
本記事では、相続した不動産を売却する際に、必要となる査定の方法などを解説します。
相続に限らず不動産を売却する場合には、まず不動産会社に依頼するのが一般的です。
- 相続した不動産の査定方法を知りたい
- 相続した不動産はどのように相続人で分割すれば良いのか
- 不動産を相続した際にかかる税金を知りたい
この記事では、相続した不動産を売却する場合に必要な査定方法だけではなく、相続時にかかる税金についても分かりやすく解説していきます。
この記事で分かること
- 相続した不動産に査定が必要な理由
- 相続した不動産の査定方法
- 相続した不動産の分割方法
- 相続した不動産にかかる税金
- 相続した不動産の査定に関するよくある質問
もくじ
不動産を相続した場合に査定が必要な理由

不動産を相続した場合に査定が必要な理由は、主に3つあります。
- 相続税の算出に必要となるため
- 複数人で相続する際に金額を把握するため
- 相続した不動産に負債が残るケースがあるため
それぞれ詳しく解説していきます。
相続税の算出に必要となるため
相続税の算出においては、相続時の財産の時価が基準となります。そのため、相続した不動産を査定して時価を把握する必要があります。
相続税法第22条には、以下のように定められています。
相続、遺贈又は贈与により取得した財産の価額は、当該財産の取得の時における時価により、当該財産の価額から控除すべき債務の金額は、その時の現況による。
※引用:相続税法 - e-Gov法令検索
ただし、不動産の時価は市場動向や社会的要因によって絶えず変動しているため、時価を適正に定めるのは困難です。
したがって、不動産の相続税の算出には相続税評価額が使われています。
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複数人で相続する際に金額を把握するため
複数人で財産を相続する場合には、不動産の売買価格の相場を把握しておくことが重要になります。不動産の資産価値を正しく把握しておかないと、複数人で公平に分配するのが困難だからです。
相続した不動産に負債が残るケースがあるため
相続した不動産の売却価格が住宅ローンの残債額よりも低い場合、不動産を売却しても負債が残ってしまいます。
負債額によっては、相続放棄や任意売却などの手段も検討する必要があるため、不動産の査定価格の把握が重要になります。こうした視点からも不動産を査定する必要があるのです。
相続した不動産の査定方法

相続した不動産の査定方法は、主に以下の3種類あります。
- 不動産会社に査定依頼する
- 不動産鑑定士に依頼する
- 自分で評価額を調べてみる
順番に詳しく見ていきましょう。
不動産会社に査定依頼する
不動産会社に査定依頼することで、不動産の最新の適正価格を知ることができます。
この場合、不動産会社1社のみに査定を依頼しても、査定金額が適正であるかどうか判断するのが困難です。そのため、不動産会社に査定を依頼する場合は、複数の不動産会社に依頼するようにしましょう。
複数の不動産会社に1社1社査定を依頼するには手間や時間がかかるため、不動産一括査定サービスがおすすめです。
LIFULL HOME'Sでは、複数の不動産会社に一括で不動産の売却査定を依頼できるサービスを提供しています。複数の不動産会社から売却条件に合う会社をじっくり選べるので、ぜひご利用ください。
不動産鑑定士に依頼する
不動産鑑定士とは、不動産の鑑定評価に関する法律に基づき、不動産の価値を算出する国家資格保有者のことです。不動産鑑定士が作成する不動産鑑定評価書には、公的な書類としての証明力と法的責任があります。
不動産鑑定士に査定を依頼するには、報酬費用が必要になりますが、不動産鑑定評価書が必要な場合は、不動産鑑定士に査定を依頼しましょう。
自分で評価額を調べてみる
不動産に関する知識があまりなくても、自分で評価額を調べることで、おおよその不動産の査定金額を知ることができます。
不動産の評価額の1つに固定資産税評価額があります。固定資産税評価額とは、固定資産税など税金を計算する際に指標として使われる価格です。
固定資産税評価額を調べるには、主に3つの方法があります。
- 不動産を管轄する役所で固定資産税評価証明書を取得する
- 市町村から毎年送付される固定資産税課税明細書を確認する
- 役所で固定資産課税台帳を閲覧する
固定資産税評価額は、不動産の取引指標とされる公示価格の7割程度といわれています。そのため、不動産のおおよその時価を調べたい場合は、「固定資産税評価額÷0.7」で算出が可能です。
相続した不動産の分割方法

相続した不動産の分割方法は、主に以下の4種類があります。
- 現物分割
- 共有分割
- 換価分割
- 代償分割
現物分割
現物分割とは、相続した不動産をそのまま相続人で分配して相続するシンプルな方法です。例えば、以下のようなケースが、現物分割にあたります。
- マンションは相続人Aに、別の土地は相続人Bに分配する
- 不動産は相続人Aに、車は相続人Bに、預金は相続人Cに分配する
複数の不動産や財産を相続した場合に有効で、相続の手間がかかりません。しかし、相続人同士で平等に分配することが難しく、トラブルにつながりやすいというデメリットがあります。
共有分割
共有分割とは、相続した不動産を複数の相続人で共有名義とする方法です。共有名義は平等に分配しやすい反面、権利関係が複雑になります。
共有名義の不動産を売却するには、共有名義全員の同意が必要で、1人でも反対した場合は不動産を売却できません。
相続人同士でトラブルへと発展しやすいため、不動産を相続した場合は他の分割方法を検討した方が無難でしょう。
換価分割
換価分割とは、不動産などの相続財産をすべて現金化した後に、相続人で分配する方法です。相続人同士で平等に分配しやすく、相続人同士でトラブルとなりにくい点がポイントです。
不動産を現金化するには、不動産を売却する必要があります。不動産を高く売却するには、複数の査定結果を比較検討した上で、売却を担当する不動産会社を選ぶことが重要です。
LIFULL HOME'Sの不動産一括査定では、全国にある3,500社以上の不動産会社から査定を依頼する会社を探すことができます。不動産情報の入力後、不動産会社の社員画像や強みなどの詳細情報を見た上で査定を依頼する会社を選ぶことができます。
代償分割
代償分割とは、不動産など相続財産を他の相続人よりも多く相続した相続人が、他の相続人に現金を支払い不平等を調整する方法です。
相続人で平等に分配しやすく、不動産を売却して現金化したくない場合は有効ですが、財産を多く相続した相続人は、支払う現金の準備が必要となります。
不動産を相続した場合にかかる税金

不動産を相続した場合にかかる税金は、主に以下の3種類です。
- 相続税
- 登録免許税
- 固定資産税
順番に詳しく見ていきましょう。
相続税
相続税は、亡くなった人の財産を相続人が取得するときにかかる税金です。課税対象となる相続財産の合計額が、基礎控除額を上回ると相続税が発生します。
基礎控除額=3000万円+(600万円×相続人の数)
例えば、父親が亡くなり相続人が母と子2人の計3人である場合、基礎控除額は以下の計算式で求められます。
3,000万円+(600万円×3人)=4,800万円
つまり、亡くなった人の財産の合計額が4,800万円以下であれば、相続税は発生しないということになります。
不動産の場合、一定の条件を満たした場合に不動産の評価額を大きく下げることができる特例があり、代表的なものとしては「小規模宅地等の特例」が挙げられます。
詳しくは、国税庁のホームページを確認しましょう。
【あわせて読みたい】
▶︎ 相続不動産を売却した際に確定申告は不要?必要なケースや流れも解説
登録免許税
登録免許税とは、相続した不動産の所有権を移転する相続登記の際にかかる税金です。 相続登記に必要な登録免許税額は、以下のように算出します。
登録免許税額=不動産の固定資産税評価額×0.4%
例えば、不動産の固定資産税評価額が4,000万円の場合、必要な登録免許税額は4,000万円×0.4%=16万円となります。
相続登記を司法書士に依頼する場合は、別途司法書士への報酬も必要になります。
固定資産税
不動産を所有している場合、固定資産税を毎年納付しなければなりません。
固定資産税は、毎年1月1日時点で不動産を所有している人に課税されます。不動産の相続登記が完了すれば、翌年からの固定資産税の納税義務は、相続した相続人に課せられます。
相続した不動産の査定に関するよくある質問

最後に、相続した不動産の査定に関するよくある質問を3つ紹介します。
- 査定依頼するタイミングはいつがいい?
- 不動産査定書の作り方は?
- 査定や売却で発生した費用は誰が支払う?
査定依頼するタイミングはいつがいい?
不動産の査定を依頼するタイミングは、不動産の売却方針が決まった時点でなるべく早めに依頼しておくと良いでしょう。
LIFULL HOME'Sが独自で調査した住まいの売却データファイルによると、不動産の売却が完了するまでにかかった期間は以下のとおりでした。
| 不動産の売却が完了するまでにかかった期間 | 割合 |
|---|---|
| 3ヶ月未満 | 16.7% |
| 3ヶ月〜6ヶ月未満 | 18.5% |
| 6ヶ月〜1年未満 | 33.3% |
| 1年〜2年未満 | 16.4% |
| 2年以上 | 5.8% |
| 分からない | 5.0% |
| 不動産会社に連絡していない | 4.0% |
※不動産の売却どうしたらいい?経験者3,000人のデータからわかる、リアルな売却傾向(住まいの売却データファイル)
不動産の売却が完了するまで、およそ3人に1人が6ヶ月〜1年未満かかっています。
また、相続した不動産においては、相続開始してから一定期間内に売却した場合、「相続財産を譲渡した場合の取得費の特例」によって譲渡所得税が一部軽減できます。
したがって、取得費の特例を利用する場合は、期限内に売却できるように、なるべく早めに査定を依頼しておくと良いでしょう。
※参考:No.3267 相続財産を譲渡した場合の取得費の特例
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不動産査定書の作り方は?
不動産査定書とは、不動産の評価項目とともに、査定時の不動産査定金額が示された見積書のことです。不動産を売却する目的で、不動産会社が作成することが一般的です。
不動産鑑定士による不動産鑑定評価書は有料ですが、不動産会社による不動産査定書は無料で作成を依頼できます。
不動産会社によって不動産の査定方法が異なるため、不動産査定書の内容も不動産会社によって変わります。不動産査定書を作成してもらうには、以下の書類を準備しておくと良いでしょう。
- 登記簿謄本(登記事項証明書)
- 登記済権利証または登記識別情報
- 不動産購入時のパンフレットなど不動産に関する書類
- 固定資産税評価証明書
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▶︎不動産査定書とは?作成費用や有料と無料の依頼方法について解説
査定や売却で発生した費用は誰が支払う?
不動産の査定や売却で発生した費用は、相続人全員で支払うのが一般的です。ただし、相続人のなかで支払いに応じない人がいれば、協議が必要となります。
相続した不動産の売却査定ならLIFULL HOME'S

相続した不動産に限らず、不動産を売却するには、複数の不動産会社に査定を依頼して比較検討することが重要です。
査定額は不動産会社によって幅があるため、3〜5社程度に査定を依頼した上で、比較検討すると良いでしょう。また、査定額だけでなく、担当者との相性やその他のサービスなどについても確認することをお勧めします。
LIFULL HOME'Sでは、全国にある3,500社以上の不動産会社から査定を依頼する会社を選ぶことができます。物件情報の入力後、不動産会社の社員画像や店舗画像、強みなど、お客様の物件の査定を依頼できる不動産会社の詳細情報を一覧で見て選べるのが特徴です。
自分に合った不動産会社を見つけることで、後悔しない不動産売却を実現させましょう。
記事執筆・監修
矢野 秀一郎(やの しゅういちろう)
不動産会社で2社勤務。1社目では時間貸駐車場の開発営業を中心に携わり、2社目では不動産売買の仲介営業や、一戸建ての分譲工事のプロジェクト、および新築・リフォーム工事の現場監督など、幅広く業務を担当。現在はフリーのライターとして不動産や金融に関する内容を中心にライティング・記事監修を実施。