通勤しながら可能な2週間~1ケ月の「トライアルステイ」

品川から約1時間。アクセスの良さで観光や別荘地としても名所に品川から約1時間。アクセスの良さで観光や別荘地としても名所に

東京・品川から京浜急行で玄関口となる「三崎口」まで約1時間。緑と海に囲まれ多くの観光客が訪れる三浦市。今の時期は特に、油壺や三浦海岸エリアは海水浴客で連日大賑わいだ。

そんな三浦市が昨年(2015年)より開催しているのが、市内への移住検討者に向けた「トライアルステイ」である。全国的に多くの自治体でお試し居住を展開しているが、その形態は1泊2日の田舎体験的なものから数ケ月の長期滞在までさまざまだ。

ここ三浦市が実施する「トライアルステイ」は、2週間~1ケ月と会社勤めでも参加しやすく、かつ地域の雰囲気も掴めるちょうどよい期間。大好評だった昨年の実施をうけ、今年も秋にトライアルステイが開催される(募集は既に終了)。

また、さらに移住を促進するための施策として、今年は2泊3日の「リノベーションスクール」も開催するという。

トライアルステイの魅力とリノベーションスクールなどによるまちづくり。移住者に向けてさまざまな魅力をアピールする三浦市の取り組みについて、三浦市役所に取材をしてきた。

観光客は多いのに「消滅可能性都市」!?

東京生まれ・東京育ちの筆者は、小学生の頃の夏の思い出といえば家族で東京近郊の海水浴に出かけたこと。民宿に泊まって朝は潮干狩りをして1日中海で泳ぎまわった。もちろん三浦海岸にも何度も訪れていて、帰りには必ずスイカを買って帰った思い出がある。現在も、三浦海岸や油壺といえば海水浴客で賑わう。東日本大震災の影響などから一時期は海水浴客が減少したそうだが、近年はその観光客も戻ってきた。

にも拘らず実はこの三浦市、神奈川県内の市部で唯一の「消滅可能性都市」とされているそうだ。

「かつてあった大企業の支社などが、三浦半島から撤退し居住者が多く流出したことで市内人口が変動しました。また、観光客も多く来ていただいていますが、都市部からのアクセスが良いため逆に滞在時間は長くありません。そのため、観光産業での働き口というものも大幅に増加することはなく、人口の増加にはつながらないのです」と語るのは三浦市役所の徳江 卓氏だ。

最近では「三崎まぐろ」のブランド化にも成功し、夏だけでなく、秋やお正月にも多くのイベントが開催され観光客を呼んでいる。賑わっている街という印象があるのだが、交通の便の良さが逆に仇となり滞在時間という点では今一つなのだ。

また、高齢化による「空き家」増加の問題は、三浦市でも例外ではない。まだまだ住める物件が多いのだが利用はなかなか進まない。そこで、三浦市が東洋大学とR不動産株式会社と共同で行っているのが「三浦トライアルステイ」だ。

「人口増加と空き家問題の両面に取り組んだのがトライアルステイです。短期的なものや逆に長期的なお試し移住は多くの自治体でも取り組んでいましたが、中期的な規模は珍しいものでした。都市部からアクセスの良い三浦市だからこそ可能な中期的なトライアルステイは二拠点居住などのニーズにも訴求できると考えたのです」(徳江氏)

自然が豊かな三浦市は、海ばかりではなく森の散策にも楽しい場所自然が豊かな三浦市は、海ばかりではなく森の散策にも楽しい場所

バラエティ豊んだ物件とバスツアーや交流会も人気

実際にどのようなトライアルステイが行われたのか、昨年の状況を紹介しよう。

まずは物件だが、こちらは市内7軒の空き家が選定された。人気の高い木造の古民家や避暑地エリアの別荘として使われていた一軒家、そして3LDKタイプのマンションの一室などバラエティに富んでいる。どれも、冷蔵庫・洗濯機・電子レンジなど最小の生活用品は完備されていて、食器なども自由に使えるようにセッティングされている。

期間は以下の3つに分けられ、それぞれ2週間ずつ計21世帯がトライアルステイを実践した。
・第1期:2015年11月21日~12月6日
・第2期:2015年12月9日~12月23日
・第3期:2015年12月26日~2016年1月11日

応募世帯は76件にものぼりその中から単身者・ファミリー層がバランスよく選ばれ、年代も20~40代の若い世代が幅広く選出されたという。選定で重視された点の中には、三浦市から通勤可能エリアに勤務していること。または三浦市内で仕事をつくれそうな人という視点も加味された。

トライアルステイでは、単に居住をしてもらうだけでなく各期間で三浦市の魅力を知ってもらうためのバスツアーや地元住民との交流会も行われ好評だったという。バスツアーでは三崎口駅を出発点とし、マイクロバスで市の総合体育館(潮風アリーナ)、三浦海岸、直売所、キャベツ畑のよく見える岩堂山などを経由し、城ヶ島まで。城ヶ島からは渡船に乗る経験もする。

三浦市役所の小沼萌絵氏によれば、参加者の多くは自然の豊かさを三浦市の魅力として捉えていたそうだ。

「意外だったのは、キャベツ畑が人気でした。見慣れてしまっている私たちにとってはなんということない風景だったのですが、一面畑の景観が参加者の多くの方が『印象的だった』と感想をいただきました」

バラエティ豊んだ物件とバスツアーや交流会も人気

昨年の参加者の大半が移住や二拠点居住を希望

2週間のトライアルステイでは、参加者たちはそれぞれにこの街での住み心地をさまざまな角度から体験したという。

多くの人がまず試したのは、東京や横浜への通勤の可能性。もちろん、中には勤務地によっては通勤が難しく二拠点居住に視野を広げた参加者もいたというが、大方の参加者は十分通勤可能エリアであることを実感した。始発駅となる「三崎口」利用者は特に、ゆったり座りながら通勤できることから、仕事を片付けたり読書などの時間が持てると好評だったという。

子育て世代に関しても、滞在期間中に保育施設などを見学し、待機児童「0」の環境を確かめ、実際の移住イメージを膨らますことができたという。結果、トライアルステイの参加者は大半が移住、もしくは二拠点居住を希望することになったそうだ。参加者の中には東京との二拠点居住の準備を進め、まもなく実現させる方もいるという。

ただし、移住や二拠点居住への希望が多いものの、なかなか実現にこぎつけるケースは少ない。というのは、昨年のトライアルステイの物件は一般的に市場に出ているものでなく、例え気に入ったとしてもそのまま継続入居ができなかったからだ。

今年はその反省を踏まえ、一般市場に流通する物件をトライアルステイの物件として採用。希望者にはそのまま継続して賃貸契約・購入ができるようにしている。また、トライアルステイの期間としても「もう少し長く滞在したい」との声に応え、3期間中第1期は1ケ月の期間延長を実施する。

【2016年トライアルステイの実施期間】
・第1期:2016年9月17日~10月16日
・第2期:2016年10月22日~11月6日
・第3期:2016年11月12日~11月27日

昨年のトライアルステイ参加者は、希望者を募って漁船での「釣り」も楽しんだとか昨年のトライアルステイ参加者は、希望者を募って漁船での「釣り」も楽しんだとか

より魅力的な物件をつくるため、リノベーションスクールも開催

今回お話しを伺った三浦市役所 政策部 市長室(企画誘致担当)室長 兼 行革担当課長 徳江 卓氏(写真左)と同じく三浦市役所 政策部 市長室 特定事業推進グループ  主事  小沼萌絵氏今回お話しを伺った三浦市役所 政策部 市長室(企画誘致担当)室長 兼 行革担当課長 徳江 卓氏(写真左)と同じく三浦市役所 政策部 市長室 特定事業推進グループ 主事 小沼萌絵氏

また、もう1つ昨年のトライアルステイを受けて施策された企画がある。それが「リノベーションスクール@みうら」の開催だ。

現在昨年のトライアルステイ参加者は、継続して物件探しをしているというが、希望にマッチする物件に出会えていない現状もあるという。

「空き家は多いのですが、三浦市らしい例えば海に近い物件というのは賃貸料や販売価格が格安といった状況ではないのが現状です。そのため、移住希望者の条件にマッチングしにくい面もあります。移住希望者の中には、新たに三浦でまちづくりをしたいという志も持っている方も多く、株式会社リノベリングと共同でリノベーションスクールの開催を企画しました」(徳江氏)。

近年では、セルフリノベーションへの関心も高く、こうしたニーズも汲みながら遊休不動産の再生とまちづくりを模索しようというのがこのリノベーションスクールの狙いだ。2016年9月30日~10月2日の2泊3日のスクールでは、4つの遊休不動産を案件として、リノベーション事業プランを練り上げ、最終日にはオーナーに直接提案し、スクール後も提案をもとに事業化を目指すという。

自然の多い魅力的な環境、また都市部へのアクセスの良さというポテンシャルを持ちながらも「消滅可能性都市」に挙がってしまっている三浦市。その三浦市が取り組むトライアルステイやリノベーションスクールの施策はこれからどのように街を変えていくのだろうか。9月以降、今年トライアルステイの参加者宅を実際に訪れ、またリノベーションスクールの開催状況などもレポートする予定だ。

■取材協力
「リノベーションスクール@みうら」
http://re-re-re-renovation.jp/schools/rs_miura

2016年 08月31日 11時05分