全国の空き家数と空き家率が過去最高を更新

もはや周知の事実となっている全国的な空き家の増加とそれにともなう問題。総務省の『平成30年住宅・土地統計調査』によると、2018年時点での全国の空き家数は846万戸、空き家率は13.6%と過去最高を更新している。1988年から2018年の空き家数の推移を確認すると、30年間で2倍以上増加しているのだ。

放置された空き家は、劣化によって部材が落下するといった危険性があり、害虫や害獣の巣になるなど衛生上もよくない。また、不審者の隠れ場所になり得るといった防犯上の問題も生じがちだ。そして、土地を有効活用できていないという意味でも問題だろう。とはいえ、「自分は賃貸暮らしなので関係ない」と考える人も多いはずだ。しかし、持ち家ではないケースでも親や親戚からの相続などで突然空き家問題を突きつけられることもあり得る。また、自分の住む街で空き家が増えていくのを快く思う人はいないだろう。つまり、空き家問題は誰にでも関係する問題なのだ。

東京都でも空き家は大きな問題となっている。都の2018年の空き家率は10.6%と全国平均から見ると低い。しかし、空き家数は80万9,000戸と他の道府県に比べて圧倒的に多く、2013年以降高止まりの状態が続いている。

そこで東京都ではこういった空き家問題に対処するため、2019年3月に『東京空き家ガイドブック』を公表した。

東京都の空家数は過去30年で倍増し、ここ5年は高止まりの状態が続いている(『平成30年住宅・土地統計調査』(総務省)のデータを基に作成)東京都の空家数は過去30年で倍増し、ここ5年は高止まりの状態が続いている(『平成30年住宅・土地統計調査』(総務省)のデータを基に作成)

空き家問題を解決した15の事例を紹介

同ガイドブックは、空き家に関する相談に応じる「東京都相続空家等の利活用円滑化モデル事業」(2016年~2018年)で収集した空き家問題の解決事例と、空き家問題の解決の手がかりとなる基礎知識をまとめたものだ。具体的には「空き家の事例集編」(相談事例分析を含む)と「空き家のギモン編」の2部構成になっており、特に「空き家の事例集編」の、実際に空き家に困る人がどのように問題を解決したのかを知ることができるところが特徴だ。その内容を紹介しよう。

<空き家の事例集編>
「空き家の事例集編」では、まず、モデル事業に寄せられた相談(344件)の傾向を紹介している。たとえば、空き家発生の経緯でもっとも多いのは「相続」で42%を占める。続く「施設入居・病院入院」が20%なので、家の「相続」で困る人がいかに多いのかが分かる。

そして問題の解決事例紹介では、問題を解決した15の事例を知ることができる。たとえば「家が古くて売れない」という問題を解決した事例はこのようなものだ。

■建物概要
・一戸建て(木造2階建て)
・築47年
・敷地65m2、延べ床面積53m2

■課題
経年劣化がかなり進んでおり、居住するためには多額のリフォーム代がかかる。仮に建て替えるにしても、接している道路が複数人名義なので承諾を得るのが難しい。

■解決策
現状の建物の状態や立地では、個人への売却は困難なため、そのままの状態で不動産会社へ売ることを提案した。その結果、測量や解体などの費用を負担したうえで買い取りを希望する不動産会社を見つけることができた。

このほかにも紹介されているのは、「借地権付きなので売れない」「道路に接していないので建て替えができない」「敷地が狭くて活用が難しい」「親族間で意見が合わない」といったように、どれも素人では頭を抱えてしまう問題ばかり。それらを専門家ならではの知識で見事に解決している。

大体の問題の解決方法が見つかるQ&A集

<空き家のギモン編>
「空き家のギモン編」では、「どんなときに空き家になるのですか?」「空き家の解決策にはどんなことがありますか?」といった基本的な質問から、「空き家の利活用や相続などについて相談できるところはありますか?」「空き家に対する補助金などの支援はありますか?」といったすぐに役立つ具体的な質問までの回答を図などを用いて分かりやすく解説している。

たとえば、「空き家の解決策にはどんなことがありますか?」に対しては、①家を取り壊す「除却」、②売却や賃貸などの「利活用」、③問題が起こらないように定期的に行う「管理」、④空き家になる前に使い方などを決めておく「発生予防」の4つの解決策が考えられる。また、空き家を売却したり、賃貸に出す方法など具体的な解決方法にも触れているので、このギモン編を読めば大体の問題の解決方法が見つかりそうだ。

「空き家のギモン編」では、代表的な空き家への質問の回答を図などを用いて分かりやすく解説している。<br>画像は「空き家の解決策にはどんなことがありますか?」という質問への回答。『東京都空き家ガイドブック』より抜粋「空き家のギモン編」では、代表的な空き家への質問の回答を図などを用いて分かりやすく解説している。
画像は「空き家の解決策にはどんなことがありますか?」という質問への回答。『東京都空き家ガイドブック』より抜粋

都民に限らず全国の空き家オーナーに役立つガイドブック

『東京空き家ガイドブック』の表紙。同ガイドブックで紹介されている内容は、東京以外の空き家オーナーも活用できるものになっている『東京空き家ガイドブック』の表紙。同ガイドブックで紹介されている内容は、東京以外の空き家オーナーも活用できるものになっている

『東京空き家ガイドブック』は、下記サイトでダウンロードできるほか、冊子として5,000部発行されており、都の本庁舎や都内各区市町村で入手可能だ。ただし、現在非常に好評で、区市町村によってはすでに配布分がなくなっている(増刷を検討中)。もし、取りにいくなら事前に電話で確認したほうがいいだろう。

空き家の持ち主になるきっかけは人によってさまざま。また、そこで生じる問題も十人十色のはずだ。しかし、同ガイドブックを確認すれば、多くの問題の解決事例が紹介されているので、自分に合った解決策を見つけられる可能性は高いだろう。見つからない場合でも専門家による多くの相談窓口が紹介されているので、頼りになる相談相手に出会えるきっかけになるはずだ。紹介されている内容は、都民に限定されるものばかりではないので、全国の空き家に困っている人、または空き家のオーナーになりそうな人にとっても心強い資料となるだろう。

http://www.metro.tokyo.jp/tosei/hodohappyo/press/2019/03/22/03.html

2019年 06月18日 11時05分