災害に対して強くてしなやかなレジリエンスホーム

電気やガスなどのエネルギーはいつでもどこでも好きなだけ使えるもの、という意識を東日本大震災は一変させた。いつ発生するか分からない大震災などの災害に対し、私たちは常に備えが必要と気づかされたのだ。

このような背景から2013年、国土強靭化基本法が成立した。同法は地震や土砂災害などの様々なリスクに対応できるように強くてしなやかな日本をつくるための法律。対象は行政機能から保険医療、交通、情報通信など多岐に渡っている。これに基づいて国土強靭化推進本部が設置され、本部長は安倍総理が担っている。

その中に住宅とエネルギーも含まれている。ここで推進されているのが、レジリエンスホームだ。レジリエンスとは、抵抗力や回復力といった意味。つまり災害に対して強くてしなやかな住宅ということだ。

2015年11月11日、株式会社LIXIL住宅研究所と本田技研工業株式会社が共同で開発した「次世代レジリエンスホーム『家+X』Powered by Honda」が東京都葛飾区で公開された。「災害に強くてしなやかな住宅」とは? その様子をレポートしよう。

「次世代レジリエンスホーム『家+X』Powered by Honda」の外観。延床面積57.7坪の木造軸組構法。一階中央がビルトインガレージ。実際に商品化を目指している。「次世代レジリエンスホーム『家+X』Powered by Honda」の外観。延床面積57.7坪の木造軸組構法。一階中央がビルトインガレージ。実際に商品化を目指している。

日本初の燃料電池自動車対応の普及型住宅

同住宅は延床面積57.7坪の木造軸組構法。災害時のレジリエンス性はもちろん、高齢化社会やエネルギー全面自由化なども考慮し平時にも家族の幸せが持続する新しい暮らしの形を提案している。具体的には「家」と「自動車」「エネルギー」「テレビ」「絆」「美容・健康」「キッズデザイン」「Dream(夢)」を結びつける7つのソリューションだ。では、その主なものを紹介しよう。

●家+自動車
「次世代レジリエンスホーム『家+X』Powered by Honda」は、日本初の燃料電池自動車対応の普及型住宅。燃料電池自動車を動く電源として、災害時や停電時といった日常使用している商用電力が届かない状況でも、約7日間は通常の生活がおくれる。

この日は、先日の東京モーターショーで世界初公開されたホンダの燃料電池自動車「クラリティ フューエル セル」を用いて、停電時のシミュレーションが行われた。車両と電力需給制御システム「Power Manager(パワーマネージャー)」をつなぎ、商用電力を遮断。いったんは家中の電力が落ちたが、すぐに車両からの供給が始まり、照明がついた。この間のタイムラグはほとんどなかったので、日常生活への支障を心配することはないだろう。

左:先日の東京モーターショーで世界初公開されたホンダの燃料電池自動車「クラリティ フューエル セル」。左後部からケーブルで電力需給制御システム「Power Manager(パワーマネージャー)」とつながり、需給電を行う。右:停電時の電力需給制御システム「Power Manager(パワーマネージャー)」の画面。左側のクルマから真ん中の家に電力を送っている。下はガスコージェネレーションシステムだが、このときは非常用電力のみを要したので、稼働させなくてもクルマだけの電力で事が足りた左:先日の東京モーターショーで世界初公開されたホンダの燃料電池自動車「クラリティ フューエル セル」。左後部からケーブルで電力需給制御システム「Power Manager(パワーマネージャー)」とつながり、需給電を行う。右:停電時の電力需給制御システム「Power Manager(パワーマネージャー)」の画面。左側のクルマから真ん中の家に電力を送っている。下はガスコージェネレーションシステムだが、このときは非常用電力のみを要したので、稼働させなくてもクルマだけの電力で事が足りた

LPガスとコージェネによって約1カ月間のガスと電気の供給が可能

同住宅の断熱性能は、Q値0.98W/m2k。次世代省エネ基準2.7W/m2kを大きく上回る高断熱仕様だ。そのうえで太陽光発電システム、ガスエンジンコージェネレーションシステム、電気自動車、燃料電池自動車と連動。消費エネルギーゼロを実現している。

ガスコージェネレーションシステム(通称:コージェネ)とは、ガスを燃料として電力と熱を供給するシステムだ。ホンダはエネルギー利用率92%の家庭用ガスエンジンコージェネレーションユニットを開発。高効率で省エネ・CO2排出量削減に貢献する。また、燃料がガスのため停電時でも発電、給湯が可能。さらに災害などで都市ガスの供給が止まってしまった場合でもLPガスを利用できる。

同住宅は2本のLPガス(100㎏)とコージェネによって、約1カ月間のガスと電気の供給が可能。また、36Lの水を備蓄できる装置を設置しているので、家族4人で3日分の飲料水を確保できる。

ガスコージェネレーションシステム。停電時は左側のグリップを引っぱることで始動。商用電力が止まっても自立運転し、電気とお湯をつくるガスコージェネレーションシステム。停電時は左側のグリップを引っぱることで始動。商用電力が止まっても自立運転し、電気とお湯をつくる

テレビが自宅周辺の災害情報をリアルタイムで伝える

●家+テレビ
災害時にもっとも重要なのは、正確な情報の入手と家族の安否確認だろう。同住宅のテレビは、自分の住んでいるエリアの災害情報や万が一の警報、避難指示などを教えてくれる。

登録エリアに強い雨が接近すると自動的に「警報モード1」を表示。近くの河川の水位や道路の通行止めの情報などを伝える。デモ画面では、近くの江戸川の水位や柴又帝釈天前交差点の浸水状況などが表示された。非常に詳細な情報なので、自宅周辺の状況がよく理解できる。安心材料になると同時に、避難をするかどうかの判断にも役に立つだろう。

さらに画面をクリックすると「警報モード2」を表示。自治体が発信するリアルタイムの情報「Lアラート」の詳細と、避難時の注意事項などを伝える。

また、テレビとスマートフォンをつなぎ、家族同士で安否や避難場所を伝え合うこともできる。

豪雨時のデモ画面。左側に警報、家族の安否、近くに流れる江戸川の水位など、下に交通止めなどの被害状況が表示されている豪雨時のデモ画面。左側に警報、家族の安否、近くに流れる江戸川の水位など、下に交通止めなどの被害状況が表示されている

外出先でも子どもや高齢の両親の帰宅が分かる

外出先の親に子どもや両親の帰宅を伝えるBOCCO。音声のやり取りを通じて心の状態を知ることもできる。外出先の親に子どもや両親の帰宅を伝えるBOCCO。音声のやり取りを通じて心の状態を知ることもできる。

●家+絆
ここまでは災害時の話をしてきたが、同住宅は平時の住みやすさも追求している。リビングルームのテレビの脇には、小さなロボットのようなものが置かれていた。これが家族を見守り、つなぐ「BOCCO(ボッコ)」。付属する開閉センサーを玄関のドアになどに設置することで、外出先からもスマートフォンを通じて子どもや高齢の両親の帰宅が分かる。トイレのドアにも設置すれば、両親の異常事態もより早く察知できるだろう。

この日のデモンストレーションでは、子どもの帰宅を察知するとBOCCOが「おかえりなさい」と母親の声でメッセージを再生した。子どもはそれに応えて音声を外出先の母親に送ることができる。その際、BOCCOは声の様子から心の状態を分析。親はスマートフォン上でその結果を確認し、「きょうは美味しいものを作ってあげようかな」といったように帰宅後の接し方を工夫することができる。この技術は、東日本大震災の仮設住宅での避難者サポートをするために開発されたものだ。

「次世代レジリエンスホーム『家+X』Powered by Honda」は、単なる「未来の家のイメージ」ではなく商品化を目指した住宅だ。実際に、高気密高断熱の超省エネルギー住宅、ガスエンジンコージェネレーションシステム、PHS回線で常に残量が把握できるLPガスの3点セットは、2016年春の販売を予定している。価格は未定ということだが、ぜひ一般家庭でも手の届く設定を実現してもらいたい。

2015年 12月02日 11時07分