ひとり親世帯の現状

2020年10月5日、世界保健機関(WHO)が、これまでの新型コロナウイルスの感染者を世界人口の1割にあたる約7億8千万人になるとの試算を公表した。これは、米ジョンズ・ホプキンス大学の集計で確認されている累積感染者数の20倍以上という数字(発表当時)で驚きをもって迎えられた。日本でも、海外との人的交流が緩和されつつあり、国内でもGo Toキャンペーンなど、ヒト・モノ・カネの動きが活発になっている。さらに、インフルエンザの流行期を迎え、予断を許さない状況だ。

新型コロナウイルスの影響は世代を選ばない。だが、ひとり親世帯へのダメージが相当なものであることは想像に難くない。令和2(2020)年4月、厚生労働省が「ひとり親家庭等の支援について」を公表したが、父子家庭に比べて正規社員などの割合が低く、低所得となりがちな母子世帯は、厳しい状況にさらされている。新型コロナウイルスの影響が長期にわたればダメージもそれだけ深くなる。

ところで、今年に入り賃貸管理の会社が相次いで、シングルマザーを支援する養育費保証のビジネスを始めた。なぜ、賃貸管理の会社が?と思われる方も多いだろう。だが、状況情報を集めるとなるほどと思う。4月の民事執行法の改正も追い風となっているようだ。当コラムでは、次の項目について掘り下げてみる。


【1】ひとり親世帯の現状
【2】養育費を取り巻く環境
【3】母子世帯をサポートする養育費保証
【4】養育費保証のチェックポイント
【5】まとめ


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ひとり親世帯の現状

平成27(2017)年国勢調査によれば、母子世帯(※1)は75万4,724世帯、父子世帯(※2)は8万4,003世帯。母子世帯の最年少の子どもの年齢は、6~14歳(小学生・中学生)の世帯が53.2%、15~17歳(高校生)の世帯が 20.4%、6歳未満の幼児の世帯が 17.5%、18~19 歳(高校卒業者)の世帯が 8.9%となっており、「母子世帯」の7割以上に中学生以下の子どもがいることになる。
「母子世帯」の母親に占める労働力人口の割合は91.1%と、女性全体の労働力率50.0%と比べると非常に高い。自分と子どものために働かざるを得ないという状況も大いにあるのだろう。


※1) 母子世帯:未婚、死別又は離別の女親と、その未婚の 20 歳未満の子どものみから成る一般世帯をいう。
※2) 父子世帯:未婚、死別又は離別の男親と、その未婚の 20 歳未満の子どものみから成る一般世帯をいう。

厚生労働省の「全国ひとり親世帯等調査」は、福祉対策の充実を図るために全国の母子世帯、父子世帯及び養育者世帯の生活実態を把握する調査だが、平成28(2016)年度調査結果にて母子世帯の状況を確認しておこう。

●就業状況・平均年収
同調査によれば、母子世帯の母の就業状況は、81.8 %と高い。だが、「パート・アルバイト等」非正規の雇用形態が 43.8 %。正規社員等の割合が高い父子世帯との違いは歴然としている。

母子世帯の母自身の平均年間収入は 243 万円、平均年間就労収入も200 万円にとどまる。この点も父子世帯との差は大きい。なお、母子世帯の母の預貯金額は、「50 万円未満」との回答が最多(39.7%)だった。

●一人親世帯になった理由
なお、「一人親世帯になった理由」は、母子世帯、父子世帯ともに、離婚がトップ。母子世帯は79.5%と高いのだが、この理由が養育費の取り決めや受給状況にも影響を及ぼしていると言える。養育費についてみていこう。

※「平均年間収入」及び「平均年間就労収入」は、平成27(2015)年の1年間の収入。<br>
※ 集計結果の構成割合については、原則として、「不詳」となる回答(無記入や誤記入等)がある場合は、分母 となる総数に不詳数を含めて算出した値(比率)を表している※「平均年間収入」及び「平均年間就労収入」は、平成27(2015)年の1年間の収入。
※ 集計結果の構成割合については、原則として、「不詳」となる回答(無記入や誤記入等)がある場合は、分母 となる総数に不詳数を含めて算出した値(比率)を表している

養育費を取り巻く環境

離婚について話し合いをする場合は、養育費や子どもの将来に影響する事柄についてはしっかりと相談し取り決めをしておきたい離婚について話し合いをする場合は、養育費や子どもの将来に影響する事柄についてはしっかりと相談し取り決めをしておきたい

前項と同じく「全国ひとり親世帯等調査結果」にて養育費の状況をみてみよう。

●養育費の取り決め状況
養育費について「取り決めをしている」割合は 、母子世帯で42.9 %と半数に満たない。そのうち、公正証書等の文書が存在するのは、73.3%だった。次項以降で述べる「養育費保証」は、書面での取り決めを契約の要件とする事業者が多い。書面は重要な役割を果たすのだ。

●取り決めをしていない理由
ではなぜ、半数以上の母子世帯が重要な養育費についての取り決めを行っていないのか。母子世帯の理由のトップは、「相手と関わりたくない(31.4%)」だった。次いで「相手に支払う能力がないと思った(20.8%)」、「相手に支払う意思がないと思った(17.5%)」と続く。回答の割合は低いが、交渉に関する煩わしさや難しさも理由となっている。

離婚の理由にもよるが、「離婚だけでも十分に負担なのに、さらに養育費の交渉だなんて」という声が聞こえてきそうだ。その一方で、「支払ってもらえると思わなかった」などの勘違いや思い込みなどという残念なケースも考えられる。知識不足や情報不足はもったいない。後になって「勘違いしていたから支払ってほしい」との主張は可能だがハードルが高い。その時に元パートナーの連絡先がわかるとは限らないのだ。子どもの将来に影響する事柄については、煩わしくても初期段階で対応したい。

●養育費の受給状況
母子世帯は、実際に養育費を受給しているのだろうか。離婚した父親から「現在も受けている」は 24.3 %。4分の1に満たない。その金額は、養育費を現在も受けている又は受けたことがある場合で、金額が決まっている世帯の平均月額は 4万3,707 円となっている。ひとり親の年収や子の数によって異なるが、子どもが2人だからと倍額になることは期待できない。

児童扶養手当の受給対象児童数の総数は93万9,262人、うち母子世帯総数85万7,529人(平成30年度、福祉行政報告例)という調査結果もあるが、児童扶養手当、自身の勤労収入、そして、養育費の受給がひとり親世帯の生活の糧だといえよう。

現状把握が重たくなったが、メインテーマの「養育費保証」について次の項で見ていこう。

母子世帯をサポートする「養育費保証」

厚生労働省の令和元(2019)年人口動態統計によれば、離婚件数は20万8,496組で、前年より増加。離婚率(人口千対)は 1.69だ。離婚件数のうち、20歳未満の未婚の子どもがいるケースは、11万8,664組にもなる。低収入で就労が不安定な非正規雇用、さらに養育費を受給できていない母子世帯の家計状況は深刻だ。虐待や育児放棄などとも関連し、社会問題と直結する。

そのような中、民間事業者が相次いでサービスを開始したのが「養育費保証」だ。

●養育費保証
事業者によって仕組みや保証の内容は若干異なるが、ひと言で言えば「養育費の支払いに遅延や未払いがあった際、養育費を保証するサービス」ということになる。

母子世帯を例にすると、事業者が養育費を支払う元夫の連帯保証人となり、遅延や未払いやが生じた際に保証人として、養育費を立て替えて母親に支払ったり、元夫へ督促を行ったりする。立替金は事業者の債権として回収するため、母親が元夫へ催促をする必要はない。母親の心理的負担を大いに軽減できる。

●養育費保証の背景
2020年にあらたに養育費保証のサービスを開始した養育費保証のミライネは不動産賃貸管理業、株式会社CASAは家賃債務保証の会社だ。また、以前より養育費保証商品を販売していて今秋から養育費LINEをスタートした株式会社イントラストも家賃債務保証の会社だ。いずれも、賃貸管理業や家賃保証業で培った与信管理や資金回収等のノウハウを養育費保証の業務に活かせると意気込む。

(政府)
政府も、養育費の「逃げ得」を防ぐため動き出している。2020年7月にとりまとめた「女性活躍加速のための重点方針2020」では、養育費の履行の確保に向け、養育費制度を見直すための法改正の検討を明記した。国による養育費立て替え払いや強制徴収の制度化などを検討する。

(地方自治体)
国に先駆け、地方自治体の中には、養育費の取り決めのための調停調書や公正証書等公的書類の作成費用を全額補助するところや、養育費の保証促進補助金として、本人が保証会社へ支払う養育費保証契約の保証料を補助するところもある。この地方自治体の補助金が事業者にとっても事業促進の追い風となっていて、ホームページで補助金制度のある地方自治体一覧を掲載するところもある。

(民事執行法の改正)
2020年4月、民事執行法の改正法が一部の規定を除き施行され、財産開示手続きが容易になった。養育費の取り立てなど強制執行の申し立てには債務者の財産を特定することが必要だが、改正法により、公正証書等で養育費の支払を取り決めた者なども財産開示制度を利用できる。養育費を請求する側にとって、むろん、養育費保証の事業者にとっても、未払いの養育費を請求しやすくなったのだ。

養育費保証の図養育費保証の図

養育費保証のチェックポイント

養育費保証の比較検討では、メリット(保証内容)とコスト(保証料)、利用条件や仕組みなどをチェックしよう養育費保証の比較検討では、メリット(保証内容)とコスト(保証料)、利用条件や仕組みなどをチェックしよう

養育費保証を利用するにあたって、また、事業者のサービスを比較検討するにあたってのチェックポイントをみておこう。重要なのは、メリット(保証内容)とコスト(保証料)、そして利用条件などの仕組みの理解だ。

●保証内容/保証期間・保証料
保証期間は、養育費が未払いになった場合の立て替え払いの期間だと考えるとわかりやすい。事業者によって、12ヶ月、24ヶ月、36ヶ月と差がある。保証期間が長いと保証料が高くなったり、条件が厳しくなったりする。総合的に考える必要がある。

養育費の立て替え払いが基本となる。その際、毎月払いのほか、1年分を先に受け取れる事業者もある。子どもの進学費用など一時的な支出があるときには助かるが、先に受け取ると当該期間は受給がなくなるため計画的に行いたい。また、未払いのときだけ立て替えるのではなく、養育費支払人から口座振替などで月額養育費を受領し(集金代行)、養育費受取人へ送金するケースもある。入金日や入金額が安定しないと不安が募る。決まった日に決まった額を受領できるのは有難い。

●コスト/保証料
契約者が負担するコストは、事業者によって差が出る。「初回保証料+月額費用」とするところがほとんどだ。初回保証料は、月額の養育費と同額。月額費用の名称はそれぞれだが、例えば、月額保証料として、一律1,000円だったり、養育費の15%、25%、30%、50%だったりする。保証料の他に、事務手数料が別途必要となる事業者や更新時に保証料を徴収するところもある。住宅の賃貸契約に似ている。

ミライネでは、元パートナーと養育費に関する書面を交わす際に「養育費保証会社を利用する際に発生する費用を養育費支払人が負担する」という旨を盛り込めば、養育費受取人は実質負担0円で養育費保証サービスを利用できる、としている。元パートナーがどこまで負担してくれるのか、両者の合意がポイントとなる。

●仕組み
事業者は、ひとり親(養育費受給者)と養育費保証契約を結ぶ。そして、元パートナー(養育費支払者)の連帯保証人となる。ミライネは、公正証書等の養育費に関する書面の内容に基づき、養育費が未払いとなった場合に、同社がその債務を連帯して保証することを委託するために、養育費支払人とミライネとの間で保証委託契約を締結する。Casaでは、保証開始時に養育費支払者へ、Casaが連帯保証をする旨の「保証実施通知」を郵送する。が、いずれの場合も養育費受給者の個人情報は守られる。

●契約の条件
公正証書や離婚協議書、養育費合意書など養育費の取り決めが確認できる書面があることが条件となる。前項で述べた民事執行法の改正内容をふまえれば、合点がいく。他に、現時点で養育費の滞納がないことを追加条件とするところもある。なお、養育費支払者の連絡先がわかっていることも要件だ。

養育費の取り決めが確認できる書類が無い場合には、養育費合意書の雛形を事業者が提供するところもある。手元に公正証書が無いからとあきらめず、問合せてみたい。例えば、株式会社小さな一歩の養育費あんしん受取りサービスでは、書面がない場合、協力弁護士が、持ち出し費用0円で養育費の金額を取り決めた合意書面を作成。書面作成等の弁護士費用は、月々の養育費から差し引かれる仕組みだ。持ち出し費用0円は心強い。だが、無料ではない。養育費がいつまでいくら減額されるのか、中長期視点を忘れないようにして判断したい。

●契約の流れ
養育費保証のサービスの流れは下記のとおりだ。審査があることも心しておこう。

申込み⇒審査⇒契約書類の提出⇒契約⇒初回保証料の支払い⇒保証開始

【まとめ】

養育費保証サービスを展開する会社の保証内容等をまとめた。養育費保証という形式以外にも、ひとり親支援や養育費のサポートはある。国をあげてひとり親家庭の子育て・生活支援の事業が展開されている。市役所、区役所などのホームページなどで情報を収集し、電話やメールで問合せてみよう。支援の対象になるか否かは自分で判断せず、担当者に判断してもらうことをお勧めしたい。

子どもを抱え、どうしても目の前のことで手一杯になりがちだが、少し先を見ていきたい。子どもが成長すれば、教育費の負担も増える。養育費というと、毎月の支払額を意識しがちだが、子どもの進学費用なども十分に考慮して取り決めたい。正確で役立つ情報を収集し、官民のひとり親支援を十分に活用しよう。

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2020年 11月03日 11時00分