空家特別措置法に課せられた自治体の役目と司法書士の関係

空家特別措置法に課せられた自治体の役目と司法書士の関係とは?空家特別措置法に課せられた自治体の役目と司法書士の関係とは?

空家対策特別措置法が2015年5月に完全施行してから、約4カ月が過ぎた。この法律によって、空家はどんな状態を指すかが定義されたり、空家の固定資産税の優遇処置をなくすなど税制上の措置ができたりという点に注目が集まっていた。

しかし、空家対策特別措置法の概要を見ると他にも色々な施策について定義されており、今回注目したいのが下記の点。
・市町村は、国の基本指針に即した、空家等対策計画を策定・協議会を設置
・法律で規定する限度において、空家等への調査
・空家等の所有者等を把握するために固定資産税情報の内部利用
・市町村は、空家等に関するデーターベースの整備等を行うよう努力

これらはまずはそれぞれの地方自治体がしなければならないことだ。
しかし、身近にもあると思うが放置された荒れた家。最後に住んでいた所有者が亡くなって、近所の人には誰がその家の持ち主か分からない。そんな状態の家が日本には増え始めている。こういう状態の家がたくさんあって、自治体の職員が1軒、1軒追跡調査していくのは、正直人手や専門的にも難しいところがあるといえる。そんな状態で本当に空家問題は前進するのか?

そうした空家対策の課題をサポートする存在として、「司法書士」について注目してみたい。司法書士は云わずと知れた相続や登記のエキスパート。実は、日本の空家問題に関してなくてはならない存在ともいえる。しかし、どういう風に関係があるのか分かりにくいところもある。今回、日本の司法書士を束ねる日本司法書士会連合会の理事の今川嘉典氏と理事の峯田文雄氏に空家と司法書士の関わりについてお話を伺ってきた。

空家対策で司法書士が関われること

2014年10月時点で全国401の地方自治体がそれぞれ独自に空家条例を制定しているが、そうした自治体から空家の持ち主に関する相談などを受けるケースもあったという。

「昨年、こうした空家条例を既に制定していた市町村を中心にアンケートをとったところ、空家対策でなかなか進まない点として、相続人の調査が進まないという回答が一番多い結果になりました。こうした事や空家対策特別措置法の施行を受けて、行政がなかなか進められなかったこの点について私たちはお手伝いすることができるので、自治体と連携して空家対策をしていきたいと思っています」(今川氏)

しかし、実際は地方自治体の人でも、司法書士が今回の空家で何ができるかイメージを持てない人も多かったようだ。そうした中で多くのまずは自治体関係者にイメージを持ってもらうために、2015年7月、日本司法書士会連合会が全国1700超の市町村にチラシを配布した。

登記、相続のエキスパートである司法書士が今回、国が行う空家対策に関することでどう“お手伝い”ができるかここで整理をしよう。

〇所有者の調査
 既に所有者が亡くなっている場合に、相続人を調べる必要がある。司法書士は登記情報や戸籍から相続人を調査する

〇協議会への参加
 空家等対策計画の策定・協議会の設置について、司法書士も登記や相続のエキスパートの観点から参画して助言

〇相続人の後見など
 相続人調査の結果、該当者が認知症などで施設に入っていた場合には後見制度の利用、該当者が行方不明の場合には不在者財産管理人の選任や就任ができる。

自治体からの依頼で司法書士は上記を行うことができ、結果的に空家対策に関わることで専門的な観点からスムーズな進行が可能といえる。ちなみに気になるのが、例えば私たちの家の隣りに空家があって所有者が気になった場合だ。こうしたケースで司法書士へ依頼できるのは登記情報の取得まで。上記の場合にはあくまで空家対策特別措置法の一環として、自治体から司法書士に協力を求める場合のみだ。

しかし、例外があるので覚えておきたい。隣家が空家で老朽化して倒れてきたり、植木がこちらまで入って来たりと「訴訟」に発展するトラブルの場合だ。こうしたケースの場合には、司法書士に訴状の作成を依頼すれば所有者の調査をしてもらえる。また今回の法の施行により自治体に相談することで、自治体が法の「強制措置」に基づき、その後強制代執行という流れになる場合もある。

司法書士総合研究所「空き地・空き家問題等への対策」に関するアンケート集計(全国218自治体)より司法書士総合研究所「空き地・空き家問題等への対策」に関するアンケート集計(全国218自治体)より

空き家相談110番

こうした流れの中で今度は一般の人向けに空き家相談110番という電話相談を2015年8月23日に実施した。一般の人の生の声を聞くことで、今後の活動の方針の策定や自治体への情報提供、情報共有を行うのが狙いだった。

10時~16時30分で計377件の相談があったという。東京、埼玉、神奈川の司法書士が電話20台で対応したところの件数で、入れ食い状態で電話が鳴ったそうだ。そのため、出られなかった電話もあるようで、実際の件数はそれ以上に上回るといえる。

内訳は下記のグラフの通り。当初、司法書士会連合会が予想した結果とは違ったようだ。

「所有している空家の管理が大変だ、近隣の空家が困るなどの相談が当初多いと予測していました。しかし、実際は『処分したい』『処分したく実際に色々としてきたがどうしようもなく困っている』といった、活用型、活用困難型(※分類の説明は下図参照)の相談が半数を占めました」(峯田氏)

活用型の相談であれば、司法書士側でアドバイスができるという。ケースによって異なるが、こう相続すべきとか、相続放棄についてアドバイスしたりなど。しかし、問題なのが活用困難型。売ろうと思うけど売れない。そうした悩みに関しては、流通市場が活性化しないと解決できないケースのため、専門家も自治体もどうにもならないという。

全国空き家問題110番実施結果についてのデータからHOME'S PRESS編集部が作成全国空き家問題110番実施結果についてのデータからHOME'S PRESS編集部が作成

実は空家相談は当事者からが多い

左が今川氏、右が峯田氏左が今川氏、右が峯田氏

今回の空家相談では60代以上の現在の家の所有者で、つまり当事者からの相談が多かったという。また相続が発生して、将来空家になるからどうすればいいかといった将来への不安も次いで多かったようだ。

「私が受けた相談では、子どもから負の遺産を残してくれるなと言われたといった相談もありました。そういった場合には相続放棄が考えられますが、相続人から外れるということは当然、預貯金なども相続できません。相続放棄はしたいけど、預貯金は欲しいといった内容もありました」(今川氏)

今回の電話相談会の相談件数を見て、次回は全国の50の司法書士会や司法書士会の各支部とも連携して行いたいと今川氏は語る。地元に密着した相談を受けることで、より深い悩みを受けて、さらに的確にアドバイスができるという。

相続する側、相続される側、様々な意図が絡み、そして出来上がる現在の空家。
相続もどうやら「争続」に発展しているようだ。空家だけでなく田畑や山林に関しても様々な問題を含む。今回、相続についてもより深いお話を伺うことができたので、次回相続に焦点をあてた記事をお届けしたい。

2015年 10月15日 11時21分