「住宅弱者」の入居を拒まない「セーフティネット住宅」の登録制度

国土交通省住宅局が進める「スマートウェルネス住宅等推進事業」のひとつ「セーフティネット住宅改修事業」。既存の建物を「セーフティネット住宅」に登録するための改修工事費に対して補助を行うものだ。国による直接補助は2019年度いっぱいを予定しており、補助の対象となる工事範囲を広げている。

では、「セーフティネット住宅」とは何か。国土交通省の説明会に基づき、制度の内容と現状を整理しておこう。

2017年の法改正(※)で「新たな住宅セーフティネット制度」が創設された。いわゆる「住宅弱者」の住宅確保を進めるため、従来は主に公営住宅が果たしていた役割を、民間の空き家・空き室活用に拡げていこうというものだ。

住宅弱者(法律用語では「住宅確保要配慮者」)の入居を拒まない賃貸住宅、すなわち「セーフティネット住宅」を登録し、情報をまとめて専用Webサイトで公開する。「住宅確保要配慮者」専用の住宅には改修費や家賃減額に対して補助金を出す。さらに、都道府県が指定する「居住支援法人」による家賃債務保証や生活支援などの活動にも国の補助がある。

※「住宅確保要配慮者に対する賃貸住宅の供給の促進に関する法律(住宅セーフティネット法)の一部を改正する法律」2017年4月26日公布、10月25日施行

新たな住宅セーフティネット制度の概要(資料:国土交通省)新たな住宅セーフティネット制度の概要(資料:国土交通省)

対象は低額所得者・被災者・高齢者・障がい者・子育て世帯・外国人ほか。地域によって新婚家庭なども

「セーフティネット住宅」が対象とする入居者は、月収15.8万円以下の低額所得者、発災後3年以内の被災者、高齢者、障がい者、高校生相当以下の子どもを養育する世帯。この法律の定めに加え、省令により外国人などが、さらに各自治体が定める「賃貸住宅供給促進計画」によって新婚世帯やLGBT、U・I・Jターン者などが対象になる地域もある。

住宅の基準は床面積25m2以上、キッチンなどを共用する場合は18m2以上、シェアハウスなら専用居室9m2以上となっている(詳しくは下図)。ただし、自治体の「賃貸住宅供給促進計画」によって緩和が可能だ。例えば大阪府では、一般の住宅で床面積18m2以上、キッチンなどを共用する場合は13m2、シェアハウスの専用居室は7.5m2以上としている。

家賃は、通常の家賃相場と同等であればよい。ただし、国から直接、改修費の補助を受けた場合は、公営住宅並みになるよう上限が決められている。東京都世田谷区や大阪市は6万4,900円、名古屋市で5万7,100円、福岡市5万4,500円、札幌市5万1,900円などとなっている(「大家さん向け住宅確保要配慮者受け入れハンドブック 解説版」2017年10月25日)。

セーフティネット住宅の登録基準(資料:国土交通省)セーフティネット住宅の登録基準(資料:国土交通省)

地域差が大きい登録戸数。専用住宅への改修に費用の2/3補助など促進策も

制度ができて2年経つが、記事の執筆時点(2019年5月)で「セーフティネット住宅情報提供システム」に登録されている住宅は、全国でわずか8315戸にすぎない。地域によってもばらつきがあり、大阪府が突出して多く、5409戸が登録されているが、三大都市圏でも愛知県で719戸、東京都は231戸しかない。47都道府県のうち17県は登録戸数が一桁に留まり、滋賀県と島根県は0戸だ。

こうした現状に対し、国交省は登録申請の手続きを簡単にしたり、登録システム入力の手間を省いたりと、登録を進めるための手直しを行っている。申請手続きが簡略化されたことで、従来は6割の都道府県が徴収していた登録手数料も、ほとんどが廃止または大幅に減額(従来の1割以下)された。

繰り返しになるが、セーフティネット住宅には国や自治体の支援がある。例えば、住宅確保要配慮者専用の住宅(専用住宅)にリフォームする場合、自治体を通して国と自治体の補助を受ければ、間取り変更や耐震改修など工事費の3分の2の補助金が受けられる(上限あり)。このとき、すべての住宅確保要配慮者を対象にする必要はなく、「ひとり親世帯専用住宅」「障がい者専用住宅」(いずれも入居者の月収38.7万円以下に限る)など、ひとつまたは複数の属性に限定できる。

さらに、専用住宅に月収15.8万円以下の低額所得者が入居する際に家賃を減額すれば、1戸当たり毎月最大4万円、最長10年間の補助がある。同様に、家賃保証会社が低額所得者のために初回保証料を減額すれば、減額分に対して最大6万円の補助が受けられる。

セーフティネット住宅情報提供システム https://www.safetynet-jutaku.jp/

住宅確保要配慮者専用住宅への改修費用に対する補助金の概要(資料:国土交通省)住宅確保要配慮者専用住宅への改修費用に対する補助金の概要(資料:国土交通省)

先進事業を支援する「人生100年時代を支える住まい環境整備モデル事業」

「スマートウェルネス住宅等推進事業」の3本目は新設の「人生100年時代を支える住まい環境整備モデル事業」。地域の交流拠点づくりやIoT活用、団地再生などにかかわる先進的な取り組みを公募し、学識経験者などによる委員会の評価を受けて採択された事業に対し、費用の一部を支援するというものだ。

国が設定したテーマ(下図)に応じた事業と、事業者側からの提案、事業化に行けた調査・検討が対象になる。補助を受けた事業は達成状況の報告が求められ、成果の検証が行われる。

「人生100年時代を支える住まい環境整備モデル事業」国が設定する事業テーマのイメージ(資料:国土交通省)「人生100年時代を支える住まい環境整備モデル事業」国が設定する事業テーマのイメージ(資料:国土交通省)

2019年 06月04日 11時00分