花粉問題対策事業者協議会主催セミナーが開催
コロナ禍ということもあり、今年の春は例年よりも外出を控える予定だという人も多いだろう。そろそろ花粉のシーズンが間近に迫るなか、今年の花粉の量は多いのか・少ないのかが気になるところだ。
花粉問題対策事業者協議会(JAPOC)は、2021年1月28日に「JAPOC セミナー(ウェビナー)」を開催した。JAPOCは2012年に発足、国民病である花粉症への対策として産官学が連携し、開発製品の認証や情報発信などを行っている。
冒頭のあいさつで、JAPOC代表理事のダイキン工業株式会社 香川謙吉氏は「コロナウイルス対策として窓を開けて換気をすることが推奨されてますが、窓を開けると花粉も室内入ってきてしまいます。カーテンや網戸を使ったり、上手に空気清浄機なども使ってほしい。コロナ禍だからこそ花粉症対策が例年以上に大切になってきており、産官学のすべての知恵・対策手段を複合的に上手に使う重要性が高まっているのではないか」と話した。
今年の春は例年とは異なり、換気や密を回避しながらの花粉症対策が必要になる。今回はセミナーから、気になる2021年の花粉の飛散予測や、花粉症対策などを紹介する。
コロナ禍における身近な花粉症対策
基調講演では、日本医科大学 耳鼻咽喉科 教授 大久保公裕氏が登壇し「コロナ禍における身近な花粉症対策」について話した。
まずは花粉症とインフルエンザ、新型コロナウイルス感染症の違いについて大久保氏は、「新型コロナウイルスでも鼻づまりなどの鼻の症状が出ます。それぞれの違いは、花粉症はモーニングアタックという朝の強い症状があり、花粉が飛散する特定時期に起こる点で、新型コロナウイルスで特徴的なのは嗅覚・味覚障害が起こることです。花粉症の嗅覚障害は鼻づまりによって発生しますが、一方新型コロナウイルスは味覚・嗅覚の細胞に影響を及ぼしているために、においや味覚がおかしくなります。両方に共通する対策は手洗い・マスクの装着です。花粉症はだいたいのマスクで抑えられますが、コロナ禍においては医療用のマスクが有効なのではないか」と話した。
花粉症とコロナウイルス感染症の対策については「新型コロナウイルス感染症の拡大予防には、適切な換気・外気の取り込み・空気の入れ替えが重要です。しかし、スギ花粉が室内に入ってくるという弊害も生じます。HEPAフィルターを介した室内の循環換気や、スギ花粉の侵入を予防する花粉防御フィルター(花粉を通さない網戸など)を通した換気を考慮する必要があります。また空気を循環させるファンなどを利用してもいいかもしれません。スギ花粉も新型コロナウイルスも大きさこそ違えど微粒子で、乾燥により飛散しやすくなります。このため室内においては加湿の重要性も見逃せません。粘膜がしっとりして正常に機能しやすくなるので、寝室などに加湿器を置くのもよいでしょう」とのことだ。
働き盛りの2人に1人が花粉症
花粉症は38.8%の有病率と言われているが、5~9歳のスギ花粉症有病率は30.1%、10~50代は45%以上の有病率であり、働き盛りの2人に1人が花粉症であることになるという。この20年で低年齢でも4倍に発症していることが分かっているそうだ。
「行政も花粉症対策として2015年12月にアレルギー疾患対策基本法を公布、2019年度には免疫アレルギー疾患研究10か年戦略を策定するなどの政策を進めています。環境省は花粉飛散予測など、農林水産省は花粉の少ない森林への転換など、各省庁も継続して施策を進めています。日本のスギ・ヒノキの人工林は国土の、約19%の面積を占めており、人工林の70%くらいは成木になっているものの、残りの30%くらいはまだ成木になっていません。花粉は今後も増えていく可能性があるということに注意しないといけません」と、大久保氏。
さらに、花粉症に起因し生産性が低下した状態だが、職場には出ている状態である「プレゼンティーズム」により、仕事・勉学の能率が約3割低下しているとも話す。
大久保氏はすぐにできる花粉症対策として、花粉情報をチェックする、外出を控える、窓・戸を閉める(多人数がいるときは開ける、網戸を閉める、薄いカーテンを閉めておくと花粉が入りにくくなる)、外出時にはマスク・メガネ(新型コロナウイルスにおいても目からエアロゾルが入ることが分かっているのでメガネは有効、目をかいてしまうことの予防にもなる)、けばだった衣類は避ける、花粉をよく落とす、掃除の励行(四隅によく花粉は落ちる)を挙げた。
なお、花粉症には抗ヒスタミン薬などの薬の摂取以外にも、手術療法や免疫療法などもある。大久保氏は「筋肉注射でステロイドを打つという方法もあるが免疫力を下げる懸念があるため、コロナ禍においては専門医に相談する必要がある」と注意を促した。またレーザーなどの日帰り手術などもあるが、「現段階でレーザーをして粘膜が荒れてしまうとウイルスの感染リスクとしては、withコロナの時代でどうなのかを考えていく必要があります。レーザー治療をした人はマスクをして十分に気を付けてほしい」と注意を促した。
2021年の花粉飛散量は全国平均で昨年の160%程度の予想
最後に株式会社ウェザーニューズ 予報センターの草田あゆみ氏による「ウェザーニューズによる2021 花粉飛散予測 」をご紹介する。
「2021年の花粉の飛散量は、昨年に比べて多い予想になっております。東北から九州にかけて昨年並み、もしくは昨年を上回る予想で、全国平均では2020年比で160%程度の予想。中部地方などは2倍以上のところもありますが、東京においては昨年比120%の予想です。予測した背景としては、2020年の夏の天候の状況が長い梅雨・記録的な多雨・8月の猛暑など極端な気象状況であり雄花の生育には好条件でなくやや不向きであったことが挙げられます。例年の平均と比較すると少ない傾向にはありますが、昨年よりも飛散量は多くなる予想ですので注意して過ごしていただきたい」と話した。
なお、花粉の飛散は2月の上旬には東日本の太平洋側や九州地方などで開始する予報とのことだ。15度を超える気温が高めの日を経験すると、花粉の飛散開始が早まる可能性があるため注意したい。
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