野生動物を家畜化した犬と猫

犬も猫も、もともとは野生動物だったものを飼いならして家畜化したものだが、その時代には大きな差がある。犬が家畜となったのは1万5000年前ごろ。人間と犬がともに埋葬された最古の遺跡は1万2000年前のもので、イスラエルで発掘されている。犬は集団生活をするため人に慣れやすく、狩猟の際には獲物を捕まえたり、追いかけたりさせるために家畜化したと考えられる。日本においても、狩猟で生活をしていた縄文人は犬をとても大切に扱っており、縄文早期の遺跡からは、丁寧に埋葬された犬の骨が見つかっている。

これに対して猫が家畜化されたのは、穀物を栽培する生活になってからだ。保管している穀物をネズミに食い荒らされて困った人たちが、これを退治するために、猫を飼うようになったと考えられている。エジプトでは起源前4000年の遺跡から猫の骨が発掘されているから、このころには家畜化されていたのだろう。

家猫の起源はアフリカ北部や中近東から西アジアに生息するリビアヤマネコと言われているが、家犬は歴史が古くはっきりしていない。オオカミがその先祖とされてはいるが、染色体の数が同じジャッカルやコヨーテなどとも交配が可能なため、品種改良で交雑している可能性もある。

もともとは野生動物だった犬と猫。犬に関しては1万年以上前から人間の友として飼育されてきたもともとは野生動物だった犬と猫。犬に関しては1万年以上前から人間の友として飼育されてきた

信仰の対象となった犬や猫

古くから人間と共に暮らしてきた犬や猫は、神として崇められることもあった。
たとえば、古代エジプトで、愛と美の女神は「バステト」といい、人間の体に猫の頭を持っている。手に楽器を持ち、踊りを愛する明るい性格で、家を守護し、愛と豊穣を司るとされるから、エジプトにおいても猫は、鼠の害から穀物や家を守る存在として愛されていたのだろう。

これに対し、犬の神は「アヌビス」という名で、死と深く関わるとされる。
紀元前1300年ごろのファラオで、黄金マスクが有名なツタンカーメンのピラミッドには「ファラオの眠りを妨げる者には死の翼が触れるだろう」という呪いの言葉とともに、アヌビスの絵が描かれていたという。つまりアヌビスは、崩御した王を守る神として信仰されてきたらしいのだ。それは、犬たちが餌を求めて墓場をうろついたことのほかに、夜中に遠吠えをする習性が「闇の動物」をイメージさせたからかもしれない。ギリシャ神話でも、月の女神であり死者や魔術師の神でもあるヘカテは、地獄の猛犬を連れ歩いているとされた。しかし中世ヨーロッパでは立場が逆転する。猫、特に黒猫は魔女のペットであるとされ、忌み嫌われたのだ。それに対して犬は王侯貴族たちに猟犬として大切にされ、人間を守る存在とされた。

日本における犬と猫

日本における猫の飼育は奈良時代以降に始まったとされる日本における猫の飼育は奈良時代以降に始まったとされる

日本人が犬と生活しだしたのは10000年以上前、狩猟で生活をしていた縄文人は、犬と暮らし、家族として扱っていたとされる。『日本書紀』にも犬は神として登場するから、人間にとって有用な存在と考えられていたことがわかる。景行(けいこう)天皇の時代というから西暦100年より少し前のことだ。

皇子の大和武尊(やまとたける)は、東国に住む蛮族の征伐に出かけた帰り、信州の山で迷ってしまう。そこに現れたのが白い犬だ。皇子を導くように案内をしてくれたので、美濃の国に出ることができたと書かれている。また民話でも、犬は人間を守る存在として登場することが多い。たとえば各地に伝わる悪神退治伝説では、人間と一緒に悪神を退治する存在として犬が登場する。磐田市に伝わる「しっぺい太郎」伝説では、人身御供を要求する神が唯一恐れたのが「しっぺい太郎」という犬だった。そこで旅の僧侶が犬を飼い主から借り受け、悪神を退治したという。

猫が日本の歴史に登場するのは奈良時代とされる。
この時代、中国からさまざまな経典が輸入されたが、鼠が紙を食い荒らしてしまう。それを防ぐため、猫も一緒に連れてこられたのだ。平安時代の宇多天皇は黒猫を飼っており、彼が書き記した『寛平御記』には猫の様子が細かく描写されているから、当時の貴族の間で猫が愛玩されていたことがわかる。

しかし、猫は夜行性であり、瞳孔が糸のように細くなるところから、魔性のものとも考えられていた。たとえば鎌倉時代の『明月記』には、猫又という化け物が一晩に数人を殺害したとあるほか、安土桃山時代に起きた鍋島藩化け猫騒動は有名だろう。江戸時代の怪談集にも猫の怪が数多く紹介されている。たとえば『耳袋』には、寺で飼われている猫が言葉をしゃべったとあり、それを聞きとがめた和尚が問い詰めると、「十年以上生きた猫は言葉をしゃべり、14~5年生きれば神通力も得る」と教えたと書かれている。猫は不思議な動物だとも考えられてきたのだろう。

現代における犬と猫

犬と猫は、人間の友としてなくてはならぬ存在であった。特に近年は「パートナー」としての人気が高まっており、読者の中にも犬や猫を飼いたいと考える人は少なくないだろう。そこで、犬や猫をペットとして迎え入れる際の注意事項を、簡単に確認しておこう。

まず、犬は散歩が不可欠。朝と晩の2回、毎回30分程度かかるので、時間に余裕があるかどうか確認しておこう。また、飼い主がいないと寂しがるため、長時間の留守番は向かない。
それに対して猫は散歩の必要がなく、安心できる居場所があれば落ち着いているため、短期間の旅行なら留守番もさせられる。しかし、猫エイズや交通事故の心配から、屋内での飼育が中心となっており、爪とぎで家具がボロボロにされる覚悟は必要だ。

犬も猫も一年に一度のワクチンのほか、動物病院での受診は必須。餌代やおもちゃ代以外にも医療費がかかるので、それだけの支出が可能か確認しておこう。また、ネギ類やチョコレートなど、人間には無害でも犬や猫には有害な食べ物はたくさんある。塩分も健康を害するため、人間の食べ物を決して食べさせないよう注意したい。

飼うとなると手間も費用もかかるが、犬も猫も、人間の友としての長い歴史を持つ存在だ。その習性をよく知って大切に飼育すれば、日々の癒しとなるに違いない。

2016年 03月26日 11時00分