関西ならではの文化住宅

レトロ感が漂う文化住宅レトロ感が漂う文化住宅

「文化住宅」と聞いて思い浮かべるのは、大正時代中期以降に流行した、洋風の文化を取り入れた和洋折衷の住宅だろう。しかし、大阪では少々事情が違う。
木造二階建て。一階が5部屋なら二階にも5部屋といった造りで家賃は安いが、風呂がついていない物件も多く、壁が薄い。ただし、だいたいが4畳半と6畳の二部屋といった間取りで、小さなキッチンとトイレは各部屋に完備されているから、ワンルームマンションよりは広々と暮らせるはずだ。そして何よりも、文化住宅ならではの魅力は濃密なご近所づきあいにある。
そもそも大阪は「人情の町」と呼ばれる。そんな環境があるからこその文化住宅でもあるだろう。
そこで、大阪下町と、文化住宅の魅力に迫ってみた。

文化住宅の魅力

文化住宅を多く取り扱う大阪の老舗不動産会社、株式会社不動産のミキの森山茂男代表に、文化住宅の魅力を具体的に教えていただくとしよう。

「やはり下町の連帯感でしょう。町内の人達も文化住宅を一軒屋と同じ感覚で見ていますから、回覧板も回ってきます。お年寄りの一人暮らしなら、時々様子を見に来てくれることもありますよ。また、醤油や味噌を貸し借りする雰囲気も残っています。管理人が近所に住んでいる場合が多く、家賃を戸別集金する管理人も多いので、隣がうるさくて困っているなどと、気軽に相談しやすいのも魅力でしょう。ただし、自分がご近所に迷惑をかけている場合は、当然管理人にこってり叱られることになりますね」
とのこと。やはり、下町らしい人情を味わえるのが文化住宅の醍醐味と言えるだろう。

ただし、入り口が道路に面した物件が多いので、出入りは楽だが、それだけ外界から内部がうかがいやすいわけだから、それが苦手な人には向かないかもしれない。ご近所づきあいが好きな人向けの物件なのだ。

誰にとってもうれしいのは賃料の安さ。例えば大阪市内、鶴見緑地沿線の蒲生で2Kの文化住宅の場合、賃料は4~5万円程度だが、同じエリア、同等の広さのマンションでは賃料6~7万円。比較するといかに文化住宅の家賃が安いかがわかる。

文化住宅に引っ越す

株式会社不動産のミキの森山茂男代表株式会社不動産のミキの森山茂男代表

では、実際に文化住宅に住む場合、どんなことに注意して物件を見つければよいだろうか。

「文化住宅を探すなら、住みたい町の不動産屋に相談するのが一番です。その不動産屋が管理している物件なら引っ越し後も交流が続きますから、相談してみて信頼できそうだと感じたならば、安心して住めるでしょう」
と、森山氏。

物件を探す際は、まずは風呂付きかどうか、風呂があるならシャワーが付いているかどうか、風呂がないなら近くに銭湯があるかどうか、トイレは洋式かなどがチェックポイントだそうだ。
また、先住人の残留物が多いのも文化住宅の特徴。台所の湯沸かし器やガスレンジ、部屋の電灯は、設備なのか前の住人が置いていったものなのかを確認し、もし残留物の場合は、使えるかどうか確認した方がいいそうだ。使える残留物ならラッキーだが、もし使えないなら無用の長物となる。引っ越す前に管理人に処分してもらうと良い。

そしてもう一つ、文化住宅ならではの注意点が。
「文化住宅は築25年以上の古い物件が多く、入り口や押し入れは、引き戸やふすま、あるいは障子が多いです。建て付けが悪くなると開け閉めしづらくなったり、閉じたときに大きな隙間ができたりしますから、内見の際には、必ずすべての戸を開け閉めしてみてください」
なるほど、レトロ感に惹かれて文化住宅を選ぶ人でも、隙間風は歓迎できないだろう。

こうやってみると、文化住宅の長所は見方を変えればそのまま短所にもなることが多いようだ。
下町の交流が煩わしい人には決して薦められないが、下町の雰囲気やご近所付き合いに魅力を感じる人には、安い家賃で人情味も味わえる、魅力的な物件と言える。

大阪下町の人情味

大阪下町、人情の町。ご近所づきあいが希薄になっている昨今、関西の「地域密着型の暮らし」に学ぶところは多い。昔ながらの文化住宅での生活に着目してみよう。大阪下町、人情の町。ご近所づきあいが希薄になっている昨今、関西の「地域密着型の暮らし」に学ぶところは多い。昔ながらの文化住宅での生活に着目してみよう。

最後に、大阪下町や文化住宅のご近所付き合いの様子を表す具体的なエピソードを紹介したい。

筆者の伯母は50年以上、大阪市天王寺区の下町で暮らしている。天王寺区と言えば、日本一の高層ビル・あべのハルカスのある阿倍野区と隣接し、再開発の進む注目のスポットだが、JR天王寺駅から少し離れると、未だ下町の情緒を残す不思議な街だ。
従兄に子どもが生まれた際、この伯母から栗の入った赤飯をもらったのだが、あまりにも美味しかったので、レシピを教えて欲しいと頼んだところ、
「知らん」
という返事。

どういう意味かと尋ねると、
「うちの町内では、どっかで祝い事があったら、赤飯はメガネ屋のKさん、豆の煮ものはYさんって担当が決まってんねん。うちは柿の葉寿司担当やから、赤飯のレシピはKさんに聞かんとわからん」
と、あっけらんかんとして答えるではないか。町内でひと月に5度祝い事があった場合、Kさんは5回赤飯を炊くわけだ。担当に不公平があると不満が出ないかと聞いたが、
「そういうときはいろいろしてちゃんとするやん」
「いろいろって?」
「いろいろはいろいろや。お茶ご馳走したり」

昭和後半生まれとはいえ、大阪南部のごく田舎で生まれ育った筆者にさえ、あまりにもアバウトすぎるのではないかとも感じられたが、大阪下町のご近所づきあいとはそういうものなのだろう。

こういった環境に憧れても、大阪以外から引っ越してきて、アパートなどで仮住まいをするぐらいでは、簡単に溶け込めるものではないとあきらめてしまうかもしれない。しかし、文化住宅にはこうした大阪下町の雰囲気があり、賃貸という性質上、新規参入者も受け入れてもらいやすい土台があるのだ。

ご近所との関わりが希薄となっている昨今。昔ながらの濃密なご近所付き合いをしてみたい方は、下町の不動産屋を回ってみてはいかがだろう。


■参考リンク
株式会社不動産のミキ
http://www.miki-cojp.com/

2014年 11月15日 12時39分