
「事故物件は売却できないのでは?」 「通常の物件に比べて、どれくらい値段が下がるんだろう?」
事故物件を売却するとなると、このような不安や疑問を持たれるのは当然だと思います。
確かに事故物件の売却は通常の物件よりハードルが上がりますが、正しい知識と戦略があれば、トラブルを回避しつつ売却することは十分に可能です。
具体的には「告知が必要なケースや告知すべき範囲」を正しく理解して取引を進めるとともに、状況や影響度に応じた対策が必要になります。
本記事では、心理的瑕疵(かし)を意味することが多い事故物件の定義や、通常の相場からの下落率、売却しやすくするための対策などを網羅的に解説しますので、ぜひ参考にしてください。
この記事で分かること
- 不動産における4つの瑕疵
- 告知義務の判断基準
- 事故物件の売却相場
- 事故物件を売却しやすくするポイント4つ
- 取引における注意点
もくじ
家・マンションを売るなら
ホームズで査定依頼
独自の掲載基準で
不動産売却査定サービスは、地域密着の不動産会社から大手まで
充実の会社情報を比べ、連絡が欲しい複数の会社に一括で査定依頼できます。
依頼後、即日~3日以内に不動産会社から連絡がきます。
事故物件の売却前に知っておくべき「瑕疵」と告知義務
「事故物件」と聞くと、建物内で人が亡くなった物件を想像する方が多いでしょう。しかし、売却の障壁となる欠陥や不具合はそれだけではありません。
ここでは、不動産取引における「瑕疵」の定義と、売主が負うべき責任について解説します。
不動産の4つの瑕疵
不動産取引において、物件に何らかの欠陥や不具合がある状態を「瑕疵」と呼び、主に以下の4つに分類されます。
| 瑕疵の種類 | 内容 |
|---|---|
| 心理的瑕疵 | 自殺や他殺・火災による死亡・特殊清掃が必要な孤独死など、入居者が心理的な抵抗感や嫌悪感を抱く事象のこと |
| 物理的瑕疵 | 雨漏り・シロアリ被害・建物の傾き・土壌汚染など、建物や土地そのものに物理的な欠陥がある状態 |
| 法律的瑕疵 | 再建築不可(今の建物を壊すと新しい家が建てられない)や建ぺい率・容積率オーバーなど、建築基準法や消防法などの法令に違反している状態 |
| 環境的瑕疵 | 近隣からの騒音・悪臭・振動や、近くに嫌悪施設(墓地やごみ焼却場など)がある場合など、物件そのものではなく周辺環境に問題があるケース |
4つの瑕疵のうち一般的に「事故物件」と呼ばれるのは「心理的瑕疵」に該当するケースです。しかし、売却時には心理的瑕疵だけでなく、物件が抱えているすべての瑕疵を把握し、適切に告知・対処する必要があります。

売主や不動産会社には告知義務がある

売主は、引き渡した物件が種類、品質または数量に関して契約の内容と適合しない場合、買主に対して責任を負います(契約不適合責任)。
そのため、心理的瑕疵の存在を隠して売却すると「契約内容に適合しない物件を引き渡した」として、債務不履行責任を問われる可能性があるのです。
また、仲介業務を行う不動産会社は、買主の判断に重要な影響を及ぼす事項について、故意に事実を告げなかったり、不実のことを告げたりする行為が禁止されており、契約締結前の重要事項説明において告知の義務があります。
どこからが事故物件? 売却時における告知義務の判断基準
過去に人が亡くなった物件のすべてに対して事故物件としての告知義務があるわけではありません。
ここでは、国土交通省のガイドラインを基に、売却時に告知が必要となるかどうかの判断基準について解説します。
国交省のガイドラインで告知が必要とされる事案
2021年10月、国土交通省によって「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」が策定されました。ガイドラインによると、売買取引で一般的に告知が必要とされるのは以下のケースです。
- 他殺(殺人事件)・自殺
- 日常生活の不慮の事故とはいえない事故死
- (特殊清掃等が行われた)自然死・病死
物件内で他殺や自死が発生した場合、買主の嫌悪感や心理的抵抗感が強いため、原則として告知が必要です。
また、老衰や病死、あるいは階段からの転落といった事故死であっても、発見が遅れたことで遺体が損傷し、室内に臭気や害虫が発生するなどして「特殊清掃」や「大規模リフォーム」が行われた場合は、告知の対象となります。
参照:宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン|国土交通省
事故物件の告知義務はいつまで続く?
「何年たてば告知義務が消滅するのか」という時効期間について、賃貸取引の場合、例外はあるものの「発生からおおむね3年経過すれば告知が不要」という基準が示されています。
一方、売買取引では原則として告知義務に時効はありません。売買の場合、取引金額が大きく、買主が長期間にわたって資産として所有・居住することが前提であるためです。
つまり、事件から数年・数十年経過していたとしても、買主の判断に影響を与える事案が過去に発生した以上は告知が必要と考えましょう。
事故物件としての告知が不要な事案
以下のようなケースでは、原則として、人が亡くなっていても「事故物件」としての告知が不要とされています。
- 自然死・病死・不慮の事故死(すぐに発見された場合)
- 隣接住戸や日常的に使用しない共用部での死亡
事件性がなく、老衰や病気による死亡で、すぐに発見されて特殊清掃などが不要だった場合は、日常生活の中で起こり得るものとして告知は不要です。自宅での看取りもこれに含まれます。
自宅の階段からの転落、入浴中の溺死、食事中の誤嚥(ごえん)など、日常生活における不慮の事故による死で、特殊清掃等が不要な場合も同様です。
また、事故現場の隣接住戸や日常的に使用しない共用部分で発生した事案なども、原則として告知義務の対象外です。ただし、社会的に大きな影響を与えた事件などは例外となる場合があります。
参照:宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン|国土交通省
事故物件の売却相場は?
一般的に、事故物件の売却価格は通常の相場よりも安くなります。しかし、一律で下がるわけではなく、死因や事故発生からの経過期間、物件の需要によって下落率は異なります。
あくまでも目安ですが、たとえば特殊清掃が必要な孤独死などの場合、相場から10〜20%程度の下落が考えられます。特殊清掃が必要になった場合でも、事件性がないケースでは下落幅は比較的小さくなる傾向です。
次に、自殺があった物件では、相場から30%程度下落することも考えられます。自然死や孤独死と比べると心理的な抵抗感が強くなるため、減額幅が大きくなる傾向です。さらに、他殺や報道などで広く認知される事件になると、相場の50%程度まで下落することも考えられます。
ただし、事件や事故の影響だけでなく、本来物件が持つ需要や販売方法によっても下落率は変わります。
たとえば都心部や人気エリアなど、土地そのものの需要が高い場所では、建物を解体して更地にすることも多く、かつての建物内で発生した事故による影響が抑えられ、下落幅が小さくなるケースもあります。
事故物件の売却|「仲介」と「買取」の違い

事故物件を売却する方法には、不動産会社に買主を探してもらう「仲介」と、不動産会社に直接買い取ってもらう「買取」があります。
物件の状態や価格、売却スピード、プライバシーなど、何を優先するかによって適切な売却方法は異なるため、それぞれの特徴を理解して選ぶ必要があります。
少しでも高く売りたいなら仲介で進める
「仲介」は、不動産会社が販売活動を行い、一般の個人や法人の購入希望者を探して売却する方法です。
仲介の場合、買取の場合よりも市場価格に近い金額で売れる可能性があります。特に「孤独死」や「自然死」などの場合や、人気エリアにある物件は、仲介でも買主が見つかりやすいでしょう。
ただし、仲介の場合、買主が見つかるまでに半年から1年以上の時間がかかるケースもあります。特に事故物件の場合、問合せや内見希望があっても最終的に契約に至らず、販売期間が長期化してしまう可能性がある点に注意が必要です。
最終的な成約価格は、物件のエリアや依頼する不動産会社や担当者の力量に左右される側面があります。
仲介での売却が難しければ不動産会社に買取を依頼
「買取」は、不動産会社が買主となって物件を直接買い取る方法です。購入希望者を探す必要がないため、最短数日から数週間で現金化が可能です。
また、広告を出さずに売却できるため、近隣に知られずに手放したい場合にも適しています。 さらに、多くの場合「契約不適合責任」が免責される点もメリットです。
ただし、買取価格は一般的に仲介相場の60~80%の水準になります。これは、買い取った不動産会社が物件にリフォームを施して再販売することが前提であり、そのコストを考慮して買取金額を決めるためです。
とはいえ「心理的瑕疵の影響が大きい」「トラブルなく早期に手放したい」といったケースでは選択肢となり得るでしょう。
事故物件を売却しやすくする4つのポイント
事故物件は通常の物件に比べると、「内見数が少ない」「成約率が低い」といった傾向があります。できるだけ高くスムーズに売却するには、戦略的な準備や対策が欠かせません。
ここでは、事故物件を売却しやすくする4つのポイントを紹介します。
清掃・残置物撤去・修繕で内覧時の印象をよくする
購入検討者の内覧に備えて、事件・事故を感じさせる要素を極力取り除くことが重要です。
室内の清掃については、ハウスクリーニングで済む場合もありますが、死臭や体液による汚れが染みついているようなケースでは、専門業者による「特殊清掃」が必要です。通常とは異なるにおいを感じる場合は、徹底的な消臭対策が求められます。
また、故人が使っていた家具や設備などが残っていると、購入検討者は「人が亡くなった」ことを実感してしまい、心理的に購入意欲が低下する原因になり得ます。残置物は撤去し、室内は空の状態にしておくのが理想です。
さらに、汚染された床の張り替えや穴が空いた壁の補修など、事件・事故の痕跡が残る箇所があればその修繕も検討しましょう。ただし、修繕費用を回収できるとは限らないため、高額なフルリフォームはおすすめできません。マイナス面を解消する程度の修繕にとどめましょう。

売却時期の判断|事故の影響が落ち着くまで待つ
事件や事故が起きた直後で、近隣で噂になっている間は、売り出しても購入希望者が現れにくい傾向があります。
不動産取引が活発になる春や秋のシーズンまで待つなど、あえて少し時間を置き、ほとぼりが冷めてから売り出すのも一つの戦略です。
ただし、売却を待っている間も固定資産税や管理費・修繕積立金などの維持費はかかり続けます 。保有期間が長引くことによるコスト増と売却価格への影響を天秤にかけて売り出す時期を判断する必要があります。
事故物件にもしっかりと対応できる不動産会社に依頼する
事故物件の売却が成功するかどうかは、依頼する不動産会社選びにかかっているといえます。
事故物件は適正価格の算出が難しく、販売期間も長期化しやすい傾向にあるため、通常の物件とは異なるノウハウが求められます。状況に応じて価格を見直したり、ターゲットに合わせた広告展開を行ったりと、粘り強い販売活動が必要です。
事故物件の取扱いに慣れていない会社だと、想定以上に売却価格が下がったり、反響やい合せがない状態が長期間続いたりするかもしれません。
事故物件を含めた販売実績が豊富で、エリアの事情に精通する不動産会社への依頼が重要です。
建物を解体し更地にして売却する
購入検討者の事故物件に対する心理的ハードルを下げるため、一戸建ての場合は、建物を取り壊して「更地」にして売却する方法もあります。事故があった建物そのものをなくすことで、心理的抵抗感を薄めることが可能です。
また、古家付き土地ではなく「新築用地」として売り出せるため、個人だけでなく建売用地を探している住宅会社や不動産会社までターゲット層が広がります。
ただし、建物の解体費用がかかるため、資金計画には注意が必要です。一般的に、30坪程度の木造住宅の解体には、90万~150万円程度の費用がかかります 。
事故物件における告知義務違反(契約不適合責任)に注意
事故物件の売却において最も避けるべきなのは「事実を隠して売却する」ことです。ガイドラインでは、告知する範囲として、事案の発生時期・場所・死因および特殊清掃等が行われた場合にはその旨と発覚時期を定めています。
万が一、告知すべき事項を告げずに売却し、引き渡し後に発覚した場合、売主は契約不適合責任を問われる可能性があります。
本来、契約不適合責任では「追完請求(不具合の修補など)」が認められていますが、心理的瑕疵(過去における人の死)は物理的な欠陥とは異なり、修理して直すことが事実上不可能です。
そのため、現実的には「代金減額請求」や、重大な契約義務違反による「契約解除」や「損害賠償請求」に発展するケースが考えられます。自殺や殺人などの重要事項を隠して売却し、数百万円〜数千万円規模の損害賠償支払いを命じられるケースが実際に発生しています。
また、現在は事故物件サイトやSNSが普及しており、管理会社などへの調査も行われるため、事実を隠し通すことは困難です。正直に告知したうえで、納得してくれる人に売ることが、結果として売主や会社を守ることにつながります。
参照:当該マンションで飛び降り自殺があったことの説明義務|一般財団法人 不動産適正取引推進機構
よくある質問
事故物件の売却に関して、売主の方からよく寄せられる質問にお答えします。
一度賃貸物件として貸し出した後に売却しても告知は必要?
はい、必要です。
「賃貸物件として誰かに一度貸せば、その後の入居者への告知義務がなくなる」という話を聞いたことがあるかもしれません。
しかし、これは賃貸取引におけるガイドラインの話であり、売買取引には適用されません。売買においては、過去に賃貸実績があったとしても、買主の購入判断に影響を与える心理的瑕疵が存在する以上は告知する必要があります。
事故物件の売却は1社だけに依頼したほうがいい?
まず、査定の段階では複数社に依頼しましょう。事故物件は通常の物件よりも査定額の算出が難しく、各不動産会社の方針や担当者の判断で価格に大きなバラつきが出ます。そのため、1社の査定結果だけで売却金額を判断するのは危険です。
加えて、実際に売却活動を依頼する段階では「専任媒介契約」あるいは「専属専任媒介契約」で1社のみに依頼することをおすすめします。
この理由は、事故物件が販売活動に手間や時間がかかりやすいことにあります。複数社に依頼する「一般媒介契約」の場合、他社が成約すると自社がそれまでにかけた時間や労力が無駄になるため、物件の積極的な販売活動が行われないリスクがあるのです。
近隣に知られずに売却できる?
売却活動を近隣に知られる可能性は、仲介と買取で異なります。
仲介の場合、広く買主を探すためにインターネット広告や内見などの販売活動を行うため、買取と比べると近隣住民に知られる可能性が高くなります。
一方、買取の場合は不動産会社が直接買い取るため、広告活動を行う必要がありません。物件への訪問も査定時のみで済むため、近隣に知られにくい売却方法といえます。
まとめ
事故物件の売却にあたっては、国交省のガイドラインに基づき、瑕疵を隠さず適切に告知すること、そして物件の状況に合わせて最適な準備と対策を行うことがポイントです。
なかでも重要なのは、事故物件という通常とは異なる不動産の売却について、専門知識と実績を持つ不動産会社に依頼することです。
事故物件の場合、会社によって査定額や対応力に大きな差があるため、複数の会社の査定結果と販売方針、担当者の実績などを比較することが売却成功への第一歩となります。
LIFULL HOME'Sの不動産売却査定サービスなら、全国4,800社以上(2025年12月時点)の豊富な提携会社の中から、あなたの物件に適した不動産会社を選んで査定依頼を行うことができます。
まずは査定を依頼し、プロのアドバイスを受けてみてはいかがでしょうか。
自分に合った不動産会社を見つけ、後悔のない売却を実現させましょう。
【あわせて読みたい】
▶︎不動産の瑕疵とは?主な種類やトラブル事例・契約不適合責任について解説
▶︎不動産買取の注意点とは?トラブル事例や業者の選び方も解説
初回公開日:2025年12月25日
記事執筆
吉満 博(よしみつ ひろし)
不動産ライター/不動産コンサルタント
宅地建物取引士/ファイナンシャルプランニング2級技能士/住宅ローンアドバイザー
大学で建築を専攻後、ゼネコンおよびハウスメーカーにて、オフィスビルから一戸建て・アパートの設計業務に従事。意匠設計や法規制、構造などの専門的知識を習得。 その後、自身の住宅購入をきっかけに不動産会社を独立開業。売買仲介の実務を行う傍ら、ライフプラン作成を軸とした提案で多くの顧客をサポート。 現在は自身の実務やサイト運営の経験を活かして、不動産を中心に金融・相続など幅広くライターとして活動するほか不動産売買のコンサル業務を行う。これまでに執筆・監修した記事は700本を超える(2025年12月現在)