「目指すなら大工の頂点を」と、宮大工を目指した

神奈川県伊勢原市。同市の大山阿夫利神社をはじめ、県内外の神社・仏閣の建築や補修を手掛ける内田工務店。
「宮大工を抱える会社は県内で5社ぐらいだと思います。この中では当社は歴史が浅い方で、ここ何年かでよく声をかけていただけるようになりました」と話すのは、代表の内田幸夫さん。宮大工を親から継承したのではなく、内田さんの意思で宮大工を目指したそうだ。

「小さい頃から物をつくるのが好きで、3歳の頃には『大工さんになりたい』と言っていたそうです。高校の建築学科に進み、大学への進学か大工になるか迷いましたが、早く手に職を付けて独り立ちしたいと考えて大工になる道を選びました。その時、普通の大工ではなく、やるなら大工のトップと言われる宮大工を目指そうと思ったのです。京都で2年、地元で4年間宮大工の修業を行い、地元の神奈川県で会社を設立しました」

宮大工とは、国宝や重要文化財の建築物、社寺の建築や修復に携わる大工で、大工の中でも最高の技術が求められる。先人の知恵や技術・技法は師匠から弟子へと口伝で継承され、長い修行の末に一人前として認められる。
「個人差があるので一概には言えませんが、当社では7~8年修業を積まないと一人前と認めて仕事を任せることはできません。一般の大工と比べ、3倍ほどの修行期間が必要だと思います。宮大工は全国に4000~5000人ぐらいいると思いますが、重要文化財などの修理を行う際に責任者となれる『文化財建造物木工技能者認定』の有資格者は、200~250人ぐらいではないでしょうか」
宮大工集団を率いる内田さんも、有資格者のひとりだ。

宮大工として内田工務店が手がけた社寺建築の一例。「寺社仏閣の建築や補修に携わる際、宗教宗派の違い、</br>時代による建築様式の違いなどの知識も求められます。細部の出来栄えも重要ですが、まず全体をパッと見た時の</br>美しいプロポーションが何より重要です」と内田さん。美しい曲線、複雑な木組みなど、高い技術が凝縮されている宮大工として内田工務店が手がけた社寺建築の一例。「寺社仏閣の建築や補修に携わる際、宗教宗派の違い、
時代による建築様式の違いなどの知識も求められます。細部の出来栄えも重要ですが、まず全体をパッと見た時の
美しいプロポーションが何より重要です」と内田さん。美しい曲線、複雑な木組みなど、高い技術が凝縮されている

「絶対になくならない仕事」の宮大工。目指すなら、弟子入りか専門学校へ

有限会社内田工務店代表で、宮大工の技術を伝承する内田幸夫さん。「宮大工はまず初めに『研ぎ方』など道具の手入れの方法を叩き込まれます。一般的な大工は替え刃を使い、研ぐことがほとんどありません。木象嵌の加工技術など、曲線でも隙間なくつくり込む高い精度の技術を見ていただきたいですね」有限会社内田工務店代表で、宮大工の技術を伝承する内田幸夫さん。「宮大工はまず初めに『研ぎ方』など道具の手入れの方法を叩き込まれます。一般的な大工は替え刃を使い、研ぐことがほとんどありません。木象嵌の加工技術など、曲線でも隙間なくつくり込む高い精度の技術を見ていただきたいですね」

宮大工に興味を持ち、将来目指したいとしたらどうすればいいのだろう?
「私が高校を卒業した時のように、求人があるなら宮大工に弟子入りするのもいいですし、大工の専門学校に行くのもいいでしょう。私が知っている範囲では、4年間全寮制で学ぶ日本建築専門学校(静岡県富士宮市)の生徒さんは、意識の高い生徒さんが多いように感じました。ただ、専門学校で4年間学んで卒業したとしても、私から見たらまだまだ初心者です」

宮大工になるために厳しい修行を行っても、仕事がなければ残念なこと。腕を磨いた後の需要についてもお聞きした。
「お付き合いのある宮大工の方は皆さん忙しいと話しています。ただ、普通の仕事と同様に相見積もりによる価格競争になることもありますし、仕事を得るのに苦労している方もいるようです。しかし、仕事量は少なくても、宮大工の仕事は絶対になくなることはないでしょう」

宮大工の技術を活かし、強く美しい住宅建築も

内田工務店では、社寺関係の仕事を行うほかに、宮大工集団としての技術を駆使し、和風住宅や数寄屋建築なども手掛けている。総売上の約3~4割が住宅とのことだ。

「国産の杉や檜、体にやさしい自然素材を使った家づくりを行っています。化学製品でつくられた新建材は一切使いません。断熱材や壁材などにも人と環境にやさしい自然素材を使い、長く快適に暮らせる住まいをご提案しています」と内田さん。
木造住宅の減価償却期間が22年。その期間に対して、長い人では35年もの住宅ローンを組んで家を建てることにも疑問を抱いているという。

「丈夫で体にやさしい材料を使えば、もっと長持ちするはずです。当社の家は大掛かりなメンテナンスなどを行わなくても50~60年は持つでしょう。適切にメンテナンスを行えば、100年は問題ないと思います」

宮大工の技を駆使して家を建てる内田工務店は木造住宅専門。鉄筋コンクリート住宅や鉄骨住宅など、ほかの工法の家についてどう思うか聞いてみた。
「ご家族がどのような家を望んでいるか、また家との相性もあると思います。木造住宅は木の温もりにあふれていますし、室内の調湿作用やクリーンな空気も魅力だと思います。一方でシロアリに弱いというマイナス面もあります。10人いれば10人考え方が違うでしょうし、それぞれがふさわしいと思う工法の家を建てればよいと思います」

内田工務店の建築エリアは、基本的に神奈川県内。東京・埼玉・千葉・静岡あたりで希望の方は「相談してください」とのこと。気になる価格は、基本仕様としている自然素材を使った家で約80~100万円/坪。純和風の本格住宅であれば100~300万円/坪ぐらいが目安という。

日本で古くから受け継がれる木造住宅の温もりや美しさを、もう一度見直してみてはいかがだろうか。

取材協力:
■内田工務店
http://tutikabekoubou.jp/index.html

■内田工務店 棟梁のブログ
http://samonmiya.exblog.jp/

選び抜いた木を使った温もりのある空間、ため息が漏れるほどの細部までの美しさが特徴の内田工務店の住まい。</br>健康にも配慮し、自然素材のみを使用している。「予算をかけるところ・かけないところのメリハリをつけて、納得の住まいを</br>ご提案します。『頼んでよかった』と思われるように一生懸命つくらせていただきます」(内田さん)選び抜いた木を使った温もりのある空間、ため息が漏れるほどの細部までの美しさが特徴の内田工務店の住まい。
健康にも配慮し、自然素材のみを使用している。「予算をかけるところ・かけないところのメリハリをつけて、納得の住まいを
ご提案します。『頼んでよかった』と思われるように一生懸命つくらせていただきます」(内田さん)

2016年 12月20日 11時06分