エネルギー消費を最適化する住宅。きっかけは3.11
3.11以降の節電意識の高まりによりスマートハウスが急速に普及しつつある。大手広告代理店の(株)博報堂が2012年に行った調査によると、その認知率は68.2%で前年の39.7%を大きく上回った。大手ハウスメーカーの中には全商品をスマートハウス化するところも出てきている。また、その市場規模は今後も拡大が見込まれ、経済産業省の平成24年「スマートハウス標準化検討会 とりまとめ概要」では2020年の世界市場は約12兆円(2011年比約440%)、国内でも約3.5兆円(同比約280%)としている。
そもそもスマートハウスとはコンピューターやデータ通信技術を利用して家庭内のエネルギー消費を最適化する住宅だ。一般的には太陽光発電システムと蓄電池、そしてHEMS(ホームエネルギーマネジメントシステム)が最低限あり、これらを利用して空調設備、家電、給湯機器などをコントロールする家がスマートハウスといわれている。そのほかの装備としては、エネファームや電気自動車用屋外コンセントなどがある。
しかし、必須機器などの規定はなく、住宅会社によって設置される装備が異なっているのが現状だ。
パソコンやタブレット端末などの画面上で住まいのエネルギー消費を「見える化」する「HEMS(ヘムス)」
スマートハウスに欠かせないHEMS(ホームエネルギーマネジメントシステム)とは、家庭で使用する電力、水道、ガスといったエネルギーの利用状況をパソコンやタブレット端末、スマートフォンなどで「見える化」し、さらにエネルギーの消費量を最適化するための「制御」を行うシステムだ。「ヘムス」と読む。最近ではエアコンや給湯器のオン・オフなどの遠隔操作まで可能なシステムも増えてきた。
スマートハウスではこのHEMSと太陽光発電システム、蓄電池を利用し、以下のような流れで節電に貢献する。
1.割安な夜間電気料金で蓄電池に充電
2.早朝や夕方は蓄電池から電力を供給
3.昼間は太陽光から電力を供給
4.余った分は売電または蓄電池に充電
さらに停電時には太陽光と蓄電池のダブルで電力を供給することも可能。システムにもよるが、一般家庭なら24時間、通常の生活ができるものもある。災害時の強い味方になるわけだ。
各住宅会社によってその取り組み方に微妙な違いが
前述のようにスマートハウスには必須機器などの規定はない。そのため各住宅会社によって設置される装備・機能が異なっているのが現状だ。
下にあげているのはHEMSを標準装備した各社の一例である。
政府は2020年までに新築住宅の平均でゼロエネルギー化、つまり消費エネルギーから省エネ+創エネを差し引きゼロにすることを目指している。今後はスマートハウスが標準仕様となっていくはずだ。しかし今のところその特徴は各メーカーによって大きく異なる。「蓄電池などの容量」「使い勝手」といった自分がどこにこだわるかで選択することになるだろう。
↓各住宅会社のスマートハウスの特徴
メーカー名 | 商品名 | 特徴 |
大和ハウス工業 | スマ・エコ・オリジナルⅡ | ipadの画面でHEMSを管理。業界初となる蓄電池とエアコンの自動制御が可能。各部屋のエアコンを温度や風量まで細かく操作できる。また、水道・ガスの使用状況も把握できる。 |
積水ハウス | グリーンファースト ゼロ | 消費エネルギーから省エネ+創エネを差し引きゼロを目指す「ゼロエネルギー住宅」。業界初の見守り機能付きHEMSを標準搭載。オンラインで同社とつながり、異常があると連絡があり、点検もする。 |
住友林業 | Smart Solabo (スマート ソラボ) | 住宅用としては最大級となる12kWhの蓄電池を採用。平均的な家庭の24時間分の電力を蓄えることができる。電気自動車、プラグインハイブリッド車対応の充電専用コンセントを標準装備。 |
HEMSの通信規格をめぐって世界的に競争激化。国も標準化を後押し
このようにエコそして便利なスマートハウスだが、肝心のHEMSと各機器の通信規格が標準化されていない。たとえばHEMSとエアコンが違うメーカー製の場合、連係が図れない場合があるのだ。
現在有力な通信規格には、米国の「SEP(Smart Energy Profile・セップ)2.0」、欧州の「KNX(KONNEX・ケイエヌエックス)」などがある。しかし、前者は設備のON/OFFがメインの機能であり細かな制御には不向き、後者はビル管理を想定した大型システムなので家庭用ではない、といったデメリットがある。
そこで経済産業省は、スマートハウス標準化検討会を設置し、標準通信規格として「ECHONET Lite」を推奨することを決定した。同規格はHEMS構築のため家電機器、太陽光発電システム、蓄電池など約80種類の機器の制御が可能だ。今後日本としてはこの規格を武器に海外規格との融合・連携を進めることが重要となる。
金額的にはまだまだ高額。しかし国や自治体の補助金がある
現在のスマートハウスの節電金額は、年間20~30万円前後といわれている。
一方でその設備費用はまだまだ高額。太陽光発電システム、蓄電池、HEMSの合計金額は300万円から400万円といったところだ。10年強で回収可能だとはいえ、躊躇する人も多いだろう。そこで国から下の図ような補助金の給付制度がある。
また市町村など地方自治体によっては独自の補助金制度を設けている場合もある。国の制度との併用も可能だ。くわしくは各自治体のホームページを調べてほしい。
スマートハウスは、このような費用と省エネ、災害時の対策などを総合的に考慮し、導入を検討したい。
【関連リンク】
JSCA国際標準化WGスマートハウス標準化検討会とりまとめの公表
↓国によるスマートハウス関連設備の補助金制度
設備 | 応募期間 | 補助金額 | 問い合わせ先 |
太陽光発電 システム | 平成26年3月31日まで (期間中でも予算に達した場合、締め切る場合があり) | 1kW当たりの補助対象経費(税別)が2万円超えて41万円以下―2万円 1kW当たりの補助対象経費(税別)が41万円超えて50万円以下―1.5万円 | J-PEC (太陽光発電普及センター) http://www.j-pec.or.jp/ |
定置用 リチウムイオン蓄電池 | 平成26年1月31日 (申請の合計額が予算額に達した場合、補助事業期間であっても事業を終了) | 上限を100万円とし、機器の3分の1を補助 | SII (一般社団法人 環境共創イニシアチブ) http://sii.or.jp/ |
HEMS | 平成26年1月31日 (申請の合計額が予算額に達した場合、補助事業期間であっても事業を終了) | 定額7万円または10万円 | SII (一般社団法人 環境共創イニシアチブ) http://sii.or.jp/ |
2013年 09月12日 11時20分