福岡発、“おうち時間”で注目されたヨガマット

イケヒコ・コーポレーションが販売するヨガマット「畳ヨガ」。福岡で活躍するヨガインストラクターの橋口ひとみさん(写真)も公認とのことイケヒコ・コーポレーションが販売するヨガマット「畳ヨガ」。福岡で活躍するヨガインストラクターの橋口ひとみさん(写真)も公認とのこと

新型コロナウイルスの感染対策により、不要不急の外出は控えるように促されたほか、仕事面ではテレワークを採用する企業が増えた。自宅にいる時間が長くなり、運動不足解消のために、オンラインレッスンなどを活用して、エクササイズを楽しんだという人も多いのではないだろうか。

そんななかで、売り上げを伸ばして話題になったものの一つに、ヨガマットの「畳ヨガ」がある。製作・販売しているのは、福岡県に拠点を置く株式会社イケヒコ・コーポレーション。1886(明治19)年に初代が畳販売で創業した会社だ。現在は、畳の素材である、い草を使った商品を主力にしながら、ラグやカーペット、クッションなどのインテリアアイテムを展開する。

「近年、住宅の欧米化やライフスタイルの変化から、畳の需要が減っており、消費者の方が畳に触れる機会が激減しています」とは、同社・コネクト事業部の堀尾歩さん。「畳ヨガ」は、その状況をなんとかしようという思いから誕生した。

社内向けのワークショップがきっかけに

「畳の需要が減るなか、まずは私たち社員が、い草(畳)を使っていこうという目的で、2017年1月から社内向けに、い草のワークショップイベントを始めました。その一環として、今まで畳を使ったことがない人たちにどうやったら使っていただけるか?い草の機能や心地よさを感じられるものは何か?気軽に使えるものは?など、さまざまなことを考えるなかで、『畳ヨガ』というアイデアが生まれました」と堀尾さん。

そして地域の人にも体験してもらおうと、2017年6月にヨガイベントを実施すると、想像を超える総勢30人以上の参加者が集まった。「気持ちいい」「リラックスできた」「いいにおい」「癒される」といった、うれしい感想を聞くことができ、製品化を決定。2018年夏に販売開始した。

堀尾さんは「畳の原料として使われてきたい草は、私たちの身体はもちろん、地球環境にも優しい効果を多く持つ、自然が生んだ素材です。また、い草の学名・Juncusには、“結ぶ”という意味があります。ヨガの語源であるyuには“つなぐ”という意味があります。偶然にも同じインドで生まれた、い草とヨガには、はるか昔からの大きなつながりがあるように感じます」と語る。

世界中で親しまれているヨガは、自然を大切にするマインドも特徴。い草を使うことで自然を感じてもらうことができ、受け入れてもらえるのではと考えた。そして、そこから畳の良さを知ってもらいたいと願った。海外展開を視野に入れた分かりやすいネーミングにし、実際に今では、台湾、中国、イタリア、フランス、アメリカなど多くの国で販売されている。

「畳ヨガ」では、デザインも楽しんでもらえるようにと、畳の織り方ではなく、ござの織機を使用。プレーン生地のほかに、サンセット(夕暮れ)、植物柄など自然に由来するデザインが採用され、全15種類をそろえる。

左上/「畳ヨガ」プレーン。左下/写真手前のサンセットなどおしゃれなデザインが目を引く。プレーンは9,800円で、そのほかは7,980円~1万2,000円(各税抜き)。右上/海外で人気が高い、富士山と桜の柄。右下/裏面には、ずれ防止のため、ゴムのような性質を持つプラスチック素材、TPE(熱可塑性エストラマー)を使用。TPEはリサイクルが可能で、環境に優しい素材としても知られる左上/「畳ヨガ」プレーン。左下/写真手前のサンセットなどおしゃれなデザインが目を引く。プレーンは9,800円で、そのほかは7,980円~1万2,000円(各税抜き)。右上/海外で人気が高い、富士山と桜の柄。右下/裏面には、ずれ防止のため、ゴムのような性質を持つプラスチック素材、TPE(熱可塑性エストラマー)を使用。TPEはリサイクルが可能で、環境に優しい素材としても知られる

い草の効果がヨガにぴったり

堀尾さんに、い草の特徴を聞くと、8つのことを教えてくださった。

①香り:い草の香りでリラックス効果
②吸湿性:ジメジメと湿度が高いときには吸湿し、湿度が低く乾燥しているときには放湿して、室内環境をコントロール。その吸湿力は、綿の約2.5倍
③消臭力:汗や加齢臭、タバコ、ペットなどのにおいの原因物質を減少させる効果があるといわれる
④抗菌防臭効果:高い抗菌性があるため、清潔に使用できる
⑤空気をきれいに:シックハウスの原因となるホルムアルデヒドや二酸化炭素を吸着
⑥防汚性:汚れにくい素材という検査データがある
⑦耐火性:い草は燃えにくく、火気が近づいても燃え広がりにくい※防炎表示が付けられているものもある
⑧夏涼しく、冬はあたたかく感じる

身体の動きとともに呼吸を大切にするヨガにとって、い草の効果を体感できる「畳ヨガ」はぴったりだったというわけだ。さらっとした肌触りで、汗をかいてもベタつきにくく、汗のにおいも減少してくれる。また、「畳ヨガ」は、抗菌力が高いとされるヒバから抽出したエッセンスをプラスし、抗菌防臭効果を高めている。

左上/い草は、12月に水田に植え、翌年の6~7月頃に収穫。左下/乾燥させたい草は緑から変化。畳ヨガで色が付いたデザインの原料となるい草はこの段階で染める。右上/機械で織り上げていく。右下/きれいな織り目で肌触りよく仕上げる。ヨガのポーズを安定してとれるように織り方にもこだわり、足をマットがしっかりと受け止められるような程よいしなやかさに工夫したという左上/い草は、12月に水田に植え、翌年の6~7月頃に収穫。左下/乾燥させたい草は緑から変化。畳ヨガで色が付いたデザインの原料となるい草はこの段階で染める。右上/機械で織り上げていく。右下/きれいな織り目で肌触りよく仕上げる。ヨガのポーズを安定してとれるように織り方にもこだわり、足をマットがしっかりと受け止められるような程よいしなやかさに工夫したという

お手入れは簡単。キッチンマットなどインテリアにも活用できる

こちらは「畳ヨガ」ではないが、イケヒコ・コーポレーションが販売する、い草製のキッチンマットこちらは「畳ヨガ」ではないが、イケヒコ・コーポレーションが販売する、い草製のキッチンマット

使用するとなるとお手入れ法が気になるところだが、「基本的には乾拭きだけでOKです。洗濯の必要はありません。ただし、高い吸湿性がありますので、月に1回程度は風通しのいい場所で2時間ほど日陰干しをしてください」とのこと。

水などをこぼしてしまった場合は、こぼれた部分が広がらないようにティッシュペーパーや布などでやさしく拭き取る。濡れた状態で強くこすぎすぎると色ムラの原因になってしまう。その色ムラを防ぐためには、水分のある部分に食塩をなじませ、掃除機で吸い取るといいそうだ。織り目に入り込んでしまったらブラシなどで除去し、そのあと日陰干しをして余分な水分を取り除く。

カビが発生してしまった場合は、天気のいい日の日中に日陰干しをして乾燥させる。そして風通しのいい場所で、い草の目に沿ってタワシやブラシなどでこすってカビを除去する。

い草を使ったラグも販売されているが、デザイン性がある「畳ヨガ」をインテリアに取り入れるのもおすすめだ。リビングに広げて、ラグマットに。お昼寝や部屋でくつろぐ時のマットに。ソファー前に置いてアクセントマットに。寝室のベッドサイドマットに…。

なかでも堀尾さんが特におすすめというのが、キッチンマット。デザイン性、防汚性、燃えにくさ、肌触りなど、キッチンマットとして使いやすい機能が備わっている。

九州産のい草を使用している「畳ヨガ」。海外産のい草と比べ、丈夫でへたりにくく、弾力性が高いという。海外産のものが価格面ではリーズナブルだが、国産は長く愛用できるという利点がある。

肌触りのよさから夏がメインと思いがちだが、実は1年中使うことができる。「例えるなら、井戸水のような感覚。外が暑いとい草の表面はひんやりと感じ、寒いと温かい。湿度を調節する機能があるので、冬でもひやっとは感じにくいんですよ」

お手入れ方法をきちんと知っておけば、活用の用途が広がる。

日本の畳文化を世界へ

最後に、今後の展望を聞いた。

「日本の畳文化を世界に広げることです。い草って、本当に気持ちいいですし、とても優れた素材なんです。そのすばらしさを、世界中の人に知ってもらいたいです。

『畳ヨガ』以外にも、フローリングの上に簡単に畳スペースを作ることができる『ユニット畳』、い草でできたインソール『侍インソール』、今年新発売したドリンク用粉末『イグサのアオジル』などを通して、今まで畳(い草)を使っていなかった人に、畳の良さや、い草の機能を体感していただく。そうすることで、やっぱり畳っていいなと、住宅のなかで畳を使う機会を増やしていきたいです。

そのためには、商品開発と情報発信が必要ですので、今後もさまざまなライフスタイルに合わせた商品開発を行い、HPやSNSを活用して、世界中の人たちにい草のすばらしさを発信していきます。

そうすることがお客様へのサービスとなり、“日本の畳文化”を守っていくことにつながるのではないかと思っています」

い草を飲むとは驚きだが、もともと薬草だったとのことで、食物繊維やビタミンなどを含んで栄養価が高く、デトックス効果も期待できるそうだ。近年の住まいはフローリングが多いが、あらためて畳の原料であるい草の効果を知り、日本の伝統的な住環境であった畳について見直すことができた。まずは、手軽に取り入れられるアイテムからその魅力に触れてはどうだろうか。


取材協力・写真提供:イケヒコ・コーポレーション https://ikehiko.com/
畳ヨガ https://www.tatamiyoga.jp/
畳ヨガ動画
https://www.youtube.com/playlist?list=PLGg4M9W-T-Lt0xa-nn_WuZXrU2CIvyPU6

上/「ユニット畳」。畳の部屋が減っているなかでも、やはり畳スペースが欲しいという要望があってできた商品。フローリングの上にパッと広げるだけで、簡単に畳スペースができる。い草の機能に加え、断熱性や防音効果もあるので、リビングや子ども部屋、布団の下などにおすすめとのこと。下/イケヒコ・コーポレーションでは、国産デニムとコラボレーションした「D.STYLE」というブランドも展開。アパレルでも人気のデニム生地と自然素材を組み合わせ、若い世代でも取り入れやすくした上/「ユニット畳」。畳の部屋が減っているなかでも、やはり畳スペースが欲しいという要望があってできた商品。フローリングの上にパッと広げるだけで、簡単に畳スペースができる。い草の機能に加え、断熱性や防音効果もあるので、リビングや子ども部屋、布団の下などにおすすめとのこと。下/イケヒコ・コーポレーションでは、国産デニムとコラボレーションした「D.STYLE」というブランドも展開。アパレルでも人気のデニム生地と自然素材を組み合わせ、若い世代でも取り入れやすくした

2020年 08月02日 11時00分