リーマンショックを契機に制度が誕生

住宅確保給付金は2015年4月に施行された「生活困窮者自立支援法」に基づく制度のひとつ。生活費のうちでも最も多額に及ぶ住宅費の支出を支援することで、安心して就職活動に注力できるようにという意図があり、それによって仕事と住まいの両方を確保、困窮状態に陥ることを防ぐものである。

制度のきっかけになったのは2008年9月に起きたリーマンショック。製造業を中心にいわゆる派遣切りが多発、家賃滞納者が増えた時期である。同年年末には日比谷公園に生まれた「年越し派遣村」が大きな話題になったこともあり、記憶にある方も多いのではなかろうか。

その状況を受けて、住む場所を失った人や失う恐れのある人を救うために2009年10月から厚生労働省が始めたのが「住宅手当緊急特別措置事業」。全国の市区町村が窓口になり、最長9ヶ月間の住宅手当が支給されるというものである。

当時、新宿にある店舗で管理業務にあたっていた株式会社ハウスメイトマネジメントの伊部尚子氏によると、住宅手当を受給するための代理納付の書類に印鑑を求める入居者さんが何人も来店したとのこと。「この時期に『住宅手当緊急特別措置事業』を利用した入居者さんの多くは生活保護受給者になることもなく、家賃滞納に陥ることもなく、新たな就職先を見つけたり、安い物件に引越す、実家に帰るなどして生活を立て直されました。不安に思ったら早めに行動していただきたいものです」と、伊部氏。

収入が離職、廃業と同程度まで減っていることが要件

リーマンショック後の「住宅手当緊急特別措置事業」はその後、2013年4月に「住宅支援給付金制度」となり、コロナ禍で2020年4月以降は「住居確保給付金」として運用されている。初期にはさまざまな要件があったが、徐々に撤廃され、利用しやすくなってきている。

では、どんな人がこの制度を利用できるのか。大きく2つの要件がある。ひとつはコロナ禍で収入が減り、一定額まで減少しているということ。具体的な要件が2つある。

①主たる生計維持者が下記のいずれかの状況にあること
・離職・廃業後2年以内である場合
・個人の責任・都合によらず給与等を得る機会が、離職・廃業と同程度まで減少している場合

ここでのポイントは2つ。まず、外国籍であっても「主たる生計維持者」であれば対象にはなるが、学生は基本的には対象者とはならない。ただ、例外はありうるので、とりあえずは相談窓口となる自立相談支援機関等に相談してみよう。

「離職・廃業と同程度にまで減少」とある通り、離職、廃業を前提としているものではないことに注意しよう。給付金を利用するからと会社員が離職、自営業者が廃業する必要はないのである。個人事業主として雇用契約によらない就業形態の場合も給与等を得る機会が減少していれば対象になる。年齢制限はない。

住民税が非課税、預貯金が100万円を超えないこと

続いては実際の収入額、資産状況についての要件だ。

②直近の月の世帯収入合計額が市町村民税の均等割が非課税となる額の1/12(以下「基準額」)と家賃(上限あり)の合計額を超えていないこと
③現在の世帯の預貯金合計額が各市町村で定める額(基準額の6月分。ただし100万円を超えない額)を超えていないこと

地方税のひとつである市町村税は前年の所得に対して課税される「所得割」と、均等に定額が課税される「均等割」の2種類からなっており、所得が一定額以下の場合、所得割はもちろん、均等割も免除される。均等割非課税の要件は地方自治体によって条件が異なり、たとえば、東京23区の場合は以下の通り。

・生活保護法による生活扶助を受けている場合
・障がい者、未成年者、寡婦または寡夫で、前年中の合計所得金額が125万円以下(給与所得者の場合は、年収204万4,000円未満)場合
・前年中の合計所得金額が以下の額になっている場合
同一生計配偶者又は扶養親族がいる場合⇒35万円×(本人、同一生計配偶者、扶養親族の合計人数)+21万円以下
同一生計配偶者及び扶養親族がいない場合⇒35万円以下

収入、住民税額の調べ方だが、会社に勤めている人であれば年末に配布される源泉徴収票を確認すれば収入を確認できる。住民税については給与から天引きされているケースが多いので給与明細あるいは納税通知書をチェックしよう。

個人住民税(東京都主税局)
https://www.tax.metro.tokyo.lg.jp/kazei/kojin_ju.html#gaiyo_03

もうひとつは預貯金合計額の基準で、これは100万円を超えていないことと考えれば分かりやすい。持続化給付金や特別定額給付金など新型コロナウイルス関連の融資については収入、資産には算定されてないこととされている。

離職、廃業した人は求職活動をすることも要件

続いては求職活動の要件が状況に応じて2種類ある。これについては2020年4月から一時ハローワークへの登録、求人の申込み要件が不要となっていたが、2021年1月1日から復活しているので注意したい。

まず、離職・廃業後2年以内である場合にはハローワークへ求職の申込みをし、誠実かつ熱心に求職活動を行うこととされており、
具体的には
・ハローワークへの求職申込、職業相談(月2回)
・企業への応募、面接(週1回)
をすること。

個人の責任・都合によらず給与等を得る機会が、離職・廃業と同程度まで減少している場合には誠実かつ熱心に求職活動を行うこととされており、
具体的には
・生活再建への支援プランに沿った活動(家計の改善、職業訓練等)
をすることとなっている。フリーランスでやってきた人などに就職を求めるわけではないので誤解のないようにしたい。

支給は生活保護制度の住宅扶助額が上限

支給される額は住んでいる自治体、世帯の人数によって異なるが、上限は住んでいる自治体が生活保護制度の住宅扶助額として定めている額となる。たとえば、東京都の場合は以下の通り。給付を受ける人の収入、家賃によっても異なるので以下の額は上限ということを意識しておきたい。

また、給付があっても中長期的に家賃を払い続けるのは難しいと考えるなら、賃料を下げる方向で住み替えを考える必要もあるかもしれない。

「住宅扶助基準額」の見直しについて(平成27年7月1日から。東京都福祉保健局)「住宅扶助基準額」の見直しについて(平成27年7月1日から。東京都福祉保健局)

「住宅扶助基準額」の見直しについて(平成27年7月1日から。東京都福祉保健局)
https://www.fukushihoken.metro.tokyo.lg.jp/seikatsu/hogo/jyuutaku_minaoshi.files/jyutakuminaoshi.pdf

また、敷金や共益費、駐車場代は含まず、家賃のみが対象になる。家賃に駐車場代が含まれる、店舗兼住宅を借りて営業しているなどの場合には面積から按分するなどして、住宅部分に対してのみ給付されることになる。ただし、借りている人が法人名義の場合には対象にならない。同様に事業用物件も対象外だ。

給付される額については厚生労働省のホームページ内に図解がある。世帯収入額が基準額以下、基準額を超える場合で多少違うので自分はどちらに当てはまるかを確認しよう。

2021年1月から最大12ヶ月の給付に

給付される期間は原則3ヶ月。延長は2回まで可能で最大9ヶ月となっていたが、2021年1月1日以降、それが12ヶ月まで伸びた。

ただし、そのためにはいくつか要件がある。ひとつは2020年度中に新規申請して受給を受けていること。そしてもうひとつは世帯の預貯金合計額が、基準額の3月分を超えないこと(ただし50万円を超えないこと)である。それ以外の要件は基本的な給付の条件と同じだが、給付を受けても経済的に貯蓄を取り崩さざるを得ない状況下にあるなら給付の延長ができるということである。

支給された給付金は賃貸住宅の賃貸人や不動産媒介事業者等へ、自治体から直接支払われることになる。賃借人に直接ではないので注意したい。

手続きはまず、全国に1,317か所設置されている生活困窮者自立相談支援機関に相談することから始まる。相談方法は支援機関ごとに異なるので、まずは電話などで連絡してみること。支援機関とは住宅、仕事、生活などの相談窓口で、自治体が直営または社会福祉法人やNPOなどに委託して運営しており、厚労省ホームページ内の都道府県別に一覧があるので、それを確認しよう。

住居確保給付金 申請・相談窓口
https://corona-support.mhlw.go.jp/jukyokakuhokyufukin/counter.html

窓口で相談、申請をすると申請書が市、区等の行政の窓口に送られ、給付が決定すると決定通知書等が支援機関経由で送付されてくる仕組みとなっている。相談時に用意したい書類としては大きく4種類。ひとつは運転免許証や個人番号カード、パスポートなどの本人確認書類、ふたつ目は給与明細書や年金等の公的給付金の証明書等の収入が確認できる書類、三つ目が金融機関の通帳の写しなど預貯金額が確認できる書類、そして最後が離職・廃業や就労日数、就労機会の減少が確認できる書類である。

必要書類は申請先によって異なることがあるので、支援機関に問い合わせた折に必要書類を確認、その上で用意すると効率的である。

不明な点は0120-23-5572まで。平日、土日祝日も朝9時~夜21時まで利用できる。
住居確保給付金(厚労省)
https://corona-support.mhlw.go.jp/jukyokakuhokyufukin/index.html

家賃以外の支援対策もチェックしておこう

住居確保給付金以外のコロナ禍下での生活不安に対処する支援も知っておこう。まずは厚労省がやっている生活福祉資金の特例貸付制度。これには緊急かつ一時的な生計維持のための生活費を借りる緊急小口資金、生活の立て直しまでの一定期間(3ヶ月)の生活費を借りる総合支援基金の2種類があり、前者は20万円以内、後者は二人以上世帯月20万円以内が借りられるというもの。それぞれに一定の要件があるので、誰でもとは言えないが、困った時には相談してみよう。

いずれも窓口は市区町村の社会福祉協議会。住居確保給付金同様、フリーダイヤルもあり、こちらは0120-46-1999(平日、土日祝日も朝9時~夜21時まで)となっている。

緊急小口資金
https://corona-support.mhlw.go.jp/seikatsufukushi/samout/index.html

総合支援基金
https://corona-support.mhlw.go.jp/seikatsufukushi/general/index.html

公共料金や地方税、固定電話や携帯電話料金などの支払猶予が総務省から自治体、各事業者に要請されており、払えないと思ったら滞納する前に相談してみたい。電気料金、ガス料金なども同様だ。

新型コロナウイルス感染症対策 公共料金関係(総務省)
https://www.soumu.go.jp/menu_seisaku/gyoumukanri_sonota/covid-19/ryokin.html

新型コロナウイルス感染症の影響を受け、電気・ガス料金の支払いが困難な皆様へ(経産省)
https://www.meti.go.jp/press/2020/01/20210122004/20210122004.html

事業をやっている人であれば経産省の支援のうちに役立つものがあるかもしれない。フリーランス向けには新型コロナウイルス感染症による小学校休業等対応支援金(委託を受けて個人で仕事をする方向け)があるが、2021年2月1日現在、申請期限は2021年3月31日となっており、延長されるかどうかが気になるところだ。

経済産業省の支援策(2021年2月1日時点)
https://www.meti.go.jp/covid-19/

新型コロナウイルス感染症による小学校休業等対応支援金(委託を受けて個人で仕事をする方向け(厚労省)
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_10231.html

都道府県別新型コロナウイルス関連の補助金、助成、融資等(J-Net21)
https://j-net21.smrj.go.jp/support/covid-19/regional/index.html

ところで、困っている人がいる状況を悪用し、詐欺まがいの商法を展開する人も出ている様子。二度目の定額給付金を装ったスパムも出回っているとか。ただでさえ大変な時期にそんな罠にまでひっかかってはたまらない。支援策の利用を考える際には必ず、各省庁など情報の出所に遡り、間違いがないかを確認することを基本としよう。

2021年2月5日更新

2020年 04月07日 11時05分