空き家問題二つの意味〜「増える空き家」問題と「増えた空き家がもたらす」問題

空き家問題は、論点が二つある。広義には「増え続ける空き家を減らすにはどのようにすれば良いか?」、狭義では「空き家が増える事による外部不経済にどう対処するか?」である。前者の問題を解決する方法は簡単だ。空き家を壊す(不要住宅の除却推進)か、空き家を埋める(中古住宅の流通促進)か、または、空き家を埋める事を促す為に、住宅を建てない(新規着工住宅の抑制)。これらの組み合わせしかない。もちろん、それらを実行するのが容易でない事はいうまでもない。

ただ、空き家が増える事自体には実害が無い。賃貸住宅、売却用住宅であれば、貸主、売主が不利益を被るだけだ。空き家問題が実生活に影響を及ぼすのは狭義の方である。

「空き家の外部不経済」とはなにか?

空き家は景観、防犯、安全などの多くの問題を抱える空き家は景観、防犯、安全などの多くの問題を抱える

外部不経済とは、ある主体の経済活動により主体とは関係のない第三者が不利益を被る事であり、「空き家の外部不経済」とは具体的には、管理の行き届かない家屋が並ぶ事による景観上の問題、不法投棄や放火等による防犯・治安上の問題、家屋倒壊による安全上の問題等である。

同じ空き家であっても管理されている住宅であれば、このような外不経済は起きない。借り手がついていない賃貸住宅や、買い手がつかない売却用住宅の多くは概ね管理はされている。外部不経済を引き起こす、すなわち管理が行き届かない空き家は、なんらかの問題で売る事や貸す事ができない住宅である。

遠隔地に住んでいるため放置されている。間取りや設備が陳腐になり借り手買い手がつかずリフォームするだけの追加投資を行う金銭的余裕がない。建築当時とは周辺環境が変わってしまい住宅としての需要がなくなった。そのような理由で管理されていない空き家は、次第に朽ちてゆき、防犯・治安上の問題等を引き起こす事になる可能性が高い。そのような事になる前に、解体すれば問題は起きないわけだが、所有者がそうしない理由はいくつかある。

空き家を解体したら税負担が6倍!〜所有者が空き家を解体しない理由

一つには、解体には少なからぬ費用がかかるという事だ。一戸建てを解体するには、規模や構造により一概にはいえないが、足場の設置、建物の養生、廃材の処理などで100万〜150万円程度は費用がかかる。更地後の利用用途が決まっていれば良いが、特に利用の予定が無い、もしくは利用したくても建設資金がないと行った場合は、わざわざ解体費用を払って更地にしたいという所有者は稀であろう。

また、税金の負担が増えるという事がある。土地にかかる固定資産税は「居住用家屋」がある場合200m2迄は6分の1、それ以上の部分は3分の1に軽減される。「居住用家屋」は、老朽化の度合いや実際に居住されているかどうかまで調査の上判断されているわけではないので、家屋があれば減免される場合がほとんどである。もし、空き家を解体してしまうと固定資産税は一挙に3〜6倍に増える。

解体するのに費用がかかる、解体すればランニングコストが3〜6倍に跳ね上がる。これでは所有者が進んで解体するわけがない。

自治体が「解体を促す仕掛け」とその課題〜行政代執行と解体費助成

空き家所有者が自主的に解体を行うメリットが無いとなると、空き家を解体するには、所有者以外の誰かが解体するか、所有者に解体させる仕掛けを考えるかしか無いわけで、地方自治体が定める「空き家条例」も内容がその2方向に分けられる。

まず「所有者以外の解体」を促進する条例としては、地方自治体による強制執行すなわち行政代執行を目指す条例がある。行政代執行とは、ホームレスのテント等を撤去するときにニュースでよく見かけるアレだ。平成23年3月には秋田県大仙市で、全国初めての行政代執行による空き家の撤去が行われた。このような条例のネックは、空き家の撤去をそれほど大量には見込めない事だ。個人の財産を行政が強制的に撤去するため、一つ一つの事案について慎重に議論が進められる。倒壊寸前の家屋の取り壊し等には威力を発揮するであろうが、空き家問題の解決としてはインパクトが小さいであろう。

「所有者に解体させる仕掛け」としては、解体費用の一部肩代わりを行政が行う条例がある。東京都足立区の条例等がそうである。老朽家屋の所有者に指導・勧告を行い、その勧告に従って家屋の撤去を行う所有者に対して解体費用の2分の1、木造家屋は50万円、非木造家屋は100万円を上限に助成がある。金銭的なメリットがあるため有効な仕掛けであるように見えるが、全く解体するつもりがない所有者はたとえ半分の出費でも出し気はないであろうし、解体するつもりの所有者の中には「勧告してもらう迄待とう」という輩が出てこないとも限らない。また、本来は所有者が負担すべき費用を税金で肩代わりする事は、区民の反発もあるだろう。

42/1742〜自治体の空き家対策はまだ始まったばかり

その点、新潟県見附市の施策は評価できる。「見附市空き家等の適正管理に関する条例」は大仙市同様、行政代執行で撤去できるという内容だが、同条例に従って空き家が撤去された土地に対して2年間に限り固定資産税の減免措置が用意されている。本来支払うべき費用を免除されるという点では解体費用の助成と同じであるが、固定資産税に関しては、所有者が空き家を放置していれば固定資産税の減免措置は受け続けられていたわけであり、解体費用助成よりは納税者の理解も得やすいであろう。

現在、空き家等の適正化に関する条例が制定されている自治体は全国で42(平成24年8月現在、京都市調べ)、全自治体1,742(平成25年1月1日現在、財団法人日本自治情報センター調べ)に対してわずか2%強である。まだまだ未整備である。今後、見附市のような例が増えていくのか、それともまた新しい別の手法が開発されるのか、引続きウォッチしていきたい。

ただ、これが完全に整備されたとして、それは対症療法であり、「撤去すべき空き家」が減るだけで、その予備軍は依然として存在し続ける。「空き家の外部不経済」を阻止する為には、「空き家を埋める」事について効果的な対策を実施する必要がある。そのあたりについてはまた次回取り上げたい。


【参考URL】
■大仙市空き家等の適正管理に関する条例
http://www.city.daisen.akita.jp/content/reiki_int/reiki_honbun/r154RG00001605.html
■足立区老朽家屋等の適正管理に関する条例
https://www.city.adachi.tokyo.jp/k-anzen/machi/taishinka/taisaku-rokyukaoku.html
■見附市空き家等の適正管理に関する条例
http://www2.city.mitsuke.niigata.jp/database/reiki_int/reiki_honbun/e411RG00000995.html
■見附市老朽危険空き家等の所在地に係る固定資産税等の減免に関する要綱
http://www2.city.mitsuke.niigata.jp/koukai/cruiser2/kouzi/kouzi/mitsukesikokuzi/2012/119.pdf

2013年 12月04日 08時53分