東濃ヒノキ造りの格子屋根

石原広幸さん(左)と畑上竜也さん(右)。うしろは木造格子屋根の模型。「世界初の工法だったので荷重実験などのために実物大の模型を造ってテストをしたんです。その一部を切り取って皆さんに見ていただけるよう展示しています」と畑上さん石原広幸さん(左)と畑上竜也さん(右)。うしろは木造格子屋根の模型。「世界初の工法だったので荷重実験などのために実物大の模型を造ってテストをしたんです。その一部を切り取って皆さんに見ていただけるよう展示しています」と畑上さん

2015年7月18日、岐阜市司町(つかさまち)に、おそらく他に類を見ないであろう個性的な複合施設「みんなの森 ぎふメディアコスモス」が誕生した。施設には大きく分けて〈市立中央図書館〉〈みんなのホール・ギャラリー〉〈市民活動交流センター・多文化交流プラザ〉が設置され、さらに、建物に隣接して憩い・にぎわい広場が設けられている。

話を伺うために施設を訪ねたところ、建物内に一歩踏み入れたとたん、総ヒノキ造りの温泉に入ったときのような清々しい香りに包まれた。実はこの香り、人工的に発生させているのではなく図書館の天井から自然に発生している。天井が岐阜県産の東濃ヒノキを使った木造格子屋根になっていて、これこそが他に類を見ないであろうという所以である。

なぜこの場所にこのような個性的な施設が誕生したのか、その目的はいったい何なのか。岐阜市市民参画部ぎふメディアコスモス事業課を訪ね、同課課長の石原さん、事業運営係の畑上さん、図書館副館長の中島さんにお話を伺った。

つかさのまち夢プロジェクトの立ち上げ

そもそも、ぎふメディアコスモスの建設は、司町の発展を願う「つかさのまち夢プロジェクト」というまちづくりの一環として進められたという。

「この場所にあった岐阜大学医学部のキャンパス移転に伴って、岐阜市の中心地にできる3.1ヘクタールの大規模な跡地をどう利用するかについて検討することになり、市が活用するということで大学と岐阜県と岐阜市が協定を締結したのが今から17年ほど前、1998年のことでした。その後、数年間の内部検討を経て2004年に“つかさのまち夢プロジェクト”というまちづくり事業が立ち上がり、検討委員会が設置され、2004年にはプロジェクトの基本構想の制定が始まりました」

検討委員会は公募による3名のほか学識者などさまざまな立場のメンバー15名で構成され、次の4つのイメージを軸に基本構想が練られていった。

(1)伝統・文化を介し、人々が交流し情報を発信する「広場」
(2)市民・民間・行政の各セクターが活用し、活躍できる「広場」
(3)快適で利便性の高い行政サービス提供の「広場」
(4)中心市街地において、岐阜市のシンボルとなる「広場」

そして2010年には、この基本構想をもとに検討された基本計画が策定されたのだが、計画には委員会メンバーの意見だけでなく市民の意見もしっかりと盛り込まれた。

岐阜大学医学部が移転し、整地された跡地の様子。まちなかに何も建っていない広大な敷地だけがあり、物足りない雰囲気岐阜大学医学部が移転し、整地された跡地の様子。まちなかに何も建っていない広大な敷地だけがあり、物足りない雰囲気

歴代最多のパブリックコメント

「基本計画を策定するときに市民の皆さんにパブリックコメントを募集したところ、岐阜市では歴代最多となる219件のご意見が集まりました。この施設に限らず公共施設を造るときはパブリックコメントを募集しますが、特にこのプロジェクトは市民の皆さんの夢をかたちにするというコンセプトがありますので、市役所の市民ホールに専用のブースを設けたり、岐阜駅などで計画を公表して意見を募ったりと積極的に働きかけました。パブリックコメントでは新しい図書館の設置や市庁舎の移転を希望する意見が多く見られました」

市民の意見を取り入れながら、つかさのまち夢プロジェクトは下記のとおり段階的に進められることが決定した。

第1期……みんなの森 ぎふメディアコスモス(複合施設)の建設
第2期……行政施設の移転[想定]
第3期……(仮称)市民文化ホールの建設(現岐阜市役所跡地)[想定]

ご覧のとおり、今回紹介している「みんなの森 ぎふメディアコスモス」の建設は第1期の事業。基本計画だけでなく施設オープンまでの過程でも市民や利用者の意見を多く取り入れており、施設の設計時や広場の設置時に市民の意見を募集したほか、ロゴや名称などは広く全国に公募して決定したというから、まさに「みんなの森」である。

岐阜大学医学部等の跡地にオープンした「みんなの森 ぎふメディアコスモス」岐阜大学医学部等の跡地にオープンした「みんなの森 ぎふメディアコスモス」

民間の知恵を取り入れる

施設の設計や運営面でも行政の外の知恵を取り入れている。個性的な建物を設計したのは一級建築士の伊東豊雄さん。高松宮殿下記念世界文化賞やプリツカー賞といった栄誉ある賞を数々受賞している方で、その実績に着目した岐阜市が公募によって選んだ。

「設計者を募集したところ70者ほどの応募があり、1次審査、2次審査を経て公開プレゼンテーションによる最終審査で伊東さんに決定しました。独創性に富み、強い生命力や未来を感じさせるところなどが評価されたのかなと思います」

また、市立中央図書館の館長も、期限付き任用職員として公募により選任されている。

「岐阜市にはもともと期限付き任用職員という仕組みがありましたが、図書館の館長に採用するのは初めての試みでした。建物もこういった類を見ないものですし、利用者の皆さんに図書館の魅力をよりアピールできるような起爆剤の一つとして、館長を募集してみてはどうかということで実施しました」

新館長は、岩手県で児童館の館長や体験型学習施設を創設したという実績を持つ方で、経験を生かしたユニークなアイデアをさっそく披露している。その具体的な内容については次回の記事で紹介する。

図書館長が提案し、司書の方がデザインを考え、子どもたちから候補を募り、投票により愛称を決定した、わんこカート「きらら」。</br>本を収納して移動でき、子供向けのイベントなどで活用しているという図書館長が提案し、司書の方がデザインを考え、子どもたちから候補を募り、投票により愛称を決定した、わんこカート「きらら」。
本を収納して移動でき、子供向けのイベントなどで活用しているという

「知」「文化」「絆」の拠点として

こうして誕生した「みんなの森 ぎふメディアコスモス」には、まちづくりにおいて三つの拠点としての機能が与えられている。

まず一つ目は「知の拠点」としての機能。2階の市立中央図書館がこれに当たり、“フムフムエリア”とも言われている。二つ目が「文化の拠点」としての機能。1階の、みんなのホール・みんなのギャラリー・ドキドキテラスがこれに当たり、“ドキドキエリア”とも言われている。そして三つ目が“ワイワイエリア”とも言われる「絆の拠点」としての機能。1階の市民活動交流センターと多文化交流プラザ、交流談話スペースやスタジオ(会議スペース)など活動支援のための施設がこれに当たる。

「2階の図書館が目的でいらっしゃる方がほとんどですが、複合施設なので、たとえば帰りに1階を通るときに市民活動をしている様子や展示を見ていただくことができます。そこでちょっと立ち寄っていただき、興味があれば参加していただくというのも施設の目的の一つです。そこから利用者の方のコミュニケーションが広がり、市民活動や趣味を始めるきっかけになるかもしれません」

施設では年間100万人の利用を目標として掲げており、取材時(10月上旬)には平日平均利用者数3500人、土日平均5700人とのことで、滑り出しは好調のようだ。

次回は施設の特長と、担当課の皆さんによる人の流れを生み出すための取り組みについて紹介する。

【取材協力】
◆岐阜市市民参画部ぎふメディアコスモス事業課


◆岐阜市教育委員会図書館



【関連リンク】

◆みんなの森ぎふメディアコスモス


(左上)市民活動交流センター (左下)みんなのギャラリー (右)せせらぎの並木 テオニオ(左上)市民活動交流センター (左下)みんなのギャラリー (右)せせらぎの並木 テオニオ

2015年 11月03日 11時00分