多数の空き家再生事例

犬共生シェアハウス、HOUSE-ZOO六番館のリビングで寛ぐ入居者の様子(写真提供:HOUSE-ZOO株式会社)犬共生シェアハウス、HOUSE-ZOO六番館のリビングで寛ぐ入居者の様子(写真提供:HOUSE-ZOO株式会社)

国際交流ができる、IT技術者が集まる、DIYができる…。ただ居住空間をシェアするだけでない、共通の目的や趣味を持った人との交流が魅力のコンセプト型シェアハウスが続々と登場している。

HOUSE-ZOO株式会社は、"ペット共生シェアハウス"を専門に、主に関東地方で19棟の企画・運営をしている(現在準備中も含めると21棟)。
新築シェアハウスの実績も豊富であるが、特に注力しているのが、既存住宅のペット共生シェアハウスへの再生だ。

一般社団法人ペットフード協会の平成29年全国犬猫飼育実態調査によれば、ペット飼育の阻害要因で最も割合が多い上位の2つは「十分に世話ができない」27.1%、「集合住宅に住んでいて禁止されている」25.3%である。分譲マンションではペット飼育可の物件も増えてきているが、賃貸物件はというと、まだまだ需要に住宅市場が追いついていない状態であると言える。だがその一方、空き家の数は右肩上がりに上昇。2013年の空き家数は820万戸と、5年前から63万戸(8.3%)増加、空き家率は13.5%と過去最高となった。(平成25年住宅・土地統計調査より)

今後も増加することが予想される空き家。一方でペットと住みたいけれどもそれが叶わない人がいる。一戸建ての中古物件や、空きビルなど、多数のリノベーション事例を持つHOUSE-ZOOの代表田中宗樹さんに、これまでの事例を伺った。

空きビルや一戸建て、店舗併用住宅が生まれ変わる

取材時に伺ったのは、所沢の犬猫共生シェアハウス「HOUSE-ZOO四番館」だ。所沢駅から徒歩約14分と少し距離があるものの、取材時満室。HOUSE-ZOOが取り扱うなかでも人気の物件だという。

「築40年以上の一戸建てで、昔は踊りの稽古場としても使われていたそうです。空き家になっていたのを、『何か活用する方法はないか』と、お孫さんからご相談をいただきました。」

和室を広々としたリビングに、個室もフローリングにし、40帖ほどある大きな庭はドッグランに、ウッドデッキも設置した。床は、ペットが滑りにくく、傷がつきにくい・掃除がしやすい素材を利用。ガラスにはエアプロットという匂いを分解する素材を塗布した。犬猫共生物件とは思えないほど、リビングは匂いが全く気にならなかった。ドッグランではオーナーと入居者がBBQをしたりと関係も良好だそうだ。

もうひとつ、一戸建て物件で印象的な再生事例として、ペット共生型シェアハウス「HOUSE-ZOO弐番館」がある。もともとはお寿司屋さんを営んでいた店舗併用の一戸建て住宅で、店舗のカウンターがあった1階は、土間付きの広々としたリビングに変化した。現在、他にも1年くらい空きビルだった台東区にある工務店の仕事場兼自宅をリノベーション中。1階の倉庫はリビングに、2~3階が居住部になる予定だという。

「単身世帯が増えている背景もあり、一戸建てやビルなど、大きな物件ほどもてあましている人が多いようです。建物は人が住まないとあっという間に朽ちてしまいます。家の寿命は、人間が勝手に決めたもの。1人や2人では大きい建物も、数人でシェアすればまだまだ活用の方法はあると思います。」

所沢の犬猫共生シェアハウス「HOUSE-ZOO四番館」のリノベーション前後の写真(写真提供:HOUSE-ZOO株式会社)<br>左側がリノベーション前→右側がリノベーション後<BR>
画像上:1階和室は、フローリングの共用リビングに<br>
画像下:庭はウッドデッキを設置して、広々としたドッグランに変身した
所沢の犬猫共生シェアハウス「HOUSE-ZOO四番館」のリノベーション前後の写真(写真提供:HOUSE-ZOO株式会社)
左側がリノベーション前→右側がリノベーション後
画像上:1階和室は、フローリングの共用リビングに
画像下:庭はウッドデッキを設置して、広々としたドッグランに変身した

シェアハウスだからこそコミュニケーションが生まれる

自身もシェアハウスに6年住んだという田中さん。住んでみて初めて『こんな暮らし方があったのか』と嬉しい発見があったそうだ。ペット共生のシェアハウスだからこそ、入居者同士の助け合いやコミュニケーションが生まれている。

「仕事で遅くなったときや、旅行や出張で不在のときなど、お互いペットを預かりあって助け合っている入居者も多いです。個室には電子キーが設置されていて、暗証番号を伝えれば部屋に入室ができるようになっています。ペットにとっても、ペットホテルに預けられるより、いつも可愛がってもらっている人に面倒を見てもらったほうがストレスになりにくいですしね。」

HOUSE-ZOOが取り扱う物件は犬猫両方共生、犬のみ、猫のみなどさまざま。ペットを介したトラブルが発生したりしないのだろうか。

「入居者同士のトラブルの中には、ペットに関わることもあります。そういう時は入居者とじっくり話をしてしつけをしてもらうよう説得をしたり、しつけ教室なども開催しています。シェアハウスの生活のなかで、他の人と接することでペットが人に慣れて、飼い主にもしつけが身についていくケースもありますよ。」

シェアハウスの運営・管理は一定の手間がかかることは否めない。田中さんは、極力トラブルが発生しないよう、入居前に面談をしたり、シェアハウスや動物のしつけに関するルールブックをすべて入居前に読みあわせするなど、未然に防ぐための準備が大切だという。

東京都調布市のペット共生型シェアハウス「HOUSE-ZOO弐番館」のリノベーション前後の写真(写真提供:HOUSE-ZOO株式会社)<br>左側がリノベーション前→右側がリノベーション後<BR>
画像上:お寿司屋さんの店舗だった1階は、土間のある共用リビングに<br>
画像下:ベランダはウッドデッキに、ベンチを設置してペットと寛げる空間になった東京都調布市のペット共生型シェアハウス「HOUSE-ZOO弐番館」のリノベーション前後の写真(写真提供:HOUSE-ZOO株式会社)
左側がリノベーション前→右側がリノベーション後
画像上:お寿司屋さんの店舗だった1階は、土間のある共用リビングに
画像下:ベランダはウッドデッキに、ベンチを設置してペットと寛げる空間になった

ペット共生、多世代交流型シェアハウスを展開

国土交通省は2017年7月、「平成29年度先駆的空き家対策モデル事業」※として27事業を採択。 HOUSE-ZOOの事業がそのひとつに選ばれたのだ。事業名は「高齢者共同居住型住宅の保護犬(猫)共生型で相互みまもり」だ。

※「先駆的空き家対策モデル事業」:空き家対策に関する市区町村の取組みを促進するとともに、全国の空き家対策を一層促進するため、市区町村等にノウハウの蓄積が十分ではない事務や官民が協力して取組む事業等について、先駆的に実施される取組を支援し、その成果の全国への展開を図るもの

「一人暮らしの高齢者世帯が増え、空き家も年々増加しています。いま夫婦で暮らしている高齢者も、どちらかが先に亡くなってしまうと一人暮らしになる可能性が高い。アクティブシニアの時に、一人暮らし以外にもシェアハウスという選択肢があってもいいのではないかと。動物を飼いたくても、最後まで責任を持てないからという理由で飼えないという声もよく聞きます。空き家を活用し、ペットと暮らしたい高齢者、若者が一緒に住む多世代共生のシェアハウスを全国で展開していきたいと思っています。現在、相模原の昭和58年築、木造2階建ての空き家を保護猫ルーム付き多世代交流型シェアハウスとして運営をはじめていまして、この事例を参考にしながら、運用方法を構築していきます。」

いま、田中さんの故郷である宮崎に多世代交流のシェアハウスを準備中だという。高齢者だからという理由で賃貸住宅の入居を断られることもあると聞く。だが、多世代が住むことを前提としているシェアハウスであれば、住み替えもしやすくなる。

「家具・家電も付いていますので、一年の半分を東京のシェアハウスで、もう半分を宮崎のシェアハウスでという暮らしも出来ますしね。アクティブシニアの方であれば、地方で仕事をしながら試し住みなんてのもいいかもしれません。ペットの世話が出来なくなった時のために動物保護団体との提携や、高齢者のサポートが必要になったときのために介護事業者との連携体制の構築も進めています。」

田中さんの話を聞いていると、不動産会社の一事業というよりは、社会貢献を第一の目的に展開しているように感じる。

「社会の課題を解決する、社会に貢献できる会社でなければ生き残れません。不動産は物件から"場"が生まれる、非常にやりがいのある仕事です。これからシェアハウスの全国展開ができるようになったら、障がいのある方や高齢者の方に物件のお掃除をして頂けるよう、ハウスキーピングをひとつの事業にできたらと思っています」と、今後の展望を話してくれた。

取材協力:HOUSE-ZOO株式会社
https://www.house-zoo.com/

画像左・右上:保護猫と暮らす女性専用シェアハウスHOUSE-ZOO相模原には、猫専用の部屋が設けられている(写真提供:HOUSE-ZOO株式会社)<br>
画像右下:HOUSE-ZOO株式会社 代表田中宗樹さん画像左・右上:保護猫と暮らす女性専用シェアハウスHOUSE-ZOO相模原には、猫専用の部屋が設けられている(写真提供:HOUSE-ZOO株式会社)
画像右下:HOUSE-ZOO株式会社 代表田中宗樹さん

2018年 04月03日 11時06分