関西に続き、東京・多摩ニュータウンでも「MUJI×UR」が進行中

永山団地。多摩ニュータウンの中でも最も古い物件だ永山団地。多摩ニュータウンの中でも最も古い物件だ

団地の老朽化と住民の超高齢化が進む中、再生に向けて動き出した多摩ニュータウン。前回は、古くなった分譲団地を建て替えることで再生に成功した、『Brillia(ブリリア)多摩ニュータウン』の例をご紹介した。
一方、多摩ニュータウンを開発したUR都市機構(旧・日本住宅公団)でも、住民の高齢化が進むUR賃貸住宅を活性化すべく、さまざまな取り組みを始めている。

多摩ニュータウンにおける賃貸住宅再生を牽引しているのが、多摩市の永山団地を舞台とした「MUJI×UR団地リノベーションプロジェクト」だ。このプロジェクトは、老朽化した団地の再生を目指し、無印良品の住空間事業を担う(株)MUJI HOUSEとUR都市機構が全国32団地で展開しているもの。若者に根強い人気を誇る無印良品とタッグを組むことによって、“無印ファン”のみならず、若い世代に幅広くアピールしようとの狙いだ。

「永山団地の入居が始まったのは、多摩ニュータウンでは最も早い昭和46年。築46年の物件ですが、当時から住み続けている方も多く、団地全体で高齢化が進んでいる。団地を活性化するためにも、若い世代にどんどん入居していただきたいのですが、昔の団地のままでは、若い人に魅力を感じていただけないのも事実。そこで、無印さんに知恵を借り、若い世代に訴求できる商品を作ろうと始まったのが、このプロジェクトです」と、UR都市機構・島一喜氏は語る。

応募倍率5倍と、若い世代に圧倒的な人気の”無印リノベ”

永山団地では、空き住戸が出た際に、①和室3室のうち1室を洋室化、②バリアフリー化など高齢者向けのリニューアル、③若い世代をターゲットにした「MUJI×UR団地リノベーション」と、3タイプのリフォームを行っている。
永山団地には約3300戸のUR賃貸住宅があるが、無印良品によるリノベーションが行われたのは、このうちの10戸。2016年1月に第1期6戸、同年11月に第2期4戸の入居募集が行われた。
「URや無印良品のホームページで入居募集をかけたのですが、毎回、募集戸数の5倍を超える申し込みがあります。反響は非常に大きいですね」と、島氏。入居希望者は30代の新婚カップルや子供連れが中心だが、20代の若い世代の姿も目立つという。

「無印良品の家に住まう」というプレミアム感に加えて、2LDKで7~8万円台と家賃が手頃なのも魅力だ。団地の他タイプの住戸と比べると家賃はやや割高だが、それでも入居希望者が引きも切らないという。
「『第1期の募集では抽選に漏れたけれど、どうしてもMUJIの部屋に住みたいんです』と言って、第2期にまた申し込まれた方もいます。2017年度も引き続きMUJIリノベーション住戸を供給していきたいですね」と、島氏は語る。

MUJI×UR団地リノベーションのモデルルーム。軽いダンボールふすまを使っているので、自由自在に間取りを変えられる。必要に応じて部屋を仕切ることも、今風のオープンなLDKにすることも可能だMUJI×UR団地リノベーションのモデルルーム。軽いダンボールふすまを使っているので、自由自在に間取りを変えられる。必要に応じて部屋を仕切ることも、今風のオープンなLDKにすることも可能だ

団地らしさと無印良品のノウハウを融合した魅力的な住空間

押入れは木枠だけ残してフリースペースに。無印良品の収納用品が収まるように設計されている押入れは木枠だけ残してフリースペースに。無印良品の収納用品が収まるように設計されている

永山団地のモデルルームは52.4m2の2LDK。内装は白で統一され、無印良品らしいシンプルでミニマルな印象に仕上がっている。
以前はすべて和室だった個室の床には、無印良品とURが共同開発した麻畳を使用。和室にも洋室にも合う床材を使っているあたり、インテリアにこだわりのある若い世代にも違和感なく受け入れられそうだ。

このリノベーション住戸の最大の特徴は、圧迫感のある個室の仕切り壁を取り払い、自由に間取りが変更できるようにした点にある。元々、この団地は40~50m2台のスペースに3つの和室がひしめき合うアナクロな作りで、若い世代が敬遠する大きな理由となっていた。そこで、改装にあたっては部屋の仕切り壁を取り払い、MUJI×UR共同開発のダンボールふすまを使用。自由に取り外しできる軽いふすまを使うことで、現代風の広々とした室内空間を実現した。

「この団地が作られた当時は、4人家族が住むことを想定していたため、『個室をいかに作るか』が課題でした。このため、狭い住戸を壁で細かく仕切り、子供たちのための個室を確保していたわけです。でも、今の人のニーズとは必ずしも合致しない。そこで、壁を取り払い、可動式の引き戸を付けることで、間取りに“可変性”を持たせました」(島氏)

とはいえ、“団地らしさ”が完全に失われたわけではない。通常のマンションのリノベーションと違うのは、むしろ団地ならではの味わいを残すことによって、懐かしさや温もりが感じられる空間作りを狙った点にある。
白く塗り直された壁やむき出しの配管、あえて木枠だけを残した欄間や押し入れなど、そこここに昭和レトロの雰囲気が感じられ、古きよき団地暮らしを彷彿とさせる。

「昔のもののよさを活かしつつ、現代の住まいのニーズに合わせて必要なところは新しくする。既存の住宅をリノベーションして若い人たちにも住んでもらい、団地を活性化していこうというのが当面の方針です」と、島氏は語る。

大学と連携し、団地を学生向けシェアハウスとして活用する試みも

UR都市機構 東日本賃貸住宅本部 多摩エリア経営部 ストック・ウェルフェア推進チーム チームリーダーの島一喜氏UR都市機構 東日本賃貸住宅本部 多摩エリア経営部 ストック・ウェルフェア推進チーム チームリーダーの島一喜氏

現在、多摩ニュータウン再生に向けてUR賃貸団地のストックを活用するべく、さまざまな取り組みが行われている。「MUJI×UR団地リノベーション」のアイデアも、若い世代を呼び込んで地域コミュニティを再生しないかぎり、多摩ニュータウンに未来はない、との危機感から生まれたものだ。
だが、リノベーション住戸の数が限られる以上、無印良品のブランド力だけに頼ることはできないのは言わずもがなだ。そもそも、若い世代にとって団地の魅力とは何なのか。島氏はこう語る。

「UR賃貸団地には建設当時から住んでいらっしゃる方も多く、コミュニティのつながりが強いのが特徴です。今も自治会を中心に、夏祭りなどいろいろなイベントが活発に行われています。それが一般的な民間アパートとの違いであり、団地ならではの魅力だと思います」

多世代が共生できるまちづくりの一環として、多摩市とURは、団地の空室を学生寮として活用する取り組みも進めている。その皮切りとして、2015年3月、多摩ニュータウン聖ヶ丘の団地の一部を多摩大学の学生向けシェアハウスとして提供する試みがスタート。学生は地域での活動、たとえば地元の祭りや草刈りなどに参加することを条件に、1人あたりの家賃負担が小さいシェアハウスを利用できるだけでなく、多摩市でのインターンシップなどに参加するチャンスも与えられる。

「『蛍光灯が切れちゃったから、学生さんに取り替えってもらったよ』と、うれしそうに話す団地のお年寄りもいます。シェアハウスを拠点に学生さんとお年寄りとの間で交流が生まれれば、卒業しても多摩市内に住んでいただけるかもしれない。地域活性化につなげる意味でも、近隣の大学との連携に力を入れていきたいと考えています」と、多摩市役所でニュータウン再生を担当する永井修氏は期待を寄せる。

団地を地域の医療福祉拠点とし、快適な“終の棲家”に

住人の高齢化が急速に進む中、高齢者へのサポートも危急の課題となっている。
そこで、まずは諏訪・永山・貝取・豊ヶ丘の4団地で、高齢者の見守りや在宅ケア、買い物代行サービスなどを行う医療福祉拠点を整備。ここには子育て施設やカフェ、暮らしのサポートを行う施設なども併設し、多世代が交流できる地域のハブにしていきたい、と島氏は語る。

「団地自体に住宅・医療・福祉・教育などさまざまな機能を持たせることで、新たな雇用を生み出し、多世代が交流しながら長く住み続けられる町に変えていきたい。では、どのような拠点を作れば、多摩ニュータウンの再生につなげられるのか。その点について検討を重ねているところです」

取材にあたって多摩ニュータウンを歩いてみたが、人と自然が共生する緻密な都市計画がなされていることに驚かされた。木立の中を遊歩道がどこまでも続き、町のあちこちに配置された公園の池が、空や木々の色を映している。街路樹が歩道に涼しげな影を作り、春には桜、秋には紅葉が町を鮮やかに染め上げる。人の手によって整備されたこの景観美は、計画的に作られた公園都市ならではのものだ。

「今後は、この緑豊かな素晴らしい環境を活かして、多世代の人に住んでいただき、活気のある街にしていきたい。団地というストックを活用し、『MUJI×UR』のような新商品を供給しながら、地域の魅力をアップさせていきたいと考えています」(島氏)

日本の高度経済成長を支えた、団地という住空間。そこには、都市化とともに失われてしまった豊かな自然と、人と人との絆が今も生きている。多世代が交流できる憩いの場とサービスを、現代のニーズに合った形で再構築することで、団地が持つポテンシャルをいかに引き出せるか。
多摩ニュータウン再生の鍵は、まさにそこにあるといえそうだ。

丘のまち~東京・多摩ニュータウンに暮らす~
http://www.tama-newtown2.tokyo/

多摩市の公園面積率は11.17%で都内1位。多摩ニュータウンには随所に公園が設けられている多摩市の公園面積率は11.17%で都内1位。多摩ニュータウンには随所に公園が設けられている

2017年 02月17日 11時00分