1年の始まりの日の由来は3つある?
冬至といえば、1年で一番夜が長い日。この日から徐々に昼が長くなり、半年後には夏至がやってくる。
古代のゲルマン民族は冬至にあたる日を「ユール」と呼んで祝い、実質的には1年の始まりと考えていた。ちなみにグレゴリオ暦では1年の始まりは1月1日だが、その日は冬至の後の最初の新月の日のため1年の始まりの日になったと言われている。
農耕や牧畜を営んでいたとされるゲルマン民族が、冬至を1年の始めとしたのはなぜだろう。
それは、太陽に対する信仰と深い関係がある。ゲルマン民族の神は戦争と死の神オーディンを最高神として、雷神トールや豊穣の神フレイヤなど複数存在したが、太陽の存在は別格で、1年で最も太陽の勢いが衰える冬至を、次の日から太陽の復活する日と考え、神々に捧げものをし、盛大に祝ったのだ。
クリスマスもキリスト教宣教師が布教する際、ユールの祭りをキリスト教の祭りとして取り込んだからだと言われている。ゲルマン民族にとってユールはとても重要な祭りだったので、キリストの誕生日とし、重要な祭日としたのだ。実際、新約聖書のどこを読んでみても、イエス・キリストの誕生日がいつであるか、明記されていない。
中国では、冬至を「一陽来復」と呼ぶ
中国では、冬至を「一陽来復」とも呼ぶ。
これは『易経』にある言葉で、易は陰と陽の爻(こう)6本を組み合わせて64種類の卦(け)をつくり、それぞれに意味を持たせたもの。「一陽来復」は、上の5つの爻が陰、一番下の爻が陽の卦で、陰が極まった後、陽が一つ戻ってきたことを表した卦だ。
古代の中国では、冬至の日は仕事を休んで小豆粥を食べ、お酒を飲んで祝っていたらしい。その風習は日本にも伝播し、小豆の入った粥を「冬至粥」と呼んで、冬至の日に食べる風習も残っている。
小豆を食べるのは、赤は邪鬼を祓う色と考えられていたからだろう。神社の鳥居が朱色に塗られているのはそのせいだし、「あかんべぇ」で目の下の赤い部分と赤い舌を見せるのは、本来この仕草が邪鬼払いのまじないだったからだという説もある。
冬至に食べると良いもの
日本には、冬至の日にカボチャを食べる風習があるが、なぜだろう。
「阿吽(あうん)」という言葉は、サンスクリット語の呪文の一つだが、古代インドで「阿」は口を開いて最初に出す音で、宇宙の始まり。だから「陽」の音とされる。そして「吽」は口を閉じて最後に出す音で、宇宙の終わりを意味し、「陰」だ。冬至は陰の極まる日であり、「吽」とは関わりが深いから「ん」のつくものを食べると、「うん(運)がつく」と縁起担ぎをされたのだ。
だから本来は「にんじん」でも「だいこん」でも良いのだが、カボチャは「なんきん(南瓜)」とも呼ばれ、北半球で南は日当たりの良い「陽」の方角なため、陰から陽に向かう冬至の日には最適だと考えられたようだ。また、カボチャは長期間保存でき、栄養価が高く風邪予防になるのも、冬至の日の食べ物とされた理由だろう。
また、「冬至」の「と」にちなんで、「とのつく食べ物を食べると良い」とする地域も。この地域でも、「とうなす」の別名であるカボチャを食べると良いとされる。「とうふ料理」として、湯豆腐を食べることも多いようだ。ほかには、食物繊維が多いコンニャクは、体の中に溜まった悪いものを出してくれる「体の砂払い」と呼び、冬至の日に食べる風習もある。
奈良県では、いとこ煮を食べる風習も。他の地方にも「いとこ煮」とよばれる料理が伝わっているが、材料はさまざま。煮える時間の違うものを、煮えにくいものから追々入れて調理するものなら、「追々」と「甥々」をかけて、「いとこ煮」と呼んでよいようだ。奈良県のいとこ煮は小豆と南瓜を煮たもので、煮た後ですりつぶして甘味をつける地域もある。冬至に食べると風邪をひかないとされ、神棚や仏壇にも供えている。
こうして見ると、全国的に冬至の食べ物としてカボチャが認識されているのがわかるだろう。
「冬至」は「湯治」、「ゆず」は「融通」で生まれたゆず湯の慣習
冬至のイベントと言えば、ゆず湯を思い浮かべる人も多いだろう。
ゆず湯の習慣は江戸時代には始まっていたようで、銭湯の誕生とほぼ同時期らしい。「冬至」は「湯治」と音が同じで、「ゆず」は「融通」に通じるため、冬至の日にゆず湯に入れば、生活が融通よく運ぶと縁起担ぎされたのだそう。
東京ガス株式会社の都市生活研究所の調査では、ゆず湯に血行促進効果が認められるという。血流がよくなると、風邪の予防や冷え性・腰痛緩和に効果があるから、寒い冬至の日にゆず湯に入るのは、理にかなっているだろう。
ゆずを丸ごと入れるなら、多く使う方が香りが立つ。輪切り、あるいはいくつかにカットしたものを、ガーゼやネット、不織布などで作った袋に入れ、浴槽に入れると、入れるゆずの数が少なくても薬効成分が出やすいうえ、掃除しやすいからお薦めだ。ただし、柚子の果汁は酸性で、幼い子どもや敏感な人の肌には刺激が強すぎることがある。その場合は皮を剥いて天日で乾燥させ、風呂に入れると良いだろう。
冬至は祭日ではないが、太陽が復活する一陽来復の日とされ、「運(うん)」と深い関係のある。
カボチャを食べたりゆず湯に入ったりして、運が上向くよう、祈ってみてはいかがだろうか。
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