マンション管理組合が抱える「不法投棄」の問題

大掃除や引越しの後、もう使わない不用品が出てきたら、皆さんはどうするだろうか?
粗大ごみに出す、リサイクルショップやフリマに出す、ネットのオークション等に出すという大まかには3つの選択肢があると思う。

しかし、リサイクルやオークションに出すにはそれなりに手間がかかり、もしも引き取ってもらえなかった場合は結局手元に残る事になる。そこでやはり、粗大ごみに出すという選択肢になった場合も、お金と時間がかかるのが現状だ。
例えば東京都で大型ごみを出す場合、まず行政の窓口やインターネットで粗大ごみ回収の申請を行う。捨てる物によって異なる料金を調べて、コンビニ等で専用のシールを購入、氏名と受付番号を記載する。それを貼った不用品を回収日に指定の場所に置く、という段取りが必要だ。しかし、その過程に誤りが発生すると正しく回収してくれない場合もある。
また、テレビや冷蔵庫といった大型家電を処分する場合には、「家電リサイクル法」に則り小売店に連絡し回収に来てもらい、さらに数千円単位の費用が必要だ。

もちろんごみ出しマナーの問題が大前提だが、そうした事情も影響してか、ごみ置き場への不法投棄は各地で問題になっている。そもそも手続きをきちんとせずに放置してしまう場合や、手続きの途中に不備があって正しく回収されなかった場合だ。ごみ置き場に長いこと放置されている家具や家電を目撃した事がある人も多いだろう。
これは、自治体だけでなくマンションでも頭を抱える課題となっている。不法投棄を処分する際には、正しくごみを出す居住者からも集めている管理費から拠出することになるからだ。

管理組合の悩みのひとつ「管理費からごみ処分費を出す」こと

ブリリアマーレ有明内の専用ごみ置き場。総戸数の多さゆえ、粗大ごみの量も多い。実際に見学させていただいた際も、粗大ごみ廃棄用のシールを貼っていながらも、必要事項の記入が無いなど不備のあるものもいくつか発見した。こうしたものが回収されず、粗大ごみ置き場に蓄積してしまうというブリリアマーレ有明内の専用ごみ置き場。総戸数の多さゆえ、粗大ごみの量も多い。実際に見学させていただいた際も、粗大ごみ廃棄用のシールを貼っていながらも、必要事項の記入が無いなど不備のあるものもいくつか発見した。こうしたものが回収されず、粗大ごみ置き場に蓄積してしまうという

東京都江東区にある分譲マンション、ブリリアマーレ有明TOWER&GARDEN(以下、ブリリアマーレ有明)も、そうした課題に関して例外ではなかった。総戸数1,085戸を有す大規模マンションのブリリアマーレ有明には広い粗大ごみ置き場を設けているが、大規模マンションであるため粗大ごみの数は多く、さらに放置や不法投棄が相次いで問題になっていたという。

ブリリアマーレ有明 管理組合理事長の星川太輔氏は、「ごみ放置の対策としマナー向上などを訴えましたが、なかなか効果が出ませんでした。結局、管理費から費用を出して処分する事にしましたが、今度はそれを居住者に報告するかどうかも実は悩みどころだったんです」と以前の状況を話す。
結果、管理費拠出の用途として必要なため報告したそうだが、不法投棄の処分に管理費を使う事に対する、正しくごみを出す居住者からの反発や、「管理費で処分してくれる」という認識を居住者に与える可能性を懸念したということだろう。

そこで2014年11月から、不用品に対処するための新しい仕組みの導入を、試験的に開始した。「マンション一括リユースサービス」という名前の通り、マンション内の不用品を一括してリユースできるサービスだ。

マンション内の不用品を様々なリユース方法で解決する

一都三県を中心にリサイクルショップを展開する株式会社トレジャー・ファクトリーが、有明地区で不用品買取りのイベントを行っていた事がきっかけで、不用品についての分譲マンションの課題を発見。ブリリアマーレ有明の粗大ごみを確認したところ、そのうち約4割がリユース可能なものだったという。そこで、リユースが可能な「まだ使える不用品」と、そうでないものを適切に分別する仕組みをつくることで、不法投棄を削減できるのではとこのサービスの開発に至ったという。

その仕組みとは、居住者は家庭から出た不用品に、コンシェルジュデスクで配布される専用シールを貼り、マンション内の専用スペースに置くだけ。トレジャー・ファクトリーが定期的にそれらを回収し、リサイクルショップでの販売が可能なものは店頭で販売し、そうでないものは、株式会社K&Kと協働して国内外へのリユースを行う。国内リユースのみに限定される自社に加えて、海外リユースに長けている協力会社と協働することで、回収可能な物の幅を増やして不用品を再活用できるのだ。ただし本来、店頭で販売するのはトレジャー・ファクトリーがユーザーから買い取るものであるということから、このサービスで回収したものを販売する場合には、収益の一部を日本赤十字社に寄付することにしている。

もしリユースできない場合には持ち主の元へ返すことになっているが、幅広い方法でのリユースを行っているため、2014年11月のトライアル開始から約3ヶ月間で回収したものは全てリユースできているそうだ。
また、回収サービスの他に、流行ものなど適正な金額での買取りを望むニーズには、今後専門バイヤーによる買取りサービスの提供も行っていく予定だという。

広いごみ置き場の一角に設けられた専用スペース。明らかに回収できない”ごみ”が置かれないよう、</br>洗練された印象となるよう見せ方の工夫をした結果、リユース可能なものが多く置かれているという広いごみ置き場の一角に設けられた専用スペース。明らかに回収できない”ごみ”が置かれないよう、
洗練された印象となるよう見せ方の工夫をした結果、リユース可能なものが多く置かれているという

目指すは「マンション内のインフラ」に

今回お話を伺った、株式会社トレジャー・ファクトリー 事業推進部 小幡英明氏(左)と、ブリリアマーレ有明 TOWER&GARDEN管理組合理事長 星川太輔氏(右)今回お話を伺った、株式会社トレジャー・ファクトリー 事業推進部 小幡英明氏(左)と、ブリリアマーレ有明 TOWER&GARDEN管理組合理事長 星川太輔氏(右)

「回収するのは、ごみではなくてあくまでも“まだ使える不用品”です。初の試みですし、不用品が集まらなくても、逆にごみばかり集まってしまっても困りますから、トライアル開始するまで不安でした。しかしこれまで、家具、衣類、おもちゃなど、約200個のリユース品を回収できています。しかも、衣類をきれいに畳んで袋に入れて出してくださるなど、皆さんとても協力的です」と話す、株式会社トレジャー・ファクトリーの小幡英明氏。

手間をかけずに不用品を片付けることができ、それが不法投棄削減に繋がるというこのサービスは、ユーザーやマンション管理組合にとっては大きなメリットのあるものだと思うが、回収した物を転売するのが基本のスキームでないため、運営側にはメリットがあるのだろうか?率直に質問してみた。

「”まだ使える不用品”について、リユースに出すための敷居を緩和することで住環境の利便性向上に貢献しながら、”不用品があったらトレジャー・ファクトリーに”という印象を持ってもらい、マンション内のポータルになりたいと考えています。そうすることで結果的に買取りの機会についても安定確保につながり、マンションの課題解決と共に、企業としての収益性も期待できます」(小幡氏)

管理組合理事長の星川氏は、「使わないけど捨てるには忍びない物を“誰かに使ってもらいたい”と考えている家庭は、結構多いものです。今後、マンション内で引取先を探すといったリユースもできる仕組みができたら、居住者同士の関わりからコミュニティ形成にもつながり、有り難いですね」と今後の発展に期待を込める。

これから3~4月の引っ越し最盛期の状況を鑑みながら、リユース、買取りだけでなく様々な方法との組み合わせも含めて、サービスの本格稼働に向けて検討していくという。マンション内の不用品解決におけるインフラ的存在になる事が運営側としての収益性を高める事でもあり、サービス名にある「一括」に込められた想いということだろう。

リユースを用いて家庭から出る不用品に新たな命を吹き込み、環境にも貢献できるこの一括リユースサービス。
現在、トライアルとして導入しているマンションのブリリアマーレ有明 TOWER&GARDENは1,085戸の大規模マンションだ。この規模のコミュニティとなると、もはやひとつの小さな“まち”と言っていいだろう。サービスがここで成果を表したら、他のマンションはもちろん、自治体でも応用ができそうだ。この仕組みはマンション管理組合だけでなく、いずれ各地の自治体の救世主となるかもしれない。


【取材協力】
株式会社トレジャー・ファクトリー:http://www.treasurefactory.co.jp/

2015年 02月19日 11時06分