人口の減少が顕著な高知県。魅力を発信し、地産外商や移住促進で県の活力を取り戻す

地産地消・外商課の吉野史一さん。「『土佐経済同友会』という経済界の団体など県内の各界各層による県民会議があるのですが、その集まり自体を『高知家の家族会議』と呼んでくださっているんです。県民の皆さんに応援していただけるのが嬉しいですね」地産地消・外商課の吉野史一さん。「『土佐経済同友会』という経済界の団体など県内の各界各層による県民会議があるのですが、その集まり自体を『高知家の家族会議』と呼んでくださっているんです。県民の皆さんに応援していただけるのが嬉しいですね」

太陽、山、清流、黒潮、新鮮な食材、温暖な気候、そしてすぐに仲良くなれる家族のような温かい県民性。そんな魅力で多くの観光客を魅了している高知県。
高知県の人口は約72万人。人口減少や少子化、過疎化などが全国に先駆けて進んでいる。その現状を打破すべく、官民一体はもちろんのこと、県民まで一緒になって県のPR、地域経済の活性化に向けた取り組みを行っている。

「高知県は全国に15年先行して人口が自然減の状態に陥りました。高齢化も10年先行しています。経済規模の縮小を打開するために、『課題解決の先進県』となるべく様々な取り組みを行っています」と語るのは、高知県 産業振興推進部 地産地消・外商課 高知家プロモーション推進室の吉野史一さん。

「人の減少が大規模になってくると、県内をマーケットに今までと同様に商売をしていても当然売り上げは下がります。そのため、地産を外に商っていくことが重要になってきます。外商の推進には県内で消費していただく観光も含まれていますが、地産の強化、外商の推進に加え、3つ目として人材の確保を大切に考えています。人『材』をまさに財産の『財』として『人財』と表すのですが、新たなビジネスを起こす時のマンパワーを考えた時にも『人財』の確保は必要です。この3つが、高知県として経済規模縮小に歯止めをかける戦略の柱になっています」

外商を推進するためのひとつの例として、東京・有楽町にアンテナショップを出店。独自にスタッフを派遣できない零細企業が多いため、県が営業部隊も置くことで官民一体となった営業活動を行っている。また、東日本大震災以降、高知県には津波の被害を受けやすいというイメージが広がった。防災に力を注ぐ一方、防災対応先進県としてアピールすることで、防災関連登録製品の販売額が大幅に増加。平成24年と27年を比較すると、わずか3年で販売額が約40倍に。県知事が台湾まで防災関連商品を売り込みに行くなど、積極的に外商を行っている成果の表れだろう。

高知県をもっと知ってもらうために、「高知家」プロモーションを開始

地産の強化、外商の推進、人材の確保を積極的に推進する高知県。しかし、どんな施策であっても、多くの人に高知県に関心を持ってもらえなければまったく意味をなさない。そこで県をアピールし、魅力を発信するために行っているのが、平成25年度にスタートした「高知家」プロモーション。そのコンセプトコピーが「高知県は、ひとつの大家族やき。」。気さくで、情が深く、まるで家族のような親しい関係が築ける場所。高知県全体がひとつの家族であるというコンセプトを表現している。

「食や自然、魅力というのは高知に限らず各地にそれぞれのものがあります。結局高知ならではの魅力をお伝えしないと県の魅力が伝わりません。そこで着目したのが県民性です。高知県人というのは宴席を共にするなど一回会うと、家族みたいになってしまうんです。暑苦しいほどあたたかいという言い方を我々はしているのですが、むしろ暑苦しいというマイナスにもとれる部分に飛び切りのあたたかさがあるんだと。ひとつの家族みたいになっちゃいますよという県民性が、高知県のいちばんの特徴だと考えています。その結果、『高知県はひとつの大家族やき。』という高知家のコンセプトが生まれたのです」

1年目は高知を知ってもらうこと、インパクトを与えるために「家」をつくり話題を提供。2年目はより具体的な情報を発信するために、コピーを「高知県のええもん、ぜーんぶおすそわけやき。」として展開。「県産品、人、暮らしの情報など具体的な情報をおすそわけします」「家族のようにおすそわけする県民性なんですよ」ということを発信した。3年目は「高知家の家族はみんなぁがスターやき。」と題して展開。お仕着せのプロモーションではなく、県民一人ひとりがそれぞれの輝きを持つスターだという考え方に基づいている。

「皆さんスターとして登録してください、と呼びかけてどれだけ集まるかなと不安だったのですが、平成28年10月末の時点で1600人以上の方が登録してくれました。これは、自分で〇〇スターという形で登録してもらったものです。ポスターにも出演していただき、高知の暑苦しいほどあたたかい感じを体現してもらいたい、もしくはもっともっと参加してもらいたいと展開していきました。県民の皆様に記者発表に行って欲しい方を投票してもらい、選ばれたスターには東京での記者会見に出演してもらいました」

高知龍馬空港に到着した時から幾度となく目にした「高知家」のポスターやのぼり。</br>県庁の1階ロビー上部の目立つ位置にも横断幕が掲げられていた高知龍馬空港に到着した時から幾度となく目にした「高知家」のポスターやのぼり。
県庁の1階ロビー上部の目立つ位置にも横断幕が掲げられていた

県民一人ひとりがスターという発想でPR。誕生した「爺‐POP」も人気を博す

「高知家」のプロモーション動画を撮影する際に多くの人が集結。このような熱さ、「地元のために役に立ちたい」という心意気も、高知県民の気質なのだろう「高知家」のプロモーション動画を撮影する際に多くの人が集結。このような熱さ、「地元のために役に立ちたい」という心意気も、高知県民の気質なのだろう

4年目の2016年は、「高知家には、ポジティブ力がある。」と題して展開。明るい、あたたかい、豪快というような県民性、高知家のポジティブな気質を様々な形で発信。特に注目を集めたのが、スター登録している高齢者5人をアイドルデビューさせたこと。その名も「爺‐POP from 高知家 ALL STARS」。

「高齢の方でも高知県では何なら若手としてバリバリ働けるし、活躍できる。そういう県でもあり、そもそも考え方として歳を重ねることは素敵なことじゃないですか、と。高齢化をポジティブに捉えましょうよと発信をしています。ユニバーサルミュージックさんからは『ぜひ!』とお声がけをいただき、『高齢バンザイ!』という曲でメジャーデビューしました」

また、数々のイベントを通し、高知家の人の魅力を再認識したという吉野さん。
「高知の人は本当に協力的で熱い人が多いんです。『高知家』プロモーションの最初の年、動画を撮影するので協力を呼びかけたら400人以上集まってくれました。東京から来たスタッフは『なんでこんなに前向きなんですか』と感動していました。高知家すごいですねと。最近では、スター登録した方に記者会見をしたいから来られる方は来てくださいとお願いしたら、平日にも関わらずたくさんの方が集まってくださいました。本当にありがたく思います」

最終的に、高知県の魅力をPRする「高知家」のプロモーションは、どこを目指しているのだろう。
「3つあります。まず高知のことを知っていただいて、ファンになってもらうこと。観光も増やす。2番目は県産品を買ってもらうこと。外商ですね。3つ目が最終的に住んでいただくことです。ただ移住というのはそのニーズがない限りは無理ですし、移住だけを目標にしてしまうと少しずれてきます。あくまでも県外の人でも高知県に1回来ていただければ家族やきということで、高知のファン、仲間を増やしていくことが大事だと考えています。県内育ちで県外に出ている人もいますよね。そこもターゲットだと思います。帰って来ないまでも、ずっと高知県を応援し、つながりを大切にしてくれたらと思います」

国の補助金も活用し、空き家対策を推進。新たな雇用も創出

廃校を利用してつくられた「海洋堂ホビー館四万十」。雇用創出のほか、県内外からの観光客の誘致など、経済効果も表れている廃校を利用してつくられた「海洋堂ホビー館四万十」。雇用創出のほか、県内外からの観光客の誘致など、経済効果も表れている

人口の減少が進む高知県において、地域経済を潤し、活力を取り戻すための有効な手段が、県外からの移住者受け入れ。その際に必要となるのが、空き家活用など住宅の確保だ。

「高知県は空き家率が高く、単純な空き家率なら全国4位、17.8%。別荘等を除いた純粋な空き家率が10.6%で全国2位と、空き家率が高くなっています。
また、高知県の大きな課題のひとつに南海トラフ地震があります。今年(2016年)熊本や鳥取で大きな地震が相次いだことで県民の危機意識も高まっており、県庁としてもその対策には最優先で取り組んでいます。老朽化した空き家が耐震対策を受けずにいると地震の際に倒壊して避難路を塞いでしまい、たいへん危険です。沿岸部で津波避難タワーなどの整備を進めていますが、そこに行くまでの道が閉塞されてしまっては意味がありません。移住促進とは別の災害対策といった面からも、空き家対策に取り組んでいます」と空き家の現状を説明してくれたのは、高知県 土木部住宅課の帆風有盛さん。

高知県では、空き家の活用や除去などを地域のまちづくりの柱として実施する市町村に対して国が支援を行う、「空き家対策総合支援事業」という国の補助金を活用しながら、空き家対策を進めている。
「国が2分の1、県が4分の1、合わせて4分の3を市町村に補助しています」
再生された空き家は移住のための「お試し滞在施設」や移住者の受け入れ住宅などとして活用され、平成26年は19棟、平成27年は48棟という形で成果として表れている。

「空き家対策総合支援事業は、実は建築物にも使えるのです。高知県の空き家再生における成功事例のひとつとして、四万十町の『海洋堂ホビー館四万十』という建物があります。ホビー館は廃校の体育館を利用してフィギュアの博物館として再生。知る人ぞ知る観光スポットとして人気を集めています」
ホビー館を運用することで雇用も創出。国の支援事業を有効に活用しながら雇用にうまく結び付けた事例のひとつといえるだろう。

高知県のファンを増やして移住促進につなげる。移住相談件数も全国2位に

住宅課の帆風有盛さん(左)と移住促進課の高橋宏和さん(右)。県庁内の横のつながりの良さに加え、各市町村との密な連携も高知県の特徴。多くの移住者獲得につなげている住宅課の帆風有盛さん(左)と移住促進課の高橋宏和さん(右)。県庁内の横のつながりの良さに加え、各市町村との密な連携も高知県の特徴。多くの移住者獲得につなげている

「高知家」のプロモーションも奏功し、高知県への移住者は平成23年の120組241人から、平成27年には518組864人へと約4倍に増加。さらに平成31年には1000組の移住者獲得を目指している。空き家再生にも注力しているのは先に紹介した通りで、空き家が数多く「お試し滞在施設」などに生まれ変わっている。
「本県で移住希望者がいちばん多いのが30代。20代や40代も含めると8割以上になります。『お試し滞在施設』の稼働率は半分ぐらい。季節によって変わりますが、夏休みなどはが稼働率は高いですね」と話すのは、高知県 産業振興推進部 移住促進課の高橋宏和さん。

移住を希望する場合、漠然と高知県に住みたいと考えている人と、住みたいエリアを明確にして、すぐに物件探しから始めたいという人がいるだろう。相談を受けた場合、高知県ではどのような対応を行っているのだろうか。

「空き家を探す方は県の窓口を通らない方が結構いますので、市町村で空き家バンクを行っているところに直接お問い合わせいただくケースが多いですね。その場合、すべての市町村には移住相談者用の窓口を設けていただいておりますので、基本的にはそちらで対応してもらうことになります。
また、漠然と移住を希望している人に関しては、いったんどこに住むかというところ、どういった仕事をするかというところから考える必要がありますので、県の移住相談の窓口である『移住・交流コンシェルジュ』で様々なご希望をうかがい、どういった暮らしをしたいかにフォーカスして相談に乗るようにしています。
高知県には34の市町村があり、理想とする暮らしぶりを叶えるためにどの市町村がマッチするかという視点が非常に大事だと考えています。理想の暮らしを考え仕事が決まるという過程を経て、最後がお住まいです。高知市内などの市街地域であれば基本的に不動産事業者さんの物件をご案内することが多いですし、不動産事業者さんがないところでは市町村で行っている空き家バンクの物件とおつなぎするような形をとっています。
平成31年に1000組の移住者の受け入れを目標にしていますが、そのためには住宅の確保が大切になってくると思います。住宅課と協力して、空き家の調査を進めていきたいですね」(高橋さん)

「1000組という目標があり、そのための物件を掘り起こさないといけないという状況になっています。空き家数がただの数字ではなく、その中でどれだけのものが使えるかということが問われています。住宅課でも空き家調査の取り組みを進めながら、さらに補助制度なども拡充し、移住者の受け入れ態勢を整えていきたいと考えています」(帆風さん)

「高知家」のプロモーション、そして住宅課や移住課などの「本気」の取り組みにより、高知県は移住相談件数が全国で長野県に次いで2位(出典:総務省調査「移住相談に関する調査結果」)と健闘。また、「お試し滞在」や「移住体験ツアー」など、高知県への移住を体験できるプランも多数用意している。高知県で暮らしたいと考える人をサポートする無料会員制度「高知家で暮らし隊」に登録すれば、最新情報も入手できるので、高知県が気になる人は登録を検討してはいかがだろうか。

次号では、高知に惚れ、実際に移住したご夫妻を紹介する。移住の動機、高知の住み心地、暮らしぶりなどをお聞きしたので、ぜひ移住の参考にしていただきたい。

■高知家
http://www.kochike.pref.kochi.lg.jp/~top/

■高知家で暮らす。
http://www.pref.kochi.lg.jp/~chiiki/iju/

2017年 01月08日 11時00分