2017年10月から新しい住宅セーフティネット制度が施行予定

2017年7月10日に福岡県自治会館で開催された国土交通省主催の「新たな住宅セーフティネット制度に関する説明会」。会場には定員の300人近い人々が集まった2017年7月10日に福岡県自治会館で開催された国土交通省主催の「新たな住宅セーフティネット制度に関する説明会」。会場には定員の300人近い人々が集まった

今年2017年4月26日、「住宅確保要配慮者に対する賃貸住宅の供給の促進に関する法律の一部を改正する法律」、つまり現在の住宅セーフティネットの一部を改正する法律が公布された。2017年10月25日に施行される予定だ。
2007年に制定された住宅セーフティネット制度では、低額所得者、被災者、高齢者、障害者、子どもを育成する家庭、その他住宅の確保に特に配慮を要する「住宅確保要配慮者」に対する賃貸住宅の供給促進に関する施策の基本事項等を定めている。
国はこの制度に基づき、これまで公営住宅、民間住宅を活用した借上公営住宅や民間の土地所有者等が建設する地域優良賃貸住宅などを供給し、民間賃貸住宅の賃貸人、賃借人双方に対して必要な支援をする居住支援協議会の設置などに取り組んできた。

今回の新たな住宅セーフティネット制度では、国や地方公共団体が登録住宅の改修や入居負担軽減、居住支援協議会等による入居支援活動等の支援を行なうとしているが、この改正にはどのような背景があり、具体的にどのような点が変わったのだろうか。
今回は、7月10日に福岡市で開催された国土交通省主催の説明会の内容から、新たな住宅セーフティネット制度についてご紹介したい。

増加が予想される住宅確保要配慮者に対し、空き家の活用に着目

住宅セーフティネット制度を考える上でまず把握しておきたいのが、住宅確保要配慮者の現状である。国土交通省によると、今後の10年で65歳以上の単身者は約100万人増加する推計があり、このうち民間の賃貸住宅入居者は22万人としている。
また、厚生労働省によれば、平成29年2月の生活保護受給世帯数は163.1万世帯と、20年前の平成9年の63万世帯と比べて約2.5倍に増加している。特に平成29年2月の生活保護受給世帯数のうち、65歳以上の高齢者世帯は51%を占めており、このうち9割近くが単身世帯だという。
また、若者・子育て世帯について見てみると、30代の給与は1997年の平均年収が474万円に対し、2015年は416万円とピーク時から1割減。収入が低く狭い家しか借りれない結果、家の狭さを理由に子どもを増やせない夫婦が増えているという。特にひとり親世帯は低収入の家庭が多く、収入が減少する世帯の増加は社会問題にもなっている。

日本の総人口が減少していく中、将来的に公営住宅を大幅に増やすことは難しい状況であるが、一方で民間の空き家や空き室は増加傾向にある。こうした空き物件を活用し、住宅確保要配慮者向けの住宅を確保できないか。そこに目を向けたのが今回の新しい住宅セーフティネット制度なのだ。

高齢者世帯の推移(出典:国土交通省『住宅セーフティネットを巡る現状と課題』)高齢者世帯の推移(出典:国土交通省『住宅セーフティネットを巡る現状と課題』)

住宅確保要配慮者の入居を拒まない「登録制度」とは

高齢単身者や生活保護受給者などの人々が民間の賃貸住宅に入居するのは、家賃滞納や孤独死などの貸し手側の不安などもあり難しい現状がある。実際に住宅確保要配慮者の入居に対し、大家はどのような意識があるのであろうか。
日本賃貸住宅管理協会による「家賃債務保証会社の実態調査報告書(2014年度)」によると、家賃滞納、孤独死、事故・騒音などの不安から、ある一定数の大家は、住宅確保要配慮者の入居に対して拒否感を感じていることがわかった。割合としては、高齢者世帯に対しては約6割、障害者に対しては約7割、外国人に対しては約6割、子育て世帯に対しては約1割。ほとんどが半数を超えている結果となった。

また、少子高齢化や人間関係の希薄化などを背景として、家賃債務保証会社による保証のニーズが高まっている。家賃債務保証会社は、家を貸したい人から委託を受けて家賃の支払いに係る債務を保証する会社である。賃貸借契約の際に家賃債務保証会社を利用する割合は、平成22年には39%だったのが平成28年には約60%に増加している。今後もその増加が見込まれるが、住宅確保要配慮者が“審査落ち”で保証を断られるケースもある。
そこで、新しい住宅セーフティネット制度では、"住宅確保要配慮者の入居を拒まない賃貸住宅"を、都道府県や政令指定都市、中核市に登録する「登録住宅(※)」とし、その中で特に住宅確保要配慮者専用の住宅とする場合には、改修費の補助や家賃債務保証料と家賃の低廉化の補助を国と地方公共団体が行なうことが可能な制度としている。また、これまで福祉関係者が行なってきた住宅確保要配慮者の居住支援は、都道府県が指定することで居住支援法人として家賃債務保証や要配慮者への情報提供・相談、見守りなどを実施することができるようになり、これらのうち一定の居住支援活動に対する補助を行なうことも可能になった。

※登録の際には「障がい者の入居は拒まない」「低額所得者の入居は拒まない。ただし、生活保護受給者については住宅扶助費など代理納付がされる場合に限る」など、住宅確保要配慮者の範囲を限定することが可能。

「住宅確保要配慮者の入居に対する大家の意識」(出典:国土交通省住宅局『家賃債務保証の現状』)「住宅確保要配慮者の入居に対する大家の意識」(出典:国土交通省住宅局『家賃債務保証の現状』)

家主と住宅確保要配慮者を円滑にマッチングさせる支援も

最後に、住宅確保要配慮者向けに民間賃貸住宅の情報発信、紹介・斡旋、そして民間賃貸住宅の大家さんに対して住宅情報の提供などを行なっている居住支援協議会についてご紹介したい。
2017年8月末時点で、全国に69協議会が設立されているこの協議会は、不動産関係団体、居住支援団体、地方公共団体(住宅・福祉部局)などから構成されている。

「豊島区居住支援協議会」では、空き家・空き室とシングルマザー世帯をマッチングする「ひとり親家庭支援事業」などを行なっている。「京都市居住支援協議会」では、65歳以上で一人暮らしをする単身高齢者を対象に、不動産事業者による低廉な住まいと社会福祉法人による見守りサービスなどを一体的に提供。「大牟田市居住支援協議会」では、地域に点在する空き家の改修や活用方法などを検討するとともに、住宅確保要配慮者の居住・生活支援や入居・生活相談に応じている。

上述したのは、全国にある居住支援協議会のほんの一例だ。そもそも居住支援ニーズの多くは「同居家族がいない」「人間関係・社会とのつながりに課題がある」「経済的に頼れる人がいない」など社会的孤立と深い関係がある。また、居場所や仲間づくり、自立支援、シェアハウス内における食事の提供や共同生活の調整役を行なっている団体もある。

日本の総人口が減少し、低収入世帯や高齢単身世帯が一定数を占めていく中、国の政策に頼るだけでなく、各個人がこの問題に向き合っていかない限り、終わりのない課題として進行し続けてしまうかもしれない。
この住宅セーフティネットの改正は、身近に高齢者の単身世帯はいないだろうか?子育てをしながら一所懸命働いているシングルマザーはいないだろうか?と立ち止まって辺りを見渡し、孤立している人がいないかどうか考える機会を与えてくれたように思う。この課題を他人事とせず、将来の自分にとって身近な問題となるかもしれないと捉える意識こそが、住宅セーフティネットを発展させる力になるのかもしれない。

2017年 09月23日 11時00分