『特養』の待機人数が52万人! そもそも『特養』ってどんな施設?

千葉県白井市に、今年3月オープンした特別養護老人ホーム「アンスリール」。高齢者向けの施設では珍しく、『耐火木造ツーバイフォー工法』を採用。詳しくは次回紹介する。(設計・写真提供/ニコム)千葉県白井市に、今年3月オープンした特別養護老人ホーム「アンスリール」。高齢者向けの施設では珍しく、『耐火木造ツーバイフォー工法』を採用。詳しくは次回紹介する。(設計・写真提供/ニコム)

年を取っていざ介護が必要になったら、「老人ホームに入居すればいい」と、ぼんやり考えている人は多いのではないのだろうか。かくいう筆者こそ、そんな問題先送り型のタイプである。

ところが近年「介護難民」という言葉を聞いたり、高齢者向けの住まいを取材することが増え、少なからず不安を抱き始めた。

そもそも『老人ホーム』とは? 
最近よく耳にする『特養』とは? 
まずは高齢者向けの住まいのジャンルや特徴を把握すること始めてみたい。 

2014年3月26日、厚生労働省は「特別養護老人ホームへの待機者が、全国で約52万4000人」と発表した。2009年12月の調査と比較すると、5年間で約10万人増! 急速なスピードで進む高齢化に、施設整備が追い付いていないことが分かる。

この『特別養護老人ホーム(特養)』に人気が集中する理由とは?
特養は「介護保険施設」の一つである公的な施設なので、10万円前後という比較的安い費用で介護や食事・生活支援などのサービスが受けられる。この安心感は、年金暮らしの高齢者にとって大きなポイントと言える。

一方で、要介護度4、5といった“自宅での介護が難しい人”から優先的に入居できるため、介護度の低い人は数年待ちということも多い。待機者52万人という数字には『とりあえず申し込んでおこう』という緊急度の低い人も多く含む、という見方はある。ただ、急に介護が必要になった時にすぐ入れる保証はないことは、ぜひ知っておきたい。

『特養』の次の選択肢は…『有料老人ホーム』? 主に2タイプあり

『特養』に入居できなければ、他の老人ホームを選べばいい、そう考える人も多いだろう。
民間の老人ホームは『有料老人ホーム』と呼ばれ、大きく分けて2タイプある。
(本来3タイプあるが、介護が必要になると退去する『健康型』はここでは省略する)。

◎介護付有料老人ホーム  ホーム内で介護や食事、生活支援サービスが受けられる。
◎住宅型有料老人ホーム  ホーム内で食事や生活支援サービスが受けられる。
             介護が必要な時は、「訪問介護」など外部サービスを利用する。

2つの違いを簡潔に言えば「介護サービスが付いているか、付いていないか」。

『介護付有料老人ホーム』は、都道府県から特定施設の認定を受けており、介護サービスにかかわらず自己負担額は原則一定。介護にかかわる職員の配置も、入居者3人につき1人以上と定められている。ただし、介護が手厚い分、入居一時金や月額費用が高めになるホームもある。

『住宅型有料老人ホーム』は、食事や身の回りの世話はホームのスタッフから受けられるが、介護は外部のサービスを利用。最近では「訪問介護事業所」などを併設するホームもあり、顔なじみのスタッフから介護を受けられる場合もある。あくまで、個人の契約で外部サービスを利用することになるため、介護度が上がると自己負担額が増えることもある。

「『介護付』『住宅型』というジャンル分けはありますが、実は各ホームによって、サービス内容も費用も十人十色です。医療や認知症への対応が充実していたり、リハビリに積極的に取り組んでいたり、食事が手作りなど、ホームの数だけ特色があります」と話すのは、数多くの高齢者住宅の建築に携わる、株式会社ニコムの藤嶋三也さん。

上記に紹介した特徴は、目安の一つ。自分や家族に合ったホームを選ぶためには、職員や施設長に話を聞いたり、重要事項説明書を入手して、じっくりと目を通しておきたいもの。また、本人とホームの相性を確かめる上でも、各ホームが行っている「体験入居」をぜひ活用したい。

「住宅型有料老人ホーム」は、入居者が集う食堂を中心に広々とした廊下が伸び、各居室が並ぶというアットホームなつくりが多い。愛知県津島市にある「みんなの家」は木造建築のため、木の温もりが心地よい。(設計・写真提供/ニコム)「住宅型有料老人ホーム」は、入居者が集う食堂を中心に広々とした廊下が伸び、各居室が並ぶというアットホームなつくりが多い。愛知県津島市にある「みんなの家」は木造建築のため、木の温もりが心地よい。(設計・写真提供/ニコム)

自由と安心と安価を備えた、『サービス付き高齢者向け住宅』が急増

名古屋市にあるサービス付き高齢者向け住宅「ナーシングホームOASIS」。最上階のレストランはアンティーク家具で彩られ、自立の人も毎日ホテル気分で過ごせそうだ。医療法人が母体のため、医療依存度が高い人も積極的に受け入れている(設計・写真提供/ニコム)名古屋市にあるサービス付き高齢者向け住宅「ナーシングホームOASIS」。最上階のレストランはアンティーク家具で彩られ、自立の人も毎日ホテル気分で過ごせそうだ。医療法人が母体のため、医療依存度が高い人も積極的に受け入れている(設計・写真提供/ニコム)

2011年に、新たな老後の住まいとして登場したのが、『サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)』である。

突然、お役所の話となるが、特養と有料老人ホームは、厚生労働省の「老人福祉法」に基づいている。サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)は、国土交通省・厚生労働省の共管になっており、「高齢者住まい法」の管轄である。「このことからも、『サ高住』が“住宅”という位置づけであることが分かります」と、藤嶋さんは話す。

◎サービス付き高齢者向け住宅
バリアフリーで原則25m2以上(食堂などの共用部分があれば18m2以上でも可)であり、介護・医療スタッフが日中常駐して安否確認や生活相談を行う。介護が必要になれば、外部サービスを利用。

つまり『サ高住』とは、バリアフリーなどのハード面と、見守りというソフト面を備えた、高齢者向けの住宅である。
「国が進める『安心な家を整備し、在宅サービスを利用』という方針にかなったものであり、国では、2020年度までに60万戸の整備を予定しています」と、藤嶋さん。

メリットは、外出や食事などの自由度が高いこと。数か月分の敷金が必要になる場合が多いが、高額な入居一時金は発生しない。

建物内に「食堂」や「訪問介護事業所」などを備えている物件もあり、顔なじみのスタッフから食事や介護サービスを受けられる場合もある。実際、毎日の食事が健康チェックの場になり、「お食事にいらっしゃらない時は、お部屋に声をかけにいきます」という声をサ高住のスタッフから聞くこともある。親と離れて暮らす家族にとっても、元気なうちから『サ高住』に住み替えてもらうのは安心ともいえる。

気を付けたい点としては、介護サービスや食事などは個々に契約を結ぶことになるため、利用するサービスに応じて費用が発生するということ。また、「胃ろう(胃に管を通して栄養を注入)」などの医療行為が必要になったり、認知症が進んだ場合などの体調の変化に対応できないこともある。老後の住まい選びでは、今だけでなく、将来の変化に対応できるかどうかも、ぜひ確認しておくことが大切だ。

さて次号では、藤嶋さんが手がけた「高齢者向け施設」を詳しく紹介する。
滝の流れる癒し空間や、鉄道の駅と一体化した施設など、夢と可能性の広がる老後の住まいに注目してほしい。

■取材協力
株式会社ニコム

2014年 04月22日 12時59分