目立つ2階の窓の被害、窓が1か所壊れるだけで家の中が大変なことに

台風で家の弱点となるのが窓。日本の家は窓が大きく数が多い。大型の台風が相次いで上陸するようになった昨今、しっかりと対策をしておくことが必要だ台風で家の弱点となるのが窓。日本の家は窓が大きく数が多い。大型の台風が相次いで上陸するようになった昨今、しっかりと対策をしておくことが必要だ

ここ数年、大型台風の被害が続いている。2019年の台風15号では千葉県で最大瞬間風速57.5m/sを記録、同年の19号では全国の14地点で観測史上1位を更新した。これほど台風が大型化しているのは、海面の水温上昇により、威力が衰えないまま日本に上陸するケースが増えたためとのこと。今後もその傾向が続くと予測されている。

台風で家の弱点となるのが窓だ。そこで対策として、窓ガラスに養生テープを貼るアイデアが広まったが、その効果には疑問もあった。そんなとき、窓メーカーでいち早く、情報発信を行ったのがYKK AP株式会社だ。

今回は、窓は風速何メートル程度まで耐えられるものなのか、養生テープを貼る意味はあるのか、また窓から水が染み出てきたらどうすればいいかなど、台風時の窓に関する疑問や効果的な対策方法、最新情報について、YKK AP株式会社広報室の清水宏則氏(所属は取材当時)と南雲歩氏に聞いた。

窓は壁に比べて圧倒的に強度が低い。竜巻で屋根が飛んだ被害の中にも、まず窓が割れて、その穴から空気が一気に入り込み、屋根を持ち上げてしまったケースが少なくない。

台風時に飛んでくるものは多種多様で、筆者がこれまで住宅のリフォーム現場で経験したものだけでも、屋根板金、瓦、植木鉢、雨どい、看板などがある。一般的に台風の暴風域の風速は25m/s以上だが、それ以下の風速20m/sから物が飛び始めるとされているため、大した風ではないと油断するのは禁物だ。

飛来物によって窓が割れると、家の中にガラスが散乱する。以前、小さな植木鉢がリビングに飛び込んできた家の復旧を手掛けたことがあるが、窓ガラスが1枚割れただけで、家の中がめちゃめちゃになっていて、破片でケガをしてしまえば命の危険もある状況であった。

清水氏によると、台風では2階の窓の被害が目立つと言う。1階の窓には、防犯の観点からたいてい雨戸やシャッター、面格子を取り付ける。しかし2階は泥棒が入りにくいことから、何も付けずに、ガラスがむき出しになっていることが少なくないため、飛来物の被害に遭いやすいというわけだ。

窓は風圧には意外と強い、沖縄向けの耐風圧性能が高い木造用の窓が本州でも

実際のところ、窓は強風にどれくらい耐えられるのだろうか。台風のニュースで最大瞬間風速何メートルと言われても、それが窓にとってどれくらいの影響があるのかが分かりにくい。その辺りを聞いてみたところ、実は風圧だけで窓が壊れたケースはあまり聞かないと言う。

窓がどの程度の風に耐えられるかは、「耐風圧性能」で表され、S-1~S-7までの等級に分かれている。数字が大きくなるほど強い風に耐えられる性能を持つ。

低層の一戸建て住宅の場合は、一般的にはJIS等級の目安として、1階の窓はS-1 (風速36m/s程度)、2階の窓はS-2 (風速44m/s程度)、3階の窓でS-3(風速51m/s程度)となっている。

もちろんこれは建てられた地域や立地条件によって異なり、また築年数が古い住宅では性能が低い窓を使用していたり、劣化していたりする可能性がある。

ただ一戸建ての場合、窓に雨戸やシャッターが付いていれば、窓が直接風を受けることが無いため安全性が高まる。

ちなみに、昔から台風対策をしっかり行ってきた沖縄では、一戸建てでもマンションの中高層階で使われるようなS-5(風速62m/s程度)以上の窓を使用していることが多い。

清水氏によると、このS-5以上の性能を持つ窓は、これまではビルやマンション用しかなかったそうだが、沖縄ではコンクリート住宅が多いため、特に問題は無かった。しかし最近、沖縄でも新築の木造住宅が増え、そうなると木造用のS-5の窓が必要になる。そこで新たに木造用のS-5の窓を開発、最近では本州でも使用するケースがあるそうだ。

これから新築やリフォームを検討している人は、窓選びの際に、断熱や遮熱だけでなく、台風対策として耐風圧性能にも着目して選んでみるといいだろう。

マンションの場合は、開口部に対する耐風圧性能の基準が法律で定められている。4階程度の高さではS-4 (風速57m/s程度)の性能を持ち、上層階にいくほど性能が上がっていく。

このように具体的な数値で見ていくと、風圧で窓がすぐに変形したり、壊れてしまったりという心配はそれほど無いことが分かる。やはり問題は、飛来物によるガラスの破損ということだ。

沖縄の住宅は台風と塩害対策がされている。以前はコンクリート住宅が多かったが、現在は木造が増えているとのこと。それに伴って高い耐風圧性能を持つ木造用サッシが生まれた沖縄の住宅は台風と塩害対策がされている。以前はコンクリート住宅が多かったが、現在は木造が増えているとのこと。それに伴って高い耐風圧性能を持つ木造用サッシが生まれた

窓ガラスに養生テープを貼る効果は? 最初の一撃の飛散を防ぐ

台風対策で窓ガラスに養生テープを貼る方法は、割れないように窓の強度を上げるのではなく、割れた後にガラスが一気に飛散するの防ぐ効果はあると見られる台風対策で窓ガラスに養生テープを貼る方法は、割れないように窓の強度を上げるのではなく、割れた後にガラスが一気に飛散するの防ぐ効果はあると見られる

大型台風が襲来した際に、大いに話題になったのが、窓ガラスを守るために養生テープを米の字状に貼るというものだ。2019年の台風上陸時には、ホームセンターやネット通販などから養生テープが一斉に消えた。

実際に効果があるかは分からなくても、少しでも被害を減らしたいという思いで、貼った人も多かったと思う。ネットで貼り方や効果について検索した人もいたことだろう。実は筆者も、直前に気になって検索してみたひとりだ。

このような場合の情報の発信の仕方は難しい。個人が経験談として発信するのならともかく、窓・サッシメーカーが発信するとなると、実験データが必要になるし、責任も伴うので躊躇しがちだ。しかしYKK AP株式会社では、まずは求められる情報を発信しようと、HPやSNSに「台風への備えのお願い」を掲載。また養生テープの効果についても、テープを貼ることで窓の強度を上げるのではなく、割れた後のガラスの飛び散りを防ぐ効果はあると思われるとコメントした。私もそれを見た者のひとりであり、SNSなどでも納得した、安心したという声を散見した。

養生テープの効果について、改めて清水氏に聞いたところ、やはり飛来物によって割れたガラスを一気に飛散させない効果はあるだろうとのこと。ただし最初の一撃による飛散を防ぐという意味であり、カーテンをしっかり閉めておくのとそれほど変わらないのではとのことだった。

2階の対策も忘れずに。窓の台風対策最新事情、S-5まで耐えられる耐風シャッターも

台風時の窓対策は、飛来物からガラスを守ることが重要となる。基本的にはシャッターを付ける、飛散防止ガラスを選ぶ、この2つが有効とのこと。とにかく窓をむき出しにしておかないことが肝心だ。

筆者はこれまで、台風の飛来物による被害のリフォームを手掛けてきて、その惨状から、雨戸かシャッターが付いていれば防げたのにと辛い気持ちになったことが少なくない。デザイン上の観点や予算の問題から、雨戸やシャッターが付いていない家を見かけることがあるが、これらは家を守るためにとても大事な部材なのだ。

ちなみに近年、新築住宅で雨戸を選ぶ人は5%以下(※1)とのこと。イマドキはリフォームでも簡単に後付けができるシャッターがあり、ボックスもスマートになっている。

台風に強い耐風シャッターもある。近年ますます大型化・広域化する台風への対応として、YKK AP株式会社より発売された「耐風シャッターGR」は、標準的なシャッターがS-3(風速51m/s程度)なのに対し、S-5(風速62m/s程度)まで耐えられる。また2kgの木材が速度12.2m/s(時速44km)で衝突しても貫通しない構造になっているそうで、まさに沖縄仕様だ。

シャッターが取り付けできない窓には、ガラスの間にフィルムを挟み込んだ飛散防止ガラスを選び、面格子を取り付けておくと安心だ。被害の多い2階の窓も忘れずに対策しておこう。もちろん防犯効果も高まる。

最近の住宅の台風対策の傾向を聞いてみたところ、大手ハウスメーカーの注文住宅では、1階の窓はフィルム入りのLow-E複層ガラス+シャッターのダブルで対策をするケースが増えていると言う。

ただ新築全体で見ると、複層ガラスの使用率はほぼ100%(※2)であるのに対し、フィルム入りはまだまだ少ないそうだ。

マンションの場合は、ガラスに飛散防止フィルムを貼るのが手軽だ。ただし、安全のためにカーテンはシッカリ閉めて、窓の近くにはいないようにしよう。

(※1)窓シャッター・雨戸の取付率「戸数比」は全国59.3、窓シャッター・雨戸における窓シャッターの比率は 96.7/ (一社)日本サッシ協会(一社)カーテンウォール・防火開口部協会調査部会2020年3月版『住宅用建材使用状況調査』より
(※2)複層ガラスの取付率は、全国平均では「戸数比」100.0、「窓数比」98.9/ (一社)日本サッシ協会(一社)カーテンウォール・防火開口部協会調査部会2020年3月版『住宅用建材使用状況調査』より

「耐風シャッターGR」は、これまでの1.5倍(同社比)の耐風圧性能を持つ。リフォーム向け製品もあり、雨戸の戸袋を残したままの取り付けもできるなど簡易に工事ができるようになっている。シャッターを閉めたまま採光・通風ができるスリットタイプもある「耐風シャッターGR」は、これまでの1.5倍(同社比)の耐風圧性能を持つ。リフォーム向け製品もあり、雨戸の戸袋を残したままの取り付けもできるなど簡易に工事ができるようになっている。シャッターを閉めたまま採光・通風ができるスリットタイプもある

窓のレールから水が染み出てきたら? 台風前の事前準備でできるだけ備えよう

台風時には、強風でエアコンの室外機が倒れるだけでなく、風が吹き付けることで羽が逆回転し、故障したケースも目立った。室外機はしっかり固定し、強風時はエアコンを使わないようにするといいとのこと台風時には、強風でエアコンの室外機が倒れるだけでなく、風が吹き付けることで羽が逆回転し、故障したケースも目立った。室外機はしっかり固定し、強風時はエアコンを使わないようにするといいとのこと

さて、台風時に窓から水が染み出てきて、慌てた経験がある方もいるのではないだろうか。よく聞くのが、引き違い窓の下レールから水が浸入してきたというものだ。

引き違い窓の場合、水密性能を保持するために、あえて室内側の下レールに一定の水をため、その水圧によって水が入ってくるのを防ぐ構造のものがある。普段なら自然に屋外に排出され室内側にオーバーフローしてくることはないが、大量の雨が吹き付けられると逆流することもあるそうだ。

これは構造上仕方ないところもあるので、タオルなどを当てて対策するのがいいとのこと。わが家ではバスタオルを押し込んでおいた。またレールが汚れてゴミが詰まっていると、あふれやすいので、台風前にはレールの掃除をしておこう。

同じように、マンションのベランダの排水口が詰まっていると、水が溜まり、サッシの下端から水が浸入、下階の室内へ水漏れしたケースがある。ゴミなどは丁寧にとりのぞき水はけをよくしておくことが肝心だ。

下レールだけでなく、上レールからも水が垂れてくることがある。窓は正面から水が吹き付けることを想定しているため、巻き上げる雨水によって、普段は入らないようなところから入ってきてしまうからだ。

他にも窓と外壁のすき間を埋めたシーリングが縮んでそこから雨水が入ってきたり、電気の引き込み線の穴や軒裏から入り込んだりして、家の中が水浸しになってしまったケースに遭遇したことがある。台風時には風が舞うため、想定外のところから水が入ることがあるので、外壁のメンテナンスの際にはしっかりチェックしてもらっておくといいだろう。

台風が通過した後は、工務店やリフォーム店は朝から電話が鳴りっぱなしになるほど大忙しになる。台風シーズンの前には家の点検をして、家を守るための事前準備をしておくのはもちろんのこと、ご近所に物を飛ばさないようにも気を付けたい。特に屋根の板金は、ゆるんでいると飛んでしまいかねないので、忘れずに点検をしておこう。

災害対策はこれだけやれば絶対安心というものはないが、まずは窓を守るという身近なところから始めていただければと思う。

取材協力:YKK AP株式会社

2020年 08月08日 11時00分