
リースバックは自分が所有かつ居住している住宅を売却し、売却後は買主と賃貸借契約を結ぶことで、そのまま住み続けることができる不動産取引です。
売却することにより一括でまとまった資金を手に入れられ、事業者と賃貸借契約を締結することにより、慣れ親しんだ自宅で今まで通り暮らすことができます。一方で、近年リースバックの利用に伴うトラブル事例が国民生活センターなどに寄せられています。
そのため、リースバックの利用を検討するなかで、以下のような疑問を解決したい人もいるでしょう。
- リースバックでよくあるトラブルを知りたい
- リースバックを利用して後悔しないための対策を知りたい
この記事では、リースバックを利用した際に想定されるトラブルとその対策について解説していきます。
この記事で分かること
- リースバックでよくあるトラブル事例
- リースバックで後悔しないための対策
- リースバックのトラブル事例に関する解決策
もくじ
そもそもリースバックとは?

リースバックとは、簡単にいうと自宅を売却した後もそのまま住み続けることができる不動産取引です。
- 不動産の売却と賃貸を組み合わせた仕組み
- リースバックの利用件数は増加傾向
ここでは、リースバックについて上記2点を掘り下げて解説していきます。
リースバックは不動産の売却と賃貸を組み合わせた仕組み
自宅を売却した後はリースバック事業者が貸主、元の所有者が借主となって賃貸借契約を結びます。
元の所有者は不動産を売却することで、まとまった資金を得るとともに、事業者に毎月リース料(家賃)を支払うことで、自宅に住み続けることができます。

リースバックの主なメリットは以下の通りです。
- 一括で多額の現金が手に入る
- 愛着のあるマイホームに住み続けられる
- 引越しや仮住まいが不要
- 固定資産税や火災保険料などランニングコストがかからない
- 近隣に自宅を売却したことが知られにくい
デメリットについては、後述します。
リースバックの利用件数は増加傾向
近年、リースバックの利用件数は増えており、持ち家比率の高い世代の高齢化によりニーズが拡大しています。国土交通省の資料によると、2016年に買取件数は256件、仲介は10件でしたが、2年後の2018年においては買取件数が745件、仲介は175件と大幅に増えました。(下図参照)
リースバックの目的としては老人ホームへの入居金などの老後資金、相続前の不動産処分などがあり、住宅を活用した新たな選択肢として注目されています。

※出展:住生活関連産業や新技術等を巡る状況について/まちづくりを巡る状況について(p22)|国土交通省
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リースバックでよくあるトラブル事例10選

リースバックには「自宅を売却した後もそのまま住める」などのメリットがある一方、トラブルが発生することも考えられます。具体的なトラブル例としては、以下のようなものが挙げられます。
- 買戻しができなかった
- リース料(家賃)が払えなくなった
- 勝手に売却を進められた
- 相続人とトラブルになった
- 買取価格が適正価格と比べて低すぎた
- リースバックを依頼した会社が倒産した
- 契約が更新できず退去を求められた
- 修繕費の負担で揉めた
- 高額な諸費用を請求された
- 最終的にリースバックできなかった
ここでは、リースバックでよくあるトラブル事例10選を紹介していきます。
1.買戻しができなかった
リースバックのメリットの1つである、買戻しができないことでトラブルにつながる可能性があります。
リースバックでは、将来的な買戻しを希望する場合、売買契約書に「買戻特約」を付ける、または「賃貸借契約書」と「再売買の予約契約書」をセットにして作成する必要があります。
ただし、「買戻特約」の場合は期間が最長10年と定められており、期間内に買戻す必要があります。したがって、元の所有者に十分な資金力がない場合は実現できません。
特約の内容を把握しておらず、後になって「買戻しができなかった」と気づくケースには注意しましょう。
また、賃貸料を2〜3ヶ月以上滞納するなどの理由で「再売買予約権」が消滅した場合も、買戻しができなくなります。
2.リース料(家賃)が払えなくなった
事業者に、リース料(家賃)が払えないというトラブルもリースバックの代表的なトラブル事例です。
リースバック契約において元の所有者は、毎月決まったリース料をリースバック事業者に支払うことで、そのまま自宅に住み続けることが可能になります。この場合、事業者が貸主、元の所有者を借主として賃貸借契約を締結します。
ただし、リースバックの月々のリース料(家賃)は、周辺地域の家賃相場より高めに設定されるケースが少なくありません。また、更新時にリース料が値上げされることもあり、支払うのが困難になるリスクも考えられます。
リース料が払えなくなると契約違反となり、退去せざるを得ないため、最終的に自宅を手放すことになってしまう可能性もあります。
3.勝手に売却を進められた
リースバック事業者が第三者に不動産を売却し、物件の所有者が変わることがあります。
このケースは、いわゆる「オーナーチェンジ」といいます。
物件の所有権はリースバック事業者が持っているため、自社の資産である不動産を売却すること自体は違法ではありません。オーナーは、借主である入居者には事前に告知する義務がないため、売却後に事後報告するのが一般的です。
したがって、以前のオーナーと借主が締結した賃貸契約はそのまま引き継がれます。
ただし、借主としてはオーナーが変わると「勝手に売却を進められた」と考え、不安に感じる場合もあるでしょう。更新時に、その後の賃貸契約更新を断られるケースもないとはいえず、不安定な立場に置かれることになります。
4.相続人とトラブルになった
リースバックを実行することにより、親族間でトラブルが発生するおそれもあります。
リースバックは、老後資金を確保したい高齢者の利用が多くみられます。そのため、いずれ実家を相続する想定で子供が不動産を期待していた場合、相続資産が減少する場合があるためトラブルになるリスクがないとはいえません。
リースバックは自宅から引越すことがないため、親族であっても傍目には利用が分からないものです。トラブルのリスクを避けるためには、リースバックを利用した旨を親族と共有しておいた方が良い場合もあります。
5.買取価格が適正価格と比べて低すぎた
リースバックの利用後に「思っていたよりも買取価格が市場価格より低かった」と後悔するトラブルも存在します。
一般的に、リースバックの買取価格は市場価格の70%が相場と言われており、本来の資産価格よりも安値での売却になってしまうことが考えられます。
リースバックは引越し代や仮住まい費用などがかからず、一度にまとまったお金を受取れる点がメリットです。しかし、そもそも通常の不動産売買ならば時価で売れるため、総合的に考えると損してしまう場合があります。
6.リースバックを依頼した会社が倒産した
リースバックを依頼していた会社が倒産するケースもゼロではありません。会社が倒産した場合、現在住んでいる自宅を売却される可能性が高いといえます。
オーナーチェンジとなっても基本的に契約内容はそのまま引き継がれますが、次回の更新時には家賃が上がるなど契約状況が変わることも考えられます。場合によっては更新を断られるケースもないとはいえません。
リースバックを実行する場合は、大手不動産会社など経営基盤が安定している大企業を選んだほうが安心といえるでしょう。
7.契約が更新できず退去を求められた
リースバックの契約更新を断られたために、退去せざるを得ないケースもあります。
リースバックでは事業者と賃貸借契約を結んで借主として住み続けられますが、借主に落ち度がなくても事業者側の都合で、次の契約を更新しない可能性もゼロではありません。
例えば、「定期借家契約で締結したものの、期限が到来」「契約を結んだ借主が亡くなり、残された親族では契約できない」などの理由が挙げられます。
賃貸借契約を結ぶ際は、「普通借家契約」か「定期借家契約」かを確認しておきましょう。
普通借家契約ならば貸主都合による一方的な契約解除はできないため、借主は長く住み続けられます。定期借家契約の場合は、貸主と借主の双方が合意しなければ契約更新はできません。したがって、貸主である事業者に断られたら退去することになります。
また、契約者が亡くなった後、遺族では契約してくれない可能性もあるため、リースバック契約を結ぶ時点で事業者に確認しておいた方が良いでしょう。
8.修繕費の負担でトラブルに
修繕費を貸主と借主のどちらが負担するかで、トラブルになるケースも考えられます。一般的に、借主の負担になる主な修繕費は以下の通りです。
- リースバック以前からの破損に対する修繕費
- 小規模な修繕費
- 退去のときの原状回復費
一方、貸主の負担になる主な修繕費は以下の通りです。
- 契約後に発生した修繕費
- 経年劣化の修繕費
ただし、リースバック契約では元の所有者が住み続けることから、設備等の不具合の原因がいつから発生したのかを特定することが困難といえます。
特約で借主が修繕費を負担するケースもあるので、契約時には修繕費用に関する内容を確認しておくことが重要です。
9.高額な諸費用を請求された
リースバックを契約した際に、高額な諸費用を請求されてトラブルになることもあります。 一般的に、リースバックでかかる諸費用は以下の通りです。
- 印紙税
- 抵当権抹消手続きなど登記費用
- 前払い賃料(日割払い+1ヶ月など)
- 敷金(賃料1ヶ月分など)
- 火災保険料(1〜2万円前後)
- 保証会社の保証料(賃料の50%前後)
印紙税と登記費用以外の諸費用は通常の賃貸借契約で同じように支払うため、特に問題ありません。印紙税と登記費用は売買するにあたって必要な費用です。
注意したいケースとしては以下の項目が該当します。
- 事務手数料
- 測量費用
- 補強工事費用
- 改修費用
リースバック会社によっては諸費用として事務手数料や測量費用、補強工事費用、改修費用などを請求する不動産会社があります。
このように、少しでも高額な諸費用を請求して代金を回収したい事業者も存在するので、内訳や適正な金額であるのかをチェックしましょう。
10.最終的にリースバックできなかった
リースバックを利用したくても、何らかの理由で最終的にできない場合もあります。
例えば、住宅ローンを利用中の場合、現時点での残債のほうが多いと利用できません。したがって、オーバーローンの場合は取引を断られやすいといえます。
住宅ローンを滞納したため、自宅が競売にかけられているケースも同様です。物件の状況により、リースバックを断られるケースもあります。例えば、違法建築・再建築不可物件など流動性が低い物件や、リースバック事業者の対象エリア外にある物件などです。
リースバックで買取った物件は将来的に売却されるため、売れそうにない物件はリースバックを利用できない可能性があります。
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リースバックで後悔しないための対策6選

リースバックは大切な資産である自宅を売却する取引です。万が一、失敗しないためにも入念にリサーチしておくことが必要です。
- 価格相場を事前に調べておく
- 契約書を事前にしっかりと確認する
- 複数社に依頼して比較検討する
- リースバック後の家賃を支払い続けられるか事前に確認する
- 買戻しの条件や価格が適正か把握する
- 個人間での取引はなるべく避ける
ここでは、リースバックで後悔しないための対策6選を紹介します。
1.価格相場を事前に調べておく
リースバックを利用する際は、自宅の価格相場を事前に調べておきましょう。
リースバック利用時の売却価格は、一般的には市場価格の70%前後とされています。そのため、周辺の価格相場を踏まえて、リースバック事業者から提示された売却価格が適正であるかを判断するようにしましょう。
あらかじめ自宅の市場価格を把握していれば、安値での取引を防ぐことが可能です。
売却したい家の相場を調べたいときは、『不動産アーカイブ』をぜひご利用ください。不動産アーカイブは、これまでにLIFULL HOME'Sで掲載された不動産情報と提携先の地図情報を集積・統合して、データベース化した建物情報サイトです。
全国の中古住宅の過去に取引された売却価格がエリア別に一覧できるので活用できます。
2.契約書を事前にしっかりと確認する
リースバックは、「普通借家契約」と「定期借家契約」のいずれかの方法で契約を結びます。同じ借家契約でも普通借家契約と定期借家契約では違いがあります。
定期借家契約は原則更新されず、期間が満了したら賃貸借契約は終了となります。契約を続ける場合は双方の同意が必要であり、再契約の扱いになります。
一方、普通借家契約の場合は基本的にそのまま契約を更新していくので賃貸期間に制限はありません。したがって、自宅に長く住み続けたい場合は「普通借家契約」で契約することをおすすめします。
また、一般的な賃貸借契約と同様、特約や修繕費の負担なども必ず確認することも重要です。契約書をしっかりと理解しないままで契約すると、トラブルが発生したときに損失を受けるおそれがあります。
したがって、契約書は細部にわたって確認しておきましょう。
3.複数社に依頼して比較検討する
一般的な不動産売却と同様に、リースバックを利用する際も、複数社に依頼して比較検討しましょう。リースバック事業には多くの不動産会社が参入しており、大手から中小企業などさまざまな企業が存在します。
リースバック会社を選ぶ時には、以下3つのポイントをチェックしましょう。
- 買取価格が適正かどうか
- 家賃が適正かどうか
- 企業の安定性があるかどうか
大切な資産である自宅を売却するので、少しでも高額で買取ってくれる会社を探しましょう。また、リースバックした自宅には住み続ける可能性があるため、長期的に支払える家賃であることも重要です。
また、安心した環境で住み続けるために、オーナーチェンジする可能性が少ない安定した企業を選んだ方が良いでしょう。
4.リースバック後の家賃を支払い続けられるか事前に確認する
リースバックは「契約して終わり」ではなく、契約後の家賃を支払い続けられるかを事前確認し、資金計画を立てることが重要です。
リースバック利用時の家賃は、物件の売却金額に応じて高くなる傾向があります。家賃は売却価格と期待利回りに基づいて設定されるため、一般的な賃貸物件のように同じエリアの家賃相場は考慮されません。
したがって、近隣の似たような物件と比較すると高額になる可能性があります。
一般的に、年間の賃料は買取価格の7〜13%にあたる金額を月割りして算出されます。例えば、リースバックの売却価格が3,000万円の物件で年間賃料がその10%と設定すると、以下の計算式で毎月の家賃が算出されます。
毎月の家賃=3,000万円×0.1÷12=25万円
上記のケースでは、月々の家賃が25万となります。
一時的にまとまった金額を受取れますが、月々の家賃は同じエリアの類似物件より高い傾向にあります。したがって、毎月無理なく支払える家賃であるかを事前に確認することが重要です。
5.買戻しの条件や価格が適正か把握する
買戻し価格が適正であるかも、事前に確認しておきましょう。
リースバックの買戻しを実行するためには、条件が再売買予約契約書に明記されていなければなりません。そこで、買戻しの時期を自分で選べるプランにしておけば、資金が準備できた段階で買い戻すことができます。
ただし、「買戻特約の場合は10年以内でなければならない」などの条件があるので、期限までに資金を調達できなければ買戻しができません。通常、リースバック後の買戻し価格の基準式は「買戻し価格=売却価格×1.1〜1.3」です。例えば、リースバック時の売却代金が2,000万円の場合、2,000万円×1.1〜1.3=2,200万円〜2,600万円となります。
売却価格が高いほど買戻し金額も上がるため、負担は大きいでしょう。したがって、高い金額を設定されてしまうと、買戻しができない場合もあります。
6.個人間での取引はなるべく避ける
リースバックのみならず、不動産売買全般において個人間での取引はプロの仲介がないため、万が一トラブルが発生した場合に解決が困難になるリスクがあります。
個人間での不動産売買は、双方に仲介手数料や消費税などが発生しない点がメリットですが、リスクのほうが大きいため、なるべく避けましょう。
リースバックの場合は、通常の不動産取引と異なる点が多く、売主にとっては「売るときは安く」「買戻すときは高い」という特殊な取引です。取引金額も高額なため、万が一、トラブルが起きると大きな問題へと発展する可能性が高いといえます。
したがって、不動産会社などのプロに仲介してもらうほうが安心して取引できるでしょう。
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リースバックのトラブル事例に関するよくある質問

最後に、リースバックのトラブル事例に関するよくある質問について回答します。
- リースバックの取引でトラブルが発生したらどうすればいい?
- リースバックを利用しても生活保護は受けられる?
- リースバックを利用する際の留意点は?
これまで解説してきたようにリースバックでの不動産売買は、トラブルに発展するケースが少なくありません。したがって、よくある質問と回答をあわせて事前に押さえておきましょう。
リースバックの取引でトラブルが発生したらどうすればいい?
リースバック会社の中には、悪質な事業者もゼロではありません。なかには「強引に契約させられた」「説明された内容と違う」などのトラブルが発生する可能性もあります。
不動産会社と自宅の売却に関してトラブルが発生した場合には、なるべく早く最寄りの消費生活センター等に相談しましょう。
※参考:消費者ホットライン|消費者庁
消費者ホットラインで相談するときは、手持ちの書類を用意してトラブルの内容や被害に遭った日時、リースバック事業者の情報などを伝えましょう。
リースバックを利用しても生活保護は受けられる?
リースバックを利用しても、生活保護を受けることは可能です。
生活保護は、不動産や車などの資産があると受給できませんが、そのまま住んでいても不動産を保有していることにはなりません。
なぜなら、資産である自宅をリースバック事業者に売却するからです。
ただし、リースバックの賃料が高すぎると申請が受理されない可能性があります。
生活保護を受給するうえで、家賃の条件は市区町村により限度額が設定されています。たとえば、大阪市の住宅扶助の限度額は世帯人数が3〜5人の場合に52,000円です。
なお、売却資金がある場合、資産があると見なされるため生活保護は受けられません。
リースバックを利用する際の留意点は?
リースバックを利用する際の留意点としては、主に以下の3点が挙げられます。
- 毎月家賃の支払いが発生する
- 売却価格より買戻し金額のほうが高くなってしまう
- 賃貸期間が制限される場合がある
上記を事前に把握することで、後になって「思っていた内容と異なる」とならないよう注意しましょう。
リースバックのトラブル事例を回避するためには事前確認が重要

リースバックを利用してトラブルに遭わないためには、事前に賃料や買戻し価格など契約内容を確認することが重要です。内容がよくわからないまま、安易に契約しないようにしましょう。
また、解約の際に高額な違約金を支払う可能性もあり、高齢者の場合は住む場所がなくなるリスクもあります。
リースバックを利用する際は、信頼できる事業者を選択することが重要です。
記事執筆・監修
矢口 美加子(やぐち みかこ)
宅地建物取引士、整理収納アドバイザー1級、福祉住環境コーディネーター2級の資格を保有。建築・不動産会社で事務をしながら、家族が所有する賃貸物件の契約や更新業務を担当。不動産ライターとしてハウスメーカー、不動産会社など一部上場企業の案件を中心に活動中。