拡大する民泊の立役者Airbnb

「特区民泊」や旅館業法の規制緩和によって、日本では適法な民泊がようやくスタートを切ったように思えるが、海外の民泊の動向はどうなっているのだろうか。海外の事情は、厚生労働省の"『民泊サービス』のあり方に関する検討会"においても詳細を共有し、議論の参考にされている。日本と同じく欧米でもすべての民泊が適法というわけではなく、規制当局との軋轢が生じているケースが多数存在するようだ。各国ではどのような規制が行われているのだろうか。

世界中で使われている民泊のマッチング・プラットフォームのAirbnb(エアビーアンドビー)。2008年にアメリカで誕生して以来、拡大の一途をたどり、今や191ヶ国、6万5000都市、300万の物件が登録されるまでになった。(2017年7月更新時)
いまや世界最大規模を誇るようになったAirbnbだが、2016年4月には「Live there(暮らしてみよう)」をコンセプトに、パーソナライズ機能を充実させた。ゲストの好みを把握し、理想の家、エリア、体験を紹介するオーダーメイドのマッチングができるようになった。エリア情報の提供も開始し、ありきたりな観光旅行ではなく、そこで暮らしているかのようなローカル体験ができる理想の旅が実現できるとしている。サービスを進化させ、次のステージに踏み出したという印象だ。

日本では、2016年4月14日に起きた熊本地震への対応が話題になった。Airbnbは被災地のホストに対して、避難者に無償で部屋を提供するよう呼びかけ、100部屋を超える提供があったという。アメリカでも2012年のハリケーン・サンディで多くの人が住居を失った際、同様の支援を行った。民泊は災害発生時に力を発揮する社会インフラとなる可能性を感じさせる。

アメリカでは、民泊の広がりと共に周辺産業にも注目が集まりはじめた。例えば、タオルやシーツの取り換え、清掃、部屋の点検をする事業者、鍵の受け渡しに使うロッカーの運営会社など。民泊関連の新サービスを提供する事業者が次々に立ち上がり、今後の経済成長に寄与することが期待されている。

ニューヨークでは法廷闘争にまで発展

ニューヨークでは民泊に関する情報を巡り、訴訟問題に発展したニューヨークでは民泊に関する情報を巡り、訴訟問題に発展した

そんなAirbnbだが、創業当初から順風満帆だったわけではない。貸した部屋が荒らされたというトラブルがクローズアップされることもあったし、ニューヨーク市では当局と法廷闘争にまで発展した案件もあった。ニューヨーク州では、宿泊施設の建設は州・市当局から許認可や検査を受ける必要があり、宿泊業を開始するには市への登録が必要となる。防火や構造について一般住宅よりも厳しい規定があり、この辺りの事情は日本と近いものだったといえる。

そのニューヨークでは、法的にグレーゾーンなまま拡大する民泊に規制を加えようと、2010年に州法が改正される。3戸以上の共同住宅では居住者が不在の場合、30日未満の短期滞在は違法となった。それでもAirbnbを利用した民泊が減る気配はなく、違法なホテル業が行われているとして、州の司法長官がAirbnbに対してホストの個人情報を提供するように命じた。これをAirbnb側が拒絶したことで、訴訟に発展。その後、個人を特定できない範囲で情報提供することで和解した。提供された情報を元に州が調査を行ったところ、Airbnbに掲載されている物件の7割が違法とされ、取締りが強化された。

アメリカでは州や市によって規制が大きく異なり、カリフォルニア州のサンタモニカ市では「ホスト不在の民泊は不可」と2015年に非常に厳しい規制が導入された。民泊のホストはビジネスライセンスの登録が必須となり、14%の宿泊税を納めなければならず、宿泊者がいる間、ホストは同じ住居で生活しなければならないとされている。違反者には500ドルの罰金が科せられる。これにより短期賃貸の8割を市内から締め出すことを当局は目指している。

比較的前向きなのはオレゴン州のポートランド市。共有型都市(シェアード・シティ)構想を掲げるAirbnbと2014年に提携し、Airbnbのサービスを認める代わりに観光振興で協力を得る方針を打ち出した。ホストは2年ごとに許可を得る必要があるものの、一戸建てでの民泊が合法となり、2015年には集合住宅でも認められるようになった。ただし、ホストは年間270日以上その住居に住む必要がある。貸出期間は年間30日まで。近隣住民への告知や、市当局による安全検査、ゲスト情報の記録と保管、宿泊税の徴収と納付といったルールも定められている。

宿泊施設の不足を補うために民泊を解禁

観光客を増やしたくてもホテルを建てるのは簡単ではないため、ポートランド市のように、民泊を観光振興の解決策として選択するケースが増えてくるだろう。実際、ホテル不足解消のために民泊を認めるようになったケースがいくつかある。2015年にペンシルべニア州のフィラデルフィア市が、ローマ法王の訪問にともなうホテル不足への対応として、住居専用地域での民泊を合法化した。貸出期間が連続して30日以上となる場合は許可が必要であったり、1年で合計180日以上の貸出が禁止されていたり、いくつか制約はある。他の宿泊施設と同じく8.5%のホテル税を納付する必要もある。

大きな国際スポーツイベントが続くブラジルの動向にも注目だ。2014年にブラジルでFIFAワールドカップの開催があり、宿泊施設の不足が予想された。そこで、試合が行われる12の自治体と観光省が市民に対して空き部屋をAirbnbを通じて提供するように呼びかけた。その結果、海外からの訪問客の5人に1人、実に10万人を超すゲストがAirbnbを使って宿泊することとなった。2016年のリオデジャネイロ・オリンピックではAirbnbが公式サプライヤーとなり、会場近くに2万件の部屋を用意する計画になっている。

同じ中南米で熱い視線が注がれているのは、キューバだろう。アメリカとの国交が54年ぶりに回復されたことが、大きく報道された。国交回復を受けて米国人観光客が急増すると考えられているが、十分な宿泊施設はない。そこで宿泊客の受け皿として、民泊の活用が期待されている。Airbnbでは2015年4月にキューバのホスト情報の提供が開始された。わずか1ヶ月で2000部屋を超える登録があり、大きな盛り上がりを見せている。


日本でも訪日外国人観光客の増加により、一部の都市ではホテル・旅館の予約が取りにくい状況になっている。2020年の東京オリンピックに向けて宿泊施設不足への対応は重要な課題となるため、民泊に関する規制がさらに見直されることになるかもしれない。

※この記事は「民泊JAPAN」クローズに伴って、同社にて運営するLIFULL HOME'S PRESSが著作権を引き継ぎ、使用許諾権に基づいて公開しています。情報は「民泊JAPAN」掲載当時(2016年5月2日)、一部データはページ更新時(2017年7月)のものとなります。

十分な宿泊施設が足りていないキューバでは、宿泊客の受け皿として、民泊の活用が期待されている十分な宿泊施設が足りていないキューバでは、宿泊客の受け皿として、民泊の活用が期待されている

2016年 05月02日 11時00分