墨田区が大好きだから、まちをもっと魅力的に、面白くしたい!

月1回のミーティングの前にお話をうかがった三井千賀子さん(左)と後藤賢司さん(右)。「すみだクリエイターズクラブのおかげで人的なネットワークができました。仕事の楽しさやクオリティが、『+』ではなく『×』になります」(三井さん)。「ここには一緒に仕事をしたいと思える仲間がたくさんいます。刺激を受けますね」(後藤さん)月1回のミーティングの前にお話をうかがった三井千賀子さん(左)と後藤賢司さん(右)。「すみだクリエイターズクラブのおかげで人的なネットワークができました。仕事の楽しさやクオリティが、『+』ではなく『×』になります」(三井さん)。「ここには一緒に仕事をしたいと思える仲間がたくさんいます。刺激を受けますね」(後藤さん)

2013年9月に発足した「すみだクリエイターズクラブ」(以下:すみだCC)。墨田区在住勤の40人ほどが参加する、クリエイティブ集団だ。ものづくりのまちである墨田区をもっと盛り上げるべく、行政や地域企業のパートナーとして、ブランディングや各種制作(パンフレット・ポスター・webサイト・映像)などを行っている。

「すみだCCでの活動以前から墨田区の仕事をしていたのですが、墨田区に住む人たちはこのまちが好きで、まちを愛している人が多いと感じていました。自分が住むまちをもっと良くしたいという想い、まちのお店や企業をもっと元気にしたいという想い、またクリエイター自身のためになる勉強会もやってみたいと考えていました。人の役に立てれば嬉しいですし、地元のクリエイターと色々なことを仕掛けられたら楽しいのではないか考えたのが立ち上げのきっかけです」と、発起人であり、ディレクターやコピーライターとして活動している三井千賀子さん。

メンバーの募集は、三井さんがデザイナーと一緒にクラブの趣旨と開催日時を記した募集チラシを作成し、クリエイターが集まりそうなカフェなどに置いて行った。
「向島にあるカフェ『ikka』さんを開催場所に指定したのですが、予想を上回る40人ほどが集まりとても驚きましたし、同時に嬉しかったですね」と三井さん。
現在40人ほどが活動を担い、100人を超える地域の人がすみだCCでつながっているという。

「すみだCCは様々な分野で活躍している、クオリティの高い作品をつくっているメンバーが多いですね。そういう人たちと出会えるのも魅力だと感じています」と、本の執筆のほか、webデザイナーや中小企業アドバイザーとしても活動を行っている後藤賢司さんは語る。

いい意味で田舎であり、いい意味で都会。「人々の距離感が絶妙です」

月1回のミーティングの様子。6月ミーティングのでは、来年1月に行われるグループ展のことを中心に話し合われた。時には、話題のお店で食事をしながら開催することもあるそう。また、すみだCCでは講師を招いてシティプロモーションやツール制作などの勉強会も行っている月1回のミーティングの様子。6月ミーティングのでは、来年1月に行われるグループ展のことを中心に話し合われた。時には、話題のお店で食事をしながら開催することもあるそう。また、すみだCCでは講師を招いてシティプロモーションやツール制作などの勉強会も行っている

墨田区で暮らすことに喜びを感じている三井さんと後藤さんに、まちの魅力を聞いてみた。
「墨田区というのは、いい意味で都会、いい意味で田舎だと思います。結婚後20年ほどこのまちで暮らしていますが、生まれ育った浅草とは距離は近いけれど雰囲気は異なりますね。やはり浅草は世界的な観光地であり、メジャーブランドです。その点墨田区はちょっと地味ですが、人がとても優しく感じます。
墨田区は江戸の昔から消費のまち日本橋、観光のまち浅草に近く、伝統工芸から生活用品まですべて揃う、ものづくりのまち、職人のまちでした。何代も続く職人さんも多く、面白いものをつくっている方、また熱い方が多いまちだとも思います」と三井さん。

以前は新宿に事務所を構えており、クリエイターがたくさんいると聞いて2年半ほど前に墨田区に事務所を移し、活動を行っている後藤さんにも聞いてみた。
「これは褒め言葉ですが、『究極の田舎』だと思っています。東京や神奈川に住んでいる人や観光の方も、だいたいが浅草止まりですよね。押上ってどこ?みたいな。新陳代謝の激しい東京の良い文化、悪い文化が入ってきていない、ガラパゴス的なまちではないでしょうか。私は田舎で育ったのですが、田舎と同様の、まち全体で子どもを育てようという温もりを感じます。それが田舎ではない、人が多い東京で絶妙な距離感を保ちながら人間関係が構築されているのがすごいですね。
スカイツリーができたことで人の流れが変わり、クリエイターが多く移り住むようになってきました。新しい出会いによる化学反応が起きている、クリエイターにも魅力的なまちだと思います」

年1回のグループ展の開催ほか、各種ツールを制作。
個々でも多彩な活動を展開

すみだCCの最大のイベントが、東京スカイツリータウン・ソラマチ5階にある「すみだまち処」で行われる2週間ほどのグループ展。2015年1月、2016年1月に行われ、来年1月にも開催予定だ。
「2015年の第1回目は『僕らがすみだを好きな理由』と題して、メンバーそれぞれが自分が墨田を好きな理由を絵だったり映像だったり、思い思いの形で表現しました。今年1月の第2回目は、今年11月に『すみだ北斎美術館』がオープンすることもあり、葛飾北斎はクリエイターの大先輩だということで『拝啓、北斎先輩。』という展示を行いました」と三井さん。

「拝啓、北斎先輩。」の企画展では、北斎のお面、北斎の屋台、ライブペインティング、工場の廃材をつかった楽器づくり、北斎4コマ漫画、北斎似顔絵ほか、いろいろなコンテンツを発表し、たくさんの来場者に好評を博したという。

その他の活動としては、渋谷ロフトとすみだCCの共同企画展「すみロフ」の開催、墨田区の福祉作業所とタッグを組み、商品開発や販路開拓、販売促進を行っている「すみのわ」の活動、東京の下町らしい企画をと依頼され、すみだ水族館と行った金魚売り屋台の復元、モノづくりのまち墨田の魅力を伝える、見て体験できる工場巡り「スミファ」のPR、墨田区の美味しい飲食店を紹介する冊子「おいしい下町」の制作など、多岐にわたる。

個人的にも「地元愛」の活動を行っているクリエイターが多い。北斎が描いた「北斎漫画」の絵を手本にヨガを行う「北斎ヨガ」を開講するヨガ講師、墨田の求人情報サイト「すみだの仕事」や墨田の情報サイト「すみだマガジン」を制作するwebクリエイター、路地の多い向島を拠点に袋小路「どんつき」を研究する「ドンツキ協会」を主宰する人、地元で暮らす外国人と日本人の交流の場づくりや、外国人の日本語習得の手助けなどを行う「ひらがなネット」(会社)など、地元に密着した仕事や活動を行うクリエイターが多い。

左上/2016年1月に行われたグループ展、『拝啓、北斎先輩。』の1コマ。大好評のうちに終えた。前列中央にいるのは墨田区長の山本亨さん 右上/すみだ水族館と一緒に行った「東京金魚プロジェクト」の一環で、金魚屋台を復元。そのお披露目パーティーに300人ぐらいの人が集まり夏気分を満喫した 右下/取材日のミーティング会場となった「ひらがなネット」が制作・発行している月刊の新聞。散歩なども企画し、外国人に日本や日本人を知ってもらうための取り組みを行っている 左下/墨田区の産業振興課と一緒につくった冊子「おいしい下町」。店主や料理がかわいいイラストで紹介されている。寿司店の英語表記のメニューなども手掛けた左上/2016年1月に行われたグループ展、『拝啓、北斎先輩。』の1コマ。大好評のうちに終えた。前列中央にいるのは墨田区長の山本亨さん 右上/すみだ水族館と一緒に行った「東京金魚プロジェクト」の一環で、金魚屋台を復元。そのお披露目パーティーに300人ぐらいの人が集まり夏気分を満喫した 右下/取材日のミーティング会場となった「ひらがなネット」が制作・発行している月刊の新聞。散歩なども企画し、外国人に日本や日本人を知ってもらうための取り組みを行っている 左下/墨田区の産業振興課と一緒につくった冊子「おいしい下町」。店主や料理がかわいいイラストで紹介されている。寿司店の英語表記のメニューなども手掛けた

目に見える形でこのまちを変えることが夢。
住んでいる人が誇りを持って楽しく暮らせるまちにしたい

すみだCCで様々な地域貢献をしているお2人に、これからの夢を聞いた。
「私には目に見える形でまちを変えていきたいという夢があります。そのためには建造物、街並み、商店街を生まれ変わらせるような、住んでいる人や遊びに来た人が変化を実感できる、まち自体を変えることをやってみたいですね。スカイツリーの近くの商店街など、シャッターが下りたままの店も多いんです。すごく可能性のあるまちなのに、本当にもったいないと思います。

古くなった建物を壊してマンションを建てるのは簡単ですが、古いものに魅力を感じている若いクリエイターたちが墨田区に入ってきているという現実もあります。そういうクリエイターたちと一緒に、まちを変えていけたらいいと思います。空き家の有効活用のために、また物件を所有する方が貸したいと思うような、墨田区のレトロでレアな物件を紹介する不動産サイト『すみだの住みか』をこの夏にオープンしました」(三井さん)

「『シティプロモーション』や『シビックプライド』という言葉に集約されると思うのですが、墨田区に住んでいる人たちが誇りを持って楽しく住み続けられるまちにしたいですね。隣近所がニコニコして暮らせるのが、地域活性化のゴールだと思うのです。箱モノをつくって終わりではなく、例えば『花がきれいだね』みたいな何気ない会話が増えるようなまちづくりのお手伝いをしたいですね」(後藤さん)

墨田区というと東京の東の端の方というイメージだったが、「両国」駅に行くなら「秋葉原」駅から総武線で約3分、「押上」駅に行くには「日本橋」駅から都営浅草線で約10分。驚くほど都心に近い便利な場所だ。アート的なお面を販売する店やものすごく美味しい豆腐店、フルーツをつぶしてそのままシャーベットにして販売している果物店があるなど、「京成曳舟」駅が最寄り駅となる「下町人情キラキラ橘商店街」が、個性的かつ魅力的な店が多くておすすめだと三井さんが教えてくれた。

地元を愛し、多彩な展開を行っているクリエイター集団「すみだクリエイターズクラブ」の今後の活動に注目していきたいし、個人的にも墨田区をぶらっと訪れてみたいと思った。

■すみだクリエイターズクラブ/http://sumida-cc.com/
■下町レトロ&リノベ物件サイト「すみだの住みか」/http://sumica.tokyo/

2013年9月に発足したすみだCC。その1周年記念パーティーの様子。出会い、発足から約3年、行政や企業のお手伝いを行い、ますます活躍の場を広げているクリエイターの面々。「クリエイターがまちをつくる、変える」。その活動に今後も要注目だ2013年9月に発足したすみだCC。その1周年記念パーティーの様子。出会い、発足から約3年、行政や企業のお手伝いを行い、ますます活躍の場を広げているクリエイターの面々。「クリエイターがまちをつくる、変える」。その活動に今後も要注目だ

2016年 07月22日 11時06分