『熊本地震の教訓を踏まえた全国宅地耐震化の推進ガイドライン』とは

2016年4月に擁壁や大規模盛土造成地の崩壊、液状化被害などが発生し、約1万5,000件の宅地が被災した熊本地震。その宅地復旧は、国、熊本県、各市町村が連携しながら進められている。この復旧内容は、全国の宅地耐震化や今後発生する災害時に大いに役立つはずだ。そのような観点から、2018年7月30日、国土交通省は『熊本地震の教訓を踏まえた全国宅地耐震化の推進ガイドライン』を作成し、地方公共団体へ周知した。

同ガイドラインは、地方公共団体が「被災時の迅速な宅地復旧」と「通常時の宅地耐震化」に取り組めるように策定したものだ。そのおもなポイントの一つに「大規模盛土造成地マップ等の作成と公表に取り組むこと」が掲げられている。盛土とは、既存の低い地面や斜面の上に新たに土を盛って平坦な地面をつくることだ。このような土地は、しっかりと土を固める工事を行わないと、沈下や地滑りなどの危険が生じる。
では、「大規模盛土造成地マップ」とはどんなものか、少し詳しく見ていこう。

滑動崩落被害への理解を深めるための大規模盛土造成地マップ

今回、マップ等の作成と公表の対象となる大規模盛土造成地とは、以下2つのいずれかの要件に当てはまる造成地だ。

1.谷埋め型大規模盛土造成地で盛土の面積が3,000m2以上
2.腹付け型大規模盛土造成地で盛土する前の地盤面の水平面に対する角度が20度以上、かつ、盛土の高さが5m以上

盛土の中でも特に大規模な盛土造成地においては、熊本地震や東日本大震災など大地震発生時に地滑り的変動(滑動崩落)が生じ、土砂の流出といった被害が発生している。そこで各地方公共団体(都道府県や市区町村)では、造成前後の航空写真や地図などを重ね合わせて滑動崩落の可能性がある大規模盛土造成地の有無の調査を行っている。

大規模盛土造成地マップは、住民の滑動崩落被害への理解を深めるために地方公共団体が作成し、公表しているものだ。住民にとっては、自分が住む土地がどのように造成されたかを知り、普段から点検・管理し、防災意識を高めることに役立つ。

大規模盛土造成地とは、次の2つのいずれかの要件に当てはまる造成地のことだ。
1.谷埋め型大規模盛土造成地で盛土の面積が3,000m2以上
2.腹付け型大規模盛土造成地で盛土する前の地盤面の水平面に対する角度が20度以上、かつ、盛土の高さが5m以上
これらの土地は、大きな地震時に地滑りや土砂の流出が起こりやすいとされている(出典:『大規模盛土造成地マップについて』(国土交通省))
大規模盛土造成地とは、次の2つのいずれかの要件に当てはまる造成地のことだ。 1.谷埋め型大規模盛土造成地で盛土の面積が3,000m2以上 2.腹付け型大規模盛土造成地で盛土する前の地盤面の水平面に対する角度が20度以上、かつ、盛土の高さが5m以上 これらの土地は、大きな地震時に地滑りや土砂の流出が起こりやすいとされている(出典:『大規模盛土造成地マップについて』(国土交通省))

「重ねるハザードマップ」でも確認が可能

それぞれの地域の大規模盛土造成地マップは、各地方公共団体のサイトなどで閲覧可能だ。たとえば、東京都の場合は、東京都都市整備局のサイトから確認することができる。

東京都の大規模盛土造成地マップ

同サイトでは、東京都全体と各市区町村の大規模盛土造成地の有無だけでなく、宅地被害の前兆となりうる異常を早く発見するためのチェックポイントや大規模盛土造成地に関するQ&Aなども紹介している。

また、大規模盛土造成地マップは、国土交通省の「重ねるハザードマップ」でも確認が可能だ。

重ねるハザードマップ

重ねるハザードマップは、さまざまな防災に役立つ災害リスク情報を地図や写真に自由に重ねて表示することができる、非常に便利なマップだ。その情報は、洪水浸水想定区域や土砂災害危険箇所など18種類。このなかに大規模盛土造成地も含まれ、たとえば、「活断層の位置」「がけ崩れのおそれがある場所」「大規模な盛土造成地」などを1つの地図上で重ねて確認することができる。備えておきたい災害は1種類だけではないので、こういったサイトの有用性は高いといえるだろう。

国土交通省の「重ねるハザードマップ」は、大規模盛土造成地、活断層の位置、がけ崩れの恐れがある場所などを1つの地図に重ねて確認することができる(出典『ハザードマップポータルサイトの紹介』(国土交通省))国土交通省の「重ねるハザードマップ」は、大規模盛土造成地、活断層の位置、がけ崩れの恐れがある場所などを1つの地図に重ねて確認することができる(出典『ハザードマップポータルサイトの紹介』(国土交通省))

マップの公表率は60.9%に留まっている

ただし、大規模盛土造成地マップの活用に関しては、注意点や課題もある。たとえば、マップが示す場所がすべて地震時に危険というわけではない。また、調査時の精度によりすべての盛土が網羅されているわけでもない。今後の調査によっては、新たな地点の追加もあり得る。くわしく知りたければ、各地方自治体のサイトや相談窓口へ問い合わせすればいいだろう。

そして大きな課題の一つが、いまだ約40%の地方公共団体が大規模盛土造成地マップを公表していないということだ。国土交通省は、2006年から地方自治体に同マップの公表を求めてきた。しかし、2018年5月1日現在の全市区町村の公表率は60.9%に留まっている。各自治体の公表状況は、国土交通省のHP内で確認できる。
http://www.mlit.go.jp/toshi/web/toshi_tobou_tk_000025.html

これには、そもそも地域内に大規模盛土造成地がないといった理由もあるので、やみくもに100%を目指せばいいというわけでもない。とはいえ、本来公表すべきところがしていないケースがあることも事実だ。もし、自分の住んでいる地域が大規模盛土造成地に該当しそうであれば、住民としては行政機関に対して公表の働きかけをすることも必要だろう。また、すでに公表されている地域に住んでいる、または引越しを検討するなら、きちんと状況を把握し、地域一体となって最適な対策を検討したい。

2018年 10月27日 11時00分