リーマンショックを契機に制度が誕生

住宅確保給付金は2015年4月に施行された「生活困窮者自立支援法」に基づく制度のひとつ。生活費のうちでも最も多額に及ぶ住宅費の支出を支援することで、安心して就職活動に注力できるようにという意図があり、それによって仕事と住まいの両方を確保、困窮状態に陥ることを防ぐものである。

住居確保支援金について(厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12000000-Shakaiengokyoku-Shakai/0914_shiryou03_1.pdf

住居確保支援金の要件緩和について(令和2年3月9日)
https://www.mhlw.go.jp/content/000605807.pdf
*年齢要件、求職活動要件が緩和されているので、上記資料を読むときには注意。

制度のきっかけになったのは2008年9月に起きたリーマンショック。製造業を中心にいわゆる派遣切りが多発、家賃滞納者が増えた時期である。同年年末には日比谷公園に生まれた「年越し派遣村」が大きな話題になったこともあり、記憶にある方も多いのではなかろうか。

その状況を受けて、住む場所を失った人や失う恐れのある人を救うために2009年10月から厚生労働省が始めたのが「住宅手当緊急特別措置事業」。全国の市区町村が窓口になり、最長9ヶ月間の住宅手当が支給されるというものである。

当時、新宿にある店舗で管理業務にあたっていた株式会社ハウスメイトマネジメントの伊部尚子氏によると、住宅手当を受給するための代理納付の書類に印鑑を求める入居者さんが何人も来店したとのこと。「この時期に『住宅手当緊急特別措置事業』を利用した入居者さんの多くは生活保護受給者になることもなく、家賃滞納に陥ることもなく、新たな就職先を見つけたり、安い物件に引越す、実家に帰るなどして生活を立て直されました。不安に思ったら早めに行動していただきたいものです」と、伊部氏。

家賃滞納がない状態でも利用は可能

リーマンショック時の「緊急特別措置事業」はその後、2013年4月に「住宅支援給付制度」となり、‬現在は「住居確保給付金」となっているわけである。

対象となるのは「離職等により経済的に困窮し住居を失った者だけでなく、賃貸住宅等に居住しながら、住居を失うおそれがある者」。すでに家賃を滞納しているか否かは要件とされていないので、これから家賃が払えなくなりそうという時点で対象となるのである。

では、どんな人がこの制度を利用できるのか。分かりやすい要件から順に書こう。

・離職等の前に世帯の生計を主として維持していたこと
・ハローワークに求職の申し込みをしていること
・国の雇用政策による給付等を受けていないこと
・離職後2年以内の者

前年度までは65歳未満という要件があったが、それは撤廃されている。

加えて4月20日からは「給与などを得る機会が当該個人の責に帰すべき理由、当該個人の都合によらないで減少し、離職または廃業に至っていない」人も対象になった。
さらに、4月30日から、ハローワークへの求職申込みが不要になっている。

厚生労働省 住居確保給付金のご案内
https://www.mhlw.go.jp/content/000626236.pdf

だが、分かりにくいのは離職「等」ということ。そこで窓口である厚生労働省生活困窮者自立支援室に対象となるのはどんな人かを電話で聞いてみた。

厚生労働省 住居確保給付金のご案内<br>
https://www.mhlw.go.jp/content/000626236.pdf厚生労働省 住居確保給付金のご案内
https://www.mhlw.go.jp/content/000626236.pdf

廃業した自営業者、フリーランスなども受けられる可能性あり

一番はっきりしているのは雇用関係があり、その勤務先を2年以内に辞めた人。退職の理由は問わない。

現在も雇用関係があり、出勤日が減るなどで収入が減少したという人は現状では対象にならない。こうした人に対しては休業補償があり、政府ではこの原資となる雇用調整助成金の特例措置を2020年6月30日まで拡大。雇用保険被保険者でない労働者の休業も助成金の対象となっている。住宅とは関係ないが、休業補償という意味では小学校が臨時閉校になったために仕事を休まざるをえなくなった保護者への、正規、非正規を問わない助成金制度もある。こちらも6月30日まで延長されている。
4月20日からは離職に至っていない人も対象になっている。

雇用調整助成金(新型コロナウイルス感染症の影響に伴う特例 厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/kyufukin/pageL07.html

新型コロナウイルス感染症による小学校休業等対応助成金・支援金
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_10259.html

アルバイトなど単発の仕事で生活していた人の場合も対象にはならない。だが、もし、2年以内にどこかで雇用されていたという経歴があれば対象になりうる。思い出してみよう。

フリーランスの場合は仕事のキャンセルが相次いでいる、大きく減収したなど、窮状が分かる文書などがあれば申請は可能。排除されてはいない。

自営業者の場合は廃業していることが要件。青色申告をしている人なら税務署に廃業届を提出しているはずなので、そうした書面が必要になる。
4月20日からは離職に至っていない人も対象になっている。

厚生労働省 雇用調整助成金<br>https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/kyufukin/pageL07.html
<br>より「今般の新型コロナウイルス感染症により影響を受ける事業主を支援するため、雇用調整助成金の特例措置の更なる拡大を今後行う予定です【PDF:92.1KB】2020(令和2)年3月27日掲載」https://www.mhlw.go.jp/content/000615395.pdfを参照して作成厚生労働省 雇用調整助成金
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/kyufukin/pageL07.html
より「今般の新型コロナウイルス感染症により影響を受ける事業主を支援するため、雇用調整助成金の特例措置の更なる拡大を今後行う予定です【PDF:92.1KB】2020(令和2)年3月27日掲載」https://www.mhlw.go.jp/content/000615395.pdfを参照して作成

収入、預貯金の要件を確認しよう

職歴、就業状況以外にも要件がある。

収入:申請月の世帯収入の合計額が基準額(市町村民税均等割が非課税となる収入額の12分の1)プラス家賃額以下であること。この場合の家賃額は住宅扶助特別基準額が上限で東京都の23区と羽村市、あきる野市を除いた24市の場合は単身世帯で13万7,700円、2人世帯で19万4,000円、3人世帯で24万1,800円と例示されている。

預貯金額:申請時の世帯の預貯金合計額が基準額×6(ただし100万円を超えない額)以下であることとなっており、上記エリアの場合、単身世帯で50万4,000円、2人世帯で78万円、3人世帯で100万円が例示されている。

就職活動:ハローワークでの求職活動が必要で、その要件は「月2回以上の公共職業安定所の職業相談等」および「週1回以上の応募または面接」となっているが、その回数を減ずるまたは免ずることができると緩和されている。自立相談支援機関への相談についても面談が原則とされるものの、勤務状況や地域の感染状況等により来庁が困難な場合は、電話などの手段に替えることができ、給与明細の郵送をもって収入の確認にかえることができるとなっている。

支給額:生活保護の住宅扶助特別基準額が上限となっており、上記エリアの場合、単身で5万3,700円(16m2超の場合)、2人世帯で6万4,000円、3~5人世帯で6万9,800円などとなっている。これについては各自治体の生活保護関連のページを検索すれば上限額が分かる。

家賃全額が支給されるのではない点に注意が必要。もし、今後も不安が続くようであれば、早々にこの支給額以内の住宅に引っ越すなどの手を考えたほうが良いかもしれない。その場合にはできるだけ契約時に費用がかからない住宅を検討するのが賢明だろう。

支給期間:原則3ヶ月ではあるものの、就職活動をきちんと行っている場合などについては3ヶ月の延長が可能で、最長9ヶ月まで。

問合せ先:申請方法、必要書類など詳細については全国1,300ヶ所に設置されている自立相談支援機関へ。最寄りに窓口の連絡先がない場合は都道府県、市町村へ問合せてみよう。住居確保給付金の支給要件に満たなくても、他の支援策が受けられる可能性もある。

生活困窮者自立支援制度の紹介(厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000073432.html

また、この問合せと同時に管理会社、大家さんなど住宅の貸主にも早めに相談をしておきたいところ。管理会社、大家さんとの日頃の関係、会社としての方針などにもよるだろうが、事前の相談があれば事態が悪化する懸念は軽減されるはずだ。

電気料金の支払い猶予、その他支援策もチェックしておこう

住居確保給付金以外にも支払いの不安はある。現時点では電気料金、ガス料金について支払い猶予が要請されており、気になる人は利用している事業者に問合わせてみてほしい。 

電気・ガス代の特例措置が延長
経済産業省 新型コロナウイルス感染症の影響を受け、電気・ガス料金の支払いが困難な皆様へ 2020年5月13日
https://www.meti.go.jp/press/2020/05/20200513003/20200513003.html

また、一時的に資金を貸してもらってしのぐという手もある。

一時的な資金の緊急貸付(厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/content/000626608.pdf

それ以外にも政府は省庁ごとにさまざまな支援策を打ち出している。いずれも状況に応じて変化するものなので、気になることは逐次ホームページで内容を確認したい。

経済産業省の支援策(2020年5月22日時点)
https://www.meti.go.jp/covid-19/

ところで、この状況を悪用しようと詐欺まがいの商法を展開する人たちも出ている様子。ただでさえ大変な時期にそうした罠にひっかかってはたまらない。正しい情報を活用し、身を守ることを考えたい。

2020年 04月07日 11時05分