「星ヶ丘」の名付け親は旧・日本住宅公団だった

名古屋市千種区の東部に位置する星ヶ丘は商業エリアであり、文教地区でもある名古屋市千種区の東部に位置する星ヶ丘は商業エリアであり、文教地区でもある

名古屋市千種区に「星ヶ丘」という名称のまちがある。千種区史によると、町名の由来は1955年までさかのぼり、日本住宅公団(現・独立行政法人都市再生機構〈UR都市機構〉)がこの地に団地を建てたときに、市内の団地の中で一番高い場所であることから「星にもっとも近く、輝く星の美しい丘」という意味を込めて命名したそうだ。

千種区内で「ほしがおか」の付く町名は「星ヶ丘」「星が丘元町」「星が丘山手」の3つがあり、漢字表記では「星ヶ丘」と「星が丘」が混在している。表記にバラつきがある理由を千種区役所に問い合わせたところ、「星ヶ丘」は従来の地名で、「星が丘」は、2005年ごろに町名変更があった際に一部地域でこの住居表示を用いるようになった、とのことだった。

さて、その星ヶ丘は、HOME'S住まいと暮らしのランキング【2013年、いちばん人気だった街は?】全国エリア別年間ランキングで“東海エリア第16位”となっているほか、他の調査機関が名古屋市民に行った「住みたい街アンケート調査」でも、2年連続で“住みたい街第1位”を獲得している。

なぜ、多くの人が星ヶ丘に住んでみたいと思うのだろう?
星ヶ丘が人気を集めている理由を探ってみた。

“街づくり”をコンセプトに誕生したショッピングセンター「星が丘テラス」

星が丘テラスの支配人濱本氏(左)と服部氏(右)。星ヶ丘についてなら何時間でも語れるというほど地域愛にあふれる両氏星が丘テラスの支配人濱本氏(左)と服部氏(右)。星ヶ丘についてなら何時間でも語れるというほど地域愛にあふれる両氏

“街”という単位で星ヶ丘を表す場合、名古屋市営地下鉄星ヶ丘駅を中心とした約500m四方のエリアをいう。地下鉄星ヶ丘駅を降りると地上には星ヶ丘三越百貨店があり、さらに、三越を拠点に回遊する形で、オープンモールのSC(ショッピングセンター)「星が丘テラス」がある。星が丘テラスの開発・運営を手がける東山遊園株式会社 星が丘テラス支配人の濱本琢也氏と、営業主任の服部麻美氏に話を伺ったところ、同社が星ヶ丘の魅力づくりに一役買っていることがわかった。

同社は創業時より約60年にわたって、星ヶ丘を魅力ある街にするべく開発を行ってきた。2002年には星ヶ丘一帯の再開発を手がけることになったのだが、さまざまな選択肢がある中でSCの建設を決めたという。その理由について濱本氏・服部氏はこう話す。

「SC以外の事業も検討していましたが、やはり街に必要な機能はSCであろうということで決めました。開発にあたっては、商店街づくりという視点と共に“街づくり”をコンセプトとし、星ヶ丘の地域性に合ったSCをつくろうということになりました」

住む人も訪れる人も、気軽に街ぶらを楽しめる開かれた空間

星が丘テラスは、名古屋市都市景観賞(2003年)や愛知まちなみ建築賞(2004年)、全国花のまちづくりコンクール企業部門(2010年)など数々の賞で高い評価を得ている星が丘テラスは、名古屋市都市景観賞(2003年)や愛知まちなみ建築賞(2004年)、全国花のまちづくりコンクール企業部門(2010年)など数々の賞で高い評価を得ている

星ヶ丘の地域性というのは、どういうものだろう?

「近くに東山動植物園や平和公園があり自然環境が整っていますし、大学や高校などが多い文教地区ならではの雰囲気もあります。また、もともとこの地に住まれている方もいらっしゃいますが、他の地域から転居してこられる方も多く、外部の感性や情報を積極的に取り入れる風通しの良さがある。というのが星ヶ丘の特長だと思います」

そして2003年に星が丘テラスがオープンした。施設は、南北に走る道路を隔てて4階建てのイーストと2階建てのウエストに分かれ、通路がゆったりしていたり共用部に花壇を設けていたりと、開放感があり景観にも配慮したつくりになっている。

「SCとしてはムダの多いつくり方かもしれませんが、訪れる方々に疲れることなく、街ぶらを楽しんでいただきたかったので」

確かに、開かれた空間だけに買い物客に限らず、近隣の学校の学生や地域住民、たまたまここを通りかかった人も気軽に立ち寄りやすい。同社の取り組みから、まちの魅力というのは自然に発生するものではなく、築くものだということを感じさせられる。また、官民の“連携”が魅力創出のキーポイントであることもわかる。

コミュニティの場があることで、街も人もいきいきする

地元の大学生と協働で季節イベントを実施したときの様子。「買い物をされない方との接点も大切です。コミュニティの場としても、星が丘テラスに愛着を持っていただきたいですね」(濱本氏)地元の大学生と協働で季節イベントを実施したときの様子。「買い物をされない方との接点も大切です。コミュニティの場としても、星が丘テラスに愛着を持っていただきたいですね」(濱本氏)

濱本氏は「SCには“サードプレイス”になろうという考え方があるんです」と話す。

サードプレイスというのはアメリカの社会学者レイ・オールデンバーグが提唱した“場”の概念。都市には、都市居住者にとって必要な“ファーストプレイス=自宅”と“セカンドプレイス=職場や学校”に加えて“サード・プレイス=居心地の良い場所”が必要なのだという。
※プレイス=場所

「SCは売り場づくりだけなく、コミュニティ施設やカルチャースクールをつくるなど、いかに人々の集まる場所をつくっていくかということがとても重要な役割になっているんです」

実際に同社は、サードプレイスとなるべくさまざまな地域活動に取り組んでおり、近隣大学の学生と季節イベントを行ったり、市内の専門学校生と一緒に花壇をつくったり、東山動植物園と協働でイベントを行ったりして、街の活性化や人の交流を促している。

「地域との連携は私たちも刺激を受けますし、特に社会に出る前の学生さんたちに対しては、私たちがどれだけ刺激を与えられるかということも意識しますね。同じ目的に向かってさまざまな人が協働する風土があるというのが星ヶ丘の魅力だということを、アピールできればと思います」

“住みたい街”から“住んで良かった街”へ

星ヶ丘三越(茶色い建物)の向こう側には県道60号線(東山通)が東西に走り、東に4kmほど行くと名古屋インターがある星ヶ丘三越(茶色い建物)の向こう側には県道60号線(東山通)が東西に走り、東に4kmほど行くと名古屋インターがある

濱本氏・服部氏が、星ヶ丘のどんなところに魅力を感じているか尋ねてみた。

「落ち着いた大人の街であること。そして、自然が多く過ごしやすいということも魅力ですね。住むという視点では地下鉄東山線1本で栄や名駅に出られますし、高速のインターチェンジも近いので車で出かけるにも便利で、とても暮らしやすいですね」

地の利の良さは確かに星ヶ丘の魅力の1つであろうが、そうした条件さえ整っていれば多くの人が“住みたい”と思うわけではないということを、今回、両氏の話を伺って感じた。

「住む人がどれだけその地に愛着を持てるかというのが、街づくりには大切だと思います。星ヶ丘は住みたい街の上位に入っていますが、『住んでみてやっぱり良かった』と思ってもらえるよう努力していくことが私たちの使命ですね。10年後、いかに星ヶ丘ならではの新たな魅力を生み出していけるかが課題だと思っています」

星が丘テラス、行政、学校、地域の人々が連携し、これから星ヶ丘という街をどんなふうに育てていくのか。5年後、10年後が楽しみである。

取材協力/星が丘テラス(東山遊園株式会社)
http://www.hoshigaoka-terrace.com/

次回は、東山動植物園の地域連携の取り組みについて紹介する。

2014年 05月23日 10時51分