不動産ポータルサイトのおとり物件、おとり広告とは

不動産ポータルサイトなどを見て問い合わせをし、「すでに成約済み」と言われるとがっかりする。なぜこのようなことがおこるのだろうか?不動産ポータルサイトなどを見て問い合わせをし、「すでに成約済み」と言われるとがっかりする。なぜこのようなことがおこるのだろうか?

不動産ポータルサイトを見て、気になる物件について不動産会社へ問い合わせをしたところ、「すでに成約済み」といった理由で別の物件を紹介されることがある。数多くの物件を比較検討し、候補を絞り込んで不動産会社を訪問したにもかかわらず、このような経験で「騙された」とがっかりしたことがある人もいるのではないだろうか。

上記のように、実際には紹介できない物件が広告に掲載される理由には、次のようなことが考えられる。

1.物件登録時の入力ミス
2.契約状況の確認漏れ
3.物件情報更新のタイムラグ
4.おとり広告

1~3に関してはわざとではないが、結果的におとり広告となっているパターンだ。
人間が行うことなのでミスは必ず発生する。また、不動産は同じ物件を複数の会社が取り扱うため、契約になったという情報がすべての取り扱い会社に共有されるまで、時間がかかる。実際にLIFULL HOME’SやSUUMOなどの不動産ポータルサイトへ「すでに成約済みだった」という情報が寄せられた物件を調べると、9割以上が1~3に当てはまるものだった。

悪質なのは、意図的なおとり広告だ。不動産公正取引協議会の「不動産の表示に関する公正競争規約」では、おとり広告を次のように定義している。

・物件が存在しないため、実際には取引することができない物件に関する表示
・物件は存在するが、実際には取引の対象となり得ない物件に関する表示
・物件は存在するが、実際には取引する意思がない物件に関する表示

なお、これらは仕組みの改善や不動産会社の意識を高めることで減らすことが可能だ。不動産業界やLIFULL HOME’Sをはじめとする不動産ポータルサイトでは、この人的ミスやタイムラグを限りなくゼロに近づける取組みを続けている。その内容と成果を確認してみよう。

ポータルサイトによるおとり物件の調査。悪質な事業者は広告掲載停止に

公益社団法人首都圏不動産公正取引協議会では、定期的に「インターネット賃貸広告の一斉調査」を行っている。これは賃貸住宅のおとり広告を行っている疑いのある事業者を対象に、「ポータルサイト広告適正化部会」のメンバーが調査業務を委託されて実施するものだ。現在のメンバーは以下の4社。

アットホーム株式会社(at home)
株式会社CHINTAI(CHINTAI)
株式会社LIFULL(LIFULL HOME’S)
株式会社リクルート住まいカンパニー(SUUMO)

調査方法としては、各不動産ポータルサイトに掲載されている物件をひとつずつ確認し、成約状況を把握している元付会社(管理会社)に最新の状況を確認する、人手をかけて行う地道なものだ。

第1回が2017年4月から7月にかけて行われ、同調査の最新報告は2020年11月から12月に行われた第8回になる。

第8回では36社、43店舗に対して調査を行い、13社(36.1%)、15店舗(34.9%)におとり広告が認められた。これらの事業者に対しては、不動産ポータルサイトへの広告掲載停止などの措置を講ずることになっている。同調査は今後も継続的に実施する予定だ。

おとり物件の少ないサイトに向けた、不動産ポータルサイトの対策とは

それぞれの不動産ポータルサイトでも独自のおとり広告防止策を行っている。たとえばLIFULL HOME’Sでは次のような施策を講じている。

・「掲載110番」
「成約済みの物件だった」「条件や設備項目が実際とは違っていた」など正しくない物件情報を見つけた場合、そのことをサイト運営者へ伝える窓口「掲載110番」を設置。事実確認後、必要に応じて情報の修正、非掲載処理を行い、場合によっては独自の広告掲載停止措置をとっている。
掲載110番

・「情報審査チームによる能動的調査」
専属の情報審査チームが能動的に掲載情報の調査を行っている。やみくもに調査をするのではなく、AIやLIFULL HOME'Sの保有するビッグデータを活用し、迅速な対応を実現させている。その調査数は、2018年10月から2019年9月までの1年間と2019年10月から2020年10月までの1年間を比較すると60%増。より一層、力を入れてパトロールしている。

・「不動産管理会社と連携して募集終了物件の自動非掲載機能を追加」
不動産管理などを行っている株式会社アミックスが保有する管理物件情報の一部を毎日受領し、成約・申込等の物件を、LIFULL HOME’Sの掲載物件と照合し、募集終了物件を自動で非掲載にする機能を2019年10月25日より追加。この機能は業界初の事例となっており、今後も連携する不動産管理会社は増える見通しだ。

自動非掲載機能の仕組み。不動産管理会社にある成約済み等の物件データをLIFULL HOME'Sの掲載物件とシステム照合し、同一の可能性が高い物件を検出する自動非掲載機能の仕組み。不動産管理会社にある成約済み等の物件データをLIFULL HOME'Sの掲載物件とシステム照合し、同一の可能性が高い物件を検出する

「不動産会社向け物件メンテナンス補助ツール」
2019年12月18日より不動産会社向けに「LUFULL HOME’Sメンテナンス見える化ツール」を提供。これはLUFULL HOME’Sに掲載中の賃貸物件を対象に「成約済みの可能性がある物件」を検出し、一覧で表示をする。不動産会社は、一覧に表示された物件の確認作業を優先して行うことで、効率的に成約済み物件の非掲載処理を実施できる。

具体的には、LIFULL HOME'S上で、同じ物件の掲載実績がある不動産会社のうち、「LIFULL HOME'Sへ掲載から非掲載に変更」した不動産会社の割合が基準値に達した場合、まだLIFULL HOME'Sで掲載している不動産会社に対し「成約済みの可能性がある物件」として検出するものだ。

自動非掲載機能の仕組み。不動産管理会社にある成約済み等の物件データをLIFULL HOME'Sの掲載物件とシステム照合し、同一の可能性が高い物件を検出するLUFULL HOME’Sメンテナンス見える化ツールの画面イメージ。成約済みの可能性がある物件を検出し、一覧で表示する

おとり物件を見つけたら、通報することも大切

同社では、これらの取組みの結果、成約済物件の掲載は減少傾向にあるという。2018年10月~2019年9月に比べて、2019年10月~2020年10月は、LIFULL HOME'Sサイト内に設置した「掲載110番」へ寄せられた連絡の件数が30%減。対象となった物件数が50%減だという。

LIFULL HOME'S 担当者は次のようにコメントしている。
「問合せた物件に対し、不信感や疑いの気持ちを持つマイナスの経験をしてほしくないと思っています。そのために、受動的な対応だけではなく、能動調査や管理会社との連携促進など、攻めの姿勢で情報精度向上を目指します」

これといったおとり物件の見分け方があるわけではなく、実際に私たちの目で見分けることは難しい。成約済物件が広告掲載されることは、物件探しをしている人にとってはもちろん、広告掲載停止措置を受け、消費者からの信頼を失う恐れもあるなど、不動産会社にとってもデメリットが大きい。
冒頭の例のように、「すでに成約済み」といった理由で別の物件を紹介される経験をしたなら、各ポータルサイトが用意する窓口に通報することも大切だ。通報せずに、その物件が広告掲載され続けることで、同じようにがっかりする経験をする人が増えてしまう。

LIFULL HOME'Sで誤った物件情報を見つけたら…
掲載110番


成約済物件の広告掲載は、業界や不動産ポータルサイト運営者などの努力によって着実に減っている。中でもおとり広告に対しては、厳しい態度で対処している。とはいえ、現状でまったくないとはいえない。今後もより一層厳しい姿勢で取組むとともに、積極的な仕組みの改善や不動産会社の意識の意識の向上で、「成約済物件の広告掲載ゼロ」を目指してほしい。

2021年 05月10日 11時00分