国土交通省も再配達の削減を促進

国土交通省「宅配便の再配達削減に向けて」より、宅配便の取扱個数の推移国土交通省「宅配便の再配達削減に向けて」より、宅配便の取扱個数の推移

私たちの生活に欠かせないものとなったインターネット通販。お取り寄せや贈り物だけでなく、日用品の買い物などで利用している人も多いだろう。その普及もあり、注目されているのが宅配便の取扱個数の増加が引き起こす問題だ。
2006年度は約29.4億個だった宅配便の取扱個数が、2016年度には約40.2億個と、3割近く増加。そのうち、約2割が再配達の宅配便だと言われている。(国土交通省:「宅配便の再配達削減に向けて」より)

この再配達は、年間約9万人のドライバーの労働力に相当する。今後もインターネット通販の市場は拡大が予想され、ドライバーの不足、地球温暖化の観点から、国土交通省は改善施策を進めている。当然、利用者である私たちが出来るだけ一度で受け取れるようにすることも方法のひとつであるが、期待されていることのひとつに、宅配ボックスによる再配達の削減効果がある。

2018年11月10日、国交省は宅配ボックス設置部分の容積率規制の適用を明確化すると発表した。これまで、宅配ボックスを容積率の規制対象にするかについては自治体によって基準が分かれていた。この通知により、共同住宅の共用の廊下と一体のものについては、共用の廊下同様、容積率規制の対象外とすることが明確になったのだ。国交省は、設置促進に向けて今後もさらなる施策を検討している。

この、再配達の削減に貢献する宅配ボックスを、世界で初めて開発したのが株式会社フルタイムシステムだ。代表取締役副社長の原周平氏に、お話を伺った。

管理人室で預かっていた荷物をなんとかしたい

フルタイムシステムが宅配ボックスの開発に着手したのは、1983年。当時はまだインターネット通販どころか、パソコンそのものが普及していない。そんななか、どうして宅配ボックスをつくることになったのだろう。

「その頃、弊社はマンションの管理事業をしていました。入居者の方から、日中、仕事などで宅配便が受け取れないから、預かってほしいという声が多くありました。当初は管理人室でお預かりしていたのですが、なかなか時間が合わず荷物をお渡しできない。夜間、管理人室を訪れる入居者の方がいたり、管理人室が荷物で溢れてしまったり…と、入居者の方も管理人も困っていたのです。でも、ニーズはありますし、女性の社会進出も進み必要なサービスであることは間違いない。そこで、24時間365日、荷物の受け渡しができる、ロボットのような製品がつくれないかと開発がはじまりました。」

開発中、実証実験の際にアンケートを実施したところ、3割の人がぜひ利用したいと回答。入居者の世帯数分を設置するのではなく、入居者のうち必要な人がシェアして利用できる台数を設置することに。また、直接受け取りたいというニーズもあり、宅配ボックスの利用は事前の登録制にした。せっかくサービスを初めても、宅配会社の配達員が荷物を入れてくれなければただの箱。荷物を預けてもらえるよう、各社に使い方の通達もした。また、預けたことの履歴が分かるよう、レシートを発行する機能も実装。管理人の代わりに荷物の状況確認や問合せ対応ができるよう、当時から24時間365日対応の専門コールセンターも配置した。

実証実験を経て、1985年に宅配ボックス実用新案を出願。1986年に、宅配ボックスの開発をメイン事業とするフルタイムシステムを設立した。

発売当初は馴染みのなかった宅配ボックスだが、1999年に状況は急変する。旧郵政省が無人ボックスを指定場所配達として認める郵便規則改正をすると、急速に需要が拡大するのだ。現在では、新築分譲マンションの9割には設置され、3年ほど前から賃貸物件の設置依頼も増えているそう。時の流れとともにライフスタイルも変化し、需要が増してきていることがわかる。

左上:郵便ポストと宅配ボックスが一体になったポスタク。スペースを無駄なく有効に使うことが出来る<br>
左下:フルタイムシステムのネットワーク対応の宅配ボックスは、荷物が入庫されたときに、集合玄関機で点灯して通知や、着荷お知らせメールを配信してくれる機能がある。認証キーをかざすだけで集合玄関自動ドアの開錠やフルタイムロッカーの開錠ができるF-icsは、不在時に来客があったときや、子どもが帰宅したときにお知らせメールを配信してくれる<br>
右上:宅配会社やクリーニング会社など、荷物を届ける側の人の操作画面<br>
右下:入居者側の、荷物受取りなどサービスを選択する画面。操作方法が分からないときはここから問合せをすることもできる左上:郵便ポストと宅配ボックスが一体になったポスタク。スペースを無駄なく有効に使うことが出来る
左下:フルタイムシステムのネットワーク対応の宅配ボックスは、荷物が入庫されたときに、集合玄関機で点灯して通知や、着荷お知らせメールを配信してくれる機能がある。認証キーをかざすだけで集合玄関自動ドアの開錠やフルタイムロッカーの開錠ができるF-icsは、不在時に来客があったときや、子どもが帰宅したときにお知らせメールを配信してくれる
右上:宅配会社やクリーニング会社など、荷物を届ける側の人の操作画面
右下:入居者側の、荷物受取りなどサービスを選択する画面。操作方法が分からないときはここから問合せをすることもできる

食材宅配やクリーニング、顔認証まで

ロッカーに荷物が預け入れられているときは、ic受信機に操作キーをかざすとロッカーのランプが点滅してお知らせしてくれるロッカーに荷物が預け入れられているときは、ic受信機に操作キーをかざすとロッカーのランプが点滅してお知らせしてくれる

そしていま、宅配ボックスは、荷物の受け取りに留まらない新しい機能が増えている。フルタイムシステムのフルタイムロッカーには、家事を楽にしてくれる食材やクリーニングなどの宅配サービスがあるのだ。

「食材配達は現在46社と提携し、弊社が発行する操作キーを持った会社のみが届けられるようにしています。宅配されたら入居者にメール通知し、一定時間受け取りがされなければ、食配業者に通知し引き取りに行って頂く運用をしています。ネットスーパー配達専用の宅配ボックスや、玄関前ポーチへの配送。また、食品の受け渡し専用室(食配ステーション)を設置すれば、複数の会社がひとつの部屋に配達することができます。

フルタイムロッカーはクレジットカード決済に対応しており、事前に登録をしておけば、支払の手間もかかりません。クリーニングをお願いしたいときは、洋服をボックスに入れておけば提携しているクリーニング会社が取りに来てくれて、仕上がった後にロッカーで受け取れます。宅配便を送りたいときも、荷物を入れて宅配会社に依頼すれば荷物を引き取って発送してくれます。」

年々、要望に答えて新機能が増えているそうだ。マンションの鍵が非接触キーや非接触IDカードの場合、その鍵でフルタイムロッカーも操作が可能。それだけでも十分便利なのだが、『キーをかざすのが面倒』という声があり、昨年日本初宅配ボックスで顔認証の登録ができ、顔認証でオートロックと宅配ボックスが開錠できるサービスを開発したそうだ。

宅配ボックスを活用したシェアリングエコノミー

宅配を受け取る以外にも、入居者の声に答えて開発された機能がいくつもある。宅配ボックスの一部をAED収納ボックスにしたり、災害時用備蓄品収納ボックス(ストックボックス)が設置できたりするのだ。AEDや防災備品は、共用部の目につくところ設置すれば、いざというときに利用しやすい。また、工具など、あまり使用頻度の高くないものも、共用道具収納ボックス(Sharing Box)を設置すれば、入居者でシェアして使うことが出来る。「エコプロダクツ2010」で「審査委員長特別賞(奨励賞)」を受賞したレンタサイクルシステムのフレンツも、シェアリングサービスのひとつ。ボックスに電動自転車の鍵と充電器を設置することで、人を介さずに自由に共用の電気自動車が借りられるのだ。

「マンションの入居者の方のご家族が増えて自転車の台数が増えてくると、駐輪場の数が足らなくなり、放置自転車が増えるなど景観にも悪影響が出てきます。そういった問題が解決できればと、環境にも優しく自転車をシェアできるサービスを考えました。マンションには駐輪場や駐車場の附置義務があるのですが、フルタイムロッカーのフレンツやカーシェアリングを利用することで、附置義務が緩和された事例もあります。限られたスペースを有効に使えて、入居者にとってもメリットのあるサービスだと思います。」

左:電気自動車やプラグインハイブリッド車の充電ができるEV充電システム「F-charge(エフチャージ)」<br>
右上:第7回エコプロダクツ大賞、エコプロダクツ部門で「審査委員長特別賞(奨励賞)」を受賞した、無人レンタサイクルシステム「F-rents(フレンツ)」<br>
右下:フルタイムロッカーの一部にAED収納ボックスを設置することも可能。AEDの状態監視や、バッテリーの状態、本体の有無や扉の状態を、マンション管理者に連絡してくれるサービスもあるという左:電気自動車やプラグインハイブリッド車の充電ができるEV充電システム「F-charge(エフチャージ)」
右上:第7回エコプロダクツ大賞、エコプロダクツ部門で「審査委員長特別賞(奨励賞)」を受賞した、無人レンタサイクルシステム「F-rents(フレンツ)」
右下:フルタイムロッカーの一部にAED収納ボックスを設置することも可能。AEDの状態監視や、バッテリーの状態、本体の有無や扉の状態を、マンション管理者に連絡してくれるサービスもあるという

賃貸物件や既存物件でも拡大するか

株式会社フルタイムシステム 代表取締役副社長の原周平氏。利用者である入居者からの声は、開発の大きなヒントになるという。自社運営しているコントロールセンターに寄せられる問合せや要望を参考にすることも。社内でも、どういったニーズがあるのか、社員全員が情報収集を怠らないのだそう株式会社フルタイムシステム 代表取締役副社長の原周平氏。利用者である入居者からの声は、開発の大きなヒントになるという。自社運営しているコントロールセンターに寄せられる問合せや要望を参考にすることも。社内でも、どういったニーズがあるのか、社員全員が情報収集を怠らないのだそう

現在は、賃貸物件のオーナーや、一戸建て、すでに設置済みのマンションの入れ替えなどの相談が増えているそうだ。

「1999年に急激に宅配ボックスの市場が拡大したときに、競合の会社も一気に増えました。ですが、今はそのほとんどが撤退しています。その撤退した会社の宅配ボックスを設置したマンションでは、メンテナンスや修理を依頼したくとも出来なくて困っているという声をよく聞きます。最近では、ほかのマンションの管理組合の方などとの繋がりから、口コミでフルタイムロッカーを選んでいただけるようになりました。マンションでフルタイムロッカーを利用していた方が、ご自身の家を建てるときに、『とても便利だったから』と選んで頂くことも多いです。皆さま、24時間365日対応のコントロールセンターの問合せやトラブル対応を便利に感じてくださっているようです。」

そして今、賃貸物件向けに新しい宅配ボックスを展開中だと言う。

「賃貸物件向けに、チャレンジボックスという宅配ボックスのリースサービスを展開しています。賃貸物件は、設置したくとも雨除けがなく設置出来ないと言うお声が多かったので、防滴機能を搭載したものを開発いたしました。」

防滴対応であれば、一戸建てや賃貸物件も設置がしやすくなるだろう。設置される物件が増えることは、入居者にとっても嬉しいことだと思う。国の施策や民間企業により進められるサービスの開発に今後も期待したい。

取材協力:株式会社フルタイムシステム
http://www.fts.co.jp/

2018年 04月04日 11時05分