全国の空き家数が過去最高に
昨年(2014年)、5年に一度行われる「平成25年住宅・土地統計調査」の結果が公表され、空き家が大幅に増加していることが話題となった。全国の空き家数は820万戸で5年前に比べ63万戸(8.3%)増。空き家率も13.5%と0.4ポイント上昇し、過去最高となったのだ。
世の中に放置された空き家が目立つようになると、私たちの生活にも様々な影響が生じる。そこで登場したのが空き家ビジネスだ。一体どのようなビジネスなのか。NPO法人空家・空地管理センターの代表理事 上田真一氏に話を聞いた。
なかなか活用・売却できない空き家の現状

-昨今なぜ放置された空き家が増えているのでしょうか?
「理由として大きく分けて二つのパターンがあります。
一つは所有者が高齢者の場合です。現在は老人福祉施設などに住んでいながら元の家を所有していると放置されがちになります。
また、高齢によって判断能力が十分でない方の財産を守るために成年後見人をたてている場合は、空き家の活用や売却に家庭裁判所の許可が必要など高いハードルがあります。
もう一つは、既に相続されている場合です。空き家所有者は主に子どもたちになります。兄弟姉妹で共有持分になっているケースでは所有者間の合意に時間がかかり、その期間は明確な管理者がいないため放置されやすくなります。
また、単独で相続した場合でも実家の整理には心の準備が必要で時間を要します。一方で今現在特に活用・売却する理由がないという理由で放置する方も少なからずいます。
最も迷惑をかけているのは伸びた樹木の枝
-空き家が放置されることによって生じる問題にはどのようなものがありますか?
「放置されている空き家が引き起こす問題で、最もご相談が多いのは樹木の繁茂です。
枝が隣の宅地まで伸びたり、実のなる木ですと果実が落ちてきて周辺を汚す被害もあります。また、蚊などの虫が大量に発生するという相談も多くあります。法律上、宅地内の樹木は財産と見なされるため、たとえ自分の敷地内に入ってきた枝でも勝手には切れません。損害賠償の対象になってしまうのです。
また、劣化した雨樋や屋根材、外壁材などの落下、飛散の相談も多くなっています。台風や降雪、大雨時にご近所の方は特に脅威に感じています。
もちろん、不法投棄や不法侵入、放火などもありますが、
樹木の繁茂や天候による災害が最も身近な空き家問題となっています」
-そのような背景から空き家ビジネスが生まれた訳ですね。
「空き家ビジネスは今後も増加していく不動産業界の数少ない成長分野です。そのことに気づいている会社は多く、新規事業として取り組む会社も少なくありません。
ただ、空き家管理を中心とした空き家ビジネスは低収益・高コストという構造から
開店休業状態だったり、撤退したりといった事例も多くあります」
月額100円でご近所からのクレームにも対応
-空家・空地管理センターではどのようなサービスを提供しているのでしょうか?
「当団体では予算によって2種類のサービスを提供しています。
とにかく安く済ませたい、いずれ解体するので現状を把握するだけでいい、といった方には「100円管理」プランをご用意しています(看板設置、現況調査費用として契約時に別途3,800円(税別)必要)。
月額100円(税別)を負担していただければ、毎月1回巡回いたします。具体的には外観からの目視点検、写真付き報告書の送付、看板設置、クレーム対応を行っています。
クレーム対応に関しては、たとえば樹木がお隣の敷地に入っていた場合、目視点検してからお隣の話を聞き、剪定費用の見積もりも付けてご報告します。
剪定以外にもポスト清掃(500円/月)、郵送物転送(950円/月)、ゴミ処分(要見積り)といったオプションをご用意しています。
いつか自分が住む、将来は中古住宅として売却したいといった方には「しっかり管理」プランがおすすめです。
月1回4,000円(税別)からのサービスで、「100円管理」に加えて建物の劣化を防ぐために住宅内部の雨漏り点検や換気・通水などを行います。また、不法侵入者や不法投棄などを防ぐために、近隣の方たちと空き家に関する情報交換も行っています。
これらのサービスを利用すれば近隣住民に管理者がいることを知らせることができるので、不法侵入や放火などの犯罪を抑止する効果もあります。また、近隣の方には、しっかりとした管理者がいることで安心してもらえます」
「遠くのことは知らんぷり」では済まされない
空き家ビジネスは、今後進行する少子高齢化・核家族化社会にとってますます必要とされるはずだ。しかし、そこには所有者が「周辺環境に悪影響を与えているかもしれない」と気づくことが必要。このことに対して上田氏は、「空き家ビジネスが根づいていくには、放置している所有者にご近所へ迷惑を掛けていることに気づき、その管理サービスの存在を知ってもらう働きかけを業界全体で取り組まなければならないと考えています」と語っていた。同センターはNPO法人ゆえに非常にリーズナブルにサービスを提供している。このようなサービスを利用すれば空き家の管理はけっして高額でも面倒でもないはずだ。所有者は、たとえ離れた場所に住んでいたとしても「遠くのことは知らんぷり」とせず、所有する責任を果たすために一考すべきではないだろうか。
取材協力:NPO法人空家・空地管理センター
http://www.akiya-akichi.or.jp/
2015年 02月28日 10時28分