壊されていく家

家の思い出を残す「家のLIFE VIDEO」とは?家の思い出を残す「家のLIFE VIDEO」とは?

2020年のオリンピックイヤーに向けて、日本全国のまちが大きく変貌を遂げている。地方都市では中心部に機能を集積してコンパクトシティ化が図られていたり、都市部では駅の周りが再開発されて高層タワーが建築されたり…。街並みが新しくなっていく中、失われているものも多いと思う。

失われていくものの一つとしてあげられるのが、大正、昭和の時代からの日本家屋だ。住宅性能面から見ると今のものと比べものにならない耐震性や断熱性能などのスペックが低い物件が多いのも確かだ。しかし、古い家にはどこかほっとする家の佇まいや、そしてその家と一緒に歩んできた歴史・思い出が詰まっている。まだ使える魅力的な家もある中、管理の問題や相続の問題で、壊さなければならない家もある。先日取り上げた【築100年弱、相続のために売却されたお屋敷の一夜限定公開を見てきた】もその一つだ。

そうした古き良き家がなくなるのは、時には仕方がないことかもしれない。だが、何か形として残したい、そんな思いもあると思う。
今回、注目したいのが映像で家の思い出を残す「家のLIFE VIDEO」だ。日本テレビ系列で電波少年などを手掛けたTプロデューサーことLIFE VIDEO株式会社 代表取締役 土屋敏男社長に取材をしてみた。

LIFE VIDEOとは?

TプロデューサーことLIFE VIDEO株式会社 代表取締役 土屋敏男社長TプロデューサーことLIFE VIDEO株式会社 代表取締役 土屋敏男社長

家のLIFE VIDEOをふれる前に、土屋氏が立ち上げたLIFE VIDEOについてまずふれたい。日本テレビで永年テレビ番組制作の仕事に携わってきた土屋氏。立ち上げのきっかけになったのが義理の父親のお葬式だったという。お葬式の中で感じたことを機に、人が人生の中で得た知見を映像で次世代に伝えていくべきではないかと考えるようになった。そうしたことから2012年7月に社内ベンチャーとして現在の会社を立ち上げ。大衆向けのテレビ番組制作から、特定の個人に向けた個人の人生や会社の歴史などの制作に転換した。立ち上げて約3年。最初想定していた以上に、すべての人が面白いと感じるようになったという。

「一般の人って面白いんですか?と、聞かれることがありますが、すべての人の人生が面白いと思います。面白くない人生ってないんだなと感じます。正直に言うとそこまで確信があってやった訳ではないのですが、個人への興味も以前より増しましたね。電波少年をやっていたとき、猿岩石はすごいタレントじゃなかった。猿岩石のヒッチハイクやなすびの懸賞ハガキなどある状況に人間を置くと、有名ではない人間がやっても面白い。今もその人間の面白さを発見し続けている、という感じですね」

そうした思いを抱きながら、以前はテレビの向こう側の視聴者、今は依頼をしてきたクライアントのために作り続ける土屋氏。見ている人に楽しんでもらいたい軸は何も変わらないという。そんな中に出合ったのが、静岡県にある築125年の勝田邸だった。

築125年の家はどうなるのか?「残したい」想い

駅からも近く、高速道路のインターからもほど近い場所にある御殿場市の築125年の日本家屋。敷地は約200坪以上あり、窓からは富士山が眺められる。持ち主の勝田さんはドイツ在住で、休みの期間には戻ってくるものの不在にしている期間が長いという。愛着のある家のため、放置ではなくきちんと家の管理は専門会社に頼んでいるという状態だった。しかし、家を継承する人もおらず、そんな中で自治体から買いたいという話がきたという。しかし、売却後には新しい建物を建てるため更地になるということから、どうするべきかを思案中ということだ。もし売却に至ったとしても、思い出のある家を映像として残したい。そうした経緯で、LIFE VIDEOにお話しがきたという。

「家については実際やったことがなく難しかったのですが、挑むに至ったという感じです。映像を撮って、日本家屋の優しさを感じました。光と影の使い方がすごく印象的な日本家屋で、これが日本の家なんだとしみじみ思いましたね。今回、ご依頼は『残したい』というお気持ちが強いものでした。そのため、純粋な家紹介ビデオではなく、この家にはこういう思いがあって、おじいちゃんはひいおじいちゃんはこういう事をしていたというのを残せるように撮りました」

屋内には伊藤博文の書の額や、見事な欄間なども残る。歴史的にも貴重なものといえるだろう。広さは一部改修などされているが、10DK以上の広さをほこる。LIVE VIDEOが撮った映像を見ると、家のすみずみに持ち主の様々な思い出があるのがうかがえた。また、築125年とはいえ朽ちた印象はなく管理もきちんとされているのが分かる。こうした家が売却されて、解体されるのは残念だと感じる。

勝田さんの『残したい』という思いから、実際まだ自治体との売却の話は途中になっており、何かしら『残せる』方法があればぜひ残していきたいということだ。例えば、古民家としてリノベーションしたり、他へ移築する方法などもあるだろう。時代の中で壊されるのは仕方がないことかもしれないが、良いものは残ってほしいものだ。

LIFE VIDEOがインターネット上でサンプルとして公開している勝田邸の映像。(Copyright ©LIFE VIDEO)

人だけでなく、家、まちの記憶

鎌倉の街に住んでいる土屋氏。鎌倉の街でもどんどん古き良き家がなくなっているという鎌倉の街に住んでいる土屋氏。鎌倉の街でもどんどん古き良き家がなくなっているという

こうした家がなくなっていくことについて土屋氏は「昔からの建築を残していこうという運動も必要だと思いますが、時には仕方がなく消えていくものもあるので、そうした場合にはできるだけ映像として残すということはしたいですね」という。

人、家の歴史に焦点をあてた映像制作。それだけにとどまらず、まちの歴史を残す活動も展開している。
“カマコンバレー”とLIFE VIDEOが協働で作った「鎌倉今昔写真」。ITを使って街を元気にしましょうという活動だ。今の街の写真と昔の写真をアプリ上で比較して、自分の住んでいる街の歴史を垣間見ることができる。

「家や街が壊されていくのは残念ですが仕方がないこともあります。でも、映像で残すことで次の世代の若い人達が、新しく活用したいという思いが生まれてくるのかもしれない。人の記憶も、家の記憶も、まちの記憶も、まだ始まったばかりです。壊してしまったら、二度ともとに戻らずそれでおしまいなので、記憶と思いを映像で残したいと思っています」

新しい技術が生まれ、まちも住まいも環境も、どんどん変わっていく現代。ただ、歴史や記憶という変わらないものもある。
家の愛着した思いがあるから、次の新しい家にも愛着が湧く。そのように私たちは今まで祖先や両親から受け継いできたはずなのに、新しいことに目がいきがちで、少々忘れがちなこともある。新しい技術を生み出しながら、過去も利用した取り組み。土屋氏の言うようにまだ始まったばかりだ。


■取材協力:LIFE VIDEO
 http://www.lifevideo.jp/

2015年 05月12日 11時07分