同じアジア圏、文化の違いは住まいの違いにどう関わる?

日本の賃貸住宅で住み替えを検討した時、まずインターネットで検索したり不動産会社に行って物件を探す。内見し、物件が決まれば大家さんと契約を交わして、敷金・礼金と仲介手数料を支払い、毎月家賃を支払う。通常、2年間の契約期間の場合が多い。
…というのは日本でのごく一般的な流れだ。
しかし文化の異なる世界各国では、当然住まいに対する考え方や、住み替えの事情も異なってくる。日本の常識では考えられないようなしきたりを持つ国も多い。

では、他国の賃貸事情はどうなっているのだろうか?
今回は同じアジアにフォーカスし、日本のビジネスマンの海外赴任先でも多い、韓国・中国・シンガポールの賃貸事情について調べてみた。

【韓国の場合】退去時に全額戻ってくる?家賃制度の秘密

「韓流ブーム」はすっかり定着した感のあるお隣の国・韓国。その賃貸住宅の文化は主にお金の流れが大きく異るようだ「韓流ブーム」はすっかり定着した感のあるお隣の国・韓国。その賃貸住宅の文化は主にお金の流れが大きく異るようだ

お隣の国・韓国では、家賃の支払い方法に独特な文化を持つ。日本のように毎月家賃を支払うのではなく、入居時に保証金としてまとまった金額を支払い、月額の家賃は無料というのが長く主流となっている。この制度は「チョンセ」とよばれる。

納入した保証金は、基本的には退去時に戻ってくる。家賃が実質無料という事になるが、どのような仕組みになっているのだろうか?
銀行の利率が高く投資や資産運用が盛んな韓国では、家主が入居者から預かった「チョンセ」を運用し、退去までに利益を出すのが前提となっているのだ。実質家賃無料ならば入居者にとっては良い事ばかりにも聞こえるが、実は保証金が非常に高額。ソウルのような都市部では、日本円で数千万円もの大金が保証金として必要になることもある。

しかし最近では景気もあまり良くないため、「チョンセ」制度ではなく「ウォルセ」という日本のような月額家賃制度を利用する大家も増加しているという。ただその場合も、「チョンセ」よりも少額な保証金+毎月家賃を支払うという仕組みになっている。初期費用が用意できない場合は預ける保証金の額を下げて、家賃を上げるという方法もあるようだ。

【中国の場合】圧倒的な持ち家文化。賃貸住宅の大家と借主の関係は…

経済成長とともに不動産価格が高騰する中国。それを象徴するかのように高層の集合住宅も多く建設されている経済成長とともに不動産価格が高騰する中国。それを象徴するかのように高層の集合住宅も多く建設されている

日本では「持ち家か、賃貸か」という議論がよく起こる。平成25年の「住宅・土地統計調査」によると、日本の持ち家率は61.1%で約半分強といったところだ。一方、平成25年の中国社会科学院社会学研究所によると中国の持ち家率は89.6%と、9割近い。
その理由は、高度経済成長による不動産価格の上昇から「不動産を持っていれば将来儲かる」という考え方が浸透していることや、中国の多くの女性が「マイホームの所有」を結婚相手の条件としていることが挙げられる。「家がなければ結婚できない」というのが中国の男性のセオリーのようだ。

持ち家志向の強い中、中国の賃貸事情は、借主保護の考え方が基本である日本とは異なり、圧倒的に貸主の力が強い。また、様々な決まりや交渉事について契約書に記載の内容に基づく日本とは、中国では「契約」に対する感覚が異なっているそうだ。契約書に記載の内容でも、貸主がNOと言えばNO。契約は“口約束”程度と捉えていた方が良さそうだ。今よりもっと高い家賃で住みたいという人が他に現れれば、貸主から突然退去を命じられることもあるほどだという。

賃貸物件への入居時は、「付3圧1(フーサンヤーイー)」と呼ばれる、「1ヶ月分の保証料、3ヶ月分の家賃」を前払いするのが一般的だ。契約は1年ごとが基本であり、家賃据え置きはまずありえないという。値上がりが当たり前なのだ。例えば2年間で1ヶ月の家賃が数万円も値上がる事もあり、それを防ぐための一括納入もオススメできない。貸主に差額を要求されたり、もし中途で退去することになった時、一括納入分の返金をされないケースも考え得るという。
家賃の値上がりを不安に感じることも、中国での持ち家志向に拍車をかけているのかもしれない。

【シンガポールの場合】外国人駐在員も増加する都市の賃貸事情は…

街が美しく、住みやすいことで知られているシンガポール。ビジネスで進出する企業も多く、日本人も多く暮らしている。この国の持ち家率も高く、約8~9割と言われている。そのほとんどが、政府が供給するHDB(Housing&Development Board:ハウジング&デベロップメント)という、日本の公営団地のような集合住宅に住んでいる。

社会人になっても親と一緒に住む文化と、HDBは結婚しないと購入できないことから、結婚と同時にHDBに申し込むのが一般的だ。そのため賃貸住宅に住むシンガポール人は何らかの事情で親と同居しない人や経済的理由でHDBを手放した人たちだという。また、HDBはシンガポール人や永住権保持者しか購入できないということもあり、結果、賃貸住宅に住むのはほとんどが外国人だ。

その多くが、プールやジムなどの附帯設備が整った日本の高級マンションのような「コンドミニアム」という高級集合住宅に住んでいるという。
シンガポール政府機関URAの発表によると、2LDKの部屋で$1,600~$2,400(約14万円~21万円 ※$=88円で計算)程度が平均の家賃とされている。ただし実際は、家賃$1,600の物件は築年数が古く、MRT駅からも遠い物件が多いという。駐在員は2LDKで$3,500~$4,000(約30万円~約40万円)ほどの物件に住んでいることが多いが、いずれも家賃は会社負担がほとんどだ。

賃貸物件の契約時は、日本の敷金のように、家賃2ヶ月分(Deposit:デポジットと呼ばれ、退去時に返却される)と仲介料として家賃1ヶ月分支払う必要がある。
また、賃貸契約期間は原則2年間とされており、それより短いと、良い条件の物件は見つけにくくなる傾向にある。2年間の契約期間中は、一定の期間より前に事前告知すれば退去できる日本とは違い、自己都合による退去は認められない。ただし、転勤などの特殊事情の場合、契約後の一定期間を経た後に契約を解除できる特別条項(ディプロマティック・クローズ)を契約書に盛り込む事は可能だ。ただしその場合も、契約時に貸主が仲介業者に支払った仲介料を弁済するというかたちで、日割りで保証しなければならない。

国や文化によって異なる賃貸事情。日本では「借地借家法」という法律もあり、借主保護の考えがなかば当たり前の中にいるが、海外ではそうした法律や借主保護の考えすら無い場合も多いことがわかる。入居時に家賃をまとめて払い、退去時に戻ってくる制度や、突然大家から退去を命じられるというのは日本では考えられないだろう。
どちらが良いとか悪いとかではなく、まさに住まいの考え方は、文化や国民性の違いを感じさせられる。転勤などで海外に住む可能性もあるかもしれない。「お国柄」が表れるこうした住宅事情を事前に知って準備しておくことで、文化や国民性の理解を深めることにもつながる。それが、その地に早く順応し快適に生活していくことにもつながるだろう。

国民の約8割が、政府が供給するHDBに住むと言われている。</br>うち8割が持ち家だということからも、シンガポールの持ち家率の高さがうかがえる国民の約8割が、政府が供給するHDBに住むと言われている。
うち8割が持ち家だということからも、シンガポールの持ち家率の高さがうかがえる

2015年 04月20日 11時07分