ほとんどの建物は延床面積の上限が決められている

多くの土地は、都市計画法によって用途地域が定められている多くの土地は、都市計画法によって用途地域が定められている

狭小地に建物を建築する際、容積率に頭を抱える人は多いのではないだろうか。
建物は、たとえ自分の敷地内であっても自由な大きさで建てることはできない。街中のほとんどの土地は、都市計画法によって用途地域が定められているからだ。これは土地を大きく住宅地、商業地、工業地に分類するもの。これらの地域では、それぞれ敷地面積当たりの建築可能な建物の大きさの上限が「建ぺい率」と「容積率」によって定められている。
たとえば閑静な住宅地にしたい地域であれば、建ぺい率50%、容積率100%といった低めの数値となり、20坪の土地ならば2階建てで延床面積20坪までの建物しか建てられない。一方で商業を発展させたい地域であれば、建ぺい率80%、容積率800%といった高めの数値となり、20坪の土地でも10階建てで延床面積160坪までの建物が建てられる。つまり狭い土地でより広い建物を建てたいのなら、容積率が大きい地域でなければならないのだ。

ところが2000年の法改正によって容積率の売買が可能になった。いわゆる「空中権」の移転だ。

空中権には2つの意味がある

空中権とは土地の上部空間だけを使用する権利で、法的に定められた名称ではなく一般的に呼ばれているものだ。その空中権には2つの意味がある。

1.土地の上部空間を使用する権利
たとえば、空中電線や渡り廊下といった工作物を所有するために土地の上部空間を排他独占的に使用する権利。

2.未利用の容積率を移転する権利
都市計画で定められた容積率のうち、未使用部分を他の土地に移転する権利。

上記の空中権の移転とは「2」のことだ。つまり未利用分の容積率を移転することで、法的制限を超える容積率の建物が建築可能になる。

たとえば、容積率800%の地域で100坪の土地に300坪の建物を所有しているAさんがいたとする。Aさんの土地は500坪分の容積率が未利用となっている。そして同じ地域で100坪の土地を持つBさんは1300坪の建物を建てたい。そこでBさんはAさんから500坪分の空中権を購入することで1300坪の建物の建築が実現できる、というわけだ(容積率は前面道路幅員も関係するがここでは考慮しない)。

「空中権の移転」のイメージ。本来Bの敷地で建築可能な建物の延床面積の上限は800坪だが、Aからの空中権の移転によって1300坪まで可能になる「空中権の移転」のイメージ。本来Bの敷地で建築可能な建物の延床面積の上限は800坪だが、Aからの空中権の移転によって1300坪まで可能になる

空中権が利用できるおもな例

一般的にはあまり馴染みのない「空中権」だが、どのようなケースでの利用が考えられるだろうか。

・マンションの大規模修繕
マンションの大規模修繕を行いたくても積み立てた金額が足りない、という事態が頻発している。そのような場合でも未利用の容積率があれば売却し、その利益を修繕費に回すことができる。

・一戸建ての建て替え
特に東京23区内などの都心部では、容積率にかなり余裕があるものの建て替えるのは自宅なので2~3階建てでいい、といったケースがある。そのような場合は、余った容積率を売却することで建て替え費用を捻出することができる。

・古いビルやアパートの建て替え
古いビルやアパートを建て替えたくても、解体費用や入居者の立ち退き資金を用意できない場合がある。そのようなときは未利用の容積率を売却して資金を捻出することができる。

近年、空中権を利用したことで話題になった建物がある。JR東日本の東京駅丸の内駅舎だ。同社はこの大改修の費用を空中権の移転によって捻出した。近隣に建築計画があった新丸の内ビルディングなど6つのビルに空中権を500億円で売却したのだ。そのことで新丸の内ビルディングの場合は、本来の容積率では30階建てまでしか建てられなかったものが38階建てにできた。

以上のように利用の仕方次第で非常にメリットのある空中権の移転。しかし、全国どこでもできるわけではなく、各自治体が可能地域を指定することになっている。そのほかの利用条件も自治体によって異なるので、まずは確認をしていただきたい。

新丸の内ビルディング(左)は、本来の容積率では30階建てまでしか建てられなかったが、空中権の移転によって38階建てにできた新丸の内ビルディング(左)は、本来の容積率では30階建てまでしか建てられなかったが、空中権の移転によって38階建てにできた

2018年 08月06日 11時05分