4つの魅力で埼玉県のよさをアピール

「埼玉物語」と題し、ストーリー仕立ての動画などのプロモーションを展開している「埼玉物語」と題し、ストーリー仕立ての動画などのプロモーションを展開している

埼⽟県では、2017年より「住むなら埼⽟︕」のキャッチフレーズで、各部局が連携しながら移住や定住を支援する施策を推進している。
「施策のひとつである『市町村空き家バンク』へのアクセス数は、連携開始前の2017年1⽉から2019年1⽉までの間に、3倍になりました」と話すのは、都市整備部 住宅課 企画担当の和⽥正⼀郎主幹。連携の効果は⼤きいようだ。

また2018年からは、主に40代以下の若い世代をターゲットとして、移住促進プロモーション「埼玉物語」を展開し、移住PR動画などが話題となっている。このような取組みは、県としては初の試みだという。

「埼⽟物語」が掲げる埼玉移住の4つの魅力は、都⼼からのアクセスのよさ、充実した住宅⽀援、恵まれた⾃然環境、移住で変わる豊かなライフスタイルだ。
企画財政部 地域政策課 地域振興担当の⾦⼦功主査は「埼玉県は都心から約1時間と近く、今までの仕事や人間関係を保ったまま豊かな自然暮らしをできるのが魅力です」と話す。また、和⽥⽒は「最近ある調査で、⼤宮と浦和が住みやすい街の上位に⼊りました。これはアクセスや住居費などのバランスのよさが評価された結果ではないでしょうか」と、4つの魅⼒のアピールに⼿応えを感じているそうだ。

埼玉県の移住促進施策取組みの背景

埼⽟県がこうしたキャンペーンや施策に⼒を⼊れるのは、⼈⼝減少や⾼齢化、空き家の増加といった多くの⾃治体に共通する課題があるからだが、埼⽟県独⾃の事情もある。
「2010年と2015年実施の国勢調査で⽐較すると、県全体では⼈⼝が増えています。しかし市町村別でみると、実は、県内63市町村のうち40市町村で⼈⼝が減少しているんです」(⾦⼦⽒)

県の中央部を北東⽅向から南⻄に横切る圏央道を挟んで、南側ではさいたま市や川越市、川⼝市など、⼈⼝の増えている⾃治体が⽬⽴つ。⼀⽅、北側は⼈⼝減の市町村が多く、特に県⻄部には、2010年からの5年間で5%以上⼈⼝の減った市町村が集中している。
一方で、最近は移住希望者の傾向に変化が見られる。東京・有楽町の「ふるさと回帰⽀援センター」を訪れた移住相談者は、2008年には50代以上が70%近くを占めていたが、2017年には逆に40代以下が70%を超えている。このことから県では、主に40代以下の若い世代をターゲットとして、埼玉県への移住を促進する取り組みを行っているという。

県内市町村別人口減少率の状況。圏央道を境に状況が異なることがわかる(画像左)、ふるさと回帰支援センターに訪れる人の年代を見ると、40代以下の若い世代が半分以上を占めている(画像右下)県内市町村別人口減少率の状況。圏央道を境に状況が異なることがわかる(画像左)、ふるさと回帰支援センターに訪れる人の年代を見ると、40代以下の若い世代が半分以上を占めている(画像右下)

空き家の活⽤に向けて、移住お試し住宅やバスツアーを⽤意

越生町・ときがわ町をめぐるバスツアーのリーフレット。うちわづくり体験やショッピング、カフェでの休憩と、盛りだくさんの内容だ越生町・ときがわ町をめぐるバスツアーのリーフレット。うちわづくり体験やショッピング、カフェでの休憩と、盛りだくさんの内容だ

埼⽟県で連携して推進している施策には、「市町村空き家バンク」をはじめ、「多⼦世帯向け住宅取得⽀援」「⼦育て応援住宅認定制度」「安⼼中古住宅登録制度」などがあり、若い世代の住み替えニーズに応えている。また、『「住むなら埼⽟︕ 」 移住・定住情報』では、市町村の住宅⽀援の情報を提供している。

「市町村空き家バンク」は、賃貸・売却を希望する空き家の情報を登録してもらい、それを空き家の利⽤希望者に紹介する制度。現在、県内の39市町村が参加する29のバンクがある。2019年1⽉までの登録件数は合計758件で、そのうち331件の賃貸・売却が成⽴。特に「ちちぶ空き家バンク」は成約率が⾼く、和田⽒は「やはり⾃然豊かな環境へのニーズが⾼いということではないでしょうか」と分析している。

また、秩⽗市やときがわ町などでは、空き家の活⽤を後押しするために「移住お試し住宅」を⽤意し、住み⼼地や周辺の環境を体験できるようにしている。県でも、東武鉄道と組んで、こうしたお試し住宅などをめぐる「移住体験バスツアー」を実施。都市整備部 住宅課 企画担当の坂井智彦主事によると、参加無料ということもあって、満員の盛況だったそうだ。和⽥⽒は「空き家の活⽤は、まずバスツアーなどを通じて、地域に愛着を持ってもらうことから始めたいですね」と話した。

安心して子育てができる住環境を提供するために

埼玉県子育て応援マンション認定制度のパンフレット埼玉県子育て応援マンション認定制度のパンフレット

⼦育て世代の移住・定住施策として⼒を⼊れているのが、「多⼦世帯向け住宅取得⽀援」や「⼦育て応援住宅認定制度」だ。「多⼦世帯向け住宅取得⽀援」は、18歳未満の⼦どもが3⼈以上の世帯や、夫婦とも40歳未満で、3⼈⽬の⼦どもを希望する世帯を対象に、新築・中古住宅を取得する際にかかる諸経費に対して、最⼤50万円の補助⾦を交付するもの。2018年度は申請多数で予算額に達したために、年度末を待たずに受付を終了した。
「来年度はどうなるのかと、多数のお問合せをいただきました」と坂井⽒。関⼼の⾼さに驚いたそうだ。その⾼い関⼼に応えて、2019年度も補助⾦が交付されることが決まった。

「⼦育て応援住宅認定制度」は、ハード、ソフトの両⾯で⼦育てに配慮したマンションや分譲住宅を埼⽟県が認定する制度。マンションの場合、⼦どもの成⻑に伴い変更が容易な間取りになっていることや、共⽤部分にベビーカー等の収納スペースがあること、バルコニーに転落防⽌の配慮がされていること、保育施設・幼稚園への送迎サービスの提供など、きめ細かな認定基準が設けられている。認定を受けたマンション・分譲住宅は、これまで9,000件を超えているそうだ。埼⽟県では、これらの制度を通じて、安⼼して⼦育てができる住環境を提供していきたいと考えている。

増えた相談・アクセスを、具体的な移住・定住につなげる

左から金子氏、和田氏、坂井氏左から金子氏、和田氏、坂井氏

東京有楽町の「ふるさと回帰⽀援センター」内にある「住むなら埼⽟ 移住サポートセンター」で受け付けた2018 年度の相談は、約10 ヶ⽉で前年度を上回っており、金子⽒は「徐々にではありますが、埼玉県も移住の候補地として認識されてきていると感じています」と話している。
増えた相談件数やアクセス数、潜在的なニーズを、具体的な移住や定住に結びつけるためには、どうすればよいのだろうか。
和⽥⽒は「施策の周知がまだまだ必要です」、金子⽒も「ターゲットを絞ったプロモーションや多様な⼿段を活⽤したPRを続けていきたいですね」と⾔う。また、「施策の連携に加えて、市町村との連携をより図っていくことが重要です」と話す。いずれにしても、今後も息の⻑い取り組みが求められるというのが埼⽟県の現状のようだ。

住みやすさが注⽬され始めている埼⽟県。どのように魅⼒を発信していくのか、今後の施策にも期待したい。

2019年 05月23日 11時05分