存在感のある関西のタワーマンション

官民が連携し、現在も積極的な開発が行われている中之島エリア官民が連携し、現在も積極的な開発が行われている中之島エリア

「日本一という称号を中之島に刻む」。
2017年10月に大阪市北区、中之島エリアに竣工予定の「ザ・パークハウス中之島タワー」のキャッチコピーだ。ここでの"日本一"とは、「1995年以降に販売された免震構造タワーマンションにおいて、2015年7月1日現在、地上55階建は日本最高階数」ということらしい。条件付けは多いが、相当高いことには違いない。

では現時点での高さ日本一のマンションは?「ザ・パークハウス中之島タワー」と同じく大阪の物件、「The Kitahama」だ。大阪市中央区、三越跡地に建つ「北浜」駅直結のマンションで高さは209.4m。日本国内において高さ200mを超える竣工済マンションはこの「The Kitahama」を含め3棟しかない。2位は川崎市の物件だが3位は大阪市港区、弁天町にある「クロスタワー大阪ベイ」。戸数/棟数では首都圏に及ばない近畿圏の新築マンション市場だが、タワーマンションにおいてはプレゼンスを示している。

特に今年2016年はジオ天六 ツインタワーズ(大阪市北区)、ブランズタワー・ウエリス心斎橋SOUTH、プレサンス レジェンド 堺筋本町タワー、ブランズタワー御堂筋本町(以上、大阪市中央区)、プレミストタワー大阪新町ローレルコート(大阪市西区)等供給ラッシュで中古タワーも高止まりとなっている。そんな近畿圏のタワーマンションの1995年以降の歴史を振り返ってみたい。なお以降は30階以上の階高を持つ物件をタワーマンションとする。

タワーマンション黎明期

1995年、大阪府泉大津市で36階建てのタワーマンションが竣工した。南海本線「泉大津」駅前の「アルザタワーズ」だ。土地勘がないと間違えるかもしれないが、関西国際空港があるのは泉佐野市であり泉大津市ではない。1994年に開港した同空港から波及する効果を狙って建築した節もあろうが空港開発と直接関係はない。1995年に竣工したタワーマンションは堺市のまだ南、大阪(梅田)から約1時間の距離、泉大津市の物件のみだった。

2000年あたりまでの関西のタワーマンションは、年に1~3物件の供給で、デベロッパーは手探りで分譲していたように思える。供給のエリアもバラバラだ。1997年には栗東市(「ウイングビュー」(1999年竣工、分譲当時は栗東町))、2000年には大津市(「ファーストタワー大津MARY」(2002年竣工))で供給されている。ちなみに栗東市、大津市ではこれ以降30階以上の物件は分譲されていない。

今ではタワー=都心といっても差し支えないほどに都心立地の物件が多いが、なぜこの頃のタワーマンションは郊外立地が多かったのか?
当時はタワーマンションを建築するためには「大規模な敷地」という要件が重視されていたからだ。

1995年~2000年に発売された全11物件中で敷地が10,000平米を超える物件が6物件あるのに対し、2012年~2016年2月に発売された全20物件中では1物件しかない。新駅の設置により広大な敷地が手当てしやすかった「パークタワー南千里丘」(摂津市)のみだ。また先にも触れた「アルザタワーズ」の敷地面積は20,337.96平米。これを超える広さの敷地を持つ30階建て以上のタワーマンションは現在に至るまで「サンマークスだいにち」(守口市、31187.21平米)と「セントプレイスシティセントプレイスタワー」(大阪市都島区、35,861.32平米)の2物件しかない。

大規模敷地でなくてもタワーマンションを建てやすくなった理由は、1997年の建築基準法の改正だ。それまでは容積率としてカウントされていた廊下、エレベーターホールなどのマンション共用部分が容積率の計算から除外されることになった。この改正は容積率の増加と同じ意味を持ち、同じ広さの土地に以前よりもより大きな建物を建築することが可能となり、タワーマンション増加のきっかけとなった。

タワーマンションが「住まい」として意識され出した2000年代前半

建築基準法改正といった追い風もあり、関西タワーマンション市況は少し変化し、供給数が増加しだした。それまで年間3物件以下しかなかったものが2001年には4物件、以降は2002年6物件、2003年5物件、2004年6物件と幾分増加傾向となる。タワーマンションは「物珍しい存在」から「分譲マンションの一つの選択肢」として認知されだした。

物件数増えて認知度が上がったわけだが、とりわけ大阪市内での供給数が増加したことも認知度アップの理由といえる。

1995年~2000年の6年間で供給されたタワーマンションは11物件。うち約半分の6物件が大阪市内の物件。「毎年1本」大阪市内でタワーマンションが供給された計算だ。それが2001年〜2004年は4年間で21棟のタワーマンションが供給され、そのうち大阪市内物件は14物件。20世紀から21世紀にかけて1年あたりの供給数は約3倍に増え、3棟のうち2棟が大阪市内物件という都心エリア集中ぶりがうかがえる。

大阪市内の都心タワー以外ではターミナル駅での供給が目立った。大阪府枚方市(「くずはタワーシティ」(2001年発売))、大阪府高槻市(「ローレルスクエア高槻」(2002年発売))、兵庫県宝塚市(「ファミール宝塚グランスイートタワー」(2002年発売))といった大阪通勤圏のベッドタウンにある特急等停車駅駅前での供給が続いた。

ファンドバブル期そしてリーマンショック

2005年に入るとガラッと様相が変わる。供給物件が急激に増加したのだ。
2006年、2007年のファンドバブルといわれ不動産市場が大変活況であった時期を前後して2008年までの4年間、関西タワーマンション市場では大量供給がなされた。

1995年~2000年の6年間で11物件(1.83物件/年)から2001年~2004年は4年間で21棟(5.25物件/年)。2005年~2008年の4年間では、なんと44物件もの供給、年間11物件のペース、数年タームで倍々ゲームで増えている。そのうち大阪市内物件は28物件と年間7物件。「タワーマンション供給バブル」「大阪市内タワーマンション供給バブル」だったといえる4年間だ。

地域のランドマーク的存在となるタワーマンションの供給も相次いだ。大型複合商業施設「なんばパークス」と同敷地内にある「ザ なんばタワーレジデンスインなんばパークス」(2005年発売)、ビジネス街のど真ん中の立地が話題になった「淀屋橋アップルタワーレジデンス」(2005年発売)、北摂の人気駅である「千里中央」駅徒歩1分の「ザ・千里タワー」(2007年発売)、そして冒頭でも紹介した「The Kitahama」(2007年発売)等がこの時期に発売された。

右肩上がりに増えていった関西のタワーマンション。2008年に起きたリーマンショックで一転して減速する。2009年以降の発売棟数は最高でも2011年の7棟。2009年〜2015年は年平均約4.7棟にとどまった。

その内訳は7割超が大阪市内の中心部。ファンドバブル期前後はコンスタントに年間1〜3棟の発売があった神戸市内は2〜3年に一棟と低調。滋賀県は2005年以降一棟もない。以前にもまして大阪市内中心部に集中するようになった。理由は建築費の高騰にある。2011年の東日本大震災以降高騰した建築費を販売価格に転嫁/回収するためには、高単価で販売する必要がある。いくら土地代が安くても建築費が高ければ販売単価は高くなる。通常のマンションよりも建築費がかさむタワーマンションならなおさらだ。都心での供給がリスクが少ないであろうというデベロッパーの判断で都心回帰が加速していると考えられる。

大阪市における高層マンション着工戸数及び着工件数<BR />参照:国土交通省 大阪府における新設分譲マンションの動向大阪市における高層マンション着工戸数及び着工件数
参照:国土交通省 大阪府における新設分譲マンションの動向

大きな節目に差しかかりつつあるタワーマンション

関西でタワーマンションの供給が増えだしたのは2000年以降。それから16年が経った今、そろそろ「タワーマンションの大規模修繕」が増えていく。紙幅の関係もありここでは多く触れないが、タワーマンションの大規模修繕は通常のマンションよりも難易度が高いと考えられる。技術的に難しく施工が出来る業者が限られる。工期も長くかかる。よってコストも高くなる。また、物件により事情は異なるものの、小規模住戸から大規模住戸まで混在していて所有者間の所得格差が大きい物件が多く、一般的な物件に加えて管理組合全体での合意形成が難しい物件も出てくるであろう。

そのような状況の中、大規模修繕が上手くいくタワーマンションや問題が起きるタワーマンション等があらわれる。それらの情報は、既存の中古マンション市場にフィードバックされ中古価格の形成要素となるだけでなく、新築タワーマンションの価格設定、ひいてはその売れ行きにも影響を与える。

これから数年を考えれば、消費税導入の先送りといったプラス要素に加え、銀行の低金利、東京オリンピック開催まで景気が続くという市場の雰囲気などから、賃貸需要が旺盛で資産性が高い都心タワーマンションの相場が急激に失速することはないであろう。しかし今後は先に述べた大規模修繕への備えや賃貸需要、そしてどのような中古市場においてどのようなタワーマンションが売れている(or 売れていない)のかを観察し、しっかりとマンションの価値を見極める必要がある。特に都心型に比べると需要が少ない郊外型のタワーマンションについては注意が必要だ。

タワーマンションだから、というだけで売れる時代はそう長くはない。

南天満公園周辺の高層マンション群南天満公園周辺の高層マンション群

2016年 08月17日 11時06分