室内で花見?! 今ではできない贅沢な敷地の使い方 

室内に居ながらにして花見という状況が分かろう。敷地内には公園があり、イベント会場にもなる室内に居ながらにして花見という状況が分かろう。敷地内には公園があり、イベント会場にもなる

設備だけだったら新築のほうが良いかもしれない。だが、その他の部分では築年数の経った、古い物件に魅力があることもある。築22年、東急田園都市線青葉台駅から歩いて9分、高台にあるエスポワール松風台はそんな物件だ。

現地でまず驚かされるのは敷地の広さ。約2万4000m2である。東京ドームの建物面積が4万7000m2弱だから、ざっと半分くらいということだろうか。それだけの広さに建物は3棟、142戸の3LDKがゆとりを持って配されている。建物の間には全戸分以上の平置き駐車場、子どもの遊び場、敷地の一端には梅林、桜、アジサイなどが植えられた小山なども。新築時、大小合わせて1万5,000本の木を植えた(一部以前からの木も)そうだが、それが時間の経過とともに育ち、立派な大木が敷地内に緑陰を落としているのである。

そのため、建物によっては部屋の中から花見(!)ができるほど。窓から隣の家ではなく、桜や緑だけが見える住宅は過密な首都圏にあっては希少だろう。まして、これから建てるとしたら、こんなにゆったりした敷地の使い方はまずできない。築年数が経っているからこその贅沢である。子ども達が走り回る環境としても広く、安全な敷地は羨ましい。植え込みの中には子ども達が通り抜けるためにできてしまったという、ほとんどゲートのようになった空間もあり、元気な子ども達の姿が目に浮かぶようだ。

梅もぎを契機にイベントが開かれるように

梅林では初夏に梅もぎの会が開かれる。「元々植わっていた木などもあり、特に手入れをしているわけではないので、収穫は年によってバラバラ。そのため、入居者に配るという発想はなかったのですが、2015年2月に初めて外部団体に集会室をお貸しして開かれたイベントに入居者さんが参加。その方から『梅を分けてもらえませんか?』と言われたのをきっかけに、入居者に声をかけ、みんなでもぐことにしました」と経営にあたる法人の広報担当、土志田祐子氏。初回の2015年5月には子どもも含め、約20人が参加、70キロも収穫できたそうだ。

これがきっかけとなり、以降、梅もぎは春の恒例行事になった。「いつから始まったのか分からないほど以前からハロウィーンのイベントは自然発生的に行われていました。子どもたちが仮装して敷地内を練り歩き、最後は集会室でもらってきたお菓子を食べるというもの。ただ、経営サイドから呼びかけてのイベントは梅もぎが最初。これがとても喜ばれたこともあり、それから少しずつ、集会室を利用してイベントを開くようになりました」。

梅もぎに続いては集会室を利用、アロマのワークショップ、ヨガ教室、子ども服の交換会、さらに夏休みの自由研究の素材を想定したDIYのワークショップなどが開かれた。特に好評だったのがこのDIYワークショップ。3日間、9コマ開かれたワークショップには子ども連れの入居者がのべ60人ほどが参加し、賑わったという。

梅もぎ、ヨガ、その他集会室を利用したイベントも梅もぎ、ヨガ、その他集会室を利用したイベントも

豚汁、カレーに流し素麺など野外イベントも

野外で食べるというだけでワクワクするのはなぜだろう。流しそうめん、豚汁などのイベントが開かれた野外で食べるというだけでワクワクするのはなぜだろう。流しそうめん、豚汁などのイベントが開かれた

2017年に入ってからは野外でのイベントも開かれるようになった。梅もぎのきっかけとなったイベントがエコストーブを作るものだったこともあり、せっかく作ったエコストーブを外で使ってみたいと開かれることになったのだ。

そして、野外での調理を伴うイベントになったことで参加者が変わった。以前、集会室で開かれていたイベントには主に女性と子どもの参加が多かった。ところが、休日に野外で行うことになって男性の参加が増えたのである。

「女性同士は敷地内の公園や駐輪場などで立ち話をしたり、子どもを通じて交流があったりとこれまでもお付き合いはあった様子。ところが、男性にはそうした関係がなかったようで、1月の豚汁、4月のカレー、8月の流し素麺のイベント参加を通じて入居者同士が交流するようになりました。火を扱ったり、流し素麺用に竹を割るなど野外だとお父さんにお願いする作業が多く、皆さん、張り切ってやってくださるんですよ」。

同物件はなぜか関西出身の入居者が多いそうで、話をしてみると実は実家が近所など共通項が多く、話が弾みやすい状況なのだとか。また、エコストーブで試しに作ってみた燻製が大受け。自宅の冷蔵庫から燻製にしようとチーズやソーセージを持ってきたり、それに合わせてビールを持ってくる人が出るなど話を聞いているだけで美味しそう、いや、楽しそう。敷地内にスペースがある物件ならではである。

住宅の価値は設備より、住む楽しさ

エントランスの改修、宅配ボックスの設置などと定期的に手が入っているエントランスの改修、宅配ボックスの設置などと定期的に手が入っている

エスポワール松風台は1995年の竣工から10年ほどは満室が続き、ウェイティングもあったそうだが、2008年のリーマンショック以降、法人契約が多かったこともあり、少しずつ空室が出るようになった。周辺では値下げ競争も始まっていた。敷地の広さや桜の見事さなど他にない魅力はあるものの、数字や固有名詞だけが並ぶ物件概要ではそうした点は伝わらない。逆に築年数の経った物件はその点だけで敬遠されてしまう。

「大規模修繕はもちろん、エントランスを新しくタイル張りにしたり、宅配ロッカーを導入したりと建物、設備の更新はもちろん行ってきましたが、設備は日々進化していますから新築には勝てません。だとしたら、違う魅力で選んでいただけるようにしないとと考えたのです」。

自然の豊かさ、広い敷地ならではの安全さ、静かさに加え、入居している人達が住んで気持ちよい、楽しいと思える環境を作ろうというのである。そのひとつが敷地を利用したイベントを通じて生まれる緩やかな人間関係。掲示板にさりげなく案内を出す程度だが、徐々に参加者が増え、今では数十人ほどにも。入居者だけではなく、周辺の人なども参加するようになっており、何か、面白いことをやっている物件と思われるようになってもいる。

物件概要以外の魅力をチェック、ベストな住まいを選びたい

室内は順に手が入れられており、きれいに保たれている室内は順に手が入れられており、きれいに保たれている

もちろん、住戸にもこだわっている。アクセントクロスや輸入壁紙を貼った部屋、足場板、無垢材を床に使った部屋、チョークボード(黒板)ペイントを施した部屋などと少しずつ改装、今のテイストに変えているのである。

他ではあまり見ない試みは、住み続けた場合、8年目に室内設備などのリニューアルがプレゼントされること。「星4点を設定、1点だと網戸の張替え、4点だと洗面台の交換などと住んでいる人が自分で選べるようになっています。ただ、これまでのところ、99%が洗面台交換を選んでいらっしゃいますね」。長く住むといくら大事に使っても室内、設備はどうしても古びてくる。それを適当なタイミングでリニューアルしてもらえるなら、もう少し住もうかという気になるかもしれない。

だが、こうした試み、改装も物件概要からは分からない。そのため、2017年にはフェイスブックページに加え、物件ホームページを作って自ら情報を発信し始めた。最近では他にもホームページを作っている物件を見かけることが増えてきたが、数字以外の住み心地、住まいの環境や雰囲気を知りたいならこれは有効。同じ広さの部屋でも、そこに利便性を求めるか、環境を求めるかは人それぞれ。できるだけ多くの情報をチェックしたほうが自分にベストの住まいが選べるはずだ。

エスポワール松風台
http://kazokukichi.com/

2017年 09月25日 11時03分