サービスや価格は千差万別。どんな高齢者住宅に入りたい?

高齢者住宅情報センター 大阪 相談員のみなさん。(中央)大阪センター長 米沢なな子さん高齢者住宅情報センター 大阪 相談員のみなさん。(中央)大阪センター長 米沢なな子さん

高齢者向けの住まいは、入居一時金がいらない公的な特別養護老人ホームから、入るのに数千万円もの一時金がいる民間の高級有料老人ホームまでさまざまである。

厚生労働省の介護給付費実態調査月報によると、全国で約9,100件までに増えた有料老人ホームの約8割は「介護が必要な人向け」のワンルームタイプだという。2011年の「高齢者住まい法」の改正でサービス付き高齢者向け住宅(以下、サ高住)が登場。現在、その数は5,000件を超えるほどに急増している。その他、ケアハウス、シニア向け分譲マンションなどもあり、高齢者の住まいは多様化している。

高齢期の住まいは実際に何を基準に選べばいいのか?その一端を知るため、高齢者住宅情報センター主催のセミナー『どんな高齢者住宅に入りたい?』に参加してきた。
講師は、同センターの大阪センター長である米沢なな子さん。18年間でおよそ1,000件の高齢者住宅を見学し、幅広い見地から入居や介護相談を行うアドバイザーでもある。

「住み替え」は、元気なうちから考えよう

高齢者といっても、健康状態は人それぞれ。高齢者住宅は、元気なうちから入居する「自立型」と介護が必要になってから入居する「介護型」がある。

「ひとたび介護が必要な状態になってからでは、自分の好みに合う所に住めるとは限りません。健康状態によっては、自ら介護施設に入ることは難しく、周りの意向で入れられてしまうことになってしまうからです。自分にあった居場所を選ぶ住み替えは、元気なうちがベストです」

高齢者の約8割が持ち家であることから考えると、住み替えは現状よりも狭いスペースで暮らすことになる。家財道具の整理や処分には、それなりの体力や気力も必要だ。自宅に誰も住む人がいなければ、売却して住み替えの入居費用に充てることも考えられる。

「将来、介護で子どもに迷惑をかけたくない」という理由で、同センターを訪れ熱心に質問する人が増えているという。子どもは、親が元気なうちにしっかりとこれからの意向を聞いておくことも大切だと言えよう。

「高齢者人口は年々増えているものの、要介護認定率はその2割以下と変わりません。言い換えれば、65歳以上の高齢者の8割はお元気だということです。しかし、データで見るように80歳以上になると要介護認定率がぐんと上昇します。つまり、遅くとも75歳ぐらいまでには終の住まいを選び、決断するべきでしょう」と、米沢さんはアドバイスする。

【出典】厚生労働省 介護給付費実態調査【出典】厚生労働省 介護給付費実態調査

知っておきたい「サービス付き高齢者向け住宅」のこと

高齢者の住まいの新たな選択肢として注目を集めているのが、サ高住である。
しかし、サービスが付いた住宅というより、実際には介護サービスありきで、住宅というにはあまりに狭いものが多い。国の施策として、事業者に補助金が出されていることもあり、これからも数を増やしていくと考えられている。だが、高齢者ニーズに合ったものは少ないという。

「サービス付き高齢者向け住宅という言葉の響きから、手厚いサービスを期待してしまいますが、実際には安否確認と生活相談サービスが定められているだけです。それ以外は、必要に応じて外部の事業者にたのむ必要があります。決してサービスが住宅に付いているわけではありませんよ。例えば、夜間に職員は在駐しているのか?救急車を呼んだ場合、付き添いはあるのか?など、気になる箇所はしっかり確認しておいた方がよいでしょう」

介護付有料老人ホームは、介護が必要になった時のホーム契約として、食事の提供や入浴介助など職員がしてくれる。気になる介護費用は、「要介護度」ごとに定められおり、定額サービスのため家族も安心である。

一方、サ高住は、自由度が高いというメリットはあるものの、必要に応じて個別契約をしなくてはならない。運営母体もさまざまなので、介護や医療に携わってきた経歴などは、ひとつの判断材料になるという。

同協会が企画を支援するサ高住「ゆいま~る」シリーズは、高齢者参加型で設計のコンセプトから一緒に練り上げていくという。担当者が「地域プロデューサー」として施設に住み込み、地域連携を育んでいくことが特徴だ。これまで、地域に開かれた食堂や図書館の開設をはじめ、入居者の得意分野を活かした仕事などを生み出し、地域住民との助け合いを進めている。

居住者主体を心がけるサ高住「ゆいま~る」シリーズ。現在、大阪西淀川区に建築予定の「ゆいま~る福町(仮)をつくる会」が開かれている。すでに入居者運営のカフェやガーデニングの案が出ている居住者主体を心がけるサ高住「ゆいま~る」シリーズ。現在、大阪西淀川区に建築予定の「ゆいま~る福町(仮)をつくる会」が開かれている。すでに入居者運営のカフェやガーデニングの案が出ている

老後の楽しみと安心を手に入れるために

人生を最期まで豊かにするためには、自分にあった居場所選びが大切である。
では、住み替え先を選ぶ際に注意するべき点は何か?

「高齢者住宅の種類に迷うことなく、仕組みやサービスなど内容で選ぶべきです。スタッフの人員配置が手厚ければ、費用設定はそれなりに高くなります。見学する時は、スタッフの対応や入居者の表情、自分が生活するイメージがもてるかどうかも確認のポイントでしょう」
いかにセカンドライフを有意義なものにするか、事業者の理念を確認することも重要だという。

「介護が必要になったからという理由だけで終の住まいを選ぶことは、ちょっと寂しいことですよね。例えば、阪神ファンが集まってテレビ観戦し、祝杯をあげるなどのコミュニティがあれば楽しく盛り上がる。同じ場所で暮らすことで、趣味を共有したり、語りあったりすることで、安心感も得られるのでは」と、米沢さんは笑顔で語る。

長寿社会となり、老後の期間は長くなっている。自助と公助の間にある、“互いに支えあって暮らす”という選択肢がこれからもっと増えていくことに期待したい。

取材協力:一般社団法人 コミュニティネットワーク協会 高齢者住宅情報センター

里山にあるサ高住「ゆいま~る那須」。地域に開かれた食堂は、地元食材をつかった家庭的な食事が好評。“多世代がともに暮らせるコミュニティづくり”が同協会の理念だという里山にあるサ高住「ゆいま~る那須」。地域に開かれた食堂は、地元食材をつかった家庭的な食事が好評。“多世代がともに暮らせるコミュニティづくり”が同協会の理念だという

2015年 01月29日 11時07分