住宅ローンを滞納してもすぐに一括返済は求められない

住宅ローンを滞納すると、家をすぐに売り飛ばされるイメージを持つ人がいるが、まず、そんなことはないことを知ってほしい。

住宅ローンは35年のような長期にわたる返済期間のローンもあるため、返済期間中に病気やケガ、会社の倒産などで収入が激減することは当然あり得る。収入が減り、返済が難しくなったら、最初にやるべきことは条件変更(リスケジュール)だ。

条件変更とは、返済期限を延長し、毎月の返済額を減らすことである。しかしながら、条件変更が認められる期間は長くても2~3年であるため、その後、再び元の返済金額に戻ったとき、払えない可能性はある。

その際、滞納が連続で3ヶ月以上続くと、「期限の利益」を喪失し、そこから住宅ローン残債の一括返済を求められるようになる。期限の利益とは、長い時間をかけてゆっくり返済していいという債務者の利益のことだ。

対処法としては任意売却と競売の2通り

期限の利益を喪失すると残債は一括返済することになる期限の利益を喪失すると残債は一括返済することになる

住宅ローン残債の一括返済を求められると、次は不動産を売却し、その金額でローン残債を返済することになる。住宅ローンの返済方法は、前提となるのは競売だ。競売とは、銀行が裁判所に申し立てて行う強制的な売却で、正式な債権回収の手段である。
銀行は抵当権という権利によって家を担保に取っており、ローンの返済が滞ったときに抵当権の権利を行使する。債権者である銀行が抵当権を行使することを、「抵当権の実行」といい、それは具体的には競売を指している。

ただし、債権者は競売をすることが目的ではなく、債権回収が目的だ。貸したお金が返ってくればよいので、債権者は競売にはこだわっていない。そこで登場するのが、競売以外の自主的な売却であり、それを総称して「任意売却」と呼んでいる。

任意売却は、あくまでも任意の売却なので、当事者の合意によって自由に行われる。
競売も任意売却も、一括返済を目的としていることは共通しているが、競売は法的なルールに基づき実行され、任意売却は当事者の合意で自由に行われるという違いがある。

任意売却のメリットとデメリット

任意売却のメリットは、なんといっても債権者と交渉の余地があるという点である。具体的には債権額の圧縮や引越し代の捻出、買い受け人(購入する人)の指定等だ。任意売却では、売却しても返済しきれなかった住宅ローン残債が残る場合、それも引き続き返済しなければいけないのが原則である。
しかしながら、必ずしも満額を返済しなければいけないわけではない。債権者と合意のうえで、ある程度残債を圧縮し、返済できる範囲で返済を続けるようにできるという交渉の余地がある。

また、家を売れば引越しを行わなければならないが、それには引越し費用がかかる。任意売却は、交渉すれば売却額の中から引越し代も確保することができる。たまに、「任意売却では引越し代がもらえる」と表現する人がいるが、もらえるのではなく、正確にい言うと交渉すれば確保できる余地があるということだ。

さらに、任意売却は自由な売却であるため買い受け人(購入する人)を指定できるメリットもある。例えば、親などに購入してもらえば、その後も今の家に住み続けることもできる。

一方で、任意売却にはデメリットがある。任意売却はルールがないがゆえに、すべて話し合いで決めなければならないという点だ。債務者が、カードローンや消費者金融といった住宅ローン以外のローンを抱えている場合、それらの債権者とも合意を取らなければならない。債務者に家を売られてしまえば、カードローンや消費者金融は残債を回収できなくなる可能性があるため、自分たちの取り分を求めてくる。いわゆるハンコ代と呼ばれているものだ。他の債権者がハンコ代を求めてくれば、住宅ローンの債権者の取り分は、当然少なくなる。すると、住宅ローンの債権者の合意を取るのが難しくなり、話し合いが難航するのだ。

任意売却は、すべてを話し合いで決めなければならないため、債権者が多いと話がまとまりにくくなるというのがデメリットとなっている。

競売のメリットとデメリット

一般的には、競売よりも任意売却のほうがよいと主張されることが多いが、競売にもメリットは存在する。それは自己破産をするケースだ。

自己破産とは、返済が不可能な債務に苦しむ人を救済し、経済的再生の機会を与える法的な制度である。自己破産を行えば、税金以外の借金はすべて免責される。負債を相続人に引き継がなくてもいいし、最低限の生活は守られ、合法的に負債がなくなるため、何よりも精神的に楽になる。

自己破産をすれば、借金は返さなくてもよくなるため、債務者にとっては任意売却も競売も関係がなくなる。競売なら、実行されるまでに1年半近くかかり、また任意売却のように債権者とも話し合う必要もない。今の家に少しでも長く住めるのは競売であるため、自己破産をするのであれば競売にメリットが出てくる。

一方で、競売はルールが厳格であるがゆえに、デメリットもある。自己破産でないときは、競売でも任意売却と同様に、売却後に残った残債は返済が必要となる。

しかしながら、任意売却とは異なり、債権者と交渉の余地がないため、債務の圧縮は行われない。住宅ローン残債が少なく、競売後に残債が残らないようであれば、今の家に少しでも長く住める競売を選択するという考え方はある。

必ずしも常に任意売却のほうがよいわけではないので、自分にはどちらが適しているのか検討したうえで選択するようにした方がよい。

住宅ローンの返済が苦しくなったらまず相談すべき先

相談は早めにするのがポイント相談は早めにするのがポイント

借金の返済方法には、法的な知識を要する。そこでおすすめしたいのが、まずは「法テラス」への相談だ。

法テラスとは、国が設立した無料の相談機関であり、司法書士や弁護士といった法律の専門家に無料で相談ができる。住宅ローンを滞納してしまう人は、カードローンや消費者金融といった住宅ローン以外のローンを抱えている人も少なくない。

このようなケースでは、個人民事再生という制度を利用すると、住宅ローンの支払期限を延長し、住宅ローン以外のローンを大幅に減額できる場合がある。個人民事再生はあまり知られていない制度であるが、このような制度を知っているかどうかの差は大きい。

その後の取るべき手段が随分と変わってくるため、銀行に相談する前に、まずは法テラスでしっかりとした法律知識を聞くべきである。

滞納するかもしれないくらいの段階で、早めに動き、傷は浅いうちに直すことをおすすめしたい。

2019年 09月09日 11時00分