846万戸もの空き家。有効な活用方法が見つからず、どうしていいかわからないから空き家のまま?

5年ごとの調査のたびに増え続ける空き家数と空き家率(グラフは総務省 「平成30年度住宅・土地統計調査」。一部修正)。野村総合研究所の予測では、2033年の空き家数は2,166万戸という衝撃的な数値となっている5年ごとの調査のたびに増え続ける空き家数と空き家率(グラフは総務省 「平成30年度住宅・土地統計調査」。一部修正)。野村総合研究所の予測では、2033年の空き家数は2,166万戸という衝撃的な数値となっている

2019年4月、総務省統計局が発表したデータによると、全国の空き家数は846万戸。5年前、2013年の820万戸より26万戸増加し、空き家率は13.6%となり、ともに過去最高となった。
2013年の同調査時の資料によると、「空き家となった住宅を取得した経緯」では56.4%が「相続して取得」で、空き家所有者の約4分の1が遠隔地(車や電車などで1時間超)に居住しているという。

また、「空き家にしておく理由」については、「物置として必要」「解体費用をかけたくない」「特に困らない」「将来、自分や親族が使うかもしれない」「さら地にしても使い道がない」「取り壊すと固定資産税が高くなるから」などの理由が多くなっている。結局のところ、「有効な活用方法が見つからず、どうしていいのかわからない」というのが空き家になっている理由のようだ。
野村総合研究所では、世帯数の減少と総住宅数の増加に伴い、2033年の空き家数は約2,166万戸、空き家率30.4%になると予測(2017年)。日本の全物件の約3軒に1軒が空き家になるという計算だ。

そのまま放置すると、風景・景観の悪化、倒壊の危険性、防災や防犯機能の低下、衛生状態の悪化や悪臭の発生、除去コストの増加など、多数の負の側面を持つ空き家。しかし、うまく活用できれば移住による人口の増加や産業の活性化などにも役立つ。そこで、行政と連携しながら空き家相談や維持管理業務など多岐にわたる活動を行い、空き家活用の事例やノウハウを多数持つ、NPO法人空き家コンシェルジュ代表の有江正太さんと、株式会社LIFULLで地方創生に取り組む渡辺昌宏さんに、空き家対策に関する課題、空き家相談の担い手育成の必要性、さらに、2019年5月にスタートした「空き家相談の担い手育成講座」などについてお聞きした。

解決への道付けを行うコーディネーターとして空き家相談に対応。地域性の理解も必須

有江さんは、奈良県でNPO法人空き家コンシェルジュの代表理事を務めている。
「空き家は行政の問題であるにも関わらず、法人を立ち上げた2013年当時、奈良県の自治体のほとんどには、空き家に関する窓口や担当部署がありませんでした。職員に相談しても専門知識やノウハウがないため対策が立てられないこと、人材不足、担当者が2~3年で異動してしまうことなどから、きめ細かな対応は難しい様子でした。ただ、2014年11月に成立した空家等対策特別措置法が、翌年2月に施行されてから少し流れが変わってきたように思います」と有江さん。

先に挙げたような行政の現状を鑑みて、空き家問題に関する相談窓口の必要性を感じ、NPO法人を立ち上げたそうだ。
「相談を受け、どういう専門家と連携するかを考え、解決の道付けをするのが私たちの役割になります。必要なのは、スペシャリストではなくゼネラリスト(コーディネーター)として相談に向き合うこと。相続の問題もあれば認知症などの健康状態や身体的な問題、経済的な問題、特措法により解体しなければならない家の相談など、内容は多岐にわたります。法律、税務、建築、不動産、福祉など、専門家につなげる前段階の幅広い知識を駆使して、川上から川下まで丁寧にコーディネートしながら相談者の様々な問題を解決しています」

また、空き家問題の解決には、地域性の理解も欠かせないと話す。
「例えば、奈良県北部は『奈良府民』と言われるほど、大阪・京都へ通勤している人が多いベッドタウンになっており、流通困難な物件相談が多い一方、南部は消滅可能性都市にいくつも入るような山間の過疎地域もあるため、近所や親戚の目などを気にする地方特有の考えがあって、簡単に空き家を処分することもできずに困っている方が多数おり、こういう場所では空き家バンクが有効に機能する場合があります。しかし、奈良で成功したことと同じことを東京で行っても、同じ結果が出るとは限りません。空き家対策には、地域の特性をよく理解することが必要だと思います」

全国の市町村では空き家への対策が進められているものの、様々な問題から思うように空き家の掘り起こし自体が進んでいないのが現状という。空き家は放置すれば多くの問題が発生するものの、活用次第では地方創生の動力にもなる全国の市町村では空き家への対策が進められているものの、様々な問題から思うように空き家の掘り起こし自体が進んでいないのが現状という。空き家は放置すれば多くの問題が発生するものの、活用次第では地方創生の動力にもなる

空き家バンクを運営しデータベース化しているLIFULLと空き家コンシェルジュが連携し、地方創生に取り組む

株式会社LIFULLも、空き家対策に積極的に取組んでいる。地方創生推進部の渡辺昌宏さんが話す。
「『人』『物』『お金』『知恵』を地域と連携する仕組みの構築に取り組んでいます。その大きなテーマが空き家。全国版空き家バンクを運営しながら市区町村(自治体)と連携し、空き家情報の収集(DB 化)から空き家活用まで、ワンストップ化の実現を目指しています。国土交通省の調査では、耐震性があり腐朽・破損がない活用可能な空き家は103万戸。このような空き家情報を見える化し利用者ニーズとつなげる事ができれば、それはすべて地域の新しい価値の創出につながると考えています」

「人」の提供では、市区町村(自治体)と連携し相談しやすい空き家の相談窓口を様々な地域に設置。空き家の相談窓口には総合的な知見が必要なため、その知見をもつ人材を育成するための講座をスタートさせて地域に興味関心が高い人たちに受講してもらい、その人たちと地域をつなげていくことに取り組んでいる(後述)。

「物」の提供では、空き家バンクの運営だ。「市区町村(自治体)と連携し空き家情報の充実を行い、移住者や事業者がその情報を見て空き家を活用していくサイクルをつくりたい」と話す。また、クラウドファンディングなどを活用しながら空き家の利活用や新たなまちの魅力づくりにつなげる取組みを行っている。

「『知恵』の部分では、観光客ニーズが高いエリアで、空き家を民泊施設として活用などしていきたいと考えています。
このような一連のソリューションを地域と連携させていただくことで、多くの課題の解決に加え、新たな価値を生み出す取組みを行っています」

渡辺さんが空き家の諸問題と向き合った時に出会ったのが、奈良で活動する有江さんだった。
「空き家所有者のアンケートでは、4割ぐらいの方が『どうしていいかわからない』と答えているのがまさに現状の課題であり、私たちはこの空き家の課題に何ができるかを調べていた時に、奈良県でNPO法人空き家コンシェルジュさんが県内の自治体と連携して年間1,500件弱の相談を受け付けて、空き家の諸問題を解決されているということを知ったのです。空き家バンクを運営する我々と連携させていただきながら、空き家コンシェルジュさんが持つ様々なノウハウを地域の皆さんとも連携し、日本の空き家の課題に対して一緒に取り組んでいきたいと考えました」

そこでスタートしたのが、先述した「空き家相談の担い手育成講座」だ。

空き家の相談業務イメージと、空き家の相談業務内容の一例。</br>地域のハブとして新たなプロジェクトを生み出すことで、地域活性化にも貢献できる空き家の相談業務イメージと、空き家の相談業務内容の一例。
地域のハブとして新たなプロジェクトを生み出すことで、地域活性化にも貢献できる

空き家問題の解決+新しい価値を提供する「空き家相談の担い手育成講座」がスタート

講座は2019年5月にスタートし、2日間にわたり講義を行う。講座は随時開催予定。今後の予定はホームページで確認を講座は2019年5月にスタートし、2日間にわたり講義を行う。講座は随時開催予定。今後の予定はホームページで確認を

空き家所有者の相談から空き家の利活用希望者とのマッチングまでを一元化して担うことができる空き家相談のスペシャリストを育成するのが「空き家相談の担い手育成講座」。
「空き家相談の担い手」は、地域の自治体などから空き家対策業務の委託を受け、空き家を所有している方や、将来的に空き家になりそうな物件の所有者からの相談窓口となり、相談内容に応じて必要な関連事業者と連携しながら、空き家の利活用を推進する役割を担う。現状の課題と考えられる、空き家所有者の「どこに相談していいかわからない」「何から着手してよいかわからない」等の理由で進まなかった利活用の推進を行い、利活用希望者とのマッチングまでを一元化して行う。

これまで空き家に住みたい、空き家を活用して事業を行いたいなどと考える活用希望者に十分な空き家情報を提供できていなかった地域や、新しい産業や地域の担い手を獲得するチャンスをつかめずにいた地域もあるだろう。「空き家相談の担い手」は、空き家の問題解決だけでなく、空き家活用相談のスペシャリストとして地域活性化にも貢献し、地域に新たな価値を提供する。

「講座では、まず空き家の状況と、担い手はどういうものなのかの解説に加え、目指すべきゴールを見据えながらスタートします。ボリュームとして大きいところは、相談を専門家につなぐ際に必要な専門的な知識として最低限必要なこと、例えば法律、税務、建築、不動産などの知識を中心に学んでいただきます。
ただ知識を付けるだけでなく、自治体や民間企業との連携、補助金や制度の仕組み、運営方法など実務的な話もします。座学は1講座で2日間行いますが、実地の講座も検討中です」

相続などで悩む方が安心して相談できる人材を育成したい。新しい職業としても期待

写真右から、株式会社LIFULL 地方創生推進部 渡辺昌宏さん、NPO法人空き家コンシェルジュ 代表理事 有江正太さん写真右から、株式会社LIFULL 地方創生推進部 渡辺昌宏さん、NPO法人空き家コンシェルジュ 代表理事 有江正太さん

5月に行った初回の講座の参加者は、8割ほどが自治体の職員で、ほかには工務店や不動産管理の方、地域おこし協力隊の方だったという。

「現状の空き家バンクの制度のこと、また地域の空き家の問題をどのように解決していくのかについて講座の中で触れるので、自治体の方は、知識をつけることで新たな取組みや現在の業務にプラスしていただける部分があると思います。
今後仕事として空き家の担い手を地域で根付かせていくことも、私たちの目的のひとつです。社会貢献になる仕事としての空き家、単なる不動産ということではなく、地域を継続して維持していくため、また住んでいる方々に喜んでいただけるための仕事として、様々な知識を身に付けたいと考えている方に受講していただければと思います」

「空き家相談の担い手」は、不動産の相談というよりも、生活相談に近いイメージだと有江さん。今までの経験でも、経済的にゆとりがないため解体したくてもできない方、直系の家族が全員相続を放棄して困っている方、仕方なしに引き受けたがどうしてよいかわからない方など、相談内容はどれとして同じものはなく、専門家と相談しながらひとつひとつの案件を解決し、ノウハウを蓄積してきたという。

「担い手の役割は幅広いため、育成をしてその方々が地域でそれぞれ活躍できる形、地域をサポートできる形を目指しています。自分の仕事につなげることが前提ではなく、あくまで中立的な立場です。地域に貢献しながら収入を得て、同時に地域に住みながら活動できるようにしていくというのが想い描いている姿です。新しい職業と考えた方がしっくりくるかもしれません。その仕組みづくりを一緒に考えていきましょう」

■空き家相談の担い手育成講座
http://local.lifull.jp/ikusei/madoguchi/

■NPO法人空き家コンシェルジュ
http://akiyaconcierge.com/

2019年 05月30日 11時00分