不安」という状態だ。不安を課題に変え、数値化すれば、思考が課題解決に向けて活発に動き出す。

不安を課題に変える、住宅ローンの基礎知識

新築分譲マンションなど、竣工まで期間がある物件の場合は金利に注意。当初想定していた利率より、契約時にはあがっている可能性もある新築分譲マンションなど、竣工まで期間がある物件の場合は金利に注意。当初想定していた利率より、契約時にはあがっている可能性もある

前述の通り、契約直前の相談は対応策に選択肢が無くなるためお勧めしない。また、早期に不安を課題に変えておけば、不安を延々とひっぱることもない。住宅購入に対する不安要素は、人によってさまざまだ。夫婦のこと、子どもの養育や教育のこと、親との関係、仕事のこと、家選びや不動産会社、金融機関選びのこと、等々。先ずは、自分が気になっていることをすべて書き出すことをお勧めしたい。そして当記事では、お金について考えたい。さらに「返せるかどうか」という大きな課題となる「住宅ローン」に絞って考えていく。

●金利について
住宅ローンの金利タイプは、大きく分けると「固定金利」と「変動金利」の二つとなる。金利は、毎月返済額にも総返済額にも大きく影響を与えるため重要だ。将来、金利の上昇による返済額の増額が不安であれば、返済額が将来にわたって確定する長期固定金利タイプを選択すればよい。

ただし、固定金利も契約タイミングによって変動することを抑えておきたい。住宅購入のステップでは、住宅選びと同時に資金計画を行うことが多いが、販売センターでは、住宅ローンの借入可能額と毎月返済額が試算され、「あぁ家賃並みですね」などと言った会話が交わされる。売買契約を交わし、建物が完成したら、住宅に金融機関の抵当権が設定されて、融資実行となる。すると同時に、住宅ローンの返済が始まるというわけだ。住宅ローンの返済額は、この時点の金利が適用される。つまり、資金計画時にどれだけ金利が低くても、融資実行時点の金利が高ければ、予定していた返済額より多くなる。

これは、固定金利でも変動金利でも同じ。住宅ローンの仕組みなのである。契約した月に融資が実行されるような竣工済み物件や中古住宅では、このような可能性は低くなる。一方、タワーマンションなど竣工時期が1年も2年も先になるような物件では注意が必要だ。金利は上昇し始めたら早い、などと言われる。日銀の金融政策や景気指標など、金利に影響する世の中の動きに注目しておきたい。資金計画の際は、融資実行までの期間を考えて、「金利が上昇しても十分に返済可能か」という視点で試算を行っておくことが大切だ。目の前の金利だけで判断してはならないことを肝に銘じておこう。

●「金利+諸費用」という考え方
検討初期は不安ではなかったが、購入計画を進めていく上で「こんなはずじゃなかった」となる場合も、不安が膨張して直前の相談となる。諸費用が代表例だ。住宅購入に伴う諸費用は、住宅価格の1割程度を見込んでおきたい。新築か中古か、マンションか一戸建てか注文住宅か。住宅面積や住宅ローンによっても諸費用の額は異なる。売主や販売会社へ依頼し、個別に試算することが望ましい。諸費用は、一時金として当初に支払うものもあれば、固定資産税のように毎年支払うもののほか、住宅ローン金利に上乗せして支払う手数料や保証料もある。「家賃並み」と住宅ローンの返済額と現在の家賃とだけを比べていると、上乗せされる諸費用の支払に愕然とし、不安がむくむくと湧いてくる。

住宅ローンの諸費用では、手数料(融資手数料や事務手数料など名称は異なる)と保証料を要チェック。支払い方法は金融機関によってさまざまだが、「借入時一括支払い」タイプと「金利上乗せ」タイプに大きく分けられ、契約者が選択する。金利上乗せタイプには、保証料を「金利+0.2%」として、毎月返済額が増額される例がある。手数料も定額だったり、利用額の2.2%など定率で支払うタイプだったり。定額の方が少なくていいからと選択すると、定率タイプよりも高い金利が適用されたりする。住宅ローンは、決して目の前の金利の低さだけに心を奪われないこと。トータルコストでの比較を心掛けよう。

住宅ローン計画で、絶対やってはいけないこと

毎月返済可能額をもとに、余裕のある返済計画を立てよう毎月返済可能額をもとに、余裕のある返済計画を立てよう

それは、「借り過ぎないこと」である。住宅ローンを利用する際は、返済期間や返済方法、金利のタイプなど、決めるべきことがいくつかある。そのほとんどは、返済中に手数料を払って、あるいは無料で変更が可能だ。ところが、借入額は変更できない。うっかり借り過ぎてしまったからと、借りなかったことにはできない。住宅ローンは借金である。一度借りたら返していくしかないのだ。

借り過ぎないためには、家計収支から無理なく支払える毎月返済可能額をもとに、借入額を試算すること。年収から試算した借入額を過信しないこと。返せる額と借りられる額は別であり、返せる額と返し続けられる額も別物だ。共働き前提で借入額を試算して大丈夫か、現在の月給と賞与を最大限当てにして問題がないか、想定可能なリスクはすべて盛り込み、手堅いプランニングを一つ試算しておけば安心である。

住宅ローン計画の心得 5か条

住宅ローン破綻を防ぐため、「住宅ローン計画の心得 5か条」をチェックしてみよう住宅ローン破綻を防ぐため、「住宅ローン計画の心得 5か条」をチェックしてみよう

最後に、破綻しない住宅ローン計画のための心得を確認しておこう。

1)頭金は、いくら出すかではなく、いくら残すかを考える。
緊急予備資金など、必要資金の確保を心掛けること。
2)目の前の金利の低さだけに目を奪われない。
実行時金利、将来金利、諸費用、オプション内容を吟味すること。
3)絶対に、借り過ぎない。
年収ではなく、毎月返済可能額をベースに借入額を試算すること。
4)目標は住宅ローンを返済しながら貯金ができる状態。
住宅ローンは家計収支に余裕を組むこと。ノリシロがないと命取りに。
5)未来志向の住宅ローン計画を立てる。
ライフプランを作成し、将来にわたって返済継続可能な計画を。

住宅ローンは、返済するために借りるのではなく、その目的は、自分と家族の豊かな暮らしのための必要資金の調達である。返済するために生活していては、豊かではない。返済中も豊かな暮らしが送れるよう、自分と家族と家計にジャストサイズの住宅ローン計画を立ててほしい。

2019年 12月20日 11時05分