日本式入浴は外国人からも注目!何のために浴槽に浸かるのか

お湯に浸かる瞬間、その気持ちよさに思わず声が出てしまうことも。カピバラや猿、馬などもお湯に浸かるそうで、身体を温めるだけでなく、途中でしばし寝てしまう姿を見せることもあるなど、動物たちにも癒し効果があるといわれているお湯に浸かる瞬間、その気持ちよさに思わず声が出てしまうことも。カピバラや猿、馬などもお湯に浸かるそうで、身体を温めるだけでなく、途中でしばし寝てしまう姿を見せることもあるなど、動物たちにも癒し効果があるといわれている

日本人は大のお風呂好きである。こんなに日常的に湯につかる習慣を持つ国は珍しい。最近の外国人観光客には日本式入浴が興味の的となっているようで、観光庁による訪日外国人の意識調査(※1)によると、日本に最も期待していたことの第5位に温泉入浴がランクインし、その9割が満足したと回答している。(※1 訪日外国人の消費動向 平成28年10-12月期報告書/観光庁調べ)

この湯に浸かるという行為は、外国人たちの目には非常に不思議な習慣に映るらしい。体の清潔さを保つためだけなら、石けんとバケツ数杯の水だけでこと足りる。何も200リットルもの湯を貯めて浸かる必要はない。

身体を湯で温めるのは健康に良いという意見もあるが、寒いお風呂場で熱い湯にいきなり入るほうがよっぽど身体に悪い。健康のためには室内を暖かくするほうが効果的だ。わざわざ湯をためて、そこに浸かるのは何のためなのであろうか。

実はシャワー派と浴槽派では入浴の目的が大きく異なるというデータがある。入浴に対する意識調査(※2)によると、シャワー派は全体の2割程度で、入浴の目的として「汚れを落とす」「においを取る」が多いのに対し、浴槽派は「リフレッシュ」「心身の疲れをとる」「リラックス」の割合が高くなっている。わざわざ湯に浸かるのは、身体を洗うためというより、1日の疲れを取って癒されるために行っているわけだ。(※2 都市生活レポート「現代人の入浴事情2015」/東京ガス都市生活研究所調べ)

日本人がこのような入湯文化を手に入れたのは、実は比較的最近のことである。もともと庶民が利用した「風呂屋」の主流は蒸し風呂であった。室町時代の京都にはこのような蒸し風呂タイプの銭湯がたくさん営業していた。

江戸時代に入ると、蒸し風呂設備よりも簡易に作ることができる、湯を貯めて入る方式の「湯屋」が出現し風呂屋に取って代わった。それ以降、関西では風呂屋が、関東では湯屋が主流となったが、どちらも身体を洗う場というより社交の場やレクリエーションの場としての意味合いが強かった。現代の湯に浸かるという習慣はこのような文化を受け継いだものといえる。

東京オリンピックでシステムバスが登場!初期の住宅用ユニットバスはダサかった?

このように江戸時代には既に庶民の間にまで湯に浸かるという習慣が定着していたが、各家庭に浴室を作るまではなかなか至らず、昭和30年頃までは、銭湯を利用している庶民が大半だった。各家庭に浴室が設置されるようになったのは、高度経済成長によって庶民の所得が向上し、それに伴い住宅設備への要求も高度化した事による。

そして更に、家庭用浴室の普及を早める出来事が起きた。システムバスの登場である。日本でシステムバスが初登場したのは1964年、東京オリンピックに合わせて建設されたホテルニューオータニの客室である。国内最大規模の客室数を誇る超高層ホテルのバスルームをオリンピック開催までに間に合わせるよう、工期の短縮や搬入の簡易化、品質の安定を目的に、大成建設株式会社とTOTO株式会社(当時は東洋陶器株式会社)とが調整を重ね、商品化された。

北九州市小倉にあるTOTOミュージアムに当時のバスルームが公開されているが、ヒスイ色の美しい風合いで高級感がある。その後、住宅の浴室にもシステムバスが登場するが、当時は工事の利便性は良かったが、見た目はあまり良いものではなかった。

筆者が住宅業界に入ったのは1980年代だが、その時代はシステムバスではなくユニットバスと呼ばれていて、タイルが貼られた浴室に比べると安っぽい、ダサい、ビジネスホテルのようで嫌だという声も少なくなかった。

しかしそこから10年も経たないうちに、システムバスのデザイン、性能は劇的に進化し、住宅建築の現場においては、あっという間にタイル浴室とシステムバスが逆転。現在では特別な形状のものを除き、多くがシステムバスとなっている。

タイル浴室が減少したことで、腕の良いタイル職人がどんどん減り、一抹の寂しさはあるが、工期の短縮によって浴室工事は格段に楽になり、水漏れの心配も減った。

当時、タイル浴室を作るには1ヶ月ほどの工期が掛かることがザラにあり、リフォームの場合は住んでいる人はその間お風呂に入ることができなかった。そこで登場したのが工事中でもお風呂に入れるよう、庭にプレハブ小屋のような簡易な浴室を組み立てる仮設浴室である。しかしその分の費用が高くつき、浴室リフォームは日数とお金が掛かる大変な工事だったのである。

1964年に東京オリンピックの開催に合わせて建設されたホテルニューオータニに設置された日本初のシステムバス。TOTOミュージアムに現物が展示されている。建築設備技術遺産に認定(TOTOミュージアムで撮影)1964年に東京オリンピックの開催に合わせて建設されたホテルニューオータニに設置された日本初のシステムバス。TOTOミュージアムに現物が展示されている。建築設備技術遺産に認定(TOTOミュージアムで撮影)

いまどきの浴室事情、軽くて湯が冷めない風呂フタ。高齢者見守り、湯の除菌機能も

システムバスの登場で、浴室リフォームは以前に比べて格段に楽になった。同サイズの入れ替え工事なら3日で終えることもでき、仮設浴室の必要もない。またシステムバスは工業製品のため品質管理がしやすく、製品そのものも消費者のニーズの変化に合わせて年々進化を遂げている。

システムバスは様々な設備メーカーが製造販売をしているが、少し前まではいかに掃除がしやすいかで各社競い合っていた。タイル浴室は掃除に手間が掛かるため、少しでも楽に済ませたいというニーズに応えた形だ。

しかし現在はそれもひと段落。汚れがこびりつきにくく落としやすい壁や床、浴槽、簡単に掃除ができる排水口はもう当たり前で、ほこりが付きやすいドアの下端についている吸気口は汚れにくい場所へ移動し、カビが生えやすいパッキンが無いドアもある。

風呂フタもさりげなく進化している。浴槽の湯が冷めないよう頑丈なフタが登場したが、重すぎて扱いにくいという声もあった。高齢者や女性は、重い2枚フタは物置にしまって、軽い巻きフタをホームセンターで買って使っているというケースもあった。そんな声を受けて、現在では片手で持てるほど軽く、断熱性が高く湯が冷めにくいフタが登場している。この軽いフタの発売は筆者にとっても驚きであり、かなりうれしい出来事だった。

またバリアフリー対策はもとより、寒い浴室は健康に良くないということが周知されたことで、最新のシステムバスは冬でも浴室内を暖かく保つための工夫がなされている。断熱性能の向上や浴室暖房換気乾燥機はもとより、省エネに浴室内を温めるために床に温水を散布して室温を向上させる機能を持つシステムバスもある。

加えて浴室は家の中でも一番エネルギーを使う場所のため、省エネの工夫が必須の時代となっている。そこで注目したいのが給湯器だ。最近では多機能型の省エネ給湯機が登場。社会の高齢化、清潔志向に合わせ、AIシステムを搭載しセンサーで高齢者の見守り、湯の除菌機能を持つ機種もある。

消費者にとって給湯器は、見えにくい場所に設置してあることが多いため、浴室リフォームというとシステムバス選びにばかり目がいきがちだが、今後のランニングコストの削減やより快適で安全な浴室にするためには、適切な給湯器選びをすることが欠かせないだろう。

カビ取り剤のテレビCMでよく使われていた場所と言えばドアのゴムパッキン。最近のシステムバスのドアを見るとカビが生えやすい浴室側のパッキンは無くなっている。埃のたまりやすい吸気口は移動してすっきり(TOTOより画像提供)カビ取り剤のテレビCMでよく使われていた場所と言えばドアのゴムパッキン。最近のシステムバスのドアを見るとカビが生えやすい浴室側のパッキンは無くなっている。埃のたまりやすい吸気口は移動してすっきり(TOTOより画像提供)

メーカーによってこんなに違う浴槽の入り心地!お風呂好きの原点に立ち返って選んでみる

このように各社競い合うようにシステムバスが進化しているため、浴室リフォームの際にどれを選んでいいかわからない、どれも同じように見えて選べないという相談を受けることがある。そんな時は、日本人のお風呂好きの原点に立ち返って、癒される広さと浴槽の入り心地で比較してみることをお勧めする。

これまでのシステムバスの欠点のひとつとして、タイル浴室より室内が狭いというものがあった。システムバスは壁の内側にキューブのようなユニットを組み立てるために、どうしても空間のロス、すき間ができる。しかし最近のシステムバスは、ぎりぎりまで空間を広くとったタイプが登場しているので、より広さを求めるのであればそのようなタイプを選ぶといいだろう。

このようなサイズはカタログでも確認できるが、実は大きく違うのが浴槽の形状と、その入り心地だ。先日、システムバス選びの真っ最中の友人に、機能はどれも似たようなものなのでデザインで選ぼうと思うがどうだろうかという相談を受けたのだが、浴槽の入り心地の比較をしたかを聞いたところ、それは全く考えていなかったという答えが返ってきた。

浴槽の形は各社にこだわりがあり、それぞれ方向性が異なる。心身の疲れをとり、リラックスすることを重要視するのであれば、浴槽の入り心地は大事なポイントになる。実は筆者も浴室リフォームの計画中のため、改めて各ショールームをめぐり、様々な浴槽に身体を入れてみた。

感想をひとことで言えば、こんなに違うのかと驚くほどの違いがあった。少し前までの浴槽は、足を伸ばしてゆったり入れるように、できるだけ内寸を大きくとった形状が多かったが、現在は目的に合わせて形状がカスタマイズされている。

親子や夫婦で一緒に浴槽に浸かるためには長さより幅を広く、ひとりで入る場合は広さより体に沿うかどうかが重要になる。特に小柄な女性の場合は、大きな浴槽を選んだら、体が浮いてしまってリラックスできないという声もあるため、注意が必要だ。

また注目したいのが首の置き場だ。身体を伸ばして入るとなると、首を支える枕が無いと首が疲れる。各社見た目は似たようなリラックス浴槽であっても、メーカーごとに腰のカーブや首の置き方がかなり違い、自分にピタッと合う浴槽を選ぶためには実際に入ってみる必要がある。

もしシステムバス選びに迷っていたら、ぜひ浴槽の入り心地で選んでみることをお勧めする。筆者もかたっぱしから浴槽に入ることで、その違いがどんどん明確になり、身体に気持ちよくなじむ浴槽に出会うことができた。

ショールームで浴槽に入る行為は決して恥ずかしいことではなく、メーカー側もどんどん入ってほしいと勧めている。ただしその際は靴を脱ぐのを忘れないようにしよう。

ヘッドレストと浴槽を一体化したデザイン。身体に沿うよう柔らかいカーブで設計されていて、頭を乗せる枕が心地よい。名前もファーストクラス浴槽と最上級のリラックスを強調(TOTOより画像提供)ヘッドレストと浴槽を一体化したデザイン。身体に沿うよう柔らかいカーブで設計されていて、頭を乗せる枕が心地よい。名前もファーストクラス浴槽と最上級のリラックスを強調(TOTOより画像提供)

更に気持ちよくお風呂に入るための工夫、照明、肩湯、インテリアなど

最新のシステムバスは、リラグゼーションルームとしての機能を高めた機種が増えている。間接照明、肩湯、気泡浴槽、オーバーヘッドシャワー、ミストサウナ、音楽鑑賞用のスピーカーなど。以前は高級リゾートホテルでしか見ることができなかったような設備が、住宅でも手軽に設置できるようになっている。

インテリアのバリエーションも増えている。昭和の頃は無地か花柄デザインといった感じだったが、石目調やタイル調などリアルな素材感を持つデザインが増え、10年ほど前からはワンポイントに壁の1面もしくは2面に鮮やかなカラーや石目を使うデザインが人気になっている。

既成のシステムバスでは少し物足りないという諸兄姉には、オーダーメイドシステムバスという手もある。システムバスの機能とタイル浴室のデザインの自由度をミックスしたスタイルで、高級ホテルやモデルハウスによく使われる製品だ。もちろんそれなりのお値段はするが、お風呂に思い切り費用を掛けて後は節約というメリハリ予算でいくのも、満足度の高い家づくりをするコツだ。

お風呂の時間が楽しいと一日の終わりが楽しい。ちなみに筆者は休日の昼間にお風呂に入るのが大好きで、飲み物と本を持ち込んでのんびり過ごす時間は何ものにも代えがたい。こんな贅沢な気持ちにさせてくれるのは、家の中でも浴室が一番なのではないだろうか。これから浴室の計画がある方は、ぜひそんな贅沢な時間を楽しめる空間づくりをして頂ければと思う。
取材協力:TOTO株式会社ニッコー株式会社

高級ホテルや住宅展示場のモデルハウスでよく使われているオーダーメイドシステムバスの実例写真。システムバスの機能性とタイル浴室のデザインの自由度を併せ持つ。こんな空間で身も心も癒せたらさぞや気持ちがいいことだろう(バンクチュール/ニッコー株式会社)高級ホテルや住宅展示場のモデルハウスでよく使われているオーダーメイドシステムバスの実例写真。システムバスの機能性とタイル浴室のデザインの自由度を併せ持つ。こんな空間で身も心も癒せたらさぞや気持ちがいいことだろう(バンクチュール/ニッコー株式会社)

2019年 04月24日 11時05分