地方移住に関心のある若者が増えている。しかし「仕事」がネックに

ぼくらの福岡クリエイティブキャンプ2014のマークぼくらの福岡クリエイティブキャンプ2014のマーク

「地方Uターン」「Iターン」というと、それぞれ「生まれ育った場所以外で進学・就職し、その後地元へ戻って就職・転職すること」、「生まれ育った場所で進学・就職した後、出身地以外の場所で就職・転職すること」を指す。
さらに近年は、働き盛りの若者たちが、働きながら地方へ移住する動きも目立ってきている。内閣府の調査でも、都市部の20歳代の約4割が地方への定住を希望するという結果がでている。(出典:平成26年「農山漁村に関する世論調査」)

そこで問題になるのが、やはり仕事だ。
地方圏では、都市部と比較すると働く先の選択肢が少ない点や、都道府県別の平均年収を比較すると東京都580万円、仮に筆者の出身地である熊本県では386万円と、その差が大きい点が懸念点になりそうだ。(統計元:厚生労働省「平成25年賃金構造基本統計調査」)
また、慣れない環境に心理的なハードルを高く感じるかもしれない。メディアでは「地方移住」は、都会の喧騒を離れて自然に暮らす、憧れの対象のように報じられる事も多いが、様々な不安を乗り越え地方移住に踏み切っても、心が折れて都市にやむなく帰るという例も聞く。

そうした移住者の不安を解消し、地方へ人材を呼びこむ取組みが、今回紹介する「ぼくらの福岡クリエイティブキャンプ」だ。本格的に移住をする前に、福岡に住み、現地の会社で2ヶ月間トライアルで働いてみることができるという。
「ぼくらの福岡クリエイティブキャンプ」を主催する、福岡市企業誘致課の山下龍二郎氏にお話を伺ってきた。

働きやすく、住みやすい環境の福岡

東京・代官山で行われたぼくらのクリエイティブキャンプ説明会の様子。立ち見が出る程満席になり、関心の高さが伺える東京・代官山で行われたぼくらのクリエイティブキャンプ説明会の様子。立ち見が出る程満席になり、関心の高さが伺える

まず、福岡市の働く環境について紹介しよう。
福岡市人口の若者比率は19.2%(15~29歳、平成22年 国勢調査)で、人口増加率(平成22年10月~平成25年12月の増加率 調査:各都市推計人口)とともに政令指定都市の中でトップだ。
福岡が人気とされる理由は、一般的に3つある。まず一つ目に「食べ物がおいしい」。そして、「コンパクトシティで住環境が良い」。またさらに、「ファッションレベルも高く、オシャレに困らない」。つまり、衣・食・住3拍子、どれも高いレベルで揃っているのだ。
また市内中心部から空港へも近く、地下鉄で博多から6分、繁華街・天神からは11分というアクセスの良さだ。東京へはもちろん、国際線の充実でアジアの各国へのアクセスにも優れている。一方で中心地から少し離れれば豊かな自然が広がっているのも、クリエイティブな感性を養うのに見逃せないポイントだろう。

福岡市はさらに、安倍内閣による規制・制度改革の柱として新設された『国家戦略特区』の一つ、『創業支援のための改革拠点』(創業特区)に選定されている。この流れを受けて市としても税制上の優遇をはじめ、様々な特区プロジェクトを推進している。2014年10月には起業したい人の交流の場として、「福岡市スタートアップカフェ」もオープンし、スタートアップ都市としても注目されている。

福岡への企業誘致から見えた課題

日本全国6地域(札幌、石巻、鎌倉、神山、福岡、沖縄)から集まったクリエイターによるセッションなどの「地方移住クリエイターサミット2015 in Tokyo」の様子。様々な地方移住に関するイベントも開催された日本全国6地域(札幌、石巻、鎌倉、神山、福岡、沖縄)から集まったクリエイターによるセッションなどの「地方移住クリエイターサミット2015 in Tokyo」の様子。様々な地方移住に関するイベントも開催された

近年、福岡市は、株式会社レベルファイブが手がける大ヒットゲーム『妖怪ウォッチ』の誕生地であったり、無料通話・メールアプリ「LINE」の運営会社であるLINE株式会社が東京本社に次ぐ国内第2の拠点としてLINE Fukuoka株式会社を設立するなど、WEB/IT/ゲーム業界で、特に注目を集める勢いのある企業が増えているようだ。


「福岡市への企業誘致を行っていく中で、福岡市の仕事のしやすさや住環境の良さをお話すると、企業さまからは高い評価をいただきます。しかし環境面以外にも求められているのは、これから企業が成長していくための優秀な人材でした。
福岡市は教育機関も多く、優秀な学生も多くいますが、彼らが育つには一定の期間がかかります。福岡にはその実務を経験した、経験者人材が不足していました。ITやデジタル系企業はどうしても東京に集まる傾向が強く、福岡で育った人間でも東京に出てしまうケースが多かったんですね。」

そうした課題に対し、福岡市は、2013年からU・Iターンを促進するプロジェクトを始めた。
そして2014年度に、さらに一歩踏み込んで、実際に若者の福岡への移住・転職を支援する「ぼくらの福岡クリエイティブキャンプ」を始めたのだ。
「しかし、優秀な人材は東京でも引っ張りだこで、福岡移住を果たして決断してくれるのだろうか。そういう思いで2014年3月に東京で開催した『ぼくらの福岡移住計画2014 in TOKYO』というイベントでは、予想以上に参加者が多く、確かな手応えと、ニーズを感じたんです。」
その後2014年9月に東京・代官山でキックオフイベントを開催。2015年1月まで募集を行った。

予定以上の参加者から若者の意欲が見える。今後、地方創生の具体的な後押しになるか?

「福岡クリエイティブキャンプ2015」の登録受付も開始している「福岡クリエイティブキャンプ2015」の登録受付も開始している

優秀な人材を求める福岡の企業と、福岡で働き、暮らしたいクリエイターのお互いのニーズの橋渡しをするという形で生まれたこの「ぼくらのクリエイティブキャンプ2014」。様々な業種の企業がトライアルワーク先の参加企業に名を連ね、 IT・クリエイター職を中心に、プランナーや広報まで幅広い職種を募集した。

応募者は、自分の経歴や希望する職種をフォーマットに入力する。すると事務局が、情報提供、就職サポートを提供。この2ヶ月間のトライアルワーク中の給与も、事務局から支払われる。住居については、福岡市内の不動産会社の協力により、短期間契約での賃貸も可能になった。
またトライアルワーク期間中のサポートとして、「市内住宅事情説明会」や、福岡ならではのもつ鍋店で参加者が交流できる「もつ鍋会」等のイベントも開催。

「最終的に66名の登録者がありました。実際にトライアルワーク(OJT)へ参加された方は15名。これは当初の目標を達成しました。登録者は具体的にはエンジニアが28%と最も多く、次いでwebデザイナー・ディレクターが21%でした。」
元々福岡が地元だった人ばかりかというと、そうでもないようだ。プロジェクトは2015年3月に終了したが、2ヶ月の研修を終えた15人のうち9人がそのまま福岡に移住したという。
「OJT後、首都圏出身で福岡とは縁もゆかりもなかった方が、福岡に移住・転職することとなったケースもありました。課題としては、結果として、OJTに進まれた方々の職種がwebデザイナー・ディレクターの方に少し偏ったこと。今後は、エンジニアの方々、またweb業界だけでなく、福岡の強みであるデジタルコンテンツやIT関連企業へも優秀な人材が集まるような仕組み作りをしたいです。ありがたいことに、福岡に対する注目は、高まっていることを感じています。政府が進める「地方創生」という流れも追い風なので、このタイミングをとらえ、さらに福岡に面白い、クリエイティブな方々が集まってくれるとうれしいですね。」と話す山下氏。

そして現在、「福岡クリエイティブキャンプ2015」の登録受付もはじまっている。株式会社レベルファイブやLINE Fukuoka株式会社も参加し、さらに県外からU/Iターン転職した方には、応援金40万円が支給されるという。

福岡市以外にも、地方移住の波はそれぞれの地域や多様化する暮らしのニーズに合わせて、さらに注目され広がっていくように感じる。魅力はあるが馴染みの無い環境への移住を後押しするこうした具体的な取り組みは、地方を盛り上げる効果的な材料となるだろう。福岡市を皮切りに、今後盛り上がっていきそうな地方都市に注目したい。

2015年 08月23日 11時00分