地震大国日本で、高まる地盤への意識

東日本大震災における液状化現象の甚大な被害は、記憶に新しい東日本大震災における液状化現象の甚大な被害は、記憶に新しい

東日本大震災の際、東北から関東にかけて発生した液状化現象の被害が記憶に新しい中、2014年8月に広島で豪雨による甚大な土砂災害が発生し、住まいやその周辺における地盤の強度に不安を感じた人は多いのではないだろうか。
地震大国日本では、各住宅メーカーなどが建物の耐震技術の向上を図っているが、そもそもそれを支える地盤が弱くては、元も子もない。しかし実際に調査をするのは土地の売買契約後に、というケースが多く、住まい探しの早い段階で地盤の強度が確認できたら…というのがユーザーの本音だろう。そんな時のためにあるのが、地盤情報サイトだ。

2014年5月のサイトオープン後、たった4ヶ月で50万アクセスを突破した地盤情報サイトがある。「地盤安心マップ」は、ハザードマップや国土地理院の地図データだけでなく、運営会社が実施した地盤調査の実績を元にしたデータも組み込んでいる点が特長だ。
今回、この「地盤安心マップ」の利用方法と、その開発背景などを運営会社の地盤ネット株式会社 代表取締役 山本強氏に伺ってきた。

7万棟に及ぶ実績データを利用した、自社ならではの地盤情報

「地盤安心マップ」は、自社データを元にした地盤ネット判定マップ、旧版地形図(国土地理院等が発行した古い年代の地形図のことで、いわゆる「古地図」のこと。地盤安心マップでは主に昭和初期を中心とした年代の旧版地形図を掲載している。)、航空写真などに加え、2014年9月に新たに自治体液状化ハザードマップ、活断層マップが加わり、計14種類の地図の閲覧が可能だ(地域により閲覧不可のデータもある)。

まず、メインとなる「地盤ネット判定マップ」の使い方を見てみる。
地図をクリックすると、その地点の標高・地形・地質の他、その地点から半径1~5km以内の「対象件数」「地盤改良工事不要」「地盤改良工事必要」「地盤改良工事不要割合」が表示される。これが地盤ネット社ならではのデータだ。

「一般的な地盤調査は、調査会社と改良工事の会社が関連していたり、地盤調査の方法が標準化されていない実態があるため、過剰な工事が行われる場合もあるんです。 そこで、地盤改良工事が必要と判定された土地について再度、第三者の目から客観的な解析を行い、地盤改良工事が本当に必要かどうか判定を行う『地盤セカンドオピニオン』というサービスを提供しています」と、山本氏。7万棟にものぼるこのサービスおよび自社地盤調査の実績による情報を、マップに反映しているという。つまり、設定したポイントの半径1~5km圏内で、地盤ネット社が判定した工事不要の件数・割合が表示されるということだ。

地図上に「地盤改良工事不要」は青、「必要」は赤で表示されており、東京都で見ると、地盤が強いとされる「武蔵野台地」の範囲は確かに青のマークが多いなど、全体的な傾向を把握できる。
しかし、その中にもところどころ赤のマークが存在する。逆に、一般的に地盤が弱いとされる海や川に近い地域にも青のマークがある。その理由について、山本氏はこう説明してくれた。
「地盤の良しあしは、実は物件ごとに一概に言えません。一般的な戸建て住宅は重量が軽いため、表層から3~5mまでの地盤が重要になります。地盤が強固な地域でも、仮に少し前の世代の造成工事に問題があると、安全とは言えません。表層から3~5mまでの地盤は、一戸建てが30年も建っていれば固められて強くなるので、水辺に近い地域は必ず危険、とも限りません。同じ地域でも物件ごとに良しあしは異なるんです。そのため青色と赤色のマークが混在している場所もあります」

このマップの「地盤改良工事不要割合」の数値が高いエリアほど、安心度は高まると言っていいかもしれない。しかし、物件ごとに強度が異なることを考えると、やはり建築を検討する土地の地盤は、しっかり調査しておく必要がありそうだ。

東京都西側のエリアを表示する地図。青色と赤色のマークの分布で傾向が見える</br>(個人情報保護のため、地図を拡大すると2色のマークは非表示となる)東京都西側のエリアを表示する地図。青色と赤色のマークの分布で傾向が見える
(個人情報保護のため、地図を拡大すると2色のマークは非表示となる)

14種類の地図の重ね合わせ機能で、その場所のより詳細な情報を

自社データに基づいた地盤ネット判定マップだけでなく、他にも様々な種類の地図を組み合わせ、その場所の情報を複合的に知ることができる。その使い方を見てみよう。

マップ画面右側の「地図情報切り替え」ボタンで、「地盤ネット判定マップ」の他、旧版地形図、1974年~1990年の間の最大4年代の航空写真、標高マップ、 土砂災害危険箇所マップなど、14の地図を選択し重ね合わせて閲覧することが可能。(縮尺によって、閲覧できる地図の組み合わせは異なる)
さらにこれらを複数選択し透過率(すかし)を変えることで、情報をより比較しやすくもなっている。最新の地図と旧版地形図を重ね合わせることで土地の利用履歴を知ることができ、例えば旧版地形図や過去の航空写真では、海や池の埋め立ての履歴や過去の谷埋め造成地の情報を、災害履歴図では、過去に起きた水害や土砂災害などの履歴を知ることもできる。従来、インターネット等で提供されている地盤情報は縮尺や情報がバラバラだが、こちらは全てを一元化しているのが大きな特長だろう。実際、開発にあたり、特に自治体のハザードマップは縮尺がまちまちであることから、「この縮尺を合わせるのは途方もなく大変な作業だった」と山本氏は話してくれた。

また、土地の歴史だけでなく、避難所の場所と概要も地図上に示すことができる。スマホやタブレットでも操作可能なため、もしも災害に巻き込まれた時に、標高マップなどと合わせて安全な避難所を探すことも想定してつくられているそうだ。

旧版地形図と標高マップを組み合わせた状態。ページ上部のバーで透過率を変更できる旧版地形図と標高マップを組み合わせた状態。ページ上部のバーで透過率を変更できる

もっとユーザーに近い「地盤業界」へ

お話を伺った、地盤ネット株式会社 代表取締役社長山本強氏。一般ユーザー向けの認知拡大を狙い、タレントを起用したテレビCMや、ゴルフコンペの協賛などのPRにも力を入れているそうだお話を伺った、地盤ネット株式会社 代表取締役社長山本強氏。一般ユーザー向けの認知拡大を狙い、タレントを起用したテレビCMや、ゴルフコンペの協賛などのPRにも力を入れているそうだ

開発にあたりデータの収集は行政にも協力を仰いだが、そこにも苦労があったという。
「そもそも情報を公開していない自治体や、掲載の許可を頂けない自治体もありました。『他の自治体はどうなんですか?』と聞かれる事も多かったです。残りたくはないけど、先に出したくもないという心境なんでしょう」
また、「正しい情報を伝えることでデメリットを受ける人もいるのではないか」という意見もあったそうだ。それについて山本氏は、「本当の安全のために必要な情報は開示するべきだと思います」と話してくれた。

そもそも山本氏が地盤ネット社を設立するに至ったのは、自身が地盤調査会社に勤務した経験によるものだった。
「地盤は、一般のユーザーにあまりにも知られていません。地震の不安もあり、”工事が必要”と判断されれば実施する。しかし実際には、本来よりも厳しい判定をされ、過剰な工事が行われていることも多いのが現実でした。もっと情報を”見える化”して業界を変える必要があると感じ、自社で工事を請け負わずに調査解析を行うサービスを開始したんです」

現在は、地盤ネット社の顧客の多くは住宅の分譲や注文住宅の建設をする法人だ。しかし、もっとユーザーに直接見てもらうためにこのマップを作ったそうだ。そのため、会員登録は不要で、利用料は無料となっている。自宅や購入を検討している宅地の地盤の良しあしや、災害に備えた情報も、このマップで歴史や解析の実績をもとに知ることができる。こうした知識は、数十年以内に大地震が発生する確率が高いとされている日本に住む私たちに必要なことだろう。

「ゆくゆくは不動産会社や住宅会社ともコラボし、もっとわかりやすく開かれた業界にしたい」と話す山本氏。「地盤安心マップ」のアクセス数増加のスピードを見ると、ユーザーにとって優良な情報源として、確実に認知され始めていると言って良さそうだ。


■取材協力
地盤安心マップ      http://www.jibanmap.jp/map/main.php
地盤ネット株式会社   http://jibannet.co.jp/

2014年 09月13日 10時28分