毎年顕著な被害をもたらす台風や大雨が発生。ここ数年の水害を振り返る

令和元年台風19号の際は、不安な思いで周辺の河川の増水状況をニュースなどで見聞きした人も多いだろう。今年も起こるかもしれない台風や豪雨に備えたい令和元年台風19号の際は、不安な思いで周辺の河川の増水状況をニュースなどで見聞きした人も多いだろう。今年も起こるかもしれない台風や豪雨に備えたい

本格的な夏を控え、今年も例年通り、いやそれ以上に暑くなるのか、また大雨や台風などによる水害が発生するのかも気になるところだ。2019年は関東、甲信、東北などで記録的な大雨となり、広い範囲で河川の氾濫が続出し各地に大きな被害をもたらした令和元年台風19号が発生した。そして2018年は西日本を中心に全国的に広い範囲で記録的な大雨となった平成30年7月豪雨が発生しており、毎年何かしらの顕著な豪雨や台風が発生することは避けられない状況であると考えられる。

2020年6月4日、一戸建住宅の地盤調査や建物検査を手掛けるジャパンホームシールド株式会社は、オンラインセミナー「ハザードマップで学ぶ水害対策~異常気象と浸水する地形条件~」を開催した。

平成30年7月豪雨と令和元年台風19号を引き起こした要因とは?

「昨今の異常気象について」と題して講演した気象予報士 株式会社ウェザーニューズの瀬戸崇史氏は、「岡山県や広島県の特に沿岸地域に大きな被害が集中した平成30年7月豪雨は、7/4~7/7にかけて同じ位置に停滞していた梅雨前線と同じタイミングで吹いた南西風が水蒸気を同地域に供給したことが大雨の原因となった」と話した。

岡山県真備町では大規模な河川氾濫が発生したが、その要因としては、「上流にある佐屋地区の雨が小田川へ、次にさらに下流の矢掛町へと流れ、真備町を通過。さらに、南北に高梁川も流れており、中国山地の雨が高梁川に流れ増水していた。増水した2つの河川が真備町で合流することにより大規模災害を引き起こしたと考えられる」と発表した。

続いて昨年の令和元年台風19号については、「関東甲信越がすっぽり包まれるほどの非常に大型な台風の発生に加えて秋雨前線による大雨と、上昇気流の発生がもたらした」という。各地で多くの河川が決壊したことが記憶に新しいが、全国で300件を超える土砂災害、多摩川や阿武隈川など一級河川を含む少なくとも 71河川で堤防が決壊した。

「最も被害の多かった千曲川では、大雨のピークであった12日の翌日13日に水位のピークを迎えました。時間差で急激に水位が増えることと、自身の住む地域の地形を確認してあらためて注意してほしい」と促した。

株式会社ウェザーニューズ  気象予報士 瀬戸崇史氏のスライドより。千曲川の水位の状況株式会社ウェザーニューズ 気象予報士 瀬戸崇史氏のスライドより。千曲川の水位の状況

浸水の起きやすい地形条件とは?

ジャパンホームシールド株式会社 研究員 吉井孝文氏のスライドより。山に向かう千曲川と、山を突き抜ける河川の図ジャパンホームシールド株式会社 研究員 吉井孝文氏のスライドより。山に向かう千曲川と、山を突き抜ける河川の図

続いて、ジャパンホームシールド株式会社 研究員 吉井孝文による「浸水する地形条件について」から、2つの水害が発生した地形条件を見ていきたい。吉井氏は、洪水が起きやすい地形条件を、下記として挙げた。

・河川の合流部
・山を突き抜ける河川
・川幅が狭くなるところ
・微高地に囲まれた低地


このうち、新幹線の長期にわたる浸水被害が起こった長野県の千曲川は、「山を突き抜ける河川」にあたるという。
「令和元年台風19号の影響で千曲川が氾濫し、北陸新幹線の車両が長期にわたり浸水しました。本来であれば河川は高い場所から低い場所、狭い場所から広い場所へ流れるのが一般的ですが、千曲川は狭い場所へあえて入り込むように、山に向かうように流れています。どうしてそのようなことが起こってしまうのかというと、平らかな地形に地震などにより隆起が起こり、そこが時間の経過により渓谷になり、河川の幅が固定されてしまいます。これにより、河川の断面積が縮小されてしまい、渓谷部分は山と山に囲われていて広がることができず、水の流れをさばききれない、上流からたくさん水が来ると山地にはみ出すしかないため、洪水になってしまうのです」と説明した。

さらに、「排水を阻害するバリアー」も存在するという。「氾濫の解消には排水が必要ですが、排水の出口を塞ぐように微高地が横たわる地形だと洪水災害が顕著になりやすいです。この微高地をバリアーと呼んでいます。車両基地付近はこれに該当する閉塞地形で、千曲川に排水されるはずが、その途中に微高地(バリアー)があるために排水ができず、顕著な災害となってしまいました」と話す。

吉井氏は、地形の凹凸(山・微高地)と、河川が交わる場所に警戒が必要だとしている。

リニアメントと交差する河川に注意

次に、吉井氏は平成30年7月豪雨で多くの浸水被害が発生した岡山県の小田川を例に挙げた。
「2,300万~550万年前にできた古い断層の名残をリニアメントといいますが、中国地方にはこのリニアメントと呼ばれる直線状の地形が多くみられます。地震などにより断層(割れ目)が発生し、そこから雨の侵食が始まり、やがてまっすぐな谷 ・河川となりますが、このリニアメントにできた河川は東西方向に流れ、主要河川は南北方向に流れるため、リニアメントの河川は主要河川とぶつかりやすくなります。そういった箇所では大雨により本流の水圧が上昇し、支流の水と合流できない、いわゆるバックウォーター現象が起こりやすくなるのです」

吉井氏は、「リニアメントと交差する河川に警戒する必要がある」とし、こういった地形は中国地方に限らず、日本全国で起きやすい現象であるため、注意が必要であることと、WEBやアプリなどでハザードマップを確認し自宅周辺の地形に関心を持ってほしいと話した。

ジャパンホームシールド株式会社 研究員 吉井孝文氏のスライドより。バックウォーター現象の図ジャパンホームシールド株式会社 研究員 吉井孝文氏のスライドより。バックウォーター現象の図

いまいちどハザードマップの確認を

ハザードマップの確認と、災害時に防災用品がすぐ持ち出せるようになっているかもあらためて見てみようハザードマップの確認と、災害時に防災用品がすぐ持ち出せるようになっているかもあらためて見てみよう

最後に講演した地盤技術研究所 所長の内山雅紀氏は、個人ですぐに行える防災は、主に起こりうるリスクを知り事前事後に取るべき行動を考えておくソフト面での対策であるとし、火災保険で水災補償を付けているかや、保険対象が建物なのか家財なのか、想定される浸水の深さなどと総合的に考えて保険を再確認することを促した。

また、洪水リスクを知る方法として、
①ハザードマップで想定被害区域を確認する
②洪水を想定した対策をする
ことを挙げた。ハザードマップは、住んでいる地域の市区町村のホームページで確認することができる。また、ジャパンホームシールド株式会社が提供する「地盤サポートマップ」を確認してもいいだろう。

2019年に日本に上陸した台風は合計5つで、最も早いものでは7月に発生した。来たる台風の季節に向けて、身の回りの防災品の確認やハザードマップの確認、避難経路や避難場所を再確認しておこう。現在のコロナ禍で災害時に避難所で過ごす場合は、防災に加えて感染症の予防も必要となる。内閣府や自治体が避難マニュアルを更新しているのでそれを確認しつつ、いざというときは自宅で自主避難ができるよう備えておくことも必要となるかもしれない。

2020年 07月02日 11時05分