久留米で開催されたシンポジウムには、全国から135名の参加者も

久留米市の貸しホール場で開催されたシンポジウムには、イベント関係者や市民など全国から135名の参加者が集った久留米市の貸しホール場で開催されたシンポジウムには、イベント関係者や市民など全国から135名の参加者が集った

11月9日から11月15日までの1週間、福岡県内のリノベーション物件を巡り、自らDIYによって物件をカスタマイズする楽しみを体験することができる「FUKUOKA DIYリノベ WEEK 2015」が開催された。
西鉄沿線、JR沿線を中心とする福岡県内全12エリアで開催されているリノベーション物件巡り、ワークショップ、宿泊体験といったテーマ型旅行「リノベーション・ツーリズム」を通じて、DIYリノベーションの現場を体感できる内容である。

これまで、「FUKUOKA DIYリノベ WEEK 2015」のプログラムの1つであるバスツアー「筑後地方のDIYリノベ1泊2日の旅」の八女福島編と、柳川・大牟田編の2回をレポートした。
最終回となる今回は、11月14日に久留米で開催された「久留米全員集合シンポジウム」から、「DIYリノベーションによって地方都市はどう変わっていけるのか」をテーマに考えてみたい。

シンポジウムは、期間中に福岡県内12エリアでリノベーションのプログラムを実施していたチームの代表者12名による取り組みの報告に加えて、千葉県松戸駅前のエリアの空き物件を活用し、これまで200人以上の移住をサポートしてきた実績のある株式会社まちづクリエイティブ 代表取締役 寺井元一氏の講演が行われた。

福岡県内のイベント会場となった全12チームの代表が集結

今回のシンポジウムではまず、イベント会場となった福岡市、那珂川町、久留米市など12チームの代表からそれぞれのDIYリノベーションの活動報告が発表された。

参加した12チームを紹介したい。
1) DIYリノベのメッカ"福岡市都市景観賞"のビンテージビル〈リノベーションミュージアム冷泉荘×冷泉荘不動産〉
2)清川ローカリゼーション〈新高砂マンション×清川ぶらりーず〉
3)ひと、まち、文化をつなぐクロスラウンジ〈辻ノ堂ラウンジ〉
4)セルフリノべの先駆け、山王マンション〈リノっしょALLSTARS〉
5)時代を移植する〈信濃設計研究所 / nano Architects〉
6)全人類職人化計画〈WALPA STORE FUKUOKA〉
7)DIYerが集う秘密基地「吉浦ビル」〈樋井川村〉
8)那珂川町の魅力を発信する“Creative Base 五反田ハイツ”〈Nakagawa Life Fant!〉
9)駅から徒歩30秒!菜園と交流のあるアパート〈H&A brothers〉
10)楽しい ”マチ”のつくり方=町家み保存×DIYリノベ〈NPO八女空き家再生スイッチ(旧八女郡役所・泊まれる町家 川のじ・移住者支援シェアハウス〉つどいの家)
11)旧城下町の特徴を残す柳川の新拠点!〈柳川つなぐ人プロジェクト〉
12)DIYリノベシティOMUTA構想〈大牟田ビンテージビルプロジェクト〉

八女、柳川、大牟田以外の地域でもイベント期間中には、カスタマイズ賃貸の床貼りDIY体験や、輸入壁紙の専門店「WALPA」による壁紙の貼り方ワークショップ、リノベーション部屋への宿泊体験など様々な取り組みが行われている。

中でも注目したいのは、今回FUKUOKAリノベWEEKの案内所として開放されていた福岡市の「冷泉荘」である。「リノベーションミュージアム」と呼ばれるこの建物は、築57年の昭和のレトロビルをリノベーションし、クリエイターや文化人などの活動拠点として提供している。年間300を越えるイベントが開催されており、こうした活動が福岡市からも評価され、2012年に「第25回福岡市都市景観賞」活動部門を受賞している。

いずれのチームも、ただ老朽化した物件をリノベーションによって長持ちさせる事が目的ではない。リノベーションした物件を中心に、何十年という長い目で見据えて、人と人、人とまちが繋がるように育てていくという思いが目的である。

FUKUOKAリノベWEEKに参加した全12チームの代表者が集合FUKUOKAリノベWEEKに参加した全12チームの代表者が集合

まちづくりの本質と、DIYの持つ可能性とは

株式会社まちづクリエイティブ 代表取締役 寺井元一氏株式会社まちづクリエイティブ 代表取締役 寺井元一氏

今回のシンポジウムでは、ゲスト講師として株式会社まちづクリエイティブ 代表取締役の寺井元一氏による講演が行われた。千葉県の松戸駅周辺で、改装可能な賃貸物件を活用してまちづくりに取り組む寺井氏。講演の内容は、これまで200人以上の移住をサポートしてきた経験から見えたまちづくりの実態から、今後、地方都市が空き家の活用でこれからどう変わっていくのかがテーマとなっている。

「都心は飽和状態」と見切りをつけて、千葉県松戸で人口減少時代の持続的なエリアマネジメントを軸に立ち上がった株式会社まちづクリエイティブ。
登壇の冒頭から「自分がしたいことは、リノベーションでもまちづくりでも活性化でもない。とにかく自分のまち、クリエイティブな自治区づくりをしたい」という寺井氏の言葉から始まった。

同社は、松戸市本町にあるMAD City Galleryを中心に、日常的に歩ける範囲である半径500~600mを「MAD City」と定義。クリエイター・アーティストの自然発生的なコミュニティと、そこから生み出される活動を通して魅力的なまちづくりを目指している。寺井氏は、「まちづくり」を産業の衰退や高齢化など、各地域特有の課題を解決する活動の総称であると考えている。
本来、そうした地域の問題を解決していた町内会をはじめとする地域コミュニティが弱体化する昨今、「まちづくりをする上で重要なのは、いかに魅力的な人に来てもらうか、いかにその人にずっといてもらうかである。まちの価値を上げるためには、『この地域はこういうまちなんだ』という強い主張が必要で、DIYで自分の部屋を変えていける人は、自分の住まいだけでなく、自分が住むまちを変えていける力があるという原動力を感じる」と語る。

築20年を過ぎると、建物の価値がゼロに近づいてしまうという日本の建物への価値評価。しかし寺井氏は、最終的にこうしたリノベーションを施した物件に魅力的な人が集まり、築年に応じて価値が上がっていく事が理想だといい、この価値転換は、まず自分たちが住みたいまちを作ること、「みんなのまちづくりはやめにして、自分のまちづくりをする」ことで変えていけると信じているという。

DIYリノベーションによって変わる地方都市の住まいのあり方

今回のFUKUOKA DIYリノベWEEK 2015を主催するNPO法人 福岡ビルストック研究会理事長の吉原 勝己氏今回のFUKUOKA DIYリノベWEEK 2015を主催するNPO法人 福岡ビルストック研究会理事長の吉原 勝己氏

周知の通り、日本においては少子高齢化が進み、世帯数も減少することから、今後空き家が増加することは間違いない。今回参加した「FUKUOKA DIYリノベWEEK 2015」では、そうした空き家への対策をリノベーションによって再活用するモデルを数多く目にすることができた。
どの取り組みにも共通していたのは、プロジェクトを推し進めるメンバーの意志の強さである。自分が生まれ育ったまちが近い将来になくなるかもしれないという危機感や、まちの歴史を今に残す建物や町並みを次の世代に受け継ぎたいという使命感といった個々人の想いが集結し、「FUKUOKA DIYリノベWEEK」というイベントに発展したように思える。まちの歴史や個性を知り、自分たちの力で変化させていこうとする力は、連鎖的な人の繋がりが生まれることで、結果的に豊かな生活に繋がるのではないだろうか。

FUKUOKA DIYリノベWEEK 2015を主催する吉原氏は、「DIYリノベーションをはじめとする私たちの取り組みが、無縁社会となっていた地域に新しく繋がりを生み出すという社会問題の解決を体現している思っており、この気持ちが活動のエネルギーにもなっている。まだまだ小さな規模ではあるが、"衰退都市"を身近に感じている福岡ならではのまちづくりのきっかけとなることで、自分の子供たちがそこで生活していくためのまちを、今から作っていくという”意識のリノベーション”もして欲しい」と語った。

「空き家対策元年」と呼ばれる2015年。11月には空き家対策特別措置法が完全施行され、税制優遇措置が除外になるなど、空き家放置に行政も動きだしている。
今あるものをいかに活用して循環させるかという、ストック型の住まいへの転換期を迎えようとしている日本。地方都市の住まいのあり方を変貌させるかもしれないDIYリノベーションの今後の動向に注目していきたい。

2016年 01月14日 11時07分