家の中における感染対策を考える

この夏、特によく耳にした腸管出血性大腸菌O-157による集団食中毒。食中毒というと気温が高い夏場だけのもので、冬場は起こりにくいものと考えられていないだろうか。しかし、今年10月に入ってからも、前橋市が腸管出血性大腸菌O-157により同市の男性が死亡したと発表している。また、ノロウィルス食中毒・感染症のように冬季を中心に猛威を振るうものがあったり、原因となる物質も様々で、一年中注意が必要であるようだ。また、発生した食中毒のおよそ1割が家庭で起こっているのである。(図参照)

ウィルス感染症は、初夏頃からの手足口病、ヘルパンギーナ、プール熱、秋から冬にかけて、まさにこれからの季節はインフルエンザウィルス、RSウィルスなど、一年中注意が必要で気が抜けない。小さい子やお年寄りは特に心配だが、家族のだれが倒れても大変である。もし家族の誰かが感染・発症したとしても、家庭の中でこれ以上広がることはできる限り防ぎたい。

そこで、目黒区保健所に家の中の感染対策としてどのようなことができて、どのような点に注意すべきかを聞いてみた。

出典:厚生労働省平成27年度食中毒発生状況(上図)、政府広報オンライン(下図)出典:厚生労働省平成27年度食中毒発生状況(上図)、政府広報オンライン(下図)

まずは予防!感染症・食中毒にかからないためにできること

出典:政府広報オンライン出典:政府広報オンライン

【①感染症予防】

■感染予防の基本は、手洗いである
手洗いの手順(左図:政府広報オンラインより)のとおりにしっかりと手を洗う。そして近年では、手についているウィルスをより減らす効果があることから、この手順を2度繰り返す2度洗いが薦められている。
帰宅後、食事前、トイレの後などの適切なタイミングでしっかりと手を洗うことが大事である。

■生活習慣を整え、身体の抵抗力を高める
栄養のバランスのとれた食事や規則正しい生活、十分な睡眠や休息をとることが重要である。

■予防接種を受ける
感染症のなかには、予防接種で免疫をつけることで予防できるものが多くある。かかりつけ医に相談して、流行前や決められた時期に受けることで、重症化を防ぐことができたり、発症をある程度抑えることができたりする。

【②食中毒予防】

前述のノロウィルスや腸管出血性大腸菌O-157、作り置きのカレーなどで問題となる加熱しても死滅しないウェルシュ菌、腸炎ビブリオ、カンピロバクターなど、食中毒の原因となる細菌やウィルスは多種多様である。
目黒区保健所食品衛生係によると、比較的症状が軽微なものまで含めると食中毒の20%は家庭で起きているといわれているとのことだ。家庭での感染対策を考える場合も、食品衛生という観点で食中毒をしっかり予防することが大切である。

家庭での食中毒予防の3原則は、細菌やウィルスを「つけない」「ふやさない」「やっつける」である。

■つけない
調理前に手をしっかりと洗う。ここでも2度洗いが効果的である。清潔なタオルやペーパータオルでふき、よく乾かす。

まな板などの調理器具を常に清潔にしておく。熱湯消毒・煮沸消毒や塩素系漂白剤で消毒する。消毒前には汚れをおとしてよくすすいでおくことが大切である。消毒後はよく乾燥させる。

包丁、まな板は用途に応じて使い分けする。少なくとも、野菜や果物など生で食べる食品や調理済みの食品を扱うものと、生の肉や魚を扱うものとは区別する。「二つ用意しなくても、一つのまな板の隅に割り箸などをひくなどして浮かせ、表面と裏面とで区別することで用途に応じた使い分けが可能」とのこと。なるほど、これならすぐにできそうである。

■ふやさない
室温は食中毒菌が好む温度である。室温で放置しておくと、食中毒菌がどんどん増えてしまうので、食品を長時間、常温で放置しないように心がけ、加熱調理したものはなるべく早く食べるようにする。作りすぎて余った食品をやむをえず保管する場合や、家族で食事時間が異なるなどの理由ですぐに食べられない場合は、別容器に小分けにして移し替えてすぐ冷蔵庫にいれる。

そして、冷蔵庫内の温度管理(10度以下)をしっかりする。ただ、低温でも食中毒菌が増えないだけで死滅するわけではないので、冷蔵庫の過信は禁物である。

■やっつける
食材を十分に加熱する。中心部の温度が75℃で1分間以上の加熱が目安である。

感染を広げない! 人から人への感染拡大を防ぐためにできること

原因となる菌やウィルスの種類によっては、明らかな症状がでる前の潜伏期間中にすでに体外に排泄される場合があったり、感染していてもまったく症状のない不顕性感染例や軽い症状のみの軽症例となることもあり、自分が感染しているとは気付かないまま感染源となってしまう可能性もある。
また、家庭においては、明らかな症状がでている場合であっても(特に子が感染症にかかった時などは)充分な感染対策をしないで、看病しがちである。その結果、看病する家族側も感染して体調を崩してしまうこともある。日頃から予防を含めて注意をし、もし家族の誰かが感染してしまった場合でも、うつしてしまうなどのないよう防いでいきたい。

■手洗いを徹底する
ここでも手洗いは基本である。二次感染を防ぐため、トイレを使用した後は必ず石鹸で手を洗う。手洗い手順のとおり2回洗いをこまめに行う。更にタオルの共用はやめ、個人個人で専用のものを使用する。

■マスクを着用する
咳やくしゃみがでている場合は、家の中でもマスクをする。マスクをしていない時に咳やくしゃみがでそうになったら、ハンカチや衣服などで口と鼻を押さえ誰もいない方向に顔を向ける(咳エチケット)。

■トイレの消毒
トイレを常に清潔にし、ドアノブや電気のスイッチなども消毒する。清掃の際にはゴム手袋をはめる。また、「普段から、流す前にトイレの蓋を閉めることを習慣にすることでも、菌やウィルスの周囲への飛散を少なくでき、二次感染防止に有効です」とのことである。習慣にしたい。

■便や吐瀉物など汚物の処理
必ず使い捨てのゴム手袋・マスク・エプロンを着用して処理するようにする。汚染物の処理をするための消毒剤やバケツ、手袋、マスク、エプロン、ペーパータオルやビニール袋などは、ひとまとめにしてあらかじめ準備し、いつでもすぐに使えるようにしておく。

■お風呂で湯船に浸かる前におしりをしっかり洗う
明らかな症状がでていない時でも菌やウィルスが排泄されていることがあるので、湯船に浸かる前にまずよくおしりを洗うことを日頃から習慣とする。また、下痢などの症状がある時は一番最後に入浴するようにする。入浴後に身体を拭くタオルも共用はしない。

冬場の季節で特に気を付けること

冬の季節、インフルエンザウィルス・RSウィルス・ノロウィルス・ロタウィルス・流行性耳下腺炎(おたふくかぜ)・マイコプラズマ肺炎・溶連菌感染症など、あげればきりがないほど様々な感染症が流行期を迎える。これからの季節は空気が冷たくなり乾燥しやすくなる。寒さで部屋の窓をしめきりがちになり、暖房などによりさらに部屋の空気が乾燥してしまう。ウィルスが繁殖しやすい環境になりやすいということだ。

部屋の換気をこまめに行うことと適切な温度と湿度を保つことが大切となる。部屋の換気に関しては、窓を一箇所開けただけでは空気の入れ替えが行われないので、空気の入り口と出口を意識して換気を行うことが重要。また、窓の開け方が少ないと、換気の効果はあまり期待できないということにも注意をする。

冬期の適切な室温は20から23°C、湿度は約60%である。リビングや寝室など長く過ごす場所に湿温計を用意しておくと、意識しやすい。湿度が低い場合は、加湿器や清潔な濡れタオルをかけておくなどして部屋の湿度が60%くらいになるように心がける。ただ、加湿器を使用する際は加湿器内部を常に清潔にしておく。また、加湿のしすぎも家の結露やカビの原因となるため注意が必要だ。

前述した手洗いの徹底など感染症を予防し家庭内での二次感染を防ぐためにすべきことに加え、正しい換気と適切な湿温管理でこれからの季節の感染症の流行に備えたい。

家の中の感染対策を実践する

以上を踏まえ、家庭の中でできる感染対策を紹介する。

■キッチン
・手洗い用具を揃える。
・共用だった手拭きタオルをやめ、ペーパータオルを置く。
・アルコールと次亜塩素酸系の消毒を用意する。
・まな板を用途に応じて使い分ける。
・余った食べ物を移し替える保存容器を揃える。

■洗面台
・保健所でもらった手洗い手順を目に入りやすい位置に貼り付ける。
・タオル・コップも個人専用のものを用意する。

■トイレ
・手洗い石鹸とペーパータオルを置く。
・アルコール消毒を常備して気がついた時にすぐ掃除をして清潔を維持するようにする。
・流す前に蓋をする習慣にする。

■その他
・いざという時のためすぐ対応できるように、マスク・ビニール手袋・ビニール袋・使い捨てエプロン・消毒液の衛生セットを一つにまとめ、常備するようにする。
・リビングと寝室に室温計を置く。
・こまめに換気をする。

注意が必要なのは、感染症に対する考え方や捉え方は多岐にわたり様々で、上で挙げたことはほんの一部分にすぎないし絶対でもないということである。また”対策”というものは、ここまでやったから安心ということはないことも忘れてはならない。

できる限り対策を行ったら、過信や油断はせずしっかりと自身や家族の体調に意識をむけることが重要。日々の生活の中で心がけるべきことを心がけ、少しでも体調の変化を感じたら病院にかかり、早期診断・早期治療・感染拡大防止に務めることが大切となる。

各地の保健所には分かりやすく書かれたパンフレットなども各種揃っているし、窓口での相談も受け付けている。また定期的に講習会も開催しているので、分からないことや不安なことがあれば足を運んでみるとよいだろう。


取材協力:目黒区保健所
参考資料:目黒区保健所ホームページ、厚生労働省ホームページ、保育所における感染症対策ガイドライン(厚生労働省)、家庭や施設における二次感染予防ガイドブック(東京都感染症情報センター)

実践できる家庭での感染対策実践できる家庭での感染対策

2017年 11月18日 11時00分