“何もない間取り”の商品

■平面図

※窓の位置などは、自由に配置できます。</br>
※屋根勾配(落雪方向)などは、自由に配置できます。</br>
間取り図の中に水回りや間取りの記載はない『すっぴん』の基本仕様※窓の位置などは、自由に配置できます。
※屋根勾配(落雪方向)などは、自由に配置できます。
間取り図の中に水回りや間取りの記載はない『すっぴん』の基本仕様

まっさらな状態で問われる“理想の家”

突然だが、上の間取り図を見て皆さんはどう思うだろうか?ほぼ真四角の平面図…図の中に間仕切りも水回りの指示もない。さらにその間取り図に自分の“理想の家”に近いように間取りや設備を書き込んでいくとしたら…?

“自由設計”をうたう戸建住宅は数々あると思うが、お金と時間をかける注文住宅を除いては、実際、多くはあらかじめ用意された建材や設備・間取りのプランから選択するものが多い。標準仕様にはほぼすべてが盛り込まれていて、逆に標準仕様でないものをオーダーするとお金がかかるというのが今までのスタンダードだ。

ところが上の図の家は、間仕切りの配置を入れず、標準仕様にトイレ・バス・キッチンなどの設備も外してある。基本仕様に含まれる基本工事は、基礎・構造躯体・玄関・窓・外壁及び配線配管の工事のみである(基本仕様として950万円~※基本工事32坪。設計変更に伴う費用・諸経費・外構工事・地盤調査・地盤改良工事等の費用は含まず。また、多雪地域では構造木材が、極寒冷地では基礎が若干高くなる)。窓の位置ですら、間取りによって変わる。正方形のユニットを組み合わせることで広さも自由に設計ができるという。
この後の完成までの工程も様々である。工務店と相談してつくり上げてもよいし、設計士やインテリアコーディネーターに相談してもよい、また「自分でつくる派」はDIYをしてもよい、という商品なのである。

予算や技量や工程にあわせて、幾通りもの家ができそうなこの商品…発表したのは北海道を拠点に「FPの家」を展開する株式会社FPコーポレーションである。今回、この『すっぴん』の開発者と販売企画の担当の方にお話を伺ってきた。

低価格で、スケルトンから設計するように、
自由な新築住宅を目指して

写真右から北工房 栃木さん、左はFPコーポレーションの武藤さん写真右から北工房 栃木さん、左はFPコーポレーションの武藤さん

『すっぴん』のアイディア・デザインを手がけた開発者の株式会社北工房 栃木さん、そして販売を手掛ける株式会社FPコーポレーションの武藤さんに御話を伺った。
「“理想の家”といって売る側がいろいろ考えても限界があるな、と感じていました。おしゃれなカフェやセレクトショップなどがだんだん街に増えていく様子を見て、その空間や内装デザインの自由さが何故住宅にないのだろう?と疑問に思っていました。今やお客様はもっと自由に発想することに慣れつつあります。DIYやカスタマイズ賃貸など、どんどん空間を自由に変えていくことが増えています。新しい新築住宅の在り方を考えることが必要だ、と課題感をもっていました。そんな時、北工房の栃木さんから“こんな企画はどうだろう”と相談を受けたんです。面白い、これだ、と感じました。」とFPコーポレーションの武藤さんは言う。

一方、企画のアイディアを持っていた栃木さんはこう語る。「私自身は、住宅のデザインを手掛けながら、リノベーションの推進もしてきたんです。中古住宅を買って、自由に空間をデザインする様子を見て“新築住宅でも同じことができるのではないか?”と思っていました。そうすれば、機能や性能は新しく、デザインはリノベーションするように空間をデザインできる…そんな新築住宅が可能なのではないか、と思ったのです。」

こうして中古住宅をスケルトンしたように、何もない空間の『すっぴん』という商品が出来上がった。

住まいは「性能」か?「デザイン」か?

住まいの役割として、忘れてはならないのが「命を守る」という側面である。耐震性能・耐火性能・省エネ性能など、安全に・安心して・快適に過ごせるということは住まいのスペックとして外せないだろう。

『すっぴん』は、その住宅の性能を基本性能としておさえている。もともとFPコーポレーションは北海道で住宅パネルを販売してきた会社。そのノウハウを駆使して造られる『すっぴん』は、たとえ仮にまったく内装を施工しなかったとしても、北海道の寒冷地でも快適に過ごせる気密性能・断熱性能を備えている。長期優良住宅の認定も受けられるスペックの住宅なのだ。
つまり、住宅として必要な性能や機能は最新の技術を提供するが、その他のインフィルはすべて自由にしていい、という家なのだ。基本機能・性能は、家づくりのプロに任せてほしい、そのかわり住まいの中での環境は、プロと一緒に行ってもよいし、全部自分でやってみてもよい、デザイナーやコーディネーターと相談して施工は工務店にお願いしてもよい。

今までの新築住宅は、機能・性能、デザインと設備、導線…どちらもプロだけが極めてきたように思う。結果、住まいを買う側にとっては「一からつくりあげる」というよりは、「標準規格・デザインを選んで、いらないものを除き、欲しいものを追加する」という工程に近かった。片や、中古住宅をリノベーションすることを選んだ人は、購入価格等の条件もあるだろうが、「スケルトンして、好きなようにデザインできるから」という“理想の家”を得られるという理由も多くみられる。

住まいのプロが本来提供するべき住宅は、「性能」だけか、「デザイン」もか…住宅における個々の自由度とはなんだろう?そして、どちらがどうイニシアティブをとっていくべきなのだろうか?そう思わせる商品である。

「高性能のハコ」をいかにカスタマイズするのか…
住まう人のビジョン、造る人の能力が問われる

この商品は工務店の戸惑いもあった、と武藤さんは語る。
「どう売ったらいいのか?どの程度をお客様と造っていったらよいのか?プランはまったく必要ないのか?という質問がたくさん出たのも事実です。その一方で、一部は“なるほど、こういう商品ですね”と既にお客様とつくり上げていくアイディアを浮かべている工務店さんもいました。」
この“思い切りの良い”商品を見ると、今までの買う側とのやり取りを想像するが故に、戸惑うのはあたりまえなのかもしれない。

買う側の反応を想像してみれば、「設備を自分でセレクトできるし、間取りも変えられる、DIYしてもいい、こんな商品を待っていた!」「新築住宅なのに、なにもかも決めなくてはならないの?」と両極端に分かれるのかもしれない。そんな顧客の双方のニーズに応えていくのか、それともどちらかのニーズに沿った商品となるのか、興味深い。
企画を手がけた栃木さんは、「今まで家づくりをしたことがない人が、急に間取りを描け、と言われても難しいのはわかります。『すっぴん』では、ひとりひとりの理想の家の実現のために、サポート体制もつくっています。『そっと後押し隊』というインテリアコーディネーターやアドバイザーの存在やオリジナル家具製作会社と雑貨セレクトショップとのコラボレーションなど様々な取り組みをしているほか、今後も増やしていきたいと考えています。」と語る。

『すっぴん』のモデルハウスは2015年春オープンの予定である。
FPコーポレーションの武藤さんは、「きれいに造り上げないモデルハウスにしようと会員工務店と話しています。例えば、壁を塗ったり、タイルを貼ったり。複数のアイディアを見せながら、想像力を拡げてもらって、自分らしい家づくりが可能だという実感をもってもらいたい。」と抱負を語ってくれた。

住まう側は、「どう暮らしたいか、どういったデザインが好みか」といったはっきりした住宅のビジョンが問われる。また、提供する側は「どこまでをプロとしてアドバイスするのか?」を見極めるコンサルティングのような能力を問われるように思う。

住宅をつくる際に当たり前のように必要なこの“住まう側の住まいのビジョン”と“プロフェッショナルとしてのアドバイスと実現させる能力”が、わかりやすく問われる新築住宅商品である。この『すっぴん』という商品が、住まう側造る側双方の、どういったコミュニケーションとプロセスを経て、“100人100通りの理想の住まい”となっていくのか、その今後に注目したい。

取材先:FPコーポレーション『すっぴん』 http://www.suppin.net/

どういったコミュニケーションとプロセスを経て、“100人100通りの理想の住まい”となっていくのかどういったコミュニケーションとプロセスを経て、“100人100通りの理想の住まい”となっていくのか

2014年 10月14日 11時18分